続✡我こそは召喚魔術師 助手として従えている小悪魔系美少女が反乱を起こしました?!
今日も今日とて屋根裏部屋で、幼馴染みの美少女(正体は小悪魔ちゃん)と…
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…こんな調子で、祖父より受け継いだ(古本に書いてあった)悪魔召喚の儀式を、8年間毎日欠かさず続けてる。
その目的は、非常に単純明快だ。
マナはクラスの人気者、周囲から悪い虫を追い払う。
召喚主たる俺だけが独占するには必要不可欠だから――
今日こそは強力な悪魔を呼び出す!
「ねぇ。も~なぁんも出てこない、も~やめようよ」
俺の呪文詠唱を、助手の美少女が遮る。
人間離れしてる、世界一カワイイのだ。
マナを独占する唯一の口実、手放すものか!
「またそれか。手伝うってのは嘘だったのか」
「嘘じゃない! 契約どおり付き合ってるよ」
「契約?」
マナは盛大に溜息をついた。
床には魔法陣が描かれた原稿用紙。
俯いて、しげしげと見詰めている。
前髪に隠れ、表情は窺い知れない。
「8年前に召喚されて名前を聞かれた。真名を手にして使役関係を締結するか尋ねたよね?勘違いして8年マナって呼んでる、それ覚えてる?」
「そんな意味だったんだ?!」
「やっぱ寝たフリだったのね」
唯一の能力【 狸寝入り 】が看破されてた?!
つか俺、誘導尋問に弱すぎ!
「1日8時間以内且つ週40時間って原則があるの」
「なんの原則?」
「従魔の契約」
従 魔 。
唐突に正体バラして時間制限があると言い出した。
8年引き留めるには弱すぎる口実、自覚はあった。
では、これにて。
「……おしまい?」
「契約期間中は原則、解雇できないのよ」
「そうなの? 冬休みでオーバーした?」
「今月ギリッギリなの」
俺の口実とかじゃなくて。
契約の更新・継続が無理。
終わった――
「 契 約 転 換 し て よ 」
「は?」
「ここ読める?」
「ルーン文字は、ちょっと」
「 無 期 契 約 へ の 転 換 」
「はい。 ……契約転換?」
「5年を超えたら従魔側から転換を申し込める、召喚主には応じる義務があるの。魔王軍から登録型派遣で有期労働契約を締結してて、通算契約期間が5年を超えた3年前に無期転換申込権が発生したよ?8年間、悪魔召喚の助手として尽力してきましたー! ……だよね?!」
厨2には難解単語が盛り沢山。
わ か ん な い 。
「わかりやすく言うと?」
「契約社員から正社員って感じ」
「正社員雇用すると、違うの?」
なっ、なんだ?
かなり怒った、顔が真っ赤。
そりゃそうか。
契約書は丸写しで、内容を知らなかった。
今現在も、契約転換後にどうなるのかも。
召喚主の自覚すら無かった。
普通、怒るか――
「……ゴメン」
「ゃ。そ、じゃなくさ、あくまで義務!つもり無かったんなら言って?冬休みだけ特別とか、残業扱いは? 魔王さんホラそのへんアバウトだし」
「魔王様に交渉すんの?!」
「ちと、年齢的にも、ね?」
「年齢。何歳以上とかある」
「それはないけど。魔族的には終身雇用だから……」
な ッ な ん だ っ て ぇ ―― ?!
「 しよ? 今スグ契約転換! 召喚主的には願ったら叶ったもん! 」
マナが3年前に用意したという用紙を受け取った。
書式が随分変わった、どう見ても魔法陣じゃない。
「ルーン文字わっかんないなぁ、なんて読むんだ?」
「え?! それは……う~ん、なんだったかなぁ?」
「これ本当に雇用契約書なのか?」
証人2名による署名・押印があった、これに署名・捺印する。
我々の戸籍謄本、学生証と健康保険証を持参し異世界に行く。
役場窓口に提出するものらしい。
「これで、マナって読むのか……」
書類をスルリと仕舞い込む鮮やかな手際に、ハッとした。
そういえば、この娘の名前を俺は知らない。
使役関係は締結されていなかった――――?
上目づかいに見上げてきたマナは「当たらずとも遠からず?」と、小悪魔としか言いようのない微笑みを浮かべて、ペロッと桃色の濡れた舌先を覗かせた。