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処の境界 拮抗篇  作者: 成橋 阿樹
第一章 尊と命
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第42話 本意

 本体を……破壊する……。

 そう言った蓮と羽矢さんは、同時に床を強く踏み締めた。


「いいか……羽矢」

「ああ、いつでもいいぞ、蓮」

 蓮と羽矢さんは、じっと前を見据え、身構えた。

「じゃあ……」


 蓮の手が前方へと向く。


「解除する」


 蓮がそう口にし、結界が解かれる。

 結界が解かれた途端に、もの凄い風圧と共に、大量の破片が土埃を交えて飛んできた。

 蓮と羽矢さんは、大きく腕を振り、飛んでくる破片の方向を左右に変え、ぶつかる事なく擦り抜ける。


 暫くの間、その状態が続いた。

 僕たちを間に、左右に飛ばされる破片が、壁に当たってドンドンと大きな音を立てる。

 あまりにも大きな音に壁を見ると、破片は壁に突き刺さっていた。

 次々と飛んでくる破片が、幾つも壁に突き刺さり、壁まで破壊するような勢いだ。


 ……こんなのが当たったら……。

 ぞっとする僕だったが、蓮と羽矢さんは、飛んでくる全ての破片を、左右に吹き飛ばしていた。


「体力勝負だな……蓮」

「ああ……倒れるなよ、羽矢」

「お前もな」

「ふん……回向なら、こんな事くらいじゃ息も切れないんだろうが、あの馬鹿……まだ高宮を見つけられねえのかよ。それよりも、こんな大きな音が響いているっていうのに、様子を窺いにも来ないとは、まったく……いい度胸してやがる」

「まあ、そう言うなよ。回向だって必死なんだから。まあ、こっちを片付けておけば、蓮……あいつに恩を着せられるぞ?」

「成程、それは悪くない話だ」

 二人の会話には余裕が見られるが、表情は至って真剣だ。


 飛んでくる破片は止む事なく、勢いを増し続ける。

 こんな勢いでは、近づく事も出来ない。

 ……キリがない。

 そう思ったが、次第に飛んでくる破片の量が減ってきていた。


 蓮が呟く。

「もう少し……」

 蓮の手が大きく動く。

 どっちの力が働いたのか、風圧が更に強くなった。

 また何かが飛んでくる。

 だが、それは壁に刺さる事なく、床に転がった。

 脇を転がっていくものに、目線が向いた。


 ……これ……骨……。


 バラバラと、脆くも崩れた骨が、集まるように床に転がっていく。

「……もう少しだ」

 蓮のその言葉に、棺の中にあった骨を、こちら側に引き寄せているのだと分かった。


 蓮の笑みを交えた声が響く。

「来た。羽矢……!」

「任せとけ……!」


 羽矢さんの手が何かを掴むように動いた。

 その瞬間に風が治まり、破片も飛んでくる事がなくなった。


「捕まえた」

 そう言ってクスリと笑う羽矢さんは、一欠片の骨を手にしていた。

 ……喉仏だ……。


「さて……」

 嵐のようだった状況が治まり、蓮が先に穴へと向かった。

 僕と羽矢さんも蓮の後について、穴へと向かう。

 蓮は、大きく開いた穴の中を、屈みながら覗き込んだ。


 クスリと笑う蓮の手には、宝剣が握られていた。

 ……いつの間に……。

 だけど、破壊されていない。

 一体……どういう事……。


 手にした宝剣を見せるようにも、穴の中を覗き込みながら、蓮は言った。


「早くしろよ。折角の機会だからな……。少々、荒れてしまったが、『殿(あらか)』に招待してやるよ……お前も殿上には興味あるだろ? だから早く上がって来いよ……」

 続けられた蓮の言葉に羽矢さんは、少し呆れた顔を見せて、ただ驚くだけの僕を振り向くと、小首を傾げて笑った。


「紫水 明鏡……?」

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