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アンバランス・ワールド  作者: がおー
第2章 〜うちの主人は死神様〜
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地獄最強の者

おまたせしました

 ヒュウウ…


「…」


 その者の放った閃光(せんこう)はまさに一撃必殺。今までの攻撃がまるで遊びだったかのように思える威力は、撃ち終えた後でもなお大地を揺るがすほどだ。つい先程まで士圭二(しがふ)がいたところは(ちり)1つなく、地平線の果てまで綺麗かつ大きく(えぐ)られた道が完成していた。


 トンッ


 そんな道をその者は歩くように飛び、吹き飛ばした士圭二(しがふ)の元へと向かう。辿り着いた先には数多くの瓦礫(がれき)や崩れた岩達が山のように積み重なっており、まだ揺れる大地に小石がパラパラと落ちて来る。

 そして肝心の士圭二(しがふ)はというと、


「……っ」


 瓦礫(がれき)の山の中で一切の意識を失っていた。体の至る所は黒く焼け焦げ、シュウシュウと高く煙を吐き出している。一応、死後にもう一度死ぬという魂の消滅も無ければ、腕や脚が欠損しているところは無いから、恐らく時間が経てばまた復活して来るだろう。


 そうならないよう、その者は再び体に神気(じんぎ)(まと)うと、


「…」


 ギュウウウッ…


 潰すように右手を握った。するとそこから神気(じんぎ)が溢れ、辺りの岩や瓦礫(がれき)に伝わると、


 ガゴガガゴゴガガガゴガガッ!!!


 生きているかのように一斉に士圭二(しがふ)の体を囲い、潰していく。その者の神気(じんぎ)(まと)った岩や瓦礫(がれき)士圭二(しがふ)から一切の自由を奪い、意識を取り戻す間も無く岩の中に消え、そして封じられた。


 再び魔物が目を覚ますことがあろうと、罪を悔い改め無い限り決して外に出られぬよう。


 そうして魔物を封印したその者は、(おのれ)の役目は終わったと言わんばかりにその場を後にした。



 するとその時、


 ピッ


「…!」


 とその者の体に1本の光が走ったかと思うと、



 バチンッ!!


「っ!?」

「っ!!」



 1つの体が2つに分かれてしまった。大天使が予想した通りの約5分が経ち、それで融合が解除されたのだ。穏雅(おうが)とロボは解除の反動故か、引き剥がされるような強い衝撃に耐え切れず、


 ドサッ!!


「ぐぇっ!」

「あぅっ!」


 その場に情けなくべちゃっと倒れてしまう。2人の体は融合前と同じく満身創痍(まんしんそうい)で、しかも黄金の戦士を使い過ぎたツケ故か神気(じんぎ)も体力も残っていなかった。それは体に重過ぎる(かせ)を付けられたかのごとく、2人もまた体から一切の自由を奪われる。更に、


 ズンッ……


「かっ……体が……重たっ……やば、全然動かん…」

「マジで動かねえ……あっ、バッテリー切れる……」


 ロボのバッテリーが切れかける状況。当然そうなれば、再びバッテリーを入れられるまでロボは動かなくなる。となると、ロボの家まではボロボロでまともに動ける体力も無い穏雅(おうが)が運ばなくてはならない。それが無理なら地獄の処刑執行人が異変の収束を感じ取り戻って来る、かつ自分達を運んでくれるまで待つしかない。だがそれを選べば嫌になるほど時間がかかるのは分かっていた。

 そうならないよう穏雅(おうが)はバッテリーが切れるというロボに怒り口調になる。


「おいふざけんな。お前切れたら、俺キレるぞ……」

「ごめんっ……マジ無っ……」

「おまっ……ハァ〜……」

「……」


 だがその怒り虚しく、ロボの電源はぷつんと落ちてしまう。それ即ち、穏雅(おうが)がボロボロの体を引きずってロボを家まで運ぶか、もしくはいつ来るか分からない助けを待つの2択に絞られてしまったわけだ。

「クソッ……体も動かんし……最悪っ……」

 今の穏雅(おうが)には唯一動く口だけで、現状をボヤくことしかすることが無い。だからやれることをただ精一杯やるしかなかった。



 穏雅(おうが)とロボが異変の収束を察知し、駆け付けた処刑執行人達に助けられたのは、日没より少し前のことだった。それまで2人はずっと激戦の跡地の中で、立ち上がることも出来ず野晒(のざら)し状態にされていたのだ。



 陽も暮れ、未だに体力も戻らない中ではあるがやっと穏雅(おうが)とロボは各々の家へと帰って来た。ロボはバッテリーの供給、傷付いた体のメンテナンスに加え、自分の心の中に宿った新たな命の世話を始める。いつもやっていることに新しい項目が増えたのは多少面倒だと思いつつも、ロボの中では歓喜(かんき)の方が優っていた。


 そして穏雅(おうが)の方はというと…


 パァンッ!!


