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アンバランス・ワールド  作者: がおー
第2章 〜うちの主人は死神様〜
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それぞれの家族

おまたせしました

「あと10日後…10日後が世継(よつぐ)、君の誕生日だ」

「……」


 ロボはケースの中にいる世継(よつぐ)に語りかけながら、カレンダーの日付を見る。今日の日付から10日後に当たる日に、赤い文字で『誕生日』と書かれてある。その日はまさしくロボの息子の誕生日、すなわち人口生命および内臓されている生命補助装置の起動実験日だ。ロボはあと10日までに迫った息子の誕生を今か今かと待ち望んでいるのだ。

 普段の冷酷かつ鋼のような姿とは正反対に、頰を緩ませらしくなく鼻歌まで歌っている。


「ジッ…」


 そんなおどけているロボの姿を究極の闇の1人である目を司る闇(アイルム・ピキュル)は物陰から手についている目で見ていた。アイルム・ピキュルは目のタトゥーを司る闇の名の通り、3つ目の顔に加え、身体全身には目の模様のタトゥーを入れている。それはただのタトゥーではなく、1つの目として使えるのだ。それを駆使してロボの浮かれる姿を目に焼き付けては、主人である央力(おうり)の笑いの種にしているのだ。


「むっふふー、おもしろおもしろ」


 目を司る闇(アイルム・ピキュル)は盗撮のごとくジッとロボの姿を眺めては、その姿を楽しんでいた。普段のロボなら自分の家に(ネズミ)がいることくらいすぐ気づき、即座に排除するだろう。

 だが今は丹念に育てた愛の結晶にほとんどの意識を持ってかれているから、その存在(ネズミ)に気づきもしない。ましてやアイルム・ピキュルは央力(おうり)の娘の中ではさほど強くない方だから、始まりを司る闇(アダム)力を司る闇(グロリッサ)火を司る闇(イリェ)のような娘達と比べて、発する神気(じんぎ)の総量も殺気も大したことないのだ。


「にひひ…ご主人様はさぞ喜ぶだろなぁ…」


 つまりこうして物陰に隠れていれば意外にも見つからないものなのだ。それを生かして目を司る闇(アイルム・ピキュル)はロボの姿を目の中に入れ続ける。その時間は約1時間近くにものぼり、最後にはアイルム・ピキュルの方が疲れて来てしまった。何せ相手は疲れ知らずの殺戮兵器、その気になればバッテリーが続く限りいくらでも息子と付き合える。しかも一向にこちらに気づかないもんだから張り合いも無い。

 そんなロボの前にとうとうアイルム・ピキュルは折れ、影を(アーピリルト)司る闇(・シャビィ)を呼ぶとその影の中に飛び込んで主人の元へと帰って行った。


「どうだった? ロボってやつの息子はさ」

「別に、ちょこっと強いかなってぐらいの生物だったよ。内臓の他にところどころ機械とか使ってるから、どちらかと言うとサイボーグに近いのかな?」

「ふぅん、ま、ご主人様が1番聴きたいのはロボのやつの浮かれ顔でしょ?」

「それならバッチリ焼き付けたから問題ナッシング」


 影を(アーピリルト)司る闇(・シャビィ)の影の中で、2人はそんな会話をしながら主人の元へと泳ぐように向かう。アーピリルト・シャビィは自分自身を他の影と一体化させることが出来、それを使ってロボの家までやって来たのだ。しかしたまに影が途切れていたり、場所の関係上行き辛い場所、もしくは遠い場所にある場合なんかは、空間を司る闇(シュッペ)の力で空間を捻じ曲げてもらったりするのだ。


「あっ、シュッペ。わざわざ空間作ってくれてありがとねー」

「ペッ! ロボ(コイツ)ん家なんて全然遠く無いじゃないか! わちの力なんざ使うまでも無いだろ!」

「まーまー、減るもんじゃないし、いいじゃん」

「いやいや、疲れんだよこっちは! こんな短い距離でもちゃんと捻じ曲げてんだからさ!」


 しかし影を(アーピリルト)司る闇(・シャビィ)は面倒だからと地獄とロボん家というさほど遠くない距離でも空間を司る闇(シュッペ)に力を使わせる。能力の都合上よく一緒にいる2人は共同作業を終えるや、こんな風に喧嘩するのだ。

 2人の喧嘩を前に完全に蚊帳(かや)の外な目を司る闇(アイルム・ピキュル)は2人の力が合わさらないと主人の元に帰れないから、ただボーッと2人の喧嘩が終わるのを見ているしかない。


「…ってな感じでしたね」

「はっ、そうかそうか。ロボ(アイツ)の息子もそろそろ生まれんのか。さてさて、どんな子に育つかねぇ」


 そしてやっとこさ戻って来れた目を司る闇(アイルム・ピキュル)はロボの家で見て来たことを主人にありありと語った。時に自分の力を使い、その時見た景色を主人に見せながら。話を聞き終えた央力(おうり)は笑い疲れたのか、アイルム・ピキュルに礼を言うと道具を司る闇(デビュヲート)に作らせたベットの上にドフンと寝転がった。


「いやぁ、笑った笑った。まさかロボ(アイツ)も息子を作ろうとするとはね」

「えぇ、ご主人様を始め、『究極生命体の力』を持つ者もつがいを持ち、子供を産んだと聞きますからね。つまりこれで地獄の3匹の鬼は全員家族を持ったということですか」

「えっ、なにそれ。俺らってそんな風に言われてんの?」

「あら、ご存知なかったのですか? ノートゥリュアンが外から仕入れて来た噂ですよ。ご主人様、ロボ、穏雅(おうが)という3人を処刑人達はまとめてそう呼んでいるらしいです」


