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3.アリスの理由。

ここまでオープニングです。

あとがきもお読みください(*'▽')





 ――拓海が寝静まった頃、九条姉妹はリビングにいた。

 彼女たちの両親が遺した家具の数々は、一般家庭ではまずお目にかかれない品ばかり。だがそういった物に囲まれても、二人の存在感は掻き消されたりしなかった。

 エレナはテレビの前に置かれているソファーに腰かけ、アリスに訊ねる。



「ところで、どうして彼だったのかな?」

「え……?」

「いや、なに。どうしてアリスは、彼の危機を知ることができたのか、とね」



 少し面白そうに言う姉に、妹はしばし考えた後に答えた。



「……タロットに、出てたから」――と。



 そして、取り出したのは一組のタロットカード。

 簡素な装飾の施されたそれを並べて、アリスは語った。



「前に、彼を占ったことがあったの。……そしたら、破滅の運命が見えた」

「なるほどね。だが、それだったら――」



 もっともらしい理由を並べる妹に、くすくすと笑って姉はまた訊ねる。



「何故、彼を占ったのかな?」

「あ、う……!」



 それに対して、アリスはあからさまに狼狽えた。

 彼女のそんな隙をエレナが逃すわけがない。



「占うということは、彼に興味があったのだろうね。しかし悪いが、アリスが誰かに興味を持つなんてずいぶん珍しいことがあるものだ。もしかして――」



 たたみかけるように話す姉に、妹は縮こまりながらも声を荒らげた。



「ち、違うもん! お姉ちゃんのイジワル!!」



 そして、そう叫ぶとリビングを飛び出していく。



「おやおや。イジワル、ときたか……これはまた、面白いことになったね」



 だがエレナはそれを追わず、一人で小さく笑うのだった。







「むぅ、お姉ちゃんのバカ……」



 廊下を歩きながら、アリスはぼそっと呟く。

 自身の姉ではあるのだが、こういったところは少し苦手だった。ただ彼女の指摘はいつも的確で、常に真実を捉えている。今回のことだって、拓海を助け出したのには理由があった。

 アリスは手に持ったタロットカードを見ながら、ふと思い出す。



『へぇ、面白そうなもの持ってるんだな!』



 入学して間もない頃。

 誰にも声をかけられない自分に、分け隔てなく声をかけてくれた彼のことを。それは引っ込み思案で口下手な彼女にとって、緊張こそすれど、嬉しいことに他ならなかった。

 あるいはもう、彼はそれを覚えていないかもしれない。

 それでも、アリスの胸の中にはずっと残っていた。



「あ、月……綺麗……」



 ふと窓の外に浮かぶ月を見上げる。

 美しい円を描くそれに照らされている少女の口元には、自然と笑みが浮かんでいた。もっとも、普段あまり笑い慣れていない彼女の口から出たのは。



「い、いひひ……!」



 少々、不気味な音ではあったが……。



 


オープニング終了です。

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