5話 腹の底から····
こちらを見下ろす蛙····。
デカいな····軽トラぐらいはある。
❨オオワセンガエル❩は隠れボス···いうなれば裏ボスだ。
ダンジョンである《底なし沼》の最奥のボス❨オオノセンガエル❩と対をなす存在。
全長3メートル程の大ガエルで、前足が三本生えている。
まぁよく中華街の骨董屋で売ってるカエルの神様を紫色にしたみたいな感じだ。
その体色から分かるように、通常攻撃の他に毒攻撃を頻繁にしてくる厄介な敵だ。
「ゲロゲロ」ボシュッ
オオワセンガエルの周囲の空気が紫に染まる。
この前フリは毒のばら撒きか····。
淀んだ風に乗って毒が周りに散らばる。
さて、バトル開始だ!
カエルに向かって一直線に走る。
オオワセンガエルが大きく息を吸う
「危ねっ!」
今さっき俺がいた所を毒の突風が吹き抜ける
ん?まてよ·····?
俺ってHP無限だったよな?
なら毒受けても平気なんじゃ?
カエルが再び口を開く。
さっきより近づいたからか、口の中がよく見える。
受けよう····。
たとえ毒が苦しくても耐えよう·····死にはしないのだから。
次の瞬間、毒を受ける覚悟を決めた俺の目に映ったのは顔目掛けて猛スピードで飛んでくるカエルの舌だった。
パクリッッ
◇◇◇
暖かい暗闇で目を覚ました·····。
水に浸かっている様なのでとりあえず立ち上がる。
暖かい·····
うん····。
喰われたね。
·····うん。
オレ、カエルニクワレタ·····シヌ?
ZANねん死にませーん!
FJMッ!! ☆FU・JI・MI☆!!
おっと、いかんいかん·····危うく恐怖に押し潰される所だった。
おぇーヌルヌルだ、なんだこれ?
oh·····胃液か···。
服はともかくとしてリュックの中までが塗れると持ってきた食糧がパーだ。
早く脱出しないと·····。
暗闇の中でリュックを開く。
ガチャガチャと音を立てる魔法具から目当ての物を探す。
お、これか?
魔法具を掴む、あとは魔力を流す。
魔力に触れるのは初めてなので正直不安だったが出来た。
思ったより簡単だ。
なんというか、生まれた時から出来た様な感じだ。
魔力を流すと掴んでいたナイフが光りだした。
涼しげな光が辺りを照らす。
暗がりの中で目に付く物は、カエルの餌食となった哀れな魔物達の骨だけだった。
〈月光のナイフ〉レア度 ☆☆(星2)
能力は魔力を流すと光る。旅人が重宝する。
光····ただそれだけ。
多分ゲームで使った事は無い。
·····弱いから。
知っている装備だったから持ってきたのだが、まさかこんな所(カエルの中)で役に立つとは·····。
人生分からないものだ···。
まぁ何はともあれ脱出だ!
ナイフで壁(カエルの胃壁)を切りつける
·····が、小さな傷が付いただけだった。
····そりゃそうか。
ナイフだもんな·····。
刃なんて定規位の長さしか無い。
あ、そうだ!
魔法使ってみよう!
ナイフをズボンの隙間に差し込んで精神を鎮める。
心に描くのは炎、全てを燃やし尽す地獄の業火
「ヘルフレイム」
右手からすざましい炎が突風となって飛び出る。
燃え盛る炎は、円を描きながら壁(カエルの胃壁)をぶち抜いた。