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処の境界 拮抗篇  作者: 成橋 阿樹
第一章 尊と命
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第18話 無縁

「だからなんだ」


 表情は真顔だったが、蓮はあっさりとそう返した。

 冷たくも言い放たれた言葉にも思えるが、それは自分には関係のない事だと突き放すものではなかった。

 高宮は、少し困ったような表情を見せてはいたが、蓮が続けるだろう言葉に期待しているようだった。


 高宮と真っ直ぐに目線を合わせながら、蓮は言葉を続ける。

「墓が暴かれるのは、今に限った事じゃない。それを懸念し、散骨でもして、骨も残すなと言い遺した者もあったはずだろう。高位であったなら尚の事だ」

「ふふ……問題にもならないと?」

 高宮の目線が、蓮の思考を探るようにも動く。

 蓮は、ふっと笑みを漏らすと、こう答えた。


「問題なのは、掘り起こされた事以前に、簡単に(みささぎ)に入れた事だろ。墓が掘り起こされましたって、結果だけ言うけどな、それは掘り起こされた後に気づいているって事だろうが。遅いんだよ」

 蓮の言葉で何かに気づいたように、高宮の目がピクリと動く。

「その物言い……何か……起きましたか?」

「はは。流石は勘がいいな」

 そう言うと蓮は、羽矢さんへと目線を変えた。

 羽矢さんは、少し不機嫌な表情で、高宮に答える。

「お前……紫衣を纏っている奴、心当たりないか」

「紫衣……ですか……?」

「ああ。回向は察しているようだが、居場所までは分からないようだ。俺の使い魔に追わせてはいるが、お前を捕まえた時みたいに簡単じゃねえ」

 羽矢さんの言葉に高宮は、顔を引き攣らせる。

「藤兼さん……私は簡単に捕まった訳ではなく、追って来て貰いたかっただけですが?」

「お前の話は、この際どうでもいいんだよ」

「だったら、引き合いに出さないで下さい。悪意を感じますよ」

 高宮は、呆れたように溜息をついた。そして、表情を変えると、羽矢さんに問う。


「それで……その紫衣とは?」

「残っていないか。国の関わりがあるだろう。紫衣を着ける事の勅許(ちょっきょ)を与えた記録だ」

「分かりました。この座に就いて、まだ日も浅いので詳しくは知りませんが……瑜伽神祇伯であれば、直ぐにお答え出来るとは思いますが、生憎、墓が掘り起こされた事で、そちらに向かわせてしまいましたので」

「ああ、じゃあ、俺たちもそっちに行く。な? 蓮」

「そうだな。その方が早いな。そもそもお前も、俺たちをそっちに向かわせたかったんだろう?」

「まあ……そうではありますが、ちょっと待って下さい。墓が掘り起こされた事と、その紫衣……繋がっている話なのですか?」

 高宮の言葉に、羽矢さんが答える。

「おそらくな。全ての神社、寺院に立ち入る事が出来る総代が、そこに気づかないとは思えない。社も堂もないと答えた方が自然だろ。それならば、紫衣を身につけられるのは逆に不自然だ。どういった経緯かは知らないが、紫衣が引き継がれていると考えた方が納得がいく。ジジイもある程度の事は知っているようだったが、継承はある時期で途絶えたと。それ以降、何処でどうやって誰に受け継がれたかまでは分からない」

「それで……何故、繋がると言うのですか……?」

 怪訝な表情を見せる高宮。それでも何やら思う事はあるようだった。

「門が開かれていたんだよ。その門は……」


 羽矢さんが答える言葉に、高宮が思った事が重なったようだ。

 ハッとした顔を見せる高宮に、羽矢さんの言葉が流れる。


「死者の置き場所だ」

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