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アンバランス・ワールド  作者: がおー
第2章 〜うちの主人は死神様〜
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リフォーム開始

おまたせしました

「…何だかんだで朝になっちまったじゃねえか」

「でも家の取り壊しなら完了だ。つか美奈(みな)のやつ…見ろよこれ、ここの木の柱なんかひしゃげて今にも折れそうだぜ」


 ロボと俺は一晩中壁を殴ったり床を蹴破ったりの破壊活動で過ごした。幸いこの辺りには住宅があるわけでも人気(ひとけ)が多い場所でもないので、俺らがどったんばったんやったり砂ぼこりを出したところで何の苦情も無かった。

 強いて言えば床下に安住の地を確保していたゴキブリやアリ達が住処を追われた程度だろうか。ここまでぶっ壊したら後はまた組み立てるだけだ。


 俺はロボに広い風呂とリビングの間取りを設計してもらうよう頼み、手の空いた俺はまだ使える家具を外に出したり、必要な材料を電話で予約したり、家具にこびりついた砂ぼこりを掃いて綺麗にした。


「…ったく、こんなチンケな家に広い風呂とリビングを御所望とは…贅沢なやつだぜ」

「別にいいだろ。ある程度設計してくれたら後は全部俺がやっからよ。勝手に手伝われて後から追加料金とか求められたらたまったもんじゃないし」

「…コンクリの壁とか床暖の設置とかやってやろうか?」

「やめてくれっ」


 家具はすっかり(ちり)やホコリを被ってしまいすっかり汚れてしまった。家具とかは濃い色が好きだから、せっかくの黒光りが台無しだ。俺はそれをきめ細かく拭き取りつつ、ロボの図案完成を待った。

 だがその図案が完成の前に美奈(みな)への朝ごはんの時間が来てしまった。俺は財布片手に急いでコンビニ向かうと、栄養バランスが取れたものを必要な分だけ購入した。こんな時、朝っぱらでも従業員がいてくれるコンビニはありがたい。レジ袋代がもったいないので俺は両手いっぱいに商品をまるごと抱え、彼女のいるロボの家の隣の倉庫に走っていった。


 どんっどんっ


美奈(みな)ーっ、朝ごはんだぞー」


 俺は戸を叩いて美奈(みな)を呼ぶが中から返事はない。恐らくまだ寝ているのだろうと、俺はドアノブに手をかけるが案の定閉まっている。俺はここでロボに合鍵を借りるのを忘れてしまったことに気がついた。


「くっ…マジかよっ」


 俺はその場に美奈(みな)の分の朝飯を置くと、急いでロボのところへ合鍵を借りに走った。


「ぜぇっ…ぜぇっ…ロボ、合鍵プリーズ…」

「あー、そっか。俺も渡すの忘れてた。えっと…どこだっけな…あ、あったあった、はいこれ」

「すまねぇなっ」


 俺はロボから合鍵を受け取ると大急ぎで元来た道を引き返し、ロボの家へと急行した。早くしないと美奈(みな)が腹を空かせて機嫌を悪くする。ただでさえあまり好ましくない環境にいるというのに。


「…あれっ?」


 しかしロボの倉庫の戸の前にたどり着いた時には、何故か買っておいた美奈(みな)の朝飯が蒸発していた。俺はあたふたと辺りを探すがそれらしきものは見つからず、もしや誰かに持ってかれたかとさえ思った。俺はがっくりと戸にもたれかかりながらその場に肩を落とすと、中からズルズルとのんびり何かが這いずり回る音が聞こえて来た。


 恐らく彼女はすでに起きて朝飯を食わせろとせがんでいるのだろう。ここは一度彼女に謝っておいた方がいいかもしれないと俺はドアノブに手をかけると、


 キィ…


「…ぁれ?」


 まだ鍵を開けていないにも関わらず扉は開いた。


「あっ、穏雅(おうが)。おっはー、朝食ありがと」


 中には部屋にトグロを巻いてハムハムと買って来たおにぎりを頬張る美奈(みな)の姿があった。


「…はぁああ」


 その瞬間、俺は何となく理解した。多分俺がロボのところへ合鍵を借りに行っている間に美奈(みな)は目を覚まし、鍵を内側から開けて外に置いてあった朝飯を取ったのだ。つまりただのすれ違い、取り越し苦労だったのだ。


「どしたの、汗びっしょりじゃない」

「いや、何でもない。リフォームすぐに終わらせるから楽しみにせず待ってろ」

「んー、まぁ、適当にがんばー」


 俺はバタンと戸を閉めると、先ほどとは明らかに遅いペースで家へ戻った。何のためにわざわざロボに鍵借りて一往復したのかなんて、理由も考えたくない。

 戻った俺は再び家具の掃除を再開し、濃い色の中目立つ白灰色の汚れにため息をつきながらせっせと磨き続けた。そして家具や住居品専門店の店がオープンする時間と共に、


「こんなもんだろ、一応不備とかは無いけど、なんかあったら言ってくれ」


 ロボに頼んでおいた図案が完成した。


「あんがと、それじゃ早速色々買って来るわ。あとパイプとかボルトとか使い古しを再利用したいから色々取って来て」

「わーったよ、つかお前は新しい家具とコンクリ、後は壁に取り付ける断熱材だけにしとけ。細かい金属部品とかパイプとかは全部俺が用意してやっから」

「別料金発生しないよね…?」

「しねぇよ馬鹿っ! つか、とっとと行ってこいっ! 俺ボランティアでやってんだから!」


 俺は財布とカードをポケットに突っ込み、ダッシュで住居品専門店へと走った。1番めんどいのは恐らくコンクリートだろう。買うのも運ぶのも敷き詰めるのも全部手間がかかる。一応朝一で電話し格安を予約したものの、やはりそれなりに費用はかかるしコンクリも質が低いものを掴まされるだろう。

