表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/57

第19話:章の最後

俺はようやく、海へ出た。


暗黒の深海を抜け、光の届く蒼へ。

そして──見上げれば、そこには 空 があった。


この世界に来て、初めて見る空だった。

ゆっくり揺れる水面越しでも分かる、あの淡い光。

朝日が差し込み、黄金色の筋が海に落ちては、ゆらゆら揺れている。


「着いたぞ。後はあそこに行けば地上だ。」


アリシアが指した先──

水面の向こうに、淡いベージュ色が広がっている。

砂だ。砂浜だ。

あれが……地上への出口か。


「ありがとう、ここまで運んできてくれて。」


俺がそう言うと、アリシアは小さく鼻を鳴らした。


「礼を言うのはこっちだ。

 お前が来なければ、私達はサメに殺されていた。」


真っ直ぐな目で俺を見る。

その視線には、恐怖も、警戒も、敵意もない。

ただ、深海で共に戦った仲間としての、真摯な眼差しだけがあった。


……なんか照れるんだけど。


「まぁ、でもアルくんが来なかったら、そもそもサメ達も来なかったけどね!」


ルナが明るく笑いながら俺の横にくる。


ぐはっ……それは言うな、痛い所を突きすぎる。


「うっ……まぁ……それは……言わないでほしいな……」


「えへへ、ごめんって!

 でもホントに、助けてくれてありがとう。」


ルナはにこっと笑った。

後ろではレッドたちも、みんな静かに頷いている。


深海で出会った仲間たち。

戦って、喰って、喰われて、また戦って。

気づけば別れを惜しむほどの絆ができていた。


小魚たちが俺の横を泳ぎ去る。

朝日を反射して、鱗は金色や銀色に輝いた。

オレンジ色に透けるクラゲ。

縞模様の熱帯魚。

鮮やかな青の群れが一斉に方向転換し、水面下に大きな“道”を描く。


深海とは違う。

色がある、光がある、息づいている海だ。


水温が優しい。

波が柔らかい。

世界が広い。


……ああ。


ようやく、“海の底”から自由になったんだな。


俺は、ゆっくりと水面へ近づいていった。

そこには、新しい世界が待っている。


――地上だ。


――異世界だ。


――俺の冒険だ。


「行ってこい、アルセリオン」


アリシアの声が背中を押す。






そして人型になり、俺は海から大地へと足を踏みしめた。


それはまるで神話の再演だった。

太古、すべての生命が海から生まれたように──俺もまた海を出て大地へ上がる。


太陽光がギンギンに突き刺さる。

海の底では絶対に届かなかった、本物の“光”だ。


胸の奥から熱が込み上がる。


「「うおぉぉぉぉぉぉ!!!」」


反射的に叫んだ──いや、声が重なった?


