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アルセリオンの神話  作者: SR
世界創世編
2/25

プロローグ

 太古の時代

 それは文明すら誕生していない、**“世界がまだ未定義だった頃”**の記憶。

 大気は重く、空はまだ“青く”なっておらず、

 光と闇の区別すらあいまいだった。

 生物という概念は存在せず、存在とは“現象”だった。

 大地は沈黙しながらも鼓動し、

 山は言葉もなく“聳え”、

 海はただ、無音のまま深く深く息づいていた。

 世界はふたつに割れていた──

 まるで最初から「境界」を意識していたかのように。


 その瞬間だった。

 大陸と海の狭間、時空の裂け目から**『何か』**が滴り落ちた。

 それは意志を持たない粒子でもなく、

 ただの粘膜や血液でもない。

 “概念”そのものを含んだ、生きた情報の断片。

 形すら曖昧な、**『細胞』**という名の100個の種子。それらは静かに、だが確実に──世界へと溶け込んでいった。


 たった1つの細胞が、深海の底へと沈んでいった。

 光の届かない奈落。

 圧力に砕かれ、寒さに凍え、

 流れすらない沈黙の闇の中。


 そこで、細胞はただ「在り続けた」。

 時間の感覚はとうに失われた。

 数百年か、あるいは数千年か。

 世界がいくつも変わり、人々が何を築き壊そうとも、

 その細胞だけは、“変わることを拒絶し続けた”。

 だが、変化は必然だった。


 魂が──降りてきた。

 それがこの世界のものではないことは明らかだった。


 漂流するようにして異界から辿り着いた魂。

 無垢で、強く、どこか**“欠けている”**魂。

 それは何者かの転生か、それとも捨てられた残滓か

 理由は分からない。ただ一つ分かっていたことがある。


 その魂は、「選んだ」のだ。


 永遠の静寂にいた“白い細胞”に触れ、

 その中に「宿ること」を選んだ。



 そして始まる、進化の奔流。

 細胞に魂が宿った瞬間、世界の摂理が音を立てて歪んだ。


 それはもはやただの生物ではない。

 肉体を持つ意思。

 意思を持つ本能。

 光も届かぬ海の底で、“在ること”の意味が芽吹いた。


 白い細胞は、全てを取り込み、

 やがて、意志を持つ“存在”へと変貌する。




 その名を、

 アルセリオン


 後に幾千の神話と伝承に名を刻む、

 “始まりにして終わりを知る者”。


 これは、神にも等しき存在が、ただの細胞から始まった

 一つの“真実の神話”である。



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