8話 地上(シャバ)と鬼
堂々と佇む大きな門。
見る者に威圧するかの様な黒と紫の入り交じった厳しい扉。
両端には通る全ての者を睨む仁王の様な木像。
魔界の入口、地獄門。
重い扉が開くと、1人の男が顔を出す。
「いやー、ビビったぁ~。」
まさか通行料を取られるとは····。
持ってるお金が魔界の通貨かどうか分からないので魔力で支払う事にした。
本当は通行証が必要なのだが俺は魔王軍側の研究者として顔を知られているらしく見逃してくれた。
·····そう言えば魔王の事忘れてた。
追い掛けて来ないよね?
·····大丈夫だよね?
まぁともかく門を抜けた事だし、地上に出れば追い掛けてこないはずだ。
地上なら顔も知られてないだろうしな。
それにしても何も無いな···。
景色を見渡す。
ここは魔界と地上の境界線、いうなれば階段の踊り場みたいな所だ。
景色はだだっ広い荒野で、魔界と大した差は無い。
だが魔界と違い、普通の地下なので健康的(?)だ。
ちなみになぜ明るいかは不明だそうだ。
遠くに見える微かな光が漏れる穴を目指す。
あ、そうだ!
せっかくステータスが上がったんだから少し試してみるか。
感覚で分かるが、今の俺の素早さは 3136 。
100メートル走るのに1秒かからないかもしれない。
走り出そうとしたその時、俺の前に大きな影が降り立った
***
五つの大きな影が荒野を駆ける
「アイツか·····」
五つの中でも一際大きな影が立ち止まる
赤みの強い肌、2メートルを優に超える体躯、ざんばらの頭髪。
·····鬼、それも上位の···。
男の名は百鬼。
軍の鬼の頂点、[鬼首]でありながら魔王軍最高幹部、次期四天王の有力候補の1人である。
彼の仕事は軍全体の監視と訓練の指導。
また、軍隊から逃げようとする脱走兵への制裁も請け負っている。
4人の部下に目配せして地面を蹴る
あっという間に距離を縮めて標的を取り囲む
最後の死刑宣告だ。
「お前がノアだな?魔界脱走の嫌疑で魔王城への出頭を命じる」