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DjangoS - 三人の悪い女たち−  作者: ゴーゴーゆうばり
教訓の一 決して他人を信用するな
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第一章3  『老判事ジャント・ガニコ』

 デブリカットの町に帰るまで少女は悪態を突き続けていた。


「あ~畜生、放しやがれってんだ、この腐れ女がッ。皆さんコイツはとんでもねぇ悪党です。私は不当に捕まったんです! 誰か心優しい方助けてください! コイツは悪魔に魂を売ったようなとんでもねぇ売女だ!」


 少女は、ノーバディに悪態をし続けた。だがノーバディの顔は依然として平然としていた。


「テメェの親父はどうしようもない飲んだくれで、テメェのお袋は安い娼婦の女さ! おめえはその女のまたぐらから生まれたんだ。生き恥晒しやがってッ!」


 ノーバディの跨がっている馬に少女は縄に括り付けられながら少女は力の限り叫んだ。


「この恩知らず。アバズレッ! アタシをこんなに目に合わせやがって。目先の金に釣られやがって将来ろくな目にあわねぇぞ、クソ野郎」


 ノーバディは涼しい顔をしながら判事ジャント・ガニコの事務所までたどり着いた。ノーバディが馬から降り少女も一緒に降ろした。


「こんちくしょ~! 離しやがれってんだ。この野郎ッ! ああ、分かった、分かりましたよッ! ホントごめんなさい。頼むッ頼むよ!この通りだよ」


 馬から降ろしても一向に少女は黙る気配はなかった。ノーバディは咥えていた紙タバコを少女の口に押し込んだ。


「おしゃべりは、ここまでだ嬢ちゃん。それでも喋るようならペキンパーの所に着くまで嫌でもしゃべれねえようにしてやるよ」


 冗談ではないの脅しに少女は、ようやく、しぶしぶ黙り込んだ。


「良い子だ。じゃあ一緒に来るんだ。今後、お前さんの未来はガニコのおっさんへの態度で変わると思うぜ。せいぜい気張るこった」


 少女は咥えられた葉巻をペッと吐き出し言った。


「せいぜい、地獄に落ちやがれってんだアバズレ。アンタ全うな死に方はしねえよ」



                △▼△▼△▼△



 ジャント・ガニコ判事は、ノーバディの連れてきた少女を見て、ひどく喜んだ。彼の姿形で言えば、でっぷりと太って一言で言えばまるで豚のような男である。ガニコは喜ぶと鼻息が荒くなって鼻を鳴らして鼻から汁を飛ばすので、ノーバディはいつも