「まったく! 心配したんだからねっ!!」

「ごめんてっ…」


 愛する者のビンタが、リビングで満身創痍の体を引っ叩いていた。2日連続で一家の大黒柱がボロボロの状態で帰って来れば、大きな心配が怒りに変わるのも当然と言えよう。

美奈(みな)の怒りは収まりどころを知らず、穏雅(おうが)が反撃出来ないのをいいことに罵倒の言葉を散々並べた。


「バカッ! オタンコナスッ! 妻子不幸者っ!」

「だからごめんって…美味しいもの作ってあげるから…」

「そんなの当たり前じゃないっ!! バカバカァ!」


 それから美奈(みな)罵詈雑言(ばりぞうごん)は星が(またた)く夜まで続き、まともに動けない穏雅(おうが)は不可避の暴言をただ受けるしかなかった。

 しばらく経つと、


 グゥ〜ッ


 と美奈(みな)の腹の虫が(わめ)き出した。本来ならすでに飯を食べて終えている時間だし、それに加えて穏雅(おうが)が帰って来たからずっと怒っているのだ。その分のエネルギー消耗(しょうもう)も相まって、腹がいつもより空くのも(うなず)ける。


「怒ったら腹減った!」

「今だけは何も作れん…レトルトカレーが棚にあった筈だから…ご飯解凍して作って食べて…」


 穏雅(おうが)は台所の戸棚の方を見ながらそう言うと、美奈(みな)はプーッと膨れっ面になる。その顔は到底娘に見せられるものではなく、(きよ)が寝室で寝ていたよかったと穏雅(おうが)は心の中で少しだけ安堵(あんど)するのだった。


「もうっ! この貸しは大きいわよ!」

「そんな…」


 美奈(みな)は膨れっ面のまま言われた通り棚からレトルトカレーを、冷凍庫から凍ったご飯を取り出すと、それでカレーを作る。

 そしてカレーが完成したその時、


 グルルルッ…


「…」

「ごめん、俺も腹減った」


 リビングでのびている穏雅(おうが)の腹の虫も(わめ)き声を上げるのだった。穏雅(おうが)は少しばかり頬を赤らめながら美奈(みな)に目配せすると、彼女はハァッとため息をついてから、


「仕方ないわねぇ…ほら、あーん」


 とスプーンの上にカレーを乗せて、穏雅(おうが)の口元に運んであげるのだった。



 翌日、万全とはいかないが仕事に支障が発生しない程にまで穏雅(おうが)は回復していた。それはロボも同じようで多少ギクシャクするところはあるが、処刑執行人の仕事に励んでいた。


「おう、まだいたのか。死神の仕事はいいのか?」

「もうちょいこっちにいるよ。昨日の魔物の件もあるし、お前が回復したとしてもちょっとは経過を見届けなきゃだしな」


 穏雅(おうが)曰く、ロボがいない間の埋め合わせで来ているとはいえ、回復したら即さらばというわけでは無いようだった。ロボが立ち直ったとしてもまた同じ状況になりかねんよう、見守る義務を自分に負っていたのだ。そこに士圭二(しがふ)の異変も加わったのだから、地獄での業務が追加されてしまった。


「あれからどうだ、あの魔物は。つか融合時の記憶とか残ってる?」

「んー、それならうろ覚えって感じだ。士圭二(あの野郎)をボッコボコにしてるのは覚えたんだけど、詳しいことはどうもなぁ。何か、別の誰かさんの頭ん中で、ひたすら戦う様を見せられてる気分だったぜ」

「やっぱそうだよな、俺もそんな感じだ。もし記憶が正しければ、その誰かさんが士圭二(しがふ)に封印みたいなことした筈だけど、どう?」

「あー、それは俺もそうだな。多分、あれでちゃんと封印されてんだろ? まっ、それを昼頃に見に行くことにしてたんだけどな」


 穏雅(おうが)とロボは融合時のことを互いに確認し合いながら話していた。一応融合時の記憶はざっくりとではあるが残っており、その者が敵を封印したところも覚えていた。

そう話していると、ふと何か思い出したかのように穏雅(おうが)はロボに尋ねた。


「そういや融合時にちょっと思ったんだけどさ、俺らの他にもう1人いなかった? 何か子供みたいな…」

「あー、それか。そういやあの時は言えなかったな」


 ロボはチラッと自分の胸元を見ながら続ける。


「実はさ、俺が立ち直れたのはさ…また世継(よつぐ)に会えたからなんだ。心の中にいるって言うのが1番分かりやすいかな。もうずっと一緒、絶対に傷つけないし、誰にも傷つけさせない」

「ふぅん、それはよかったな」

(あの覚醒はそれが原因か…)


 ロボの言葉に穏雅(おうが)はロボの覚醒時のことを思い出し、そして納得する。どうやらロボは俺より先に、()()()()をしていたようだ。

 あの急激なパワーアップの理由を掴んだ穏雅(おうが)はふんっと笑ってから、その日の仕事に励むのだった。



 ーー



 それから時は進み、天の陽が地に沈む頃、



「……」



 1つの影が遥か天の世界より舞い降りた。

次回の投稿もお楽しみに

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