「……ん?」


俺はゆっくり後ろを振り向いた。


そこにいたのは──

俺と同じく180cmを超える、全身真っ黒のバケモノ。


触手も、角も、体表の紋様も、黒い霧のようなエネルギーも。

見間違いようがない。


「……ヴァルセリオン?!」

「へへっ、生きてましたよ兄貴!」


思わず声が裏返った。


「な、なんで生きてんだよ!?あの時吹き飛ばされたろ!?」

「へへ、あいつに思いっきりぶっ飛ばされた時っすよ……その衝撃で、知らねぇデケェ海の蛇が急に現れて、地獄みたいなバトルが始まって……」


「蛇と戦ってたのかよ!!」

「はい!そしたら偶然……兄貴のいる方向に流されて来て……気づいたらここに!」


なんだそれ。

いやほんとなんだそれ。


でも──


「……生きててよかった」

「兄貴……!俺も兄貴が地上で一人かと思うと泣きそうでした!」


抱きついてくるのを軽く回避した。とりあえず、嬉しいけど暑苦しい。


つーかこいつちゃっかりと進化している、異常存在(アンノーマルビーング)から特異存在スペシフィックビーイングに。ま、いいか。


「お前はこれからどうするんだ?」


地上の光を浴びながら、俺は隣に立つヴァルセリオンに問いかけた。

潮と太陽の匂いが混ざる、不思議な空気だった。深海には存在しない“温かさ”が、胸の奥にまで染み込んでくる。


「どうするって?」


ヴァルセリオンは首を傾げた。黒い触手の影が砂に落ちる。


「いや、だから……これからは自由に生きていいってことだ。俺はこの世界を楽しむつもりだし、好き勝手に冒険して、色んな情報を食って、色んな景色を見たい。

 ……俺の野望に、お前まで巻き込むのは悪いだろ?」


本心だった。

深海での戦いは、ただの生存だった。しかし、地上は違う。

ここは“目的”を持って歩ける世界だ。俺一人でも、どうにかなる──そう思っていた。


だが。


「へへ、兄貴」


ヴァルセリオンはにかっと笑った。

人型のくせに、なんか尻尾があるかのように腰がフリフリ揺れてる。黒い化け物ボディでやるな、怖いけど。


「俺はよ……兄貴についていくって決めてんだ。

 深海で拾ってくれて、一緒に飯食って、一緒に戦って…兄貴の背中、初めて“かっけぇ”って思えたんす!

 だから──俺は一生兄貴について行きやす!!」


その言葉は、真正面からぶつけられた。


……なんだよそれ。

深海での“家族”なんて、俺は意識したことなかったのに。


「おいおい……勝手に決めんなよ。俺は優しくねぇぞ?」

「知ってますよぉ!兄貴の腹の中、何回見てきたと思ってんですか!!」

「それは……まぁ、確かに」


思わず笑ってしまう。

不思議だ。深海では死んだような感情しかなかったのに、今は“楽しい”と思える。


太陽が照りつける中、俺たち二体の化け物は砂浜の上に立っていた。


海という牢獄を抜け、

ようやく自由になった世界で──


俺とヴァルセリオンの冒険が、ここから始まる。



♢♢♢


個体名:アルセリオン


種族:過度級怪物(ウルトラモンスター)


特性:触手・再生・存在進化(アップグレート)


擬態『犬、ギガドロン、タコ、チンアナゴ・魚、カジキ、蛇』


固有能力:『情報の秘書(アシスタント)』『新情報(ニューギット)』『存在進化(アップグレード)』『情報因子(インフォメーション)』『数値化(パラメーター)』『情報同化データ・アブソープション


スキル:『水中感知』『攻撃速度向上』『反応速度向上』『発光』『思念伝達』『墨吐き』『鮫毒噛み』

『超音波』『光学迷彩』『圧力耐性』『毒液生成』

『振動感知』『再生加速』『鱗硬化』『群体操作』

『電撃放出』『破壊圧縮クラッシュ・コンプレッション』『深界冷絶(しんかいれいぜつ)

浪震咆哮(ろうしんほうこう)』『破砕顎(クラッシャー・ジョウ)


数値化パラメーター:15400


♢♢♢


個体名:ヴァルセリオン


種族:異常存在(アンノーマルビーング)


特性:擬態・再生・存在進化(アップグレート)


『擬態:ウツボ・イタチザメ・イカ・鮫・猫・海龍』


固有能力


混沌喰者(カオス・イーター):対象の全て喰った場合、スキルを獲得、生きている相手ならば源エネルギーのみ奪う事が可能』

『環境適応:環境に適応しやすくなる』


スキル:『瞬足』『睨み』『柔軟性』『威嚇』『吸盤掌握』『分泌麻痺液』『光学迷彩』『水圧増強』

『水泡操縦』『音波索敵』『牙強化』『尾鞭攻撃』

『電気蓄積』『触手感覚増幅』『毒霧放射』『体液硬化』『分裂擬態』『死霊召喚』『浪震咆哮(ろうしんほうこう)』『 無相游泳(むそうゆうえい)


数値化(パラメーター):12000

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