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アンバランス・ワールド  作者: がおー
第2章 〜うちの主人は死神様〜
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変わらない日々

おまたせしました

 ザフッ


「っ!」


「よぉ」


 地獄で罪人を裁くロボに、穏雅(おうが)が気さくに話かける。


「お前が来るなんて珍しいな。つかその後ろのやつ何だ」


「コイツか? 現世じゃ結構強い方のやつだったみたいだから、念のためってことで俺がここまで輸送して来たんだ。もしもここまでの道のりで暴れられたら困っだろ?」


「まぁな、そいつはご苦労なこった」


 穏雅(おうが)の言う強いやつは両手足に手錠がはめられ、ところどころボロボロになった体には鎖が何重にも巻かれている。それは穏雅(おうが)も同じことから、現世で壮絶な戦いを繰り広げたのだと想像するに難くは無かった。


「刑は?」


「とりあえず牢獄に閉じ込めとけってさ。一応そこまで俺がやっとくよ」


「へいへい、牢獄付近には央力(おうり)の娘達がいっから気ぃ付けろ」


「…分かってる」


 穏雅(おうが)はジャラッと鎖を引っ張って牢獄まで連れて行った。その姿にロボは、元同僚とは言え今はもう部外者な穏雅(アイツ)がわざわざ輸送、投獄までやってくれるとはと少しの感謝と疑問を同時に抱いていた。しかしそこは同僚の(よしみ)ということで抱いた疑問を適当に流し、すぐさま自分の仕事に戻った。

 そして穏雅(おうが)央力(おうり)のいる施設まで連れて行くと、適当に空いた牢獄の中に士圭二(しがふ)を入れた。しかしその手つきは超が付くほど雑かつ適当で、とても自分らに匹敵するほどの魔物を収監するようには見えなかった。


「…計画の実行は、我の肉体(からだ)に怨念が集い、回復しきるからだ。地獄(ここ)にはたっぷり恨みや怨念が集っているようだからな」

「…」

「それまで貴様は普通に過ごしていろ、分かったな」


 士圭二(しがふ)の言葉に穏雅(おうが)は黙って(うなず)くと、牢の錠前を閉めた。そしてそのままスタスタと牢獄の施設を後にする。


「そんじゃな、俺はもう帰るぜ」


「おーう、お疲れー」


 穏雅(おうが)は雑に受刑者を収監したことを一切表情に出さず、とても自然に別れの挨拶を告げた。それこそ長きに渡る腐れ縁で繋がってるロボでさえも分からぬほどに。

 そしていつもと変わらぬ日々が過ぎて行く。穏雅(おうが)は毎朝のトレーニング、朝食作り、仕事、夕飯作りをやり通していく。央力(おうり)は娘達の世話という(かせ)を朝から晩まで付けられることとなった。普段は央力(おうり)の体、すなわち究極の闇の中にいる107の娘達がその中で喧嘩や問題を引き起こしまくるのだ。

 それだけならまだしも、央力の体(究極の闇)を脱走するもんだからその親はいつも頭を悩ませてる。そんな生活を続けてるもんだからロボと戦うことはもちろん、修行の時間さえ無くなった。しかしそれが逆に央力(おうり)を自分の闇という檻の中に縛り付けることで、刑は(とどこお)りなく経過していった。


 最後にロボは…


「培養液濃度、問題無し。脈拍、呼吸、共に正常。体温は32.82(から)33.25℃の数値を計測、正常と判断。擬似血液中の水分及び赤血球濃度値、正常、鮮度良好」


 ピピピッ


「よし、接続部位のDNA(遺伝子)構造を再計算。肉体の拒絶反応が出ないか再度確認。それから擬似心臓の心房の稼働と心筋細胞の動きを確認しろ。ラグや硬直が存在したら最初からやり直せ。あと擬似肺胞部の毛細血管の配置も念のため確認だ」


 いくつもの特殊培養液が入ったケースに浸かっている内臓や肉体に何度も目を通しては、コンピュータに動作の確認を要求した。そのケースには内臓の部位名と、共通した名前が書かれたシールが貼ってある。


