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アルセリオンの神話『聖魔ルチア』  作者: エスケー
ルチアとアルセリオンの出会い編
4/14

第3話:お風呂の時間 ぷかぷかタイム

「ってことがあったのよ!」


夜、食卓の明かりがほのかに揺れる中、お母さんはドンッとお皿を置いた。音が響いて、部屋の空気がピリッと張りつめる。


「だから、私じゃない! アルセリオンっていう白い丸々の子が、食べたの!!」

「だったら、その白い丸っこい奴を出しなさい!」

「だ!!か!!ら!! その子、私の身体の中にいて、出てこないの!!」

「はぁ〜……また、それ、話が並行なのよ」

「並行って何!」


ドンッと私は椅子に座り込み、頭を抱える。

目の前のテーブルには、食べかけのリンゴが置かれているのに、まるで犯人扱いされている気分。最悪。


「まぁ、まぁ、二人とも落ち着いて」

「アスタ!! 貴方も何か言ってやりなさいよ。大体、貴方が不甲斐ないから、この子はちょっとわがままになったのよ!」

「つっても、あれだろ。ルチア、食べてないんだろ?」


お父さんが優しい目で私を見つめる。

その目に、なんだか少し安心する自分がいた。


「うんうん、食べてない!!」

「じゃあ他に誰が食べるのよ」

「だ、か、ら、アルセリオンが食べたの! 私は知らないんだから!!」


私は両手をぱっと広げて、全力で訴えた。

顔が真っ赤になるくらい必死だった。


「だったら、そのアルセリオンって子を連れてきなさいよ。お尻ひっぱたくから!」


「いいよ! 連れてくるよ!!」


私は勢いよく立ち上がって叫んだ。

「アルセリオン!! 出てきて!!」


――いるはず。

だって、昼間はちゃんといたんだ。

私の肩から出てきて、りんごだって食べた!


でも、何度呼びかけても返事がない。

部屋の空気が静まり返る中、お母さんのため息だけが響く。


「……アルセリオン?」


肩を叩いても、頭を揺らしても、どこにも気配がない。……隠れてるんだ!! 卑怯者!


「出てきて!!」


私は頬をふくらませて叫んだ。

お父さんは苦笑いし、お母さんはこめかみを押さえていた。




お風呂の時間になった。

湯気がふわっと広がる中、私は湯船の縁に腰を下ろした。


結局、お母さんは信じてくれなかった。

私のせいじゃないのに……。

胸の奥がじんわり苦くて、湯の温かささえ心に届かない。


その時だった。


『よっ』


突然、肩のあたりから声がした。


「――っ!!!」


思わず振り向くと、湯気の中に白い球体がふわりと浮かんでいた。


「あっ、貴方ね!! 貴方のせいで私、恥かいたんだよ!」


私は指をびしっと突きつけた。


「今から――汚名返上に行くよ!!」


アルセリオンはくるりと一回転して、まるで面白がるようにかすかに光った。


『悪いけど、それはできない願いだ。前にも言ったろ、少しは同居させてもらうって』


「だから、それが身勝手なのよ!」


『俺が死んでもいいなら、出してもいいぜ』


「……分かった、さよなら」


『おいおい、待て待て! そんなすぐに出すとは思わないじゃん!』


ひょこっとアルセリオンは私の体内へ戻って隠

れた。


「ちょ、ちょっと! 本当にどこにいるのよ!」


立ち上がってみても、肩にも背中にも、どこにも姿がない。


『気になるか?』


耳元で声がした。

そして――私の胸元から、アルセリオンがふわりと現れた。


「……なる!」

『教えない』

「うぅぅ!! もう!!!」


私は顔を真っ赤にして湯船の中でバシャッと水をはね上げた。


「ルチア?! どうしたの?!」


脱衣所の向こうから、お母さんの声が響いた。


あ……今なら言えるかも──。

でも、待てよ。どうせまた信じてもらえないに決まってる。


『言わないのか?』


アルセリオンの声が、胸の奥でくすぐるように響く。


「どうせ、貴方また隠れるでしょ」

『もちろん』


悪びれる様子もなく、白い球体は湯気の中でくるくると回った。

その無邪気な様子に、私はぷくっと頬をふくらませるしかなかった。


絶対に、絶対に一皮剥かせてあげる!!


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