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アンバランス・ワールド  作者: がおー
第2章 〜うちの主人は死神様〜
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最後の希望

おまたせしました

 ビュォオオッ……


 その雄々しき姿を取り巻くように、オーラの突風が(うな)る。更にロボの激しい怒りを体現するかの如く炎のように立ち昇るオーラには火花が荒ぶる。そして金色(こんじき)に輝く瞳にはただ1つ、敵の姿しか映っていない。


「…」


 だがロボは自分の覚醒を堪能する間も無く、オーラ溢れる自分の手を見つめる。

 そして、ギッと鋭い目つきで士圭二(しがふ)を睨み付けるや、


 ドヒュッ!!


 電光石火(でんこうせっか)に等しき速度で殴りかかった。しかし、



 ドガッ!!



「ぉおっ!!」



 キィイ……ンッ



 殴りかかった瞬間、待ち構えていた士圭二(しがふ)にフルカウンターで返された。突っ込んでいったロボは倒れ伏せる穏雅(おうが)の真横をすり抜け、そして遥か彼方へと吹っ飛ばされ見えなくなる。


(…っ!)


 そんな光景を見ているしかなかった穏雅(おうが)は思わず呆気に取られてしまう。


「口程にも無いやつだ」


 殴り飛ばした士圭二(しがふ)は遥か彼方に吹き飛ばした方を見ると、ニタリと笑いながらそう言った。そして、とんだ見掛け倒しだった、最早敵にすらならん、との烙印(らくいん)をロボに押すと、今度こそトドメを刺そうと穏雅(おうが)に歩み寄る。



 だが、



 ギュオッ!!



「だっ!!」



 ガァンッ!!



 凄まじい神気(じんぎ)(まと)いながら戻って来たロボによって阻止された。ロボは一気に間合いを詰めるや、士圭二(しがふ)に渾身の蹴りをぶち込んだ。あいにくその蹴りは防がれてしまったものの、ボロボロの穏雅(おうが)から敵を引き剥がすことは出来た。


「ぬうぅ! 貴様!」


「テメェだけは許せねぇっ!!」


 ガガガガガガガガガッ!!


 そしてロボと士圭二(しがふ)の攻防が始まった。ロボは初めて目覚めた力にも関わらず、それを見事に使いこなしている。強くなった央力(おうり)穏雅(おうが)の戦いを見たことすら無いのに、だ。

 だがロボはこのことに関して一切の疑問を抱かない。その答えを今ここで出すことに意味は無いと悟ったからだ。


 長きに渡って力を手にして来た自身だから、新たな力に対応出来るのだ、とひとまずの答えを片隅に置いて。


「あ…アイツ…」


 そして生まれ変わったロボの姿を穏雅(おうが)は腰を下ろしながら眺めていた。今は体を全力で休めるべきだとし、黄金の戦士への変身を解いて。すると変身を保つために巡らせていた神気(じんぎ)を使う必要が無くなるので、幾分か体が楽になる。

 見るとロボと士圭二(しがふ)は互角と言っていいような戦いを繰り広げており、どちらが優勢という雰囲気は無かった。



 しかし穏雅(おうが)の顔は晴れない。その理由(わけ)は、



(アイツ…神気(じんぎ)を使い過ぎてる……。このままじゃいずれ押されるな…)



 猛攻による著しいロボの神気(じんぎ)摩耗(まもう)だった。今のロボは怒りのままに攻撃を繰り出しているので、その激しい感情に合わせて神気(じんぎ)の消費量も増えているのだ。いくらロボが全身機械だとしても、このままではいずれ神気(じんぎ)は底をつき、窮地(きゅうち)に立たされるのは目に見えている。そうでなくとも今の士圭二(しがふ)は修行を終えた自分自身の力を超えるほどの力を手にしてしまったというのに。


「ぐっ…手間をかけさせるな…」


 穏雅(おうが)はズタボロの体を強引に起き上がらせると、その時が来るまでわずかに残った神気(じんぎ)を集中させた。そして呼吸を整え、少しずつでも体力を取り戻しながら、ロボの戦いの行方を見届ける。



 ()()()()()に全てをかけるために。



 バギッ!!



