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プロローグ

 セルムーン


太陽が沈み、世界は闇に包まれる。見える光といえば炎だけ。

田畑は死に、地下に作られた街にて、質の悪い食糧だけが作られ、それを食べるしかない。新鮮な食糧など手に入るわけなく、栄養不足で人は死んでいき、人口は着実に少なくなっていった。

太陽がない世界では人々の心は荒んでいき、疲れていき、日々、街同士の争いや、街の中で喧嘩が起きていた。


そんな世界を変える、一つの書物がアルベートの街で見つかった。


その名こそ、『セルムーン』である。


セルムーンには、こう記されている。


人々が真の光を求めたとき、地上に一筋の光が現れる。その光に抱かれ地上に現れるものこそ、世界を変える勇者である。

勇者は天啓の指示に従い、7つの力を集め、天への道を開く。

天は邪悪な王が支配しており、光を閉ざしている。

その王を排除したとき、また天啓が降り、人々は光を取り戻すことが出来るであろう。


書物には、勇者が現れる場所が現れる場所が記されており。人々は、光が現れるのを今か今かと待ちわびていた。


そして、ついに現れたのである。しかし、人々が願っていた光とは違った色の光であった。


「なんということだ……この黒き光が、勇者の光というのか……?」


光が消え、再び暗闇が地上を包む。光のあった場所に行くと、そこにいたのはゆりかごに入れられた赤ん坊であった。性別は男。元気に泣きじゃくっていた。


人々は希望の光とは違う可能性を示唆したが、書物を信じるしか他になく、その子を地下街に連れて帰り、大切に育てたのだ。


いつしか人々は、その子に希望を宿すようになり名前も希望の意味を示す「ナディエージタ」と名付け、街の人はナディと呼んで可愛がるようになった。

教育を施し、力をつけ、いつか来るその時まで、彼には勇者という使命を伏せて。


しかし、現実は残酷であった。


「逃げろ! アクロンの奴らだ!」

「ナディ逃げて!」


ナディが16のとき、アルベートの街は隣町のアクロンに強襲を受けた。アクロンとは敵対関係であり、食糧を巡って小さく小競り合いをしていたのだ。

しかし、今回の襲撃は歩合が違った。

アクロンは、アルベートの街を破壊し、燃やし、人々を虐殺していった。


街があった場所に残ったのは、焦げた煙の匂い、破壊された建物の残骸と、強烈な匂いを放ち、流れた血が固まった死体だけだった。


アルベートの街近くにある使われなくなった地下牢に、街の人々が命を投げ捨てて救った二人の姿があった。


一人は少年ナディエージタ、もうひとりは少女ローシ。

二人は、強襲を受けた直後に、ローシのおばさんに連れてこられた。


「ナディ、ローシ。今はここにいて。争いが収まったらここに来るから。時計を渡しておくわ。この時計の2つの針がてっぺんに来た時に私は戻ってくるから」


しかし、時計が上で重なり合っても、どんなにときが過ぎようとも、おばさんは現れることがなかった。


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