 側にいた始まりを司る闇(アダム)もするっと静かにベットの上にやって来ると、落ち着いた口調でそう言った。アダムの口から出た『地獄の3匹の鬼』ってのは噂を司る闇(ノートゥリュアン)の情報曰く央力ら3人のことをまとめてそう呼んでいるらしい、と。一瞬央力(おうり)の頭を、もしやノートゥリュアンがそんな噂をばら撒いたのではという考えがよぎる。しかし話を聞く感じ、どうやら娘達が生まれる前からあるっぽい噂だと央力は察した。


「へぇ〜、3匹の鬼ねぇ。穏雅(あの馬鹿)はともかく、俺やロボが鬼って呼ばれてんのは何でだよ。別にツナなんか生えちゃいねぇのに」

「そんなこと(わたくし)に聞かれても困ります。強いて言うなら、究極の闇となった時、ご主人様の髪はずっと伸びるじゃないですか。その時、頭の横から2つピロッて寝癖みたいに跳ねる髪の毛があるんですよ。遠目から見たら鬼に見えなくも無いかと」

「いやいや、究極の闇に目覚める前から呼ばれてたって言ってたじゃん。ひょっとして前の俺の姿もそんなんだった?」

「…知りませんっ」


 始まりを司る闇(アダム)は突き放すみたくそう言った。そんな娘の姿に央力(おうり)は頭を掻きつつ、今日の夕食は何だと話題を変える。


「そうですね…今朝、テンフォミュラが今日のご飯、楽しみにしてろと張り切ってましたから…恐らく魂の残骸と人肉の炒め物か和え物ではないでしょうか」

「そっか、前は地獄の蟲の蒸し焼きがまるまる1匹出て来たからな…美味かったけど」


 央力(おうり)は前に食を司る闇(メルク・ミルュク)が出した蟲の蒸し焼きの味を思い出しながらそう言った。見た目とは裏腹にブリッと弾力性の強い歯ごたえ、そして肉を噛み千切った後に溢れる蟲の体液の濃さは今でも口の中に再現出来る。


「しかし夕飯時まではまだ時間がありますよ。いかがなさいますか?」

「寝る、夕飯時になったら起こしに来て」

「分かりました。モルーシュとシュシュクェ=ルティ、ヨロジューノに伝えておきますね」

「アイツらかよ…前に鼓膜破られたんだよなぁ…ま、いっか」


 央力(おうり)は自分の体の上に布団をかけると、あの3人に目覚めさせられる時のことを心配しながら目を閉じる。始まりを司る闇(アダム)が言う3人は主に音に関係する娘達だ。前に起こすよう音を司る闇(モルーシュ)に頼んだら鼓膜が破れん…いや、実際に破れる並の爆音を出されたもんだから、冗談抜きで目覚める時のことが不安になる。そんな不安を感じつつ俺は布団を被った。



 ――



穏雅(おうが)〜、夕飯まーだー?」


「…はいはい」


 それとほぼ同じ時、穏雅(おうが)の家では、ちょうど穏雅(おうが)が帰って来た。いつも通り穏雅(おうが)が帰って来るなり妻である美奈(みな)は駆け寄って飯を寄越せと言って来る。しかしそんな性格でも娘の(きよ)の世話をキチンと行っているらしく、ちゃんと(しつけ)も出来ているようだ。そんな彼女は椅子に巻き付くように座りながら、夫の料理が出て来るのを待った。


「ねぇねぇ、穏雅(おうが)


「…なんだ」


「なんかさ、噂によるとロボも子供を作ってるんだってさ。どんな子供かは知らんけど」


「…へぇ」


 美奈(みな)(きよ)をゆさゆさと揺らしながら台所に立つ穏雅(おうが)に言った。どうやらロボの子供の噂はかなり広まっているようで、たまにしか出歩かない彼女の耳にもそのことは届いて来るようだ。


「何で今になって子供何か作るんだろね〜。まさかうちらに嫉妬したとか?」


「…」


「それともあれかな? 何処ぞのヒーローみたくさ、俺は守るべき者がある、だからそのために強くなるっ! 的なくっさい理由だったりするのかな。そしたらちょっと面白いね」


 美奈(みな)は笑いながらそう言う。しかし、


「…いや、強くなるにはあらゆる手を尽くすだろ。アイツは」


 とどこか暗く、強い口調でそう言った。冗談混じりの自分に対し、穏雅(おうが)はどこかマジに受け取っているようで、その態度に思わず彼女はドキッとしてしまう。


「そ、そぉかなぁ? でも子供作っただけで強くなれるんなら苦労ないでしょ?」


「…そりゃそうだ。強くなるってんなら…」


 そう言いながら穏雅(おうが)はピタリと作業を止めると、スタスタと美奈(みな)に歩み寄り…



 …ビッ!!


「……っ!!」


「こんぐらいはやれないと」



 と美奈(みな)の顔に向かって自分の拳を振るった。幸い寸止めだったものの、そこに一切の躊躇(ちゅうちょ)は無くその気になればいつでも愛人の顔を吹っ飛ばしていたであろう事実があった。


「な…何よ……何なのよ……」


 いつもの美奈(みな)穏雅(おうが)が寸止めするってのが分かるはずなのに、この時はどうしてもそう思えなかった。


「ゥ…ウェエエッ!!」

「あっ、き、(きよ)っ…ごめんね、ほぉらよしよし」


「…」


(どうしちゃったのよ…穏雅(おうが)…)


 美奈(みな)(きよ)をあやしながら、何も言わない穏雅(おうが)を睨みつける。普段なら即頰を引っ叩くのだが、今だけはどうしてもその手が出せなかった。


 それは娘を抱いていたせいだろうか…それとも…。

次回の投稿もお楽しみに

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