天界兵器最高戦力 『ハルファフルエル』
おまたせしました
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ…
「……」
「……」
天使が放った光線によって巨大な山々が一瞬にして消え去り、その余波が今でも大地を揺らしている。あまりにも唐突かつあり得ない状況が、2匹の鬼達すらからも言葉を奪ってしまっている。
「……ラー……ラー……」
だがことを引き起こした元凶である天使は、なおも宙を舞い、話すように歌いながら宙を舞っていた。山々が消し飛ばしたというのに顔色1つ変えずに。
そんな光景を目の当たりにしてなお平然としていられる者はおらず、
「「「「わぁああああああっ!!」」」」
先程まで我先にとその天使に救いを求めていた罪人達は、蜂の巣を突いたかのように悲鳴を上げて騒ぎ立て始めた。罪人の群衆は波となり、壁となって互いに押し合いへし合いながらその場から逃げ出した。当然穏雅とロボ含めた処刑執行人達はその混乱に立ち向かなくてはならないのだが、
「……お、おい…何だよあれ……」
「俺が知るかっ、あ、あんなの見たことねぇ…」
実力者の2人でさえ、混乱そっちのけで終わらない頭の整理をしているのだ。本来なすべきことが出来る者は、その場に1人もいなかった。
そんな混乱が渦巻く様を、降臨した天使は静かに歌いながら平然と宙を舞い続けていた。
「……ラー……ラー……」
それから地獄が元の落ち着きを取り戻したのは、天使の白き顔を沈みかけた陽が紅く照らす頃だった。
「ったく…ロボ、そっちはどうだー」
「終わったよ、あーあ、パニックに乗じて逃げ出したやつもいるから面倒くさいったらありゃしねぇ」
穏雅とロボは逃げ出した罪人を捕らえ、裁きながら作業をこなしていた。一応2人が1番先に意識を取り戻し、混乱する罪人と処刑執行人らを力づくで抑え、落ち着かせたのだが、それでも未だに頭の整理が出来ていない者は少なくない。
「にしても…何なんだアイツ…天使みてぇだけど、来ていきなりあんなことしやがるなんて…」
「山4つを軽く消し飛ばすとは…ただの天使じゃなさそうだ。つか、噂だとあの山に新兵器があった筈…知っててやったのか…?」
「そんなもののために針山含めて他の山もぶっ飛ばしたってのか? イカレてんだろ」
「まったくだ…でもあの力、俺達でどうこう出来るものなのか?」
そんな中でロボと穏雅は天を舞う天使を恨めしそうに見ていた。突然やって来たかと思えば、何も言わずに山を消し飛ばす、しかもそれから一度も動かずにただジッと空に静止している。何が目的なのか一切分からないその天使に2人は立ち向かうべきなのか、そもそも立ち向かえる相手なのか、と悩んでいた。
「なぁ、アレまだ使えんのか?」
「アレって…まさか融合のことか?」
「それ、使えるんだったら使おうぜ。アレなら多分何とかなるだろ」
「たしかに…な」
そして悩んだ末にロボが出した答えは、自分らを圧倒的に上回る強敵を圧倒した戦士だった。再び2人で融合し、強大な力を付けて戦いに挑む。それが今の自分達が対抗出来る唯一の策だった。
どんな強敵とも渡り合えるために天界で修行して来たのに、息子の命を弄ばれた怒りで覚醒したのに、その力を持ってしても敵わない、と植え付けさせる決定的実力差が天使と2人の間にはあった。それを埋めるものがあるとするなら、未知数な力を持ったあの戦士しかいない。
という結論に至った2人は、早速融合を使おうと穏雅の家へ行こうとした。
その時、
ヒュアアアアアアアアッ!!!
再び天が裂けんばかりに輝くと、
ビュォオオッ!!!
1筋の光が地獄の大地へと真っ直ぐ続き、そして
ギュウウンッ!!!
