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召喚魔法の正しいつかいかた  作者: 一片
2章 召喚魔法使い、ダンジョンの街へ行く
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第49話 知らない風景

 


「さて、これから街の方に行くが……軽くおさらいだ。この街とストリク、王都との違いについて……一番の違いはダンジョンだな」


 出かける前に、シアレンの街についておさらいをしておこうと言ったセンが説明を始める。

 三人はセンの言葉を聞き漏らすまいと真面目にセンの事を見ている。少し慎重すぎるきらいがあるが、センが自分達の事を本気で心配してくれていると理解している為、適当に聞き流す者はいない。


「といってもダンジョン自体はまだ俺達には関係ない。ダンジョンよりも気をつけなければならないのは、探索者だ」


 センがそう言うと三人は真剣な表情で頷く。


「ストリクには傭兵ギルドがあって、数は多くなかったが傭兵がいた。探索者はそいつらと似たような雰囲気らしいが、数が違う。街を歩いて探索者とすれ違わない事はまずないだろう。そして荒事を生業としているだけあって荒っぽい者も少なくない。基本的に街にいる人間は、武装していなくても探索者だと思って接した方が良い。三人なら問題ないと思うが、喧嘩を売ったりは絶対にしない様に」


「「はい」」


(まぁ、この三人が喧嘩を売ることはないだろうが……危険に巻き込まれることはあり得るからな……)


「危ない場所には近寄らない、危険を感じたら大声を出して逃げる。俺が傍に居る時は、危険を感じたら問答無用で逃がすからそのつもりで。逃がす場所はエミリさんの家だ」


 セン達は全員エミリの家の一室で召喚している為、送還した場合一気にそこへ飛ばされる。

 エミリには許可を貰い、緊急事態の場合三人を保護してもらうように頼んであり、個人的な危険程度であればそれで事なきを得るだろう。

 街全体が危険と言った場合は、エミリの家にいる人間も含めて王都へと転移する。

 センが無事であれば、だが。


「わかりました」


 ラーニャが真剣な表情で返事をするのを見て、センは少し安心する。


(危険はしっかりと認識してくれているみたいだな。後は……)


「ダンジョン、そして探索者以外に今までと違うのは……獣人や半獣人の存在だな」


 獣人、そして半獣人とは……二足歩行する獣や体の一部に獣の特徴を持っている人型の存在だ。

 魔法王国ハルキアは完全に人族のみで構成された国家で、獣人は風当たりが強く、国内で獣人を見ることは無かった。

 しかしシアレンの街はハルキアの東側に隣接しており、シアレンから東に行くとラーリッシュ王国。更にその東側には獣王国フィルモアが存在している。

 獣王国という名の通り、その国の王は獣人であり、国民の大半が獣人で占められている国だ。

 ハルキア以外の国では獣人は珍しくないのだが、ハルキアでその存在を見かけることが殆ど無いのは、偏に魔法適正の低さがそのまま種族差別に繋がっているからだ。

 基本的に獣人は身体能力に優れ、魔法があまり得意でない傾向がある。

 それゆえ、魔法王国ハルキアでは獣人を蔑む風潮があるのだが……それは偏にコンプレックス故の物でもあった。

 何故なら、魔法王国を名乗りながらも、人族である彼らよりも魔法適正に優れた存在がいる。

 その種族を魔族と言う。

 魔族の存在が魔法国家としての矜持を著しく傷つけており、その反動で自分達よりも適正の低い獣人を攻撃する。センにしてみれば実に下らないプライドだが……国がそう主導しているのだから一筋縄ではいかない問題だろう。


「相手も普通の人だからな。必要以上に身構える必要は無いが、俺達にとっては普通の事でも、相手にとっては侮辱となる様な文化があるかも知れない。注意はするようにな」


「「はい!」」


「後は……まぁ、言うまでもないと思うが挨拶はしっかりと。家も買ったことだし、それなりに長くここには居るつもりだからご近所さん以外とも仲良くだ」


「「はい!」」


「よし、じゃぁ出かけるか!一先ず今日のご飯と調理器具。洗濯や水浴びに必要な道具を買おう。薬関係は定期的にハーケルさんの店に行くから買う必要は無いけど、万が一に備えて場所はしっかり確認するから覚えておいてくれ」


