表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/55

第16話:決着

  俺は辺りを見渡す。

 何か──少しでも、この状況を覆せる“材料”はないか。


 レッド達と群れをなすサメ共がまだ激しくぶつかり合っている。

 海中は戦闘の渦、その混乱で視界は泡と血潮……いや、血潮はないか。何せ俺、血ねぇし。


 そこで、ふと気づいた。


(……あれ、こいつら全部“食えば”よくね?)


 考えついた瞬間には、もう身体が動いていた。

 触手を一気に伸ばし、暴れるサメを百匹以上まとめて捕縛する。

 そして──躊躇いもなく吸収した。


 ドクン、と体内の情報子が反応する。

 サメ達の持つ戦闘データ、筋力、習性……断片的ではあるが確かに“流れ込んで”くる。


(よし……これだけ情報を奪えば、多少は進化できるだろ)


 期待したが、すぐに別の事実が突きつけられる。


『召喚個体は情報密度が低いので、習得効率は低めです』


 なるほど……アイツら“本物”じゃない。

 メガドロンが呼び出しただけあって、情報量は薄い。

 だが──


(ゼロじゃないだけマシか)


 わずかでも積み重ねれば、俺の“基盤”である情報子は反応する。

 この身は血肉ではなく、情報で構築された存在。

 つまり、どんな断片であれ、飲み込み続ければ必ず糧になる。


 海中に渦巻くサメの数はまだ膨大だ。

 なら、やるべきことは決まっている。


 激戦の最中だった。

 サメたちを吸収した俺の身体に、妙な“ノイズ”が走る。


「……っ、なんだコレ?」


 意識の奥底で、亀裂のようなものが走る。

 情報子で構成された身体が、外部から得た粗雑な情報を無理やり取り込み、再構築を始めたのだ。


 全身がビリビリと震え、黒い靄が立ち上る。

 脳に直接、何十匹もの海獣の“残滓”が流れ込んでくる感覚。


「グ、アァァァァァァァ!!」


 声にならない絶叫が漏れる。

 身体が勝手に膨張し、収縮し、再び膨らむ。

 周囲の海水が渦となり、空気すら震える。


「アルくん?!何が──!」


 遠くでルナの声が響くが、もう届かない。

 俺の五感は、全て“進化の奔流”に飲み込まれていた。


 視界が紫色に染まった瞬間──


 メガドロンがこちらを捉えた。


「ホォ……ソレガ、オマエノ、シンノスガタカ」


 興味深そうに巨大な瞳孔が収縮する。

 そして突然、海そのものを裂くような加速で迫った。


 ドォォォォォン!!


 俺とメガドロンは正面から激突した。

 衝撃波が海底を揺らし、遠くの岩礁が粉々に砕ける。


 触手がメガドロンの顎を掴み、メガドロンの尾が俺の胴を叩き割らんと振り抜く。


「ガァッ──! まだだッ!!」


 進化の影響で制御不能な力が腕を走り、触手が黒い稲妻を帯びる。

 メガドロンの装甲のような鱗に巻きつき、引き千切らんと締め上げる。


「チイサキモノガ……ナマイキダアァァァ!!」


 メガドロンの咆哮が轟き、海水が爆ぜる。

 巨体が回転し、俺は海流ごと引きずられ、千切れそうになる。


 しかし、俺の身体は情報でできている。

 ちぎれた部分はすぐ再構築される。


 だから、限界まで食らいつける。


「行くぞ……メガドロン!!」


 進化の暴走が止まらず、全身から黒紫のオーラがあふれ出す。海が震え、嵐の中心がここに生まれた。


 そして、俺とメガドロンは、海底が砕け散るほどの衝撃を伴って、再び激突した。


 メガドロンとの殴り合いは、すでに戦いの域を超えていた。

 海中の水圧が震え、空気すら震えるほどの衝突が繰り返される。


「ガアアァァァァッ!!」


 メガドロンの咆哮と同時に、水流弾が嵐のように叩きつけられる。

 俺は触手を盾にするが、一本一本が砕け散るほどの威力だ。


「くっそ……速すぎ……!」


 触手を再生しながら反撃するが、メガドロンは巨体に似合わず瞬間移動めいた加速でかわす。

 そのたびに俺の身体の“情報子”が削れていく感覚があった。


「ソノテイド カァァ!!!」


 メガドロンの尾撃が炸裂する。

 海が割れるほどの衝撃。俺は海底まで叩きつけられ、身体が半壊した。


(クソ……でも、痛くねぇんだったな……俺、機関ねぇし……)


