最強の誕生
おまたせしました
ゴッ…!
黄金の戦士である穏雅とロボの2人の拳が重なる。両者の手に片方ずつはめられた天界装置をぶつける形で。
しかし、
シン……
「ん?」
「えっ?」
融合どころか、互いの体も魂にも何の異変がない。その事実に驚愕する間も無く…
ガガッ!!
「っ!!」
「ぎっ!!」
迫り来る士圭二の腕に頭を鷲掴みにされ、
ズギャガガガガギャギャギャガガギャッ!!
「ぐぁっ! このっ!!」
「うぁあっ! くそ!」
大地に全身を叩きつけられ、そのままガリガリと引きずられる。当然融合どころでなくなった2人は何とかその手を振り解こうとわずかな神気を振り絞って抵抗する。
「無駄無駄ァ! 貴様ら2人がかりでも我を倒すことは出来んのだ!」
ブォンッ!! グォンッ!!
士圭二は勝ち誇ったように言いながらなお2人を引きずり回し、そして壁に向かって投げ付けた。2人は受け身を取ることも出来ず、
ドゴッバゴォンッ!!
全く同じタイミングで岩壁に叩きつけられた。そこから崩れ落ちながら穏雅は悩み、ロボは叶わなかった現実に憤怒する。
「ぐっ…な、何でだ…。言われた通りやったのに…」
「おいっ、テメェッ…ちゃんと俺に合わせたのか…っ?」
「合わせたよっ! だから何で出来なかったのか、今こうして悩んでんだろっ!」
「チッ…おい、遊んでる場合じゃねぇぞっ」
2人がそんな風に言い争っている間に、士圭二はグンと間合いを詰めて来る。最早2人に何で融合が叶わなかったのか悩んでいる暇は無い。しかし何が原因なのか突き止めなければ敗北は必至だ。
(何か…さっきの何がいけなかった? 考えろっ! 考えろっ!)
敵が迫りつつも穏雅は懸命に打開策を考えていた。だがそれは穏雅の動きを止めることに繋がってしまい、敵に無防備な姿を曝け出してしまう。
ドンッ!!
「おおおおおっ!!」
「っ!」
そんな穏雅のすぐ横を通り、ロボは士圭二に向かっていく。どっちみち打開策が浮かばないのなら、玉砕覚悟で立ち向かう、それがロボの出した答えだった。
しかし持てる神気の差は歴然。故にロボは呆気なく、
「雑魚がっ!!」
バキッ!!
「ぐぁっ!!」
ボゴォンッ!!
士圭二にはじき飛ばされてしまった。だが、
ゴォッ!!
「くそったれがァ!」
ロボと入れ替わるように穏雅も士圭二に突撃していく。このままでは答えが出る前に自身がやられてしまう、そう判断した故の行動だった。幸いその選択は、士圭二の攻撃後の隙を突くという、功を成す結果となる。
「らぁっ!」
ドゴッ!!
「ぬっ…ふっ」
「っ!」
そうして放った穏雅の拳は見事、士圭二の腹を抉っていた。
それでも、
「フハハハッ! どうやらすでに力を使い果たしているようだな! 拳に重みがまるでないぞ!」
敵にダメージを与えるほどではなかった。それほどまでに今の穏雅は弱っていたのだ。
「ダメかッ…」
「拳というのは…このことだっ!!」
ドグォ!!
ミシッ…
「うぐぅ…っ!」
士圭二のカウンターの拳は穏雅の眉間に喰い込み、そして脳をグラリグラリと揺らした。その威力は凄まじく、黄金の戦士となった穏雅ですら一瞬記憶が飛び、そのまま昏倒しそうになるほどだった。
バキイイイィィ……ィンッ
ゴシャアッ!!
穏雅は拳の威力を受け止めきれず、受け身すら取らずに岩壁へと叩きつけられた。
「……っ」
ズルッ…
崩れ落ちる穏雅は意識すら混同し、最早自分が何を考えているのかさえ分からない。昨日の傷を誤魔化してまで戦って来たツケが、莫大な疲労と痛みとなって降り注いで来たのだ。
だが、
「おい、穏雅、しっかりしろ」
「……ぅ」
ボロボロで意識も朦朧としている穏雅を、先に叩きつけられていたロボが肩を貸す。ロボも満身創痍にも関わらず、穏雅を気にかける姿はとても機械人形、もしくは殺戮兵器には見えない。
今のロボの姿は共に地獄を守って来た戦友そのものだ。
「ロボ…」
「お前がいなきゃダメだろう」
その心が通じたのか、穏雅は手放しかけていた意識を取り戻す。そして脚に力を入れ、何とか自分の力で立ち上がった。
「やれやれ…ったく、融合したいって言ってた側がやられてんじゃねえ」
「すまんな…」
「んで、次はどーすんだ」
立ち上がったばかりの穏雅にロボは次の手を尋ねる。最早、勝機は各々の手に付いている融合しかない。
「恐らく…神気の量が足りなかったんじゃないか? 相当な神気が必要だとか…」
「つまり…さっきより強く殴れってことか…でもそれだと…」
「ああ、神気の調整がクッソ面倒だろうな…それに…」
ギャンッ!!
