Angel work !
おまたせしました
天使様達のお手伝いがしたい。いつも受けている恩を返したい。
そんな八津飛の純粋な想いを受け、その天使は自身の仕事が終わった後、また別の天使の元へ向かう。
「ナネルッ、少しご相談いいですか」
「どうしました、アテネル。ご相談とは貴方が見ている人の子達のことですか?」
「まぁ…強ち間違いではないですが…。実はその中の人の子の1人が、我々を手伝いたいと言って来たのです。それで、先日ナネルは最近手が余っていると言ってらしたから…」
「なるほど、余った者達にその人の子の面倒を見せよう…と」
施設の子供達を見ている天使アテネルは、ナネルという天使に八津飛の件を話した。それというのも、先日ナネルは自分らのところで仕事をしている天使の数が多く、全員で仕事をしようとすると必ず余る天使が出てしまうとぼやいていたからだ。仕事の手が多いのに越したことはないが、かといってその手が余るようでは働いている天使達のモチベーションが上げられない。
だからその余った天使達で、自分らのことを手伝いたいと言う人の子を見てもらえないかと、アテネルは統括者であるナネルに相談したわけだ。
「…まぁいいでしょう。前向きな方向で考えておきます。ちょうど天使達に何か新しいことは出来ないかと思っていたのも事実ですしね」
「ありがとうございます。では…後のことは追々」
「ええ、それでは」
ナネルも、自身が統括している天使達にちょうど新しい仕事が何かないかと思っていたところであり、人の子の面倒を見るくらいなら出来るとアテネルのお願いを前向きな方向で検討する。
そしてその後、ナネルは自分が統括する天使達に、手が余っている者は自分らを手伝いたいと言う人の子の面倒を見てやれないかと尋ねた。幼い人の子の手が天使以上の働きが出来る筈もないだろうが、単純にその人の子は自分らから受けた恩恵を返したいと言っているとナネルが説明すると、他の天使達は喜んで頷く。
最近は変に手が余って自分の仕事量が少なかったり、他者との仕事量に差が出ていたから、新たな仕事をするのも悪くない、と。
それから数日後、来世を待つ人の子が集められた施設にて、
「さぁ、行きましょうか」
「は、はいっ」
1人の人の子、八津飛はコチコチと緊張しながらも、これで少しは自分が受けた恩を天使様に返せるとドキドキ心拍数を上げていた。緊張と喜びが混じり、口元は緩みながらも頬は強張っている、そんな八津飛をアテネルはナネルのところへ連れて行く。
「それじゃあ八津飛君。この天使はナネルっていうの。ナネルのお手伝い、してあげてね」
「はいっ。よ、よろしくおねがいしますっ」
「はい、よろしくね。八津飛君」
ナネルは緊張し過ぎのあまり上手く呂律が回らない八津飛のことを温かく受け入れると、彼の手を取って手が余っている天使達の元へ向かった。
今から自分の受けた恩を返せる。出来ればお世話になったアテネルさんや他の天使様達に返したかったけれど、お手伝いがしたいと言った以上天使様の役に立たなければ。それにこうして自分が天使様達のお手伝いが出来るのも、きっとアテネルさんが他の天使様達に自分のことを言ってくれたからだろう。
だったら精一杯頑張らないと。この天使様達の言うことを聞いてお手伝いしないと。
と意気込みながら八津飛はナネルら天使達のお手伝いを始める。
「それじゃあ八津飛君には、この部屋のお掃除をしてもらおうかな。他の天使達も手伝うし、何か手助けして欲しいことや分からないことは聞いてね」
「はいっ!」
まず始めに八津飛が取り掛かるのは、山のように資料が積まれた倉庫の掃除だった。しかし傍目から見れば特別その倉庫が汚れているわけでもなければ、資料が整頓されているわけでもない。かといって塵埃1つとて落ちていないわけでもなければ、資料が何処にあるか一目瞭然であるくらい綺麗に整頓されているわけでもない。
あくまで普通、ほんの少し散らかっているようにも見えるが、ここから資料を探し出すくらいには気にならないくらいの倉庫であった。
だが元より8歳という幼子が出来ることなんてたかがしれているし、年に見合わぬことをやらせて事態を悪化させるくらいなら、こんな特に何もない部屋を掃除させるくらいでちょうどいいのだ。それにいくら天使達もいるとは言え、8歳の子なら倉庫のお掃除をするだけでも重労働だ。ほんの少し床を掃いただけでも、頑張ればギリギリ届くところを拭くだけでも、8歳の体には少々大きい資料を別の場所に運ぶだけでも、八津飛はハァハァと息を切らしてしまう。
しかし、
「大丈夫ですか、人の子よ。気分が優れないのなら無理をしない方が自身の身のためです」
「幼い身でありながら、よく頑張りますね。ですが少々頑張り過ぎでは…? 少し休憩を挟みましょうか」
「届かないのならば無理せず私達に言いなさい。ひっくり返って怪我でもされたら元も子もありません」
「相当息が切れてますね…。手伝ってくれるのはありがたいのですが…頑張り過ぎはよくないですよ」
すかさず天使が八津飛の手助けに入り、この前までは無茶をし兼ねない八津飛を止めた。何しろ自分が受けた恩を返そうと八津飛は年齢に合わない手伝いにまで手を伸ばしたり、これ以上天使様達に手間をかけさせてはならないと無茶してまで1人で頑張ろうとするのだから。八津飛はまだ8歳の子供。そんな子供が何百何千倍と生きている天使達と同じ仕事が出来る筈もないのに。
「ふぅう…すぅう…」
そうして手伝いの時も終わる頃には、すっかり疲れてしまった八津飛はすうすう寝息を立てて寝てしまっていた。手伝いの最中も時折疲労が祟り、重い瞼を支え切れずに立ったまま夢の中にステーンッと落っこちてしまうことが多々あったが、今は手伝いが終わったという気の緩みからとうとう深い眠りにまで落ちてしまったようだ。
「眠ってしまいましたよ…アテネル。お手伝いの最中も、疲労が溜まった時にはよく眠りこけておりました」
「まぁ、8歳の人の子ならばよく持った方ですよ。今日はこの人の子のお手伝いの手伝いを聞き入れてくれてありがとうございました」
「いえいえ、こちらも手が余っていた天使達の仕事が出来たので。お礼を言うのは此方の方でもありますから」
「そうですが…。それにしてもこの人の子の表情…」
すうすう寝息を立てる八津飛をナネルから受け取ったアテネルは、その腕の中に抱き抱えながら今日は八津飛のお手伝いがしたいという気持ちを聞き入れてくれてありがとうとナネルに礼を言う。だがナネルも、手が余っていた天使達のいい仕事になったと礼を言い返す。
結局倉庫の掃除の大半は天使達がやってしまい、八津飛が出来たところはほんの少しだけだったが、それでもただ掃除するよりも幼い人の子と共にやった方が天使達も仕事になったと言っていたという。
しかしそんな天使達の想いと反対に、八津飛自身の想いは寝顔でさえ表情に現れ……
「何処となく…悔しそうですね…」
何とも悔しそうな顔をしていた。
「本当はあまり迷惑にかけず、自分1人でお手伝いがしたかったのでしょう。天使達の話によると、自分らが声をかける度に悔しそうな顔をしていたとのことですから」
「まだ8歳ですから出来ないことは仕方ありませんのに……でも、少しだけ分かります」
「幼いからこそ、自分のしたいという想いと出来ない現実の差がまだ分からないのでしょうね。それとこの様子なら、きっと…」
「ええ、明日も恐らくお手伝いがしたいと言うでしょう」
それは、自分はもっと天使様達の役に立ちたいのに、想像以上に手伝うことが出来ず、逆に迷惑をかけてしまったんじゃあないかという八津飛の想い故の表情だった。自分はもっと出来ると思っていた、もっと役に立てると思っていたのに、結局あまり役に立てなかったという現実。こうして疲れては何度も眠りこけてしまったという事実。その悔しさが、八津飛の表情を悔しみに染めていたのだ。
そして、悔しさを晴らすためにも、更に迷惑をかけた分を取り返すためにも、八津飛はきっと明日もお手伝いがしたいと言うだろうと、ナネルとアテネルは思っていた。
「そうでしょうねぇ…。ですから仕事の合間に他の天使達にも聞いてみましたよ。何か手が余っていて人の子のお手伝いの手伝いが出来る天使はおりませんか…と」
なので仕事の合間を縫って、予めナネルは他の天使達に手伝いがしたいと言う人の子の面倒を見てやれる者はいないかと色々聞き回ってくれたようだ。そのことにアテネルはありがとうございますとナネルに再度頭を下げる。
「なるほど。それはそれは…御足労ありがとうございます」
「それでですが…実は、1件だけ人の子を見てやれる天使がおりましてね…」
「まぁ、その天使とは…?」
「それが…あの燎天使の1人、トルトネツェル様達が治める力者の楽天地なんですよ…」
「ええ…それに、たしかあそこにはあのお方も…」
その燎天使の名を聞いてアテネルは、まさかこんな幼子をそこへ手伝いに行かせるのか、燎天使様はいったい何をお考えになってこの人の子を手伝いに寄こそうと言うのかと目を丸くしてしまう。
次回の投稿もお楽しみに
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