 そんな不満を抱えつつ俺はまず家具専門店で旅館が使う並の大きさの浴槽とそれに必要なパイプ、そして追焚き用のガスパイプを購入した。


 これも運んでもらうわけにはいかないので、全部手持ちで持って帰る。周りの目など俺は全く気にしないタイプだが、流石に身長160cm(センチメートル)がその倍以上はある浴槽を抱えて歩いているのを一般人が見たらみんな腰を抜かしてしまうだろう。どうも家のリフォームってのは周りの腰に悪いようだ。すれ違う度、流石にちょっと罪悪感があるのでさっさと家の前へ運んでしまおうと俺は走る速度を上げた。


 それからさらに必需品を購入しようとしては、美奈(みな)のところ昼飯を持っていく時間になってしまった。


 家計を守るためも彼女には朝と同じようなおにぎり中心のメニューになってしまう。もちろんそれに彼女が腹を立てないはずがなく、それを目の前に広がるやいなや朝と同じだとブリブリ文句を言われた。そうして怒られている間に、俺が注文した分のコンクリートが用意出来たと連絡が入った。俺は彼女の不満ブリブリな視線と言葉を背に浴びつつ、大急ぎでコンクリートを取りに行った。


 さて、ここからが問題だ。本来ならコンクリートは専用車を使ってまで運ぶものだ、そうでもしないと固まってしまうから。なのにわざわざそれをケチってまで専門の業者にコンクリートのみを用意させたのだ。今思うとかなりイかれてる判断だったと少し反省する。使用分のコンクリートは5つのタンクに分けられており、一応固まらないよう常に動かしてはくれている。


 しかしそれも早く使い切らないと後々追加料金を取られ兼ねないだろう、何しろ俺はただ用意してくれとしか頼んでないのだから。俺はコンクリートが詰まったタンクをがぁっと1つ持ち上げると、そのまま家まで全速力で走った。自分はこんなに重いものを運べたのかと我ながら少し関心するが、そんなことを考えていられるほど時間はかけられなかった。


「ロボッ…やっぱ頼むわっ! コンクリお願いっ!」

「追加料金、待ってましたぁ!」

「くっそぉ…っ!」


 ゴォンッ!!


 俺は家の金具やボトル止めをしていたロボに、涙を呑んでコンクリートの処理を頼んだ。ロボはそれを快く承諾すると、ウッキウキの笑顔で丁寧にコンクリートを敷き詰め出す。


 歯を喰い縛りながら痛い出費に耐え、コンクリート待って自宅と専門業者がいるところを何度も行ったり来たり。新しくコンクリートを持って行けば、もう床にキチンと敷き詰められていたり、また新しく持って行けば壁としてすでに固められていたりと、なんとも手際よく作業していた。金がかかることとなるとちゃんとやるところが本当に憎たらしくもありがたかったりする。


 そうして壁を固め、内部のガスや水も全部繋ぎ直し、ロボ特製の床暖房も設置し、浴室もより広くし、とうとう我が家のリフォームは終わった。1日丸々潰すこととなったが、むしろ翌日に持ち越さなくて良かった。まだこれから室内に家具を戻したり、壁に使われた素材の有害な化学反応による毒を喚起して追い出すなどやることはあるが、今は家のリフォームが終えたことに一息つくところだろう。


「リフォーム代置いとくからな、ちゃんと払えよー」


 俺が新しい玄関で息を整えている時、ロボはペシッと俺の顔に請求費用が書かれた紙を投げ付けた。その金額は今の俺に全額払えるものでは無く、ローンを組む以外に選択肢は無かった。


「ローン…分割払いかよ…」

「ちゃーんと利子付けてあげるからねー」


 ロボは高らかに笑いながら自分の家へと戻って行く。俺はその後ろを何度も何度もため息をつきながら追っていく。リフォーム1つでこんな巨額の借金を背負うことになろうとは、しかしこれでも業者に頼むよりかは出費は抑えられたはずだ。そう考えないと心がしんどい。


「にしてもあんなに非常かつ凶暴なお前が、まさか女1人のために自宅改造まで踏み切るとはなぁ。お前本当に穏雅(おうが)か? また複製品(クローン)でも作られたんじゃね?」

「やめろやめろ、やめてくれっ。俺の複製品(クローン)とかもうドッペルに会うより恐ろしいわ」

「はははっ、お前の目の前にいるやつもその1人なんだよなぁ」

「はぁ…なぁ、生涯人生で2度も自分自身と同じ顔に会うなんてことある? いや、あってたまるか」


 なんてロボは笑いゲラゲラ、こっちは不満タラタラで美奈(みな)を迎えに行った。時刻は夕飯前だから、多分彼女は文句ガミガミで待っていることだろう。


美奈(みな)ーっ、おまたせー。リフォーム終わったからもう帰るぞー」


 俺はどんどん扉を叩きながら美奈(みな)を呼ぶが、返事は小さいものだった。俺は扉を開けて中に入ると、彼女はガラクタ達に自分の体を巻き付けて何やらジッとこちらを睨んでいる。


「どしたの、美奈(みな)。もう帰ろう」

「…やだ」

「へっ!?」


 いったいどうしたというのだろうか。何故急にそんなこと言い出すのか、俺は目を丸くしながら何故そんなことを言うのかと問うと、


「ここのお風呂めちゃくちゃ綺麗だし広いし、シャワーの威力もこの体に超ベストマッチだし。あと2日、3日はいてもいいかしら」


 と答えた。狭いだとか最初はあんなにブーブー言ってたくせに。


「宿泊費は弾みますよ〜。別料金もキチンと頂かないとね」

「ほんっとやめてくれ」

次回の投稿もお楽しみに

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