究極の闇 〜中編〜
おまたせしました
「始まりを司る闇、お前は付いて来い。全員分の能力把握したいしな」
「あっ、はい。分かりました」
俺は始まりを司る闇を連れて子供達の中へと入って行く。するとすぐに子供達がわらわらと集まり、俺とアダムをもみくちゃに潰してしまう。名前を付けるどころじゃなくなった俺は何とかその中から脱出すると、水を司っているようなやつが隙間からでゅるんと這い出て来た。そして俺の前にすんっと立つと、その頭をばちゃっと下げる。
「先ほどはどうも失礼を働きました。申し訳ございません」
「いや、別に気にしてないから。それより自己紹介して」
「はぁ…私は『5番目、水を司る闇』でございます。ご主人様とは長い付き合いになりましょう」
「なるほど、お前は水かぁ…ってんなら…」
「あっ、あともう1人いらっしゃるので、そちらのご紹介のお許しをいただきたいのですが…」
すると水を司る闇はそう言って、もう1人のご紹介を俺に求めた。こちらが訪ねに行かずとも自分から紹介してくれるのは手間がかからずに済むので、俺はそれを許した。
「『60番目』ーっ! 来なさーいっ!」
『水』にはまだ名前が無いから、紹介したいもう1人を番号で呼んだ。やっぱこういうのは聞いてて耳が痛いから、早くこの子達の名前を付けてやらなきゃ。そうして『水』に呼ばれてやって来たのは…
バギュァンッ! ガギュィンッ! ゴギァンッ!
「お初に、ご主人様」
「おぉ…こっちは氷っぽいな…」
「ご名答、私は『60番目、氷を司る闇』でございます」
足跡の代わりに氷柱を生やし、体からヒュウヒュウ冷気を出しながらこちらに来る闇がいた。こうして『氷』は『水』の隣に立つと、その顔は『水』とそっくりだった。一瞬双子かなって思ったけど、そもそも水が固まったのが氷だから似てるのは当たり前なのかもって考えが頭をよぎった。
「じゃあ、お前らにも名前を付けてやる。まず『水』っ、お前の名前は『ナテニティ』だ、いいかちゃんと覚えろよ。次に『氷』、お前は『ナタニティ・ミニュ 』。分かったな」
「あっはい、『ナテニティ』ですね、理解しました」
「『ナタニティ・ミニュ』ですか…ご主人様から貰った名前、大切にさせていただきます」
そう言って水を司る闇と氷を司る闇は頭を下げる。俺はそんな2人に手を振ってから俺は次なる子供達の名前を付けに行く。
「さぁて先は長いぞ…次はっと…あっ」
すると真っ先に目に入ったのは、先ほど俺をご主人様と言っておきながらめちゃくちゃ失礼な態度を取った『植物』みたいなやつだ。しかもさっき言っていた妹らしき2人の闇も一緒にいる。
「あらこれはこれはご主人様。今改めて見ると、オダマキの花みたいな顔してますね」
「はぁ? よく分かんないけど、いいか。そっちの2人はお前がさっき言ってた妹ってやつか?」
「……」
「はやかはそうだよっ! ねっ、おねーちゃんっ!」
俺がそう尋ねると若緑色をした子は何も言わずにキュッと『植物』っぽい子に抱きつく。そしてもう1人の全身に草花を生やした子は元気よく自分はそうだと答えた。どうやらこの植物っぽい闇は3姉妹のようで、先ほど俺に突っかかって来たのが長女、元気いいのが次女、まだ人見知りで姉に甘えてるのが三女っぽかった。
「じゃあそれぞれ自己紹介お願い」
「では私から…私は『7番目、植物を司る闇』、この2人の長女でございます」
「はやかは『16番目、草花を司る闇』だぜ! はやかは2番目の次女っ! よろしくっ!」
「……きゅ、『93番目、若草を司る闇』です」
3人の自己紹介が終わったので、俺は与える名前を考える。というかさっきも思ったけど、番号に至っては本当に関連性が無さそうだ。もしかしたら生まれた順なのかもしれないが、子供達が出て来るのを見た感じだと子供達の誕生は始まりを司る闇以外はほぼほぼ同時だった気がするし、よく分からない。でも今はそれに対して思考を巡らせる時では無いと、俺は子供達の名前に思考を戻す。
「そんじゃまずは『植物』、お前の名前は『グーテ=クシャナ』だ」
「……『グーテ=クシャナ』、悪くはないですね。後でザクロの花を礼に差し上げましょう」
植物を司る闇はふんっと小さく笑みを浮かべながら名前を受け取った。何で数ある花の中からザクロを選んだのかは分かんないけど、 礼にくれるのなら貰ってやろう。
「んで次、『草花』、お前は『フリャーナミ』だ、『フリャーナミ』。覚えとけよ」
「へいっ!」
草花を司る闇も無事承諾してくれた。一応断られた時のために、別の名前も考えといた方がいいかもしれない。そう思いつつ俺は引っ込み思案な三女に話しかけて名前を付ける。
「最後、『若草』、お前は『グーテン=フリャン 』だ。嫌なら言ってくれよ」
「……ぃゃ、大丈夫です。ありがとうございます…」
若草を司る闇はコクコクと弱々しく頷いた。見たところ承諾はしてくれてるようだけど、何か長女と次女がきっぱり答えてくれた分わだかまりが胸の中に残った。
「ご主人様っ、妹を虐めたらご主人様でも容赦しませんよっ」
「えっ」
すると長女である植物を司る闇がずいっとこちらに近づいて釘を刺して来る。身長もグーテ=クシャナの方が高いからそれなりの威圧感がある。
