2話 出発
落ちていたリュックサックを拾い、荷物を詰める。
水、乾パン、時計やネックレス、果てはよく分からない魔道具の類もできる限り詰め込んだ。
転生から2日目、結局初日は混乱し過ぎてしまって、気づいたら寝てしまっていた。
起きてから色々考えたのだが、もし俺が原作通りの動きをした場合····端的に言うと酷い目に会う。原作では色んな奴にボコボコにされた挙句最後は勇者チームの魔法使いに永遠に封印されてしまうのだから。そんなのは嫌だ。
原作の流れを変えるのは正直不安だが背に腹はかえられない。
結果、ひとまずの方針としては魔王軍を脱退する事にした。
魔王軍から抜ければ勇者達と敵対する事も無い。
ただ問題は魔王なんだよなぁ····。
簡単に辞職させてくれるのか···。
まぁそこら辺は置いとくとして、先ずは地上に出ることだ。
魔界の空には太陽が無い。
ノアは大丈夫だったのかもしれないが俺は耐え切れない。
たった1日なのに太陽が無いだけでこんなにも精神が追い詰められるとは····。
それに、この世界をもっと見たい。
王都とか離れ島とか色々観光したいのだ。
こんな所で燻っていられない。
「ん?これは····。」
棚を漁っていると見覚えのあるネックレスが入っていた。
どうやら金で出来ている様だ。
そうだ、このネックレスは作中でノアが付けていた物だ!
確か魔道具だとか何とか自慢げに話していた描写があった。
ゲームのアイテムには無かったから効果は分からないが、無いよりマシだろう。
なんせまだイマイチ事態を理解出来てないんだからな。
せっかく好きなゲームの世界に転生出来たんだ、楽しませてもらうとしよう。
·····あ、不死身だからどうにでもなるのか。
パンパンに膨れたリュックを閉める。
何か大事な物でも無いのか部屋中探したが結局何も見つからず、持ち物は以下の物となった。
・水・食料・魔道具・この世界の金銭(金貨32枚と銀貨90枚)
·····だ。
不死身なのに水や食料が必要なのかは疑問だが、とりあえず転ばぬ先のなんとやら、だ。
持って置くに越したことはない。
次に魔道具だ、これが結構嵩張る。
なんせ荷物の半分以上をこれに取られた。
最も、どの魔道具もそれに見合うだけの効果があるアイテムだが。
例えばこの腕輪、実はこれを装備するだけで魔物を倒した時に得られる経験値が1.5倍になる。
ゲームの中では〈見識の腕輪〉という名前で、初期のレベリングには必須のアイテムだ。
まぁダンジョンの宝箱でたまに出るヤツだな
·····。
とまあ宣伝はここまでにして····。
早速魔王城からおさらばしますか!
辞表は出さない事にした。
何でって?
·········怖いもん。
もうこのままこっそり逃げるわ。
どうせ地上に出るんだしバレやしないさ。
····それに、今が原作のどの時点なのか確かめたい。
もしかしたらまだ勇者が生まれてすらないかもしれない。
·····とにかく出発だ!
行先は勇者のいる(多分)街、アルタルへ!!