新技、雷神惧
おまたせしました
雷神惧。
そう美月が口にした瞬間、
バチッ…!! バチバチバチッッ!!!!
美月の体からバチバチッと雷が迸り、大量の神気が体から溢れ出す。
まさしくそれは雷の鎧。自身の体内にある雷を外に放出すると同時に神気を練ってその雷を体に纏う。師匠から教わった通り、美月は自身の神気を使って雷を強引に操るのではなく、道を作ってその上をごく自然に走らせている。
これこそ打倒巨乳バカのために美月が編み出した新技であった。全身に雷と神気を纏い、攻撃力と防御力を爆発的に上げることが出来る。
「ヌグガギッ…!?」
グゴゴゴッッ…!!!
「おぉおおおおっ!!!」
迸る雷はその全身を掴んでいる大怪獣の体を伝い、それだけでバリバリとダメージを与えている。しかも美月は大怪獣の剛腕を押し退け、抑え付けられている筈の自身の体をググッと力のみで持ち上げた。
そして、
ギュンッ!!!
「ヌガッ!」
ある程度大怪獣の捩じ伏せを押し返した瞬間、美月は自身の脚の動きを止めていた尻尾から強引に両脚を引き抜くと、
ドズゥンッッ!!!
「オゴガッ…!!?」
思い切り力を込めて大怪獣の巨体を両脚蹴りで蹴り飛ばす。
「おぅらぁッッ!!!」
ギャウッ!!!!
「グボェゥ!!」
美月の蹴りは自分自身の体に巻き付き、抑え込んでいた大怪獣の手と尻尾を強引に引き剥がし、その巨体を上空まで吹き飛ばす程の威力であった。と、その蹴りを喰らわせると同時に美月は一直線に伸びた体を瞬時に丸め、膝を曲げ、迎撃姿勢を取る。
そして、
ダンッッ!!!
思い切り大地を蹴り、宙へ吹っ飛んでゆく大怪獣との間合いを一瞬で詰めると、
ズンッ!!!!
態勢を整える間すらも与えず大怪獣の腹目掛けて、渾身の肘打ちを喰らわせた。美月の肘は大怪獣の腹にズンッと突き刺さった後、回転加えることでグリッと更にめり込み、内側にある内臓を掻き混ぜる。
しかしそれで引くような大怪獣ではなく、必ずやこの敵を殺すため、4つの目をギョロンッと自身の腹元にいる美月を睨みつけ、その体を噛み砕かんと大口を空けて襲いかかった。
だが、
ビュッ…!!!
稲妻と見紛う程の閃光を全身から放ちながら美月はその牙をかわし、
「るらぁッッ!!!」
ドバァンッ!!!!
「バガァッッ!!」
大怪獣の顎を掬い上げる強力な拳の一撃を喰らわせる。しかも絶えず全身に雷を纏っている故、拳の一撃にはバチバチと爆ぜる雷の威力も乗っているため、その威力は凄まじい。
今の美月はまさしく、畏怖し恐るべき雷神であった。全身に纏った神気と雷による破壊力は何度も何度も大怪獣を吹き飛ばし、身構える時すらも与えない。
そうして美月が雷神惧を発動してからまだ数十秒しか経っていないのに、今まで自身の武器以外では誰1人とて貫けなかったその強靭な体から、とうとう血を吹き出すまでのダメージを与えていた。
稲妻の如く超速で大怪獣の周りを駆け巡り、強力な一撃を与え続け、大怪獣には何もさせずにほぼ一方的な様はまさに蹂躙と呼ぶ以外ない。
しかし、
バリッ…!
(チッ、もう時間切れか…ッ。一気に決めないとッ)
時が経つに連れて、次第に美月の体に纏っている雷の煌めきは失われつつあった。それも雷神惧発動からまだ1分前後しか経っていないという短い時間の中で。
それもその筈、美月の新技雷神惧は自身の体内にある雷を湯水の如く使うもの。雷雲の中や発電所の側など、常に雷が補給出来る場所ならば発動時間はもっと延びるだろうが、今ここには雷雲どころか雲1つとて側にはない。先程怒れる大怪獣の破壊光線が薙ぎ払ってしまったからだ。
加えて美月は今この時初めてこの技を使ったのもある。雷神惧は師匠との修行の最中に編み出した技ではあるのだが、あくまで実践するのは今が初めて。神気の扱いを覚えた今ならこんなことが出来るだろうという、想像でしかなかった技を発動しているのである。
故に雷神惧は美月の想像以上に自身の雷と神気を摩耗し、もの凄い勢いで消費されてゆく。例えるならば、コースだけは覚えているがそこを走るのは初めてだというマラソン選手のようなものか。何処でどれだけのペースで走り、どう体力を温存し、何処でスパートを出すか、それは道だけ知っていてもいざ一度走ってみない限り完全に把握することは難しいだろう。
ガクンッ…
(もう時間切れかッ。修行が足りないなッ)
とその時、美月の手がガクンッと僅かに落ち始める。神気と雷の使い過ぎによって美月の想像以上に体が疲労しているからだ。しかしそれをまだ美月の脳は把握しておらず、疲労自体は未だに感じない。
だがもしも全身の疲労を脳が認識した瞬間、一気に体の動きは鈍くなるだろう。ならばそれよりも早く勝負を決め切らなければと、美月は全身に力を込め、残り僅かの雷を使い切る勢いで襲いかかる。
残り持続時間はあと10秒もない。
ギャンッ!!!! バガッ!!!!
ズドドドドドドドドッッ!!!!