「ぐわっ!!」


「かっ、威勢だけはよかったが、実力が追い付いていなかったな」


 それから2人の戦いは穏雅(おうが)の予想通りの結末に至った。案の定ロボは神気(じんぎ)の使い過ぎ故、バッテリーの消耗も相まってヘロヘロの状態になってしまった。何とかまだ変身は保てているものの、(いかづち)(まと)っていた輝かしかったオーラはひゅうひゅうと弱々しい。


「ちくしょっ…」


「少しでも我に勝てると思ったか! 馬鹿めが!」


 ドガッ!!


 士圭二(しがふ)は勝ち誇ったように叫びながら、ボロボロのロボを殴り飛ばす。疲弊(ひへい)しきったロボは無惨に宙を舞い、またしても彼方へと消える…



 ガシッ!!



 ことはなかった。


「……っ、穏雅(おうが)…」


「飛ばし過ぎだ馬鹿。神気(じんぎ)を湯水みたく使いやがって」


「…るせぇっ」


 殴り飛ばされた場所に駆け付けた穏雅(おうが)はしかとその両手でロボの体をキャッチしたのだ。しかしそんな悠長(ゆうちょう)に話している暇はない。士圭二(しがふ)が2人に追撃せんと気弾の雨を降らせて来たのだ。それを全弾かわせるほどの力は満身創痍(まんしんそうい)の2人には残されておらず、


 バグォオオオッ!! ドグォオオオ!! ズドドドドッ!!


 爆炎の威力を全身で味わう他なかった。


 シュウウ……


他愛(たわい)も無い…」


 やがて雨は止み、辺りにはもうもうと濃い煙が立ち上がる。ただ体から発する気を球に変え、放っただけでここまでの威力を叩き出せるのは流石魔物というほどだった。それを表すかのごとく煙の中に2人の影は失せている。傍目(はため)から見ればあの豪雨に2人ともやられてしまったのように見える。

 しかし士圭二(しがふ)の顔にはまだ勝ったという確信の色はない。士圭二(しがふ)は首を回しながら煙のすぐ側を見渡し、まだくたばっていないであろう2人を探す。


 そしてその読みは外れておらず、


「ゼェッ…ゼェッ…くそっ、好き放題打ちやがって…」

「ぐっ…俺は負けねぇ、必ずアイツを地獄に送ってやる…」


 2人は気弾(きだん)を受けたところから少し離れた瓦礫(がれき)の山の中に身を隠していた。被弾したのと今までの疲労も相まり、2人の変身は解けてしまっている。だが逆にそれが功を成し、小さくなった神気(じんぎ)士圭二(しがふ)の目から逃れる結果に繋がった。


「落ち着け、ロボ。恐らくヤツは俺達がまだくたばってねぇって思ってる…」

「そうか…そうだな、不意打ちにはもってこいだ」

「おいやめろっ、そんなことしたら即バレちまうだろっ」


 ロボはふんっと怒りの炎を燃やし、士圭二(しがふ)の迎撃を試みた。しかしそうすれば神気(じんぎ)の流れが敵にバレ、失敗に終わる未来しか見えない、と穏雅(おうが)は止めた。


「じゃあどうしろってんだっ。このまま互いに体力が戻るまで隠れてろってのか。けっ、お前はそれができるからいいよな。機械の俺にはそんなの出来ないっ」


 するとロボはそう言ってプイッと不貞腐(ふてくさ)れる。体が機械で構成されているロボにとって時間をかけるということはそれだけバッテリーを消耗するということなのだから。