 思考がふっと軽くなる。

 同時に、内部で何かが“書き換わる”音がした。


 いや——音じゃない。

 情報そのものがうねり始めた。


 周囲のサメ、散った破片、魔力、水圧──

 すべての情報が俺の身体へ吸い寄せられる。


「……ん?なんだこれ……?」


 海水が黒く染まり、渦となり、俺を中心に巨大な球体を形成した。


 ⸻


 ■異変


 レッドもカイルもアリシアも、そしてメガドロンですら動きを止める。


「アルくん……?!」


「……テメェ、ナンダ……ソノチカラ……」


 メガドロンの目に、初めて“警戒”が浮かんだ。


 次の瞬間、俺の身体が爆発したように光を放つ。


 情報子が組み上がる。

 再構築される。

 再定義される。


 黒い触手が巨大化し、鱗のような情報装甲が並び、

 サメの特性と俺の因子が融合していく。


 海流が逆流し、海底が浮上し、嵐が止まった。


 そして——


 新たな姿『ギガドロン』


 黒と蒼の混成する巨大な影が、ゆっくりと姿を現す。

 俺の声は、海を揺らす低音となって響いた。


「擬態完了」


 全長はメガドロンを超え、

 触手は槍のように鋭く、

 情報子で構築された“絶対装甲”が揺れている。


 メガドロンが吠える。


「ナ……ナンダ……オマエ……!!

 メ…ガ…ド…ロン……ヨリ……デカイ……?」


 俺はその巨体を真正面から見下ろし、ニッと笑った。


「お前が“メガ”なら——」


 海が割れ、俺の声が轟く。


「俺は “ギガ” だ。」


 ギガドロンとなった俺は、全力でメガドロンに突進した。


 海が爆ぜ、世界が震え、

 新たな激突が始まる——。


 戦闘は一瞬で終わった。俺がメガドロンをその巨大な口ごと食いちぎった瞬間、海全体が静寂に包まれた。あっけない勝利だった――これほど圧倒的な力を見せつけた戦いも久しぶりだ。


 しかし、勝利の余韻に浸る暇もなく、俺の体内で何かがうずき始めた。情報子が悲鳴をあげている。無数の情報因子が、構造の再構築を求めて暴れまわる。これは――進化の兆しだ。


 全身に電流のような感覚が駆け巡る。触手が震え、体表の鱗が光を帯び、かつての形状すら変わっていく。俺は全身を使い、情報を再編成する。海水の圧力すら無意味に感じるほど、力がみなぎっていった。


「……これは……!」


 目の前の景色が歪み、俺の感覚が拡張する。海中の生物たちの存在、波の流れ、微細な水圧の変化、あらゆる情報が俺の中に流れ込み、体がそれに応答する。


 そして、ついに――


過度級怪物(ウルトラモンスター)……」


 超級怪物ハイパーモンスターだった俺が、その圧倒的な存在感をさらに上回る存在へと進化した。巨大化した体躯、増幅された触手、強化されたスキル群。今や俺は、情報そのものが生み出す究極の怪物となったのだ。


 メガドロンを貪り食った瞬間、俺の情報子は悲鳴をあげ、全身に異常が走った。身体が膨張し、触手が暴れ、意識は海の底に引きずり込まれるように──気絶した。


 だが、俺が動けなくても、状況は止まらない。淡々と『情報の秘書(アシスタント)』が分析と整理を始める。


 ⸻


『対象:アルセリオン』

『現在状態:意識不明、気絶中』

『進化段階:過度級怪物(ウルトラモンスター)に到達』

『前進化段階:超級怪物(ハイパーモンスター)


『獲得スキル情報:』

 ・破壊圧縮クラッシュ・コンプレッション:巨大生物を一撃で破壊する圧力攻撃

 ・情報同化データ・アブソープション:対象の情報を吸収し自身のステータスに反映

 ・深界冷絶(しんかいれいぜつ):周囲一帯の水温を急激に奪い生命活動を停止させる権能

 浪震咆哮(ろうしんほうこう):海中に衝撃波を放ち、対象を吹き飛ばす

 ・破砕顎(クラッシャー・ジョウ):咀嚼時、物理的耐性を無視して破壊する顎力


『分析完了。現在の対象は環境認識のみ可能。戦闘は不可能。復帰は情報子の安定化を待つ必要あり。』


 淡々と、しかし正確に、秘書は海中の異常を記録し続ける。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