「とりあえず私はこれにて失礼します。妹達の世話が終わっておりません故」
「あっはい」
植物を司る闇はそう言ってから妹達と共に体から植物を生やして何かし始めた。その光景を終わるまでずっと見てもいいが、まだまだ名前を付けなくてはならない子達がいるから、俺は再び無名の闇の中へと進む。次に出会う闇は何を司る闇なのかと思考を巡らせながら。
すると、
こっ
「ん?」
俺の足に何か柔らかいものが当たる。感触は人肌に近く、大きさはそこら辺に転がってる岩よりも一回り小さい。俺はその方向に目を落とすと、
「抱っこ、抱っこして」
仰向けになってうにうにと体をくねらせる、四股が無い闇がそこにいた。
「おまっ…そ、その体…」
「抱っこ、抱っこ」
俺は目を丸くしながら膝を曲げてかがむと、その闇をそっと持ち上げてみる。するとその闇はキャハハッと無邪気に笑ってこちらに甘えて来る。手と足が無いこと以外は髪の長い子供という感じだが…にしても何でこんな姿をしてるのか。
「お前…手と足はどうした? まさか誰かにやられたわけじゃねぇよな」
「えっ、何で? ご主人様がこうしたんでしょう?」
「よし、俺がやったんだな。早速俺をぶっ潰して…って、えええ…」
その闇曰く、自分に四股が無いのは俺のせいだと言う。しかし俺にはそれを望んだ記憶は無い。こんな女の子の見た目をした闇に、四股を取った姿など。
「…ご主人様が望んだんじゃないの? この姿」
「えっ…ま、まさか。んなわけねぇだろ。つかお前何なんだ、何の闇だ」
「あぁ、そゆことね。あたしは『56番目、甘えを司る闇』だよ。今度はなでなでしてっ」
「あっ、うん」
俺は『甘え』の頭を言われるがまま撫でる。思えばたしかにこの闇には手足が無いから、誰かに甘えないといけないのだろう。俺がこの力に目覚め、この闇を作る際に甘えを司るから、手足を削ぎ落として誰かに甘えないといけないようにしたのだろうか。もしそれが無意識によるものだったとしても、申し訳ないことをしてしまったと思ってしまう。
「じゃあお前の名前は…んっ?」
そうして『甘え』に名前を付けようとすると何やらエグい臭気が辺りに漂い始め、毛穴を通じて何かが入って来るのが分かる。それが猛毒だって直感的に分かった時には、その正体がすでに目の前に現れていた。幸いにも俺は不死身だからその猛毒で死ぬことは無さそうだけど。
「こんなとこにいた…ってご主人様っ! わっ、はっ、初めましてっ!」
「おう、お前は…『毒』か?」
「はっ、はいっ! うくは『54番目、猛毒を司る闇』です! 長い間お世話になります!」
「なるほど、つかこんなとこにいた…って、ひょっとして『甘え』を探してたのか?」
俺は『猛毒』に抱いている『甘え』を見せる。すると『猛毒』は首をぶるんぶるん縦に振ってそうですと答える。つまり何らかのアクシデントで一緒にいた『猛毒』と『甘え』は離れ離れになってしまったのだ。俺はひとまず『猛毒』に『甘え』を渡してからそれぞれに名前を付けようとした。
「ほいっ、今度は落とすなよ」
「は、はいっ。お手数おかけしました。本来なら56番目はうくではなく、61番目が抱いているのですが…って、あっ」
「あっ?」
『猛毒』は『甘え』を受け取るやいなや、俺の後ろに視線を合わせてあっと言う。俺は何だと背後を振り返ると、
「あら? ご主人様だったのですか? すみません、てっきり94番目かと…」
そこには2m近くある巨大な闇がにっこりと微笑んで立っていた。
「お、お前は何の闇だよ…」
圧倒的な身長差に俺は一瞬怖気付いてしまうが、すぐに胸を張ってそう尋ねる。
「私は『61番目、抱擁を司る闇』でございます。抱いて欲しかったり、甘えたくなった時はいつでも言って下さいね」
「あっ、うん。それはまた今度ね。じゃあお前ら3人にも名前付けてやるからそこに並べ」
「「「はーい」」」
俺は目の前に3人の闇、(まぁ『甘え』は『猛毒』に抱き抱えられてるから実際に立ってるのは2人だが)を並べると、1人1人に与える名前を考えた。
「まずは『甘え』からな、お前の名前は『トゥーン・ネチェル』」
「ふぁーいっ」
甘えを司る闇は『猛毒』にくっと体を寄せながら返事した。そして今度はトゥーン・ネチェルを抱く『猛毒』に名前を付ける。
「『猛毒』、お前は『テイストゥ=ドゥーラ』だぞ『テイストゥ=ドゥーラ』」
「ありがたくいただきます」
猛毒を司る闇も名前を快く受け入れる。
「さて最後だ。『抱擁』、お前は『レマッサ・ティアーノ』」
「はぁい、分かりました」
「つかお前デカくね…何喰ったらそんなデカくなんだ…」
「まぁ、ご主人様が生みなさった闇の中では、私が1番大きいですからねぇ。しかしこの姿もご主人様がお望みになったのですから」
「……なぁ、お前らそれを…」
自分の見た目を俺のせいにしてねぇかと言おうとしたその瞬間、
ズゥーンッ…ズゥーンッ…
始まりを司る闇や抱擁を司る闇をゆうに超える、鎧が俺の側にやって来た。
「……抱擁を司る闇…嘘はいかんだろ…」
俺はその鎧を見つめながら、隣にいる抱擁を司る闇にそう告げた。
次回の投稿もお楽しみに




