制裁
おまたせしました
「さぁて、随分好き放題やりやがったな。覚えてねぇからって免罪符にゃあならねぇぞ」
「へっ、んなの俺が知ったことか。俺は新しい力を得て、不死身不老不死になった。その過程に何があろうがどうでもいいだろ?」
俺はロボに髪を掴まれて倒壊した施設の中を運ばれる。通り過ぎるほとんどの牢獄は檻がひしゃげて使えそうにないし、しかも中には喰い千切られた肉片や血だまりでいっぱいだ。ロボの話を聞くにそれをやったのは俺だとのことだが、だからといって胸が痛むわけでもなかった。会話したことも会ったことも無い連中をわざわざ気遣ったりなどしない。
そしてロボはまだ使えそうな牢獄を見つけると、ガチャンと扉を開けてそこに俺を投げ込んだ。
ボコッ
「いでっ…ったく、覚えてろ」
受け身など取れないからゴロゴロと冷たい床を転がっていく。そしてやっと止まったかと思えば、俺の頭は逆さ状態。そんな俺に対しロボは、
「お前の刑が決まるとしたら明日の昼頃かもな。そうで無くともまた来るだろうぜ」
とだけ言って立ち去ろうとした。また来るってのはきっと拘束器具とやらの取り付けだろう。そんなものが今更役に立つとは思えないが。
「さっき言ってた拘束器具のことか? んなもん役に立たんだろ」
「当然だ、でも上は何かしらの形でお前に刑罰を与えたいんだよ。どんなにちゃっちいものでもな。そうでないと世間様は納得しねぇんだよ」
「ふんっ、お前は随分臆病なやつらに従ってんだな」
「金さえ払えば十分だ」
ロボはそう言い残して去った。その影には何かを見限っているような、または諦めているような、そんな態度が見えた。
まぁ、何となく俺は分かる。もう地獄には俺を裁ける拷問が存在しないのだと。牢獄から脱獄しても何度も何度も戻されるのがその証拠だ。俺らは強くなり過ぎたのだ、だからロボが従ってるやつらも俺を裁けない現状に飽き飽きしてるのだろう。
ま、俺には関係ないし、さらにロボや穏雅との決着も付いて無いし、それに娘達のお世話もしなくてはならない。不死身だから時間はたっぷりある、しばらくは退屈しないだろう。
そう思いながら俺は牢獄の中でゆったりと体の完成を待った。
それから俺は特にすることも出来ることも無いので、ぼーっと床の節目でも数えながら暇を潰した。しかし見える範囲のものを全部数え終えてもまるで体が出来ている様子はない。俺はふぅむとため息してから何か考えることは無いかと思考を巡らせた。
すると先ほど自分の体が何者かに痛めつけられていて、その様を穏雅とロボに笑われたことを思い出した。そう思うと腹わたが煮え繰り返り、カッカカッカと頭に血が上る。恐らくそれを知ってるのは始まりを司る闇を始めとした娘達だろう。そう思った俺はプンプンと鼻息を荒らげながらどんな風に叱ってやろうか考えた。と、その時…
ムズムズッ…
「んっ…? んふっ…ぐっ…な、何だこれ…ふはっ! なっ、や、やめろぅ! このっ! はっ、ははっ! ぐっ…くぅ!」
突然体の至るところがくすぐったくなり、ビクンビクンと頭だけのたうちまわってしまう。俺は頭をぶんぶんくねらせながら必死にそのくすぐったさに抗うが、そもそも体を動かせないので意味は無かった。俺はヒィヒィと呼吸が出来ない苦しみ、しかもどれほど苦しんでも死ぬことが出来ずいつ終わるかも分からない恐怖を味わい続ける。
(じ…地獄だ…っ!)