 センの話に真剣な表情で返事をした三人を見て、センは椅子から立ち上がる。


「よし、じゃぁ、出かけるとするか。晩御飯は最後に買うから、気になった物があったら覚えておいてくれ」


「わかりました!」


(ラーニャは食事系の話の時……反応の早さが違うな)


 三人の中で一番良く食べるラーニャは食事に対して非常に貪欲なようだ。




「馬車の中から見えてはいたが……やはり多いな」


 街を歩きながらセンがぼそりと呟くと、隣を歩いていたニコルとトリスがセンを見上げる。


「獣人の方がですか?」


「あぁ、こんなことを言ってはいけないのかもしれないが……凄く不思議な感じだ」


「……私も初めて見るから、面白い」


 トリスの言葉に頷いたセンはあまりきょろきょろとしないようにしながら通りの様子を眺めた。

 今セン達が歩いているのはこの街の中心とも言える大通り。

 道幅はかなり広くなっており、横に二十人くらい並んだとしてもまだ余裕がありそうだった。


(軍が通ることも考えられているのかもな)


 通りの左右には様々な店舗が並んでおり非常ににぎわいを見せているが、そこにいる多くが獣人であり、ストリクや王都とも違った街の雰囲気を見せている。

 更に多くの人間が武装しており、センは大きな刃物を持った相手とすれ違うたびに少し緊張していた。

 そして、センが驚いていたのは獣人や武装だけではない。


(平均的なレベルが高い……一般人と思しき人でも5から7。武装している奴等に至っては10以下なんて殆ど見当たらないぞ……11から17くらいか。ストリクでケリオスに紹介して貰った傭兵や衛兵が7から10あたり……一番のベテランって奴が13だった。それに比べて、この街では俺から見ても新米って感じの奴でもレベルが10……レベルがどのくらい強さに反映されるのかはまだ分からないが……恐ろしい街だ。護衛とか雇いたいな)


 そんなことを考えながらセンが歩いていると、見覚えのある雰囲気の店を発見した。


「あ、センさん。あそこ薬屋さんじゃないですか?」


「あぁ、それっぽいな。ハーケルさんの店に雰囲気が似ている」


 店先に吊るされた薬草やあまり日が差し込まない様にしている所が、ストリクの街に会ったハーケルの薬店にそっくりだった。


「多分間違いないだろうが一応確認しておこう」


 少し離れた位置にある店を目指しセン達は移動する。

 ハーケルの店に比べて人の出入りが多いらしく、セン達が店に近づく間にも何人かが店の中に入り、また別の者達が店から出て行くのが見えた。そのいずれもが武装した者達なので、恐らくあそこは薬屋で間違いないだろうとセンはあたりをつける。


(ポーションの効果は凄いからな。ダンジョンで魔物と戦う探索者にとっては必須の物だろう。下級ポーションでも骨折程度までならすぐに治せるし、中級ならかなりの重傷であっても治せる。上級に至っては四肢の欠損も癒せるらしいが……材料を採れることが滅多にないらしく、ハーケル殿も数回しか作ったことがないと言っていたな)


 ポーションの効果について思いを馳せながら、センは店の様子について口に出す。


「探索者専用の薬屋なのか?さっきから出入りしているのがそれっぽい連中ばかりだな」


「行くのは止めますか?」


 センの呟きを聞いたニコルが問いかけてくるが、センはかぶりを振る。


「いや、少し様子を見てみよう。中に入って一般向けの店がないか聞いてもいいしな」


「なるほど、わかりました」


 ニコルが頷くと同時に店の扉が開かれ、またしても武装した数人の男女が店から出て来る。

 店まであと少しと言う距離まで近づいていたセン達は、彼らの退店と共に店の中から独特な香りが漂ってきていることに気付き少し笑みを浮かべた。


「ハーケルさんのお店と同じ匂いがしますね」


「……苦い」


 ラーニャが苦笑しながら言い、トリスは嫌そうな表情をしながら鼻と口を押える。


「薬屋で間違いは無さそうだな。とりあえず入ってみるか」


 センの言葉に頷いたラーニャが扉に近づき開こうとした所、内側から勢いよく扉が開かれた。





遂に人とは違う種族が出てきました。

まぁ、話題に上っただけですが……。


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