 しかし穏雅(おうが)は違った。


「違ぇよ。そんなことしなくてもいいもの持ってんだから」


 そう話しながら穏雅(おうが)は自分の両手に付けているものの片方を取り外す。


「そういやお前変なもの付けてたんだな。オシャレか?」

「こんな時にオシャレなんぞするかよ。いいか、これは()()()()()だ」

「あ? 何言ってんだ、こんな手袋が最後の希望だと?」

「いいから黙って左手に付けろ。俺は今左手が使えねぇんだから」


 ロボはわけも分からないまま黙って言う通り自身の左手に付ける。謎の手袋の感触はどこか機械的な硬さがありながら、指の動きに何の支障もきたさない不思議なものだった。



「これは俺が天界の大天使から直々に言われたことだ。あんまり長く説明は出来ないから、とにかくまずは俺達の神気(じんぎ)の量を合わせるぞ、いいな」

「何か考えがあるんだな…信じるぞっ」



 それは穏雅(おうが)が天界での修行後に四大天使、ラフサナファエルから貸し出されたものだった。忘却(パラデヴィッド)の間(・オブリヴィオ)から出た穏雅(おうが)は少しの間そこでラフサナファエルに待たされた。そしてラフサナファエルが戻って来ると同時に手渡されたものこそ、今穏雅(おうが)とロボの手にはめている天界装置、融合(カリオヌゥム)だった。


 これは文字通り2人の者を1人に融合させる装置であり、それで圧倒的な力を持つ戦士を誕生させることが出来るのだ。



 ラフサナファエルはこの天界装置の性能、及びそれがもたらす効果を知るために弟に実際に融合してもらうよう命じたのだ。ラフサナファエル曰く、


融合(カリオヌゥム)を使うには実力が近く、かつ黄金の戦士並の神気(じんぎ)を持ってないと出来ないからな。使い方は互いの右手と左手にはめて、ぴったり同じ神気(じんぎ)(まと)った拳をぶつける。そうすれば融合出来る筈だ」


 とのことだ。それに対し当時の穏雅(おうが)が、


「融合したら元に戻れるのか?」


 と問うと、


「ちゃんと解けるよ。多分融合するとしたら、恐らくロボってやつとやるだろ? 流石に央力(おうり)とはやらなそうだしな。それと融合した後だが、今お前が持ってる並の神気(じんぎ)なら時間は5分もねぇだろ。まぁ、相手には融合係数ってのがあって、これは実際にやってみなきゃ分からないんだが…それが高過ぎると最悪永遠にそのままかもしれないんだよな」


 そう答えが返って来た。その答えにはぁっ? と穏雅(おうが)驚愕(きょうがく)するが、ラフサナファエルは恐らく大丈夫だろっと強引に丸め込んだ。



 つまり穏雅(おうが)の思う最後の希望とは、自身とロボの融合により誕生する絶大な力を持っているであろう戦士のことだったのだ。


「…ってわけだ。ここまで聞いて、お前はやるか?」


 穏雅(おうが)は兄から聞いた話の要所だけを縮めて話し、そしてロボの答えを尋ねた。

 兄の言う通り、もしも自身達の融合係数が高く、永遠に一体化したままだとしたら。そうでなくとも生まれた戦士が今の敵に絶対負けない保証もない。本当に一か八かの賭けなのだ。



 そんな賭けを前にロボは…



「……やるしかねぇな、どっちみち今のままじゃ勝てねぇだろう…」



 と覚悟を決めた。



「よし、ならやるか。いいか、1、2の3で同時に黄金の戦士になるんだ。それから神気(じんぎ)の量は俺がお前に合わせる形でいく。そしたら互いに拳をぶつける、分かったか」

「了解だ、それじゃ…1っ」

「2の…」



 ゴウッ!!



「「3っ!!」」



 その掛け声と共に2人は全く同時に黄金の戦士となる。もちろんそれは敵に自分らの位置を伝えるに等しく、士圭二(しがふ)はそれを感じとるや猛スピードで2人に迫った。

 そんな状況下でも穏雅(おうが)は冷静に自分の神気(じんぎ)の量をロボの神気(じんぎ)の量に合わせた。咄嗟ながらもしっかり合わせられるのは天界での修行の賜物(たまもの)だろう。



 そしてついに…



「やるぞっ!」

「ああっ!」



 ゴッ…!



 迫り来る敵を見据えながら、2人は互いの拳を重ねた。

次回の投稿もお楽しみに

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