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処の境界 拮抗篇  作者: 成橋 阿樹
第二章 陰と陽
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第35話 反剋

 回向の足が、力強く地を踏み締めた。

「炎を操るのは、得意なんだよ」

 手に握られた檜扇を大きく振ると、新たに炎が上がり、炎の中に黒僧を捕らえた。


 黒僧は、回向が放った炎を吹き飛ばそうと、呪文のようなものを唱えていたが、炎の勢いは衰える事がなく、回向の力が上回っているようだ。


 羽矢さんと回向が立ち上がり、黒僧と対峙する中、僕は蓮の元へと戻る。

「蓮……!」

 地に仰向けに倒れたまま、目を開けない。僕は蓮を呼び続けた。

 僕の声に反応を示したのは明鏡で、身を起こそうと体を動かしたが、起き上がる事が出来ないようだ。深く息をつき、そのまま地に体を預けていた。

 ……どうしよう。

 黒僧と対峙している中、羽矢さんを呼ぶ事は出来ない。

 蓮の額から滲む血に、そっと手を触れた。

 蓮の表情が僅かに歪む。僕が傷に触れた事で、痛みを感じたんだ。

 僕は、慌てて額から手を離そうとした瞬間に、蓮の手が僕の手を掴んだ。

「蓮……」

 うっすらと目を開けた蓮は、僕に言う。

「……心配……するな」

「……蓮……」

 蓮は、深呼吸をすると、目を閉じてしまった。



「向上……! っ……!」

 回向の声が響き、僕の目線が回向へと動いたが、檜扇を北東へと振った回向は、激しく咳き込み、膝をついた。

 ポタポタと口から血が落ちるのが見えた。

「回向」

 羽矢さんが回向を支え、回向は羽矢さんの手を借りて再度、立ち上がる。

 受けた衝撃が大きかった事で、使う力が更に体力を奪うのだろう。

 傷を負った中では、苦闘も苦闘だ。

 黒僧には生身の体がないだけに、痛みなど感じはしないだろう。

 成仏出来ればこの敵意も執念も消えるのだろうが……黒僧自身が望んでいないのが分かる。


「……思っているよりも痛手が大きいな……」

 目を閉じたまま呟くように、蓮はそう言った。

「熱いんだよ……」

「蓮……?」

「背中に伝わる地の熱が……異様に熱い」

「え……異様とは……」

 蓮は、重たそうにゆっくりと半身を起こした。

「蓮……無理は……」

 思っているよりも痛手が大きいって……今、無理をしたら……。

 だけど……羽矢さんも回向も……。

 半身を起こすと蓮は、また深呼吸をすると、こう僕に話した。


「回向が霊山中腹から門を開いたが……黒僧に流れを変えられたんだ。流れを変えられた事で、その力が放出する事が出来ずに籠った事で、地を熱くさせている。回向が力を使う時の放出される力は、本来ならば、神仏の力で自身の力を増幅するが、それが力を使う事によって自身の体力を消耗させている。循環が乱れちまったようだ。このままじゃ……力を使えば使う程、自身が引き出した力に飲まれちまう」

 力を振り絞るように立ち上がる蓮を僕は支える。

「蓮……」

 心配そうに見る僕に、蓮は言う。

「大丈夫だ……依」

 深呼吸を繰り返す蓮。痛手が大きいと言っていた事が、不安を煽ったが。


「回向……!!」

 大きく響いた蓮の呼び声に、回向が振り向いた。

 疲労感を隠せない、苦しそうな表情の回向。その表情は蓮も同じだった。

 回向に向けて言う蓮の言葉に、僕の驚きは隠せなかった。


「俺たちがここまで傷を負ったのも、回向……お前に因がある。それならば……」


 ……それならば。

 明鏡が言っていた事とは……まさか……。

 蓮の指が回向へと向いた。

 その様子に羽矢さんの表情が、厳しくも変わる。


『その均衡が崩れたとしたら、あなたも彼と敵対する事にもなる訳……か? それはあなたも彼も理解しているはず。それならば……』



「覚悟しろよ、回向。お前を……反剋する」


 蓮は、何かを描くように指を動かし、パチンと音を立てて指を弾いた。

「蓮……!!」

 羽矢さんの声が大きく響いたが。


 蓮は、回向へと向けて呪を放った。

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