9話 鬼との戦闘
叩き、殴り、燃やす。
その暴力の嵐で、この厳しい魔界の戦いを尽くねじ伏せてきた。
百鬼は己の強さに絶対的な自信を持っていた。
生まれつき強力な力を持つ鬼という種族の中でも、敵はいなかった。
まだ見ぬ強さを求め村を飛び出し、魔王軍に入った。
そこで見た配下四天王は確かに強力だったが、届かぬ距離ではなかった。
いずれは追い付き、追い越す自信があった。
いつだって敵はいなかった。
頭を狙って斧を振るう
当たらない
横薙ぎも、蹴りも、全ての攻撃が当たらない。
おかしい···有り得ない····。
何度斧を振るっても、掠りすらしない。
·····読まれている。
攻撃の軌道や無意識のパターン、予備動作。
自分の戦闘に関するありとあらゆる"癖"を知られている。
·····ただの研究者じゃなかったのか?
自分らしからぬ感情が横切る。
このままでは不味い。
敗ける·····
生まれて初めて味わう己の無力感に戸惑いながらも斧を振るい続ける。
あの技を使うしか無い·····。
部下が横薙ぎを避けたノアの着地を狩る·····が、当然当たるはずもなく殴り飛ばされる。
気づけば、既に部下は1人も残っていなかった。
男が白銀のローブをはたいて口を開く
「俺はね、空手をやってたんだよ」
何を言っているのかは分からないが、何故か怒りを覚える。
この男の余裕に、強さに、一矢報いたい。
「奥義・鬼炎万焼ッ!!」
大きなビーム状の炎が地面を抉る。
だが既に男はその延長線上にいなかった。
「そうそう、そういうのが見たかったんだよ。」
突如後ろから声が聞こえる
「お返しだよ、地獄の業火」
一瞬で展開された燃え盛る炎の中で、鬼は意識を失った。
***
「·····やりすぎたかな?」
黒焦げになって倒れている鬼を見ながら呟く。
カッコつけて魔法を放ったが調節し忘れたようで、周辺の荒野はまだ燃え続けている。
辺り一面火の海だ。
いやーそれにしても四天王に会えるとはなー·····。
なんかゲームのより弱かったけど。
·····?
百鬼は四天王の1人だし最後に放った必殺技も使っていたから同人物、同鬼物だと思うんだけど。
でもなんか違うんだよなぁ·····。
地面に横たわっている鬼を観察する
うーん···なんか俺の知ってる百鬼より幼いと言うか未熟というか···。
倒れていた鬼が起き上がる
あ、起きた·····。
「あー···寝起きで悪いんだけど、今って何年?」