悪魔対大怪獣の死闘
おまたせしました
「…なっ…あ…が……」
切り落とされた自身の右指と右腕、ふと目を下に落とせば先程まで自分と繋がっていたソレらが地面に転がっているのが見える。しかも膝関節が捻じ切られている故、脚が体の体重を支えきれず必然的に尻餅を付いてしまっている。
そんな光景を前に複製の理解は未だに追いついておらず、ただ真っ赤な血がその断面から吹き出しているのを見ているしか出来なかった。何故悲鳴をあげることが出来ないのか、痛みでもがくことが出来ないのか、どうして腕の付け根からバッサリ切り落とされたのに痛みを感じないのか。
複製の頭の中は次から次へと泡のようにボコボコ吹き出して来る疑問を前に、それら以外のことを何も考えられなかった。
すると、
「痛くねぇだろ? 切り落とした瞬間、雷でそこんとこの痛覚遮断してるからな。それで次は耳だ。その次には目を抉り飛ばすッ。そうやって少しずつ五感を失っていきながら、生殺しにするっ」
美月は冷たくそう言いながら手をスッと持ち上げ、呆気に取られている複製に向ける。腕を切り落とした時や膝を捻じ切った瞬間、美月は自身の雷を複製の切断面に走らせ、一時的にそこへ伝わる神経の電気信号を阻害しているのだ。故に腕が消失したり膝が割れたという重傷を負えど、複製にはそれらの痛みを感じることは出来ない。
と、次の瞬間、
ヒュルバッ
何か小さな、されど鋭利なものが複製の頭のすぐ横を後ろから掠めていった。
そして、
ベリッ……
ブラァンッ
「なっ……こ、これは…」
それが美月の白羽の1枚であったことを理解し、その箇所に手を当てると同時に、ブランッと生温くぬるっとした血と共に垂れ落ちる柔らかい左耳の感触が残った複製の左手を伝う。
「人間は歯を全て同時に抜くとショックで死ぬらしいが…果たして貴様は何処まで耐えられる…? まぁ、死んであの世へ逃げることなんかさせねぇよ。すぐに私の雷で蘇生させてやるさ。それに魂だけになっても、私が即座に、余すことなく喰らい尽くしてやる」
そして一切苦痛や痛みを感じないことにむしろ恐怖を感じ、もはや声を上げることすらままならない複製に美月は、
「ほんっとムカつくんだよ。他の連中は危険な目に遭わせておきながら、自分だけ安全圏にいやがって」
「たっ…たひっ……たすっ…」
「『助けて』とでも言いてえのか? 同じことを何度も言わせるな。私は喋るなっつってんだよ」
ズドスッ
「あぐぁ…っ!」
容赦なく自身の白羽を使い、予告通り複製の右目を抉った。もはや複製には何も出来ない。腕も脚もまともに動かない状況、しかも目の前にいるのは複製への殺意に満ち溢れた純白の悪魔。どう足掻いてもどうにもならない状況、死すらも与えられぬであろう絶望。
殺されずとも時が経つに連れての出血死ならばどうにか死ねるかとほんの一瞬だけ期待することもあったが、次の瞬間にはもうその断面は雷の火花で焼かれ、血はほんの微かな1粒とて出なかった。
よもやこれまで。自身はもうここで悪魔に嫐られながら生殺しにされる。死ぬことさえも、あの世へ逃げることさえも許されない、と複製は確信させられてしまった。
だがその時、
「ヴッッガァアアアアアッッ!!!!」
バギィンッッ!!!!
「チッ、なんつぅ馬鹿力だよッ。いや…それだけアイツの怒りが凄まじい証拠か…ッ!!」
凄まじい咆哮と敵に対する怒りを持って大怪獣がついに美月の束縛を打ち払い、自由となった体で美月に襲いかかる。美月は大怪獣の怒りがここまでのものかと、即座に分離していた白羽を自身のところへ戻す。そして自分自身も再度無数の白羽に分離した。
この怪獣の怒りを半分の体では受け止めきるのは難しいだろうという美月の判断である。
ビュバババババッッ!!!
「ヌガギギギギッッ!!!」
自身の体をすり抜け、その周りを舞う無数の白羽を大怪獣はギョロギョロと4つの目と首を使いながら把握すると、
「…ッ!! クゴガアアアァッ!!!」
ギャウウウウッ!!!
「んぁなっ…!!」
美月の神気を辿り、再集合した場所に向かって先程と同威力の破壊光線を大口から放つ。
まさかこの大怪獣がこんなにも早く対応し、しかも相手の神気を辿って次なる行動を予測するなんて。たしかに自分らも戦いの最中相手の神気の流れから次なる攻撃を予測することはあれど、まさかそれをこの大怪獣がこんなにも早く出来るようになるとは思っても見なかった美月は思わず目を丸くしてしまう。
だが、かと言ってまともに喰らうような美月ではなく、
「ふんっ!」
バヂィィィイインッ!!!
即座に腕を交差すると同時に目の前に神気で防壁を形成し、大怪獣の破壊光線を防ぎ切る。
けれども、
「グルォオオオオオオオァアアアアアアッッ!!!」
「速いッ!」
破壊光線を放った後だというのに大怪獣はもう美月との距離を詰めており、巨大な腕をグワァっと広げてすでに次なる攻撃に移っていた。しかしこの程度、何とか回避して立て直せると美月はスッと回避の態勢に入る。
しかし、
ビジイッ!!!
「うぐっ!?」
大怪獣は伸ばした腕から神気を放ち、美月の体を抑え込んだ。あまりにも急で、しかもいったいどうやって覚えたのかも分からない技に美月は思わず驚いてしまうが、そんなことお構いないし大怪獣は、
グァシッ!!!
「やばっ…!」
美月の体を捉え、
「グガァアアアアアアッッ!!!!」
ズドォンッ!!!!
そのまま超速かつ全体重を乗せて、地面へと美月を叩き潰した。
「うぐぁっ…! ち、ちょっと油断した…。な、何なんだよこの馬鹿力はぁっ…! これでもあの巨乳バカの血が流れてるってわけかッ…!!」
シュルシュルッ…ギュウム!!!
メリメリ…ミシッ! メキッ!!!
「フーーッ!! フーーッ!! フーーッ!!!」
大怪獣は自身の神気と圧倒的な力、そしていくつもの尻尾を使って美月の上にのしかかりながら抑え込む。頭と右腕は自身の大きな腕で、残る手足と胴体は背中から伸びる尻尾で、完全に美月の動きを封じ込めている。
(くっそ…神気で抑え込んでるから分離出来ねぇ…ッ。いったい何処でこんなの覚えたんだよっ…! まさかさっきの私の技から真似たのか…ッ!?)
ミシミシミシッ…
「うぐぁっ…!」
神気で相手を覆い尽くし、動きを封じるという技は先程美月だけでなく、前に由美ヰからも喰らっている故、大怪獣にはすでにそのやり方を見様見真似だが出来るのだ。
やはりこの大怪獣の凄まじい成長速度は侮るべきではなかった。すでに由美ヰと一戦交えていることを考慮するべきだったと押し潰されながら美月は自身の見立ての甘さを反省する。
「ふっ…ふははっ、よくやったぞっ。ソイツはお前の大事なお父さんを殺したんだっ! すぐに殺せっ!」
すると抑え付けられている美月を見て複製は高らかに笑ってそう言いながら、ずるりずるりと体を引きずって巻き添えを喰らわぬようその場から離れた。
「フーーッ!! フーーッ!! フーーッ!! ヨクモ…ッッ! ヨグモッ…!!」
ボロッ…ボロッ…!!
その時、複製の言葉を聞いてしまった大怪獣の瞳からは再び大粒の涙が溢れ始め、その巨体をツゥッと伝い落ちる。
「ヨグモ…ッ、よぐもっ…僕のお父さんを…ッ!! 僕の全てをォオ…!! ヴヴヴ…ッ!」
グググ…
「お父ざんば…僕の全でだった……!! 笑っだ顔が…好ぎだったがらっ…! 喜ぶ顔が…好ぎだったがらっ…! だのにっ……!! 許ざないッ…!! お父ざんを…殺じだ貴様をォ…許ざないッ!!! 殺じでやるゥ…ッ!! 殺じでやるゥゥウウウウッッ!!!」
メキメキッメキッ!!!
大怪獣は涙を溢れさせながら美月の頭を握り潰し始めた。その怪力は美月の頭でさえ卵のように潰してしまう勢いであり、美月もいよいよ余裕がなくなって来る。
(野郎ッ…! 黙って聞いてりゃあ…ッ好き放題言いやがって…!! その怒りはあの糞野郎にッ…!! いや、きっと私が言っても無駄だろうなッ。なら一旦落ち着かせてやんねぇとッ)
バチッ…バチッ…!!!!
「雷神惧…ッッ!!!」
次回の投稿もお楽しみに
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