「グァアッ!! ゴ、ゴノォッ……!!」
インフィニティの如き軌道、だが縦横の動きも加えていることと、その体が雷によって閃光の如く輝いていることで、空中には光り輝く球が浮いている光景がそこにはあった。そしてその中心には一方的に美月の攻撃を受ける大怪獣。
しかし殺すべき敵にこうも一方的にやられっぱなしでいることは大怪獣の心が許さず、
「グァルバァッ!! ゴロジデヤルヴヴヴッッ!!!」
怒りと殺意に満ち満ちた顔で美月に向かって叫ぶ。しかしその4つの瞳は未だ明確にその姿を捉えていることは出来ず、その咆哮の方向にはもう美月はいない。
そして、怒り狂う大怪獣を止めるため、自身の雷があと少ししか持たないことを悟っている美月はその大怪獣の頭上に現れると、
「黙れッッ!!!!」
ドンッ!!!!
両の拳を握り合わせ、それを硬く握り締めると、大槌の如く自身の2つの拳を大怪獣の脳天目掛けて振り下ろす。その一撃は大怪獣の脳を揺らしながら超速で大怪獣を地面へと落下させた。
が、それも束の間、美月は勢いよく宙を蹴って殴り飛ばした大怪獣を追うと、
シュバッ
空中にて抜き去り、大怪獣よりも先に地面に着地する。
次の瞬間、落下して来る大怪獣の方を振り向きながら、両の手のひらにありったけの雷と神気を込め、
バチッ…バリリリルルルリリルリリルルルッッ!!!!
自身の手を重ね合わせることで迸る自身の雷と神気を超高密度でそこへ収束させた。
そして迫り来る大怪獣に向かって両手の中に収束させた雷を一気に解き放つ大技、
「喰らぇッッ!!!」
バズルゥアアアッッ!!!!!
雷轟烈波。
その威力は必然的に生じる衝撃波でさえ辺りの木々を薙ぎ倒す程であり、超速で落下して来る大怪獣を飲み込み、空中へと押し戻していく。その余波は天を揺らし、大地に巨大なヒビを走らせ、美月が立っている星ごと揺れていると感じてしまう程だ。
まさに神気と雷の合わせ技。雷を操る美月ならではの技である。
それを真正面からまともに喰らった大怪獣は襲い来る波動の中懸命に抗うが、しかし美月の雷轟烈波は傷ついた箇所から大怪獣の体を抉り飛ばし、吹き飛ばしてゆく。
そして美月の雷が尽き、雷神惧も強制解除されたと同時に、
「ハァッ…ハァッ…て、手間取らせやがって…ッ」
美月は雷轟烈波を放っていた手を緩やかに下ろした。新技による雷と神気の摩耗によってハァハァと美月は肩で息を切らしながら目線を上げる。
すると美月から少し離れた位置に、
ヒュゥウウウ……
と空気を裂く音を響かせる巨大なものが見えたと思った瞬間、
ドガァンッ!!!
大きなクレーター作って大怪獣が落ちて来た。
「ウ…グッ……グゾォオ……グゾォ……」
意識こそあるものの、先程の一撃によって限界を迎えた体はまともに動かず、仰向けになりながら大怪獣は悔しそうな顔でそう呟く。
負けたことよりも、大好きなお父さんの敵討ちが出来なかった。敵が強くなった後、自分は手も足も出なかった。そのことが何よりも悔しくて、弱い自分がただただ許せない。
ズルゥ…
「チッ…まだ生きてやがったか…。だがかなり消耗している…もうアイツには何も出来ない…」
その悔しさをバネに何とか大怪獣は立ち上がるが、しかしそれまで。大怪獣にはもう戦う力は残されていなかった。それは美月にとっても見抜かれており、来るのなら雷無き今の自分でも十分勝てると確信している。
「ギリギリギリ…ッ!!」
「その様子を見る限り…随分頭は落ち着いたようだな。私のことはいくら憎んでも構わないが…お門違いな憎しみはやめろ」
けれども美月に対する怒りは以前健在で、憎しみ込めた目で美月のことを大怪獣は睨みつけた。だが美月は一切臆することなく、むしろ怒りに任せて襲いかかった来ないくらい冷静さを大怪獣は取り戻したと悟ると、落ち着き払った様子でそう語る。
「お前にとってアイツは大事な奴なようだが…それを殺したのが私だと?」
「そうだっ!! お父さんの友達が…そう言うんだっ!」
「それが根拠か…。言っとくが私はやっちゃあいない。あの時お前はずっと私のことを睨んでいただろ」
「そんなの嘘に決まってるッ!! お前がやったんだろッ!! だって分離だって出来るんだもんなッ!? それにお父さんの友達はお父さんのすぐ側にいたんだっ!! だから…っ!」
自分を恨むのは構わないが、あくまで大怪獣のお父さんを殺したのは自分じゃあないと美月は言った。しかし大怪獣はそんなの嘘だと言い張り、1番側で見ていたお父さんの友達の言葉が何よりの証拠だと反論する。
「まぁ…信じねぇっつぅんならもうこれ以上は何も言わねぇよ。とにかく私はやってねぇとしか言えん。来るってんならいくらでも相手になるけどよぉ、だが恨むっつっても免罪は勘弁して欲しいな」
「…ぬぅぐっ! 覚えておけっ…! 次こそは必ず貴様を殺してやるぞッッ…!! 絶対に許さないッ!! 僕のお父さんを殺した奴は、絶対に僕が殺してやるッ!!」
「…そうかよ」
そうして大怪獣は傷ついた体を引きずりながらその場から離脱し、少し離れた場所へ避難していたお父さんの友達である複製の元へと歩いて行った。その後を美月は後ろ目で追おうとした瞬間、
ガクンッ…
「あ〜っ」
ドサッ
「しんどっ」
忘れていた疲労が一気に押し寄せ、その場にパタンッと仰向けに倒れてしまう。
次回の投稿もお楽しみに
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