1.救出され、出会ったのは。
次回更新は、たぶん明日の昼かなぁ……。
――声の主は、おそらく女性。
ただ逆光になっており、その姿は影程度でしか確認できなかった。何より意識が朦朧としているため、まともに見ることなんてできない。それでも、人影が一つではない、ということは分かった。
声を上げた女性の隣にいるのは、小柄な少女だろうか。
「なんだぁ? 女が二人で、何の用だっての!」
そんな彼女たちに、借金取りの男は下卑た笑いをしながら言う。
すると背の高い方の女性が、こう答えた。
「貴方たちの目的は債権の回収と聞いていますが、間違いないですか?」
「あ……?」
男は不審そうにして、手に持っていた鉄パイプを回す。
肩に担ぐと嘲笑うように――。
「だったら、何だってんだ? あぁ、まさかアンタらが肩代わり――」
「私共が肩代わり致しましょう。これまでの利息を含め、すべて」
「…………なに?」
冗談を口にしようとした瞬間だった。
それを遮って、女性が凛とした口調でそう宣言したのは。
男はそれを不審がっている様子だったが、それは俺も同じだった。だって向こうにいる女性たちは俺の借金と、まるで関係がないのだから。
どうして、と理由を考えていると男が叫んだ。
「はっ……!? 全部で二億だ! そんな金額、すぐに用意できるわけが……!」
「ならば、二億五千万で。小切手でも良かったでしょうか?」
「な、なんだと……!?」
しかし、それを断つように女性が歩み寄って男に紙切れを手渡す。
借金取りたちはそれを見て、驚き小さく悲鳴を上げていた。いったいどうしたというのか、彼らは信じられないといった様子で何かを話し合っている。
すると、そんな男たちに女性は強くこう告げた。
「差額は貴方たちの懐にでも仕舞いなさい。そして、これ以降――」
威風堂々、真っすぐな声で。
「金輪際、明坂拓海さんにかかわらないと約束しなさい!」――と。
◆
「ん、うぅ……?」
次に俺が見たのは、知らない天井だった。
やけに豪華で、綺麗なそれ。おおよそ一般人が立ち入れないホテルか、施設のもののように思われた。寝かされているベッドは全身を軽く包み込むほどフカフカで、いつまでも横になっていたいと感じてしまう。しかし、そうは言っていられなかった。
「ここ、は……どこだ?」
どうやらあの倉庫での一件の後、気絶したらしい。
記憶が曖昧で、ひどく頭痛がした。ただ少なくとも確実なのは、俺はあの二人の女性に助けられたということ。そして、ここは――。
「ようやく、目が覚めたのですね」
「え、その声は……」
そう考えていると、あの声が聞こえた。
半身を起こして見ると、そこには美しい女性が立っている。肩ほどで切り揃えられた金色の髪に、凛とした顔立ち。青の眼差しは鋭く、目元にはホクロがあった。スラリとした身体つきをしている彼女が着用しているのは、高級そうな黒のスーツ。
俺はそんな女性の名前に、どこか覚えがあって――。
「……え、貴女はまさか?」
「自己紹介がまだでしたね、拓海くん。私の名前は九条エレナ」
「く、九条グループの代表……!?」
そこでようやく、俺は相手の素性に気付いた。
彼女の名前は九条エレナ。日本最大の企業、九条グループの代表だった。テレビにもたびたび出ていたし、政財界にも繋がりがあったりする大物である。
そんな人がどうして、と考えていると――。
「私のことは、良いのです。それよりも――」
「え……」
「いつまで隠れているのですか、アリス?」
エレナさんは、ドアの方を見て言った。
すると、そこには――。
「あ、あうぅ……」
長い金髪で顔を隠し、口元しか確認できない少女の姿。
小柄な彼女に、俺は見覚えがあって……。
「もしかして、九条アリス……さん? 同じクラスの」
そう訊ねるのだった。
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