第41話 苦闘
バリバリと割れる音がして、棺が開いた。
割れた勢いで吹き飛んでくる棺の破片が、僕たちを襲う。
蓮の衣の袖が大きく振られると、目前で破片を押し留め、そのまま下へと叩き落とした。
それでも勢いは治まる事はなく、強い風圧が僕たちを吹き飛ばした。
蓮が僕を庇うが、吹き飛ばされた勢いは止められず、羽矢さんと共に壁に叩きつけられる。
ドンッと鈍い音が響いたが、僕にその衝撃は伝わらなかった。
「蓮……! 羽矢さんっ……!」
「……俺は問題ない……蓮、生きてるか」
「当然だろ……問題ない」
そう答える蓮だったが、ゴホッと咳き込むと口から血が溢れた。
「蓮……!」
……僕を庇ったからだ……。
僕が……ここにいたら足手纏いなだけでは……。
僕を守りながらでは、蓮の負担が大き過ぎる。
僕を庇えば今のように、蓮に加わる衝撃が大きくなるだけだ。
歯を噛み締める僕に、蓮の手が僕の頬へと伸びる。
「言っただろう。心配するな……だが、俺の側から離れるな……と」
笑みを見せる蓮に、僕は言葉を返せず、俯いた。
「依」
返事のない僕に、蓮の声がこんな時でも優しく響く。
僕の目から涙が零れ落ちて、頬に触れる蓮の手を濡らした。
「離れるな……絶対にだ」
「……はい」
蓮は、血を拭うと、羽矢さんと同時に立ち上がる。
僕は、二人の背後へと回され、その背中を見つめた。
「……どうする、蓮。封印という手段もあるだろう?」
「高宮の父親のようにか?」
「うーん……そう聞くと気が重いな。総代だって封印したくてした訳じゃないんだろうしな」
「いや……」
蓮の手が棺の破片を吹き上げる穴へと向いた。
「期待が持てるなら封印するが、そんな時は迎えられそうにないな。封印したとしても、一時凌ぎにしかならないだろう。媒介となる形代は、明鏡が持っている訳だし、本体をどうにかしないと、封印なんか直ぐに解かれちまう。羽矢……お前こそ、浄界という訳にはいかないんだろ?」
「俺の導きは、はっきり言って皆無だな」
「なんだよ? 随分とあっさり答えるな」
「よく言うよ。分かっている事じゃねえか。もう道は決められているんだよ。そもそもの領域が違う……俺の法では領域外だ。説き伏せられねえ。霊山の時と一緒だな」
「……成程。誹謗正法という訳か」
「そういう事。だからほら……」
羽矢さんは、困った顔を見せながら前方を指差した。
羽矢さんへと向かって、破片が大量に飛んできている。
「はは。敵意剥き出しって訳ね……」
蓮の指が空を切る。
破片がぶつかる寸前に、結界が張られた。
それでも次々と破片が飛び、結界にぶつかり続ける。
「結界が保てねえな……時期に破られる。これじゃあ、近づきたくても近づけねえ。羽矢、どうせなら狩るか?」
「狩ってどうするんだよ? 言っておくが、あれ……魂でもなんでもねえぞ」
「明鏡の言っていた思念というやつね……ただの思念ならまだしも……これは厄介だな」
「ああ。それが本体に込められているんだからな。それが意思となって、霊力も自在なんだろう。本体が『器』という訳だ」
「本体が器ね……じゃあ仕方ねえな」
「ああ、仕方ねえだろ」
蓮と羽矢さんの足が、ドンッと床を強く踏み締める。
穴から黒い煙が噴き上がった。
一点を見据え、二人の声が同じ言葉で重なる。
「「破壊するしか方法はないな」」