2人の視線の先には、
「遺言はもういいかっ!? さっさとあの世に送ってくれるっ!」
砂煙を上げながら向かって来る士圭二の姿がある。
「もたもた出来ねぇな!」
「そりゃそうだ!」
その敵を前に2人は、何と視線を敵から外すという命取りな行動に出た。
だがそれは最後の希望なのだ。
(なっ…? 我から視線をそらしただと…?)
更にその一見すると不可思議かつ理解不能な行動が士圭二の動きをわずかに鈍らせてくれた。それは2人が拳をぶつけ合うまでの十分な時間となって。
ボワッ!!
2人は最早無いに等しい神気を纏い、
「行くぞっ!!」
「分かってる!!」
それを己が拳に乗せ、互いに大きく振りかぶり、
「せぇっ!!」
「ええっ!!」
巨大な掛け声を合わせ、
「「のっ!!」」
ゴォンッ!!!
拳をぶつけ合う。
その時、
シュオオオオオッ!!!
眩い光が融合から溢れ、瞬く間に2人の体を包み込む。すると光の中で互いの体が粒子状になり、そして少しずつ混ざり合い渦になって天に昇っていく。
「ぬぅっ! 小癪なっ!!」
バゥッ!!
そんな光の渦に嫌な予感がした士圭二は気弾を放つ。
ドォンッ!!
気弾は真っ直ぐ光の渦に向かい、そして光を埋め尽くさんばかりの爆炎が上から包む。
「フッ…フハハハッ!! 何をする気だったのか知らんが、所詮は無駄なことよっ!」
そんな光景を士圭二は高笑いしながら見つめ、ついに勝利を確信する。
その証拠に煙が立ち昇る場所に2人の神気は何処にも無いのだから。
「フフフハッ! よもやこれまでだな。我が意のままに操られておればここまで苦しむことも無かっただろうに」
そう言いながら士圭二は煙の跡を眺める。最早最後の希望は潰えたのか、そんなことを知らしめるかのように真っ黒な煙は昇り続ける。
その時、
ボゥォオオオオオオオッ!!!
ギュアァンッ!!!
黒き煙を打ち払い、全身から、いや脚を付けている大地からも輝く金色のオーラを放ち、天を貫かんばかりに昇らせている。
シュウウウウウウッ…
荒々しくも何処か穏やかで、高みを目指さんとする黄金に輝く姿はまさに『最強』、それ以外にその者を表す言葉なかった。
「なっ……何だ貴様は……」
突然現れたその者に士圭二は驚きを隠せず、しかも圧倒的過ぎる神気を前に思わず後退りしてしまう。
「…」
「ぐっ…」
その者は士圭二を見つめながら、黙ってゆっくりと歩み寄る。歩いている時でも地面からは絶えず煌めくオーラが昇り続け、鋭い瞳は士圭二の笑みの一切を奪い去る。
「そっ、その目つき…」
「…」
すると士圭二はその者の瞳に何かを重ね合わせてしまったのか、みるみる表情に恐怖の色が現れる。それは全ての生物が持つ、絶対的強者に自らの命を握らされることによる本能的恐怖だった。
そして、その怯える姿はかつて自らを殺した者を、名無しの怪物を前にした時と全く同じだった。
フッ…
「っ!!?」
そうして怯えているうちに、忽然とその者は消えてしまった。何処へ行ったのか、と目を見開き、探そうと首を動かそうとした次の瞬間、
ドギュオッ!!!
「グボァアッ!!?」
猛烈な痛みが腹部に走り、遥か後方へと吹き飛ばす。いったい自分が何をされたのか、そんなことも分からぬうちに、
ドォッ!
「…っ!!?」
何か巨壁にぶち当たったかのように体が止まる。衝撃で思わず倒れそうになるところを何とか堪えた士圭二はパッと振り返るとそこには、
「きさっ…」
「…」
先程まで自分の前にいた者がいた。だがそれを視認し、脳が処理するまでのコンマ数秒の間に、
ズバギッ!!!
「むぁっ!!?」
その者は更に士圭二を蹴り飛ばす。
しかもそれは瞬き1つにも満たないほどの時間の話なのだ。
それからは全く異次元なものだった。本当に何が起きているのか士圭二を含め誰1人として全く理解が追いつかない中、ただ1人だけその次元に対応していた。
徹底して追い詰め、敵に何も許さない様はまさに最強。融合から30秒にも満たないのに、もう士圭二の体から一切の自由を奪っている。
「グハアァ……何故だ、何故貴様に、何処にそんなに力がァ……」
最早まともに立つことすら出来ない士圭二は精々口から言葉を発する以外無かった。
だがそれでもその者は容赦をしない。
「…」
ビュォオオッ!!!
黙ったまま両腕に神気を纏い、それを一気に収束させていく。その神気の量と密度は穏雅とロボの全てを足し合わせても決して満たないほどに。
「まっ、待てっ!! やめろっ!!」
それを前に士圭二は怯え、許しを乞うことしか出来ずにいた。
そしてついに決着の時。
両の腕に収束した神気はやがて掌へと伝わり、
キィイイイイッ!!!
時空を切り裂かんばかりに凄まじい音を立てていく。
そこから放たれるや神気の光線は、地獄の鬼の名を冠する神の槌。
ドァォオオオオオオオオオオッ!!!
ズゥゥウウウウウンッ!!!
名付けるならば、『マレィル・インティスカウントディ』
次回の投稿もお楽しみに




