第2話:存在外の存在『アルセリオン』
私の肩から、何がすうっと現れた。
見れば、それは白い球体だった。
「あっ! この子だ!」
思わず声が出る。間違いない、この子だ。私の体の中に入り込んだ、あの時の……!
やっぱり見間違いじゃなかったんだ!!
『よォ、ルチア。悪いな、身体借りてる』
耳に届いた瞬間、頭の奥がチリッと痛んだ。
変な言語のはずなのに――なぜだか、はっきり意味がわかる。
「……貴方、何者なの!?」
『アルセリオンだ。訳あってお前の身体に寄生させてもらってる。じゃないと俺が死ぬからな』
寄生……? 勝手にそんなことしてるってこと!?
「私の身体は無料じゃないんだからね!! 出ていって!」
『時が来たらな』
「それっていつよ!!」
『さぁな。ただ、早く出ていって欲しいなら――俺に何か食わせろ』
そう言いながら、アルセリオンと名乗った白い球体は、ぬるりと触手を伸ばした。
次の瞬間、私が一生懸命運んだ二つのりんごが、目の前でみるみるうちに食べられていく。
『……普通にうまいな』
「 普通って何よ!上手いだけでいいでしょ! 余計な感想いらないし! っていうか勝手に食べないでよ!!」
私が肩をペチン!と叩くと、アルセリオンは左肩にぴょこんと現れた。
むっ、としてもう一度左肩を叩くと、今度は右肩にひょいっと移動する。
「ちょっ……! ふざけないでよ!!」
さらに叩くと、また反対の肩へ。
「なにそれ、もぐら叩きじゃないんだから!!」
私は両肩を交互にペチンペチンと叩きながら、ぷくっと頬をふくらませた。
アルセリオンは楽しそうに動き回っているけど、私は本気で怒ってるんだからね!!
「このっ!!」
私はアルセリオンを追いかけて、部屋の中を走り回った。
だけどあいつは、私の身体のあちこち――頭の上や背中、足元にまでひょいひょい現れるから、全然捕まえられない!
「待ちなさいってばー!!」
「やーだねぇ〜」なんて声まで聞こえる気がして、余計に腹が立つ!
ドタバタ、ガタガタ。部屋中を巻き込んだ騒ぎになったそのとき――
ドーンッ!!
勢いよく扉が開いた。
「ルチア!!!!!!」
そこに立っていたのは、怒りで顔を真っ赤にしたお母さんだった。