「あと少しだよ…『世継(よつぐ)』」


 ロボの瞳はまるで我が子を見守る母親のごとく優しく、そして待ち遠しそうだった。


 コンピュータ内に表示されたその名は、『成長機能搭載型半竜人型人工生命体、随所生命維持及稼働補助装置内臓』


 その呼称名は『世継(よつぐ)』とあった。


世継(よつぐ)…何か音楽でも聞くか? 子宮内にいる人間の赤子も外からの音楽を聞いてるらしいからな」


 ロボはそう言いながら世継(よつぐ)の頭部が入っているケースにスピーカーを設置すると、脳波計測装置の値に気を配りながら再生ボタンを押した。


 ポロロッ…ポロンッ……ポロロロッ…


 そこから流れて来たのはオルゴールの優しい音色だった。


「聞こえるか? 世継(よつぐ)。この音はオルゴールって言って、シリンダーっていうのが回転することで振動弁が音を出すんだ。あいにくこれはそれを録音したものだから生の音じゃ無いけどね。世継(よつぐ)が生まれて来たら本物を聞かせてあげるよ」

「……」

「あっ、曲はね、『今日の君にさようなら』っていう名前なんだ。何か知らんけど俺はこの歌が好きでねぇ、わざわざ専用ディスクまで作っちゃったんだ」

「……」


 ロボは笑顔で頭部のみの世継(よつぐ)に話しかけ続ける。別に何ら反応が帰って来るわけでも無いのに。しかしそれでもロボは話しかける、子の生誕を待ちきれぬかのように。それからある程度話し終えたよか、ロボはコトッと頭部の入ったケースを元の位置に戻し、他の体及び内臓の状態が正常値を示しているのを確認する。

 そして誰にも聞かれないことをいいことに、何やらポツリポツリと恥ずかしそうに語り出した。


世継(よつぐ)…お前を作ったのは、穏雅(おうが)央力(おうり)が家族を持ったからなんだ。アホみたいな理由かもしれないけど、俺も家族を、お前という子供を持てたら…アイツらみたいに笑えるかなって思ったんだ」

「……」

「俺には家族なんていないし、そもそも殺戮兵器がそんなもの持つなんておかしいんだ。でもさ、何か知らんけど心を持っちゃったからさ、おかしいものも欲しくなっちゃうんだよ」

「……」


 ロボは元の場所に戻した頭部のケースを撫でながら、


「だから…親として必ずお前を守るよ。殺戮兵器だけど、心を持って愛情を注ぐと誓おう…」


 そう我が子に誓った。ロボが世継(よつぐ)を生んだ理由は、家族がいる幸せをありありと見せつけられたからだ。家に帰れば迎える者も、お疲れ様を言う者も、愛情を注いでくれる者も、そんなの誰もいなかったからだ。

 だから心を持った殺戮兵器は、世継(よつぐ)という家族を作ったのだ。それが自分の孤独を埋めてくれると信じて。


「ふふっ、何からしくねぇ台詞(セリフ)だな。世継(よつぐ)、悪いけどこれ聞いてたら、聞かなかったことにしてくれな。ちょっと恥ずかしいから」


 ロボはロボットらしく無くこっ恥ずかしくなり、目覚めていない世継(よつぐ)にしぃーっと口に指を当てる姿を見せた。そして部屋の照明を消すと、扉をパタンと閉じて部屋を後にした。


 そうして日々は過ぎて行く。穏雅の娘である(きよ)はすくすく成長し、央力(おうり)は朝昼晩といつでも娘達に腕を引っ張られていた。そしてロボの息子は今か今かと誕生と祝福の時を待つ。


「お前、子供作ってんだってな。噂を司る闇(ノートゥリュアン)から聞いたぜ。いやぁ、面白いことすんなぁ、せいぜい幸せにしてやんな」


「子育てか…ロボが出来んのか?」


 央力(おうり)穏雅(おうが)に子供を作っていることがバレ、うりうりと揶揄(からか)いの言葉を受けながら月日は流れていく。


 何事も起こらず、ただ時間だけが過ぎていく。収監の刑期も、娘の成長も、息子の誕生も何もかも。

次回の投稿もお楽しみに

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