この時ほど、俺はここが地獄だと味わったことは無かった。
そしてついに『究極の闇』の肉体は完成した。
「おおっ…ってあれ? 模様が入って無いぞ」
「まぁまぁ、とにかく付けてみて下さいよ」
「お、おう」
俺は模様担当の美貌を司る闇に言われるがまま、始まりを司る闇に首を付けるのを手伝ってもらう。
ジュルジュルッ…
ズゥウウウウ…
すると切断された首は音を立ててくっ付き、傷跡も瞬く間に消えていくのが分かる。そして徐々に腕や足の自由が戻っていくと同時に、全身に漆黒の模様が刻まれていく。
「おっ…おおっ、すごっ、えっ、かっこいいなコレ。ありがと、美貌を司る闇。このデザインはサンビューテが考えたん?」
「ええ、たいそうお似合いですので」
「流石だな、うん、あぁ、やっと動く……」
俺は頭以外全身に刻まれた模様を確認しつつ、自由に動く体に軽く感激する。すると始まりを司る闇が、
「ご気分はいかがでしょう、ご主人様」
と跪て尋ねて来る。
「あぁ、悪くない。随分と晴れやかな気分だ。例えるなら…そうだな、歯と歯の隙間に引っかかっていたニラの破片がスルンッて取れたあの感じだ」
俺は始まりを司る闇に今思い付いた表現を例を使って答えた。
「例えなげっ…」
「何か言った?」
「いえ、何も…」
何か呟く娘の態度に俺ははてなと首を傾げつつも、まぁいいかの一言で済ませる。
何故ならそれ以上に聞きたいことがあるからだ。
「おい、始まりを司る闇。俺の体を何度も攻撃したのは誰だ…」
俺は怒気と殺気を露わにしてそう尋ねた。その殺気を前に始まりを司る闇は思わずビクッと肩をすくめる。そして喉から絞り出すように
「えっ」
と小さく口にした。
「今すぐ全員の娘を呼んで来い。今すぐだ」
「はっ、はい」
そう俺が言うと、始まりを司る闇は大慌てで闇達を呼ぶために、影の中へと入っていく。その間俺はトンヅォ・サピとシュッペを呼ぶと、俺の体を好き放題やった犯人を炙り出す準備を始めた。
そしてシュッペが作り出した空間に107人もの娘達が集結した。
「よし…お前らそこに並べ。全員だ全員っ!」
俺はトンヅォ・サピを自分の横に置いて、それ以外の始まりを司る闇から笑顔を司る闇の娘達を全員並べる。
「よし…並んだな」
それを確認した俺は、ひゅうっと大きく息を吸ってから、
「今からお前らには1つ1つ質問してくぞ! 俺の体を好き放題やったやつらをぶちのめすためになぁ!」
と大声で言った。
ビクゥッ!
その時、いくつかの娘達の肩が上がる。
「残念ながら俺は叱ることが上手くねぇっ!! だから犯人には制裁のビンタを1発喰らわせるだけで許してやるっ!! 嘘を司る闇、お前は誰が嘘を付いてるか見抜いてくれ」
「うんっ」
俺は嘘を司る闇に犯人を見抜いてもらうよう頼むと、最初の犯人から見つけ出した。
「まずはぁ! 俺の○○○を思いっきり蹴ったやつだっ!! しょーじきに手ェ挙げろぉっ!!」
娘達全員に聞こえるようにそう言うと、
スッ…
と1人の手が静かに上がった。俺はスタスタとその手が上がっているところに行く。
「お前か…」
「はいッス…」
手を挙げたのは、力を司る闇だ。
「正直だな。まぁ、念のため聞くぞ。俺の○○○を思いっきり蹴ったのは…力を司る闇、お前か?」
俺はドンッと顔を近づけてそう尋ねる。
「はいッス」
「……」
嘘を司る闇は何も言わない。
「よしっ、こっち来い」
俺は力を司る闇の腕を掴んで前に引き出すと、
「覚悟はいいか?」
頰を両手で挟みながら聞いた。力を司る闇はコクコクと頷くも、隠し切れない恐怖が顔の隙間からにじみ出ている。俺は2、3回ペチペチとグロリッサの左頬を叩いて照準を定める。
そして…
バチィンッ!!
と勢いよく制裁のビンタを喰らわした。
「……っ!!」
痛みからか力を司る闇は目を開きながら地面にごとっと倒れ、そのままピクピクと震えながら立ち上がらない。その光景を近くにいた娘達は目を丸くして見ることしか出来なかった。
しかしそんなこと気にせず、俺は次なる罪人に制裁を喰らわせなかてはならない。
「次っ! 俺の○○○を変なもので締め上げたやつは誰だっ!!」
次に制裁を下すのは、○○○を締め上げたやつだ。その前に腐るものを吹きかけたやつがいるのだが、痛さ順から見ればこっちの方がずっと痛かったから強く印象に残っている。制裁を下していく順番は、俺にダメージを与えた順だ。
けれども今度は名乗り出るものはいなかった。俺はチッと舌打ちしてから、嘘を司る闇と共に列の1番最初まで行く。そこから順々に聞いていくのだ。
「始まりを司る闇、お前か?」
「…いいえ」
「……」
始まりを司る闇に嘘を司る闇は反応しない。つまりアダムは犯人ではないのだ。
「火を司る闇、お前か?」
「…違います」
「……」
火を司る闇にも反応しない。
「大地を司る闇、お前か?」
「…」
「……」
首を横に振る大地を司る闇も違うようだ。
「水を司る闇、お前か?」
「…違いますっ」
「……」
水を司る闇でもない。
「喜びを司る闇、お前か?」
「…ノウッ!」
「……」
喜びを司る闇でもないようだ。まだまだ先は長いだろうが、しかし俺は諦めない。
「植物を司る闇、お前か?」
「……違います」
その時、
「ビーッ!! ビーッ!! ビーッ!!」
と明らかに違う反応を嘘を司る闇がした。
どうやら犯人は…植物を司る闇のようだ。
次回の投稿もお楽しみに