背に付けた大翼を羽ばたかせながら、1人の天使が舞い降りた。
「ふぅ…やっと着いた…」
「……っ!!」
「…?」
大翼を背にした天使は穏雅とロボの近くへ足を付ける。その姿に見覚えのある穏雅は驚き、目を丸くしながら天使に歩み寄る。
「兄貴っ!」
「おー、穏雅。今はラフサナファエルと呼んでくれ」
「あぁ、はい…ラフサナファエル…」
「えっ、何? 知り合い?」
ただ1人置いてけぼりなロボはラフサナファエルと名乗る天使と穏雅を交互に見ながら、突然過ぎる状況に困惑していた。
「初めまして、私は大天使ラフサナファエル。いつも弟がお世話になってます」
「ど、どうも…俺は… 対穏雅抹殺用特化型装置搭載型対象殲滅兵器、制御及力量実験用特殊仕様、零号機。弟さんからはロボって呼ばれてますので、そっちで呼んで下さい…」
陽も暮れ、星空が空に瞬く夜、とある一軒家の中で大天使と殺戮兵器は互いに自己紹介をし合っていた。
しかしその家の家主にしである1人の蛇は物陰からその天使を覗き、そして、
「ねぇ穏雅、あの天使みたいなやつなんなの?」
と側にいた夫に尋ねた。そんな美奈の失礼極まりない口に穏雅は慌てて口をつぐませ、それ以上言わせないようにした。
「ちょっ、美奈。そんな失礼なこと言っちゃ駄目だって。あの天使は天界にて創造の神に仕える四大天使の1人なんだぞ」
「でも穏雅の兄って言ってるよ?」
「訳ありなの、訳ありっ。いいから美奈は清の面倒見てて。下手に絡み過ぎると大変なことになり兼ねないのっ」
「ぷ〜っ、分かったわよ」
美奈はそう言って頬を膨らましながら娘のいる寝室へと向かった。幸いにも彼女の言葉は大天使には届いていなかったのか、それとも届いていたが特に気にも留めなかったのか、特に大天使の感情が揺れることはなかったようだ。そのことに穏雅はそっと胸を撫で下ろすと、ロボと大天使の会話に加わった。
「さて、話の本題に入ろうか。今日やって来た天使について話そう」
「その前に1個だけいいかな? 何で俺ん家でやるんだ?」
ラフサナファエルが話の本題に入ろうとするところに穏雅が割って入り、何故自分の家でこのようなことをするのか尋ねた。それに大天使はフンッと静かに笑うと、
「別に。弟の家族がどんなのか見たかった、それ以外に無い。さぁ、分かったら話の本題だ」
とだけ言ってさっさと話題を切り替えてしまった。そんな返しに穏雅はフンッと不貞腐れながらも大天使の話を聞く。
「今日地獄に降臨した存在は見た目こそ天使のようだが、正確には天使では無い。アレは世界の秩序を守るための存在、『天界兵器』と呼ばれるものだ」
「へぇ、その1つが地獄に来て、山をぶっ壊したからわざわざ大天使様が来なさったってわけか。ご苦労様ですね」
ラフサナファエルの言葉に穏雅は恨むように言うが、
「まさか、ただの天界兵器ならわざわざ大天使が出向くことは無い」
と即座に否定される。しかし今こうして大天使が来ているという矛盾した事実にロボが突っ込もうと口を開くと、
「けど今回ばかりは別だ。ただの天界兵器じゃないからな」
ラフサナファエルの言葉にその口は閉ざされてしまった。そしてそれに続くようにラフサナファエルは言葉を連ねる。
「アレは…『ハルファフルエル』、天界兵器最高戦力だ」
そうして出た兵器の名は、『ハルファフルエル』、大天使が最高戦力と呼ぶものだった。
その言葉に穏雅とロボは互いに顔を見合いながら絶句する。天界兵器最高戦力が何で地獄にいるのか、ますます2人の理解が追い付かなかった。それにまともに戦って勝てる相手なのかすら分からない、そんな不安がドロドロと2人の胸の中で渦巻いた。
だがラフサナファエルの顔つきだけは違った。
それは絶対に勝てる自信というより、何処か引っかかる場所があるような、そんな謎を抱えているようだった。
「だが何とかなるかもしれない。それには2人の協力が必要だ」
ラフサナファエルはそんな謎を抱えながら、地獄の鬼に協力を求めるのだった。
次回の投稿もお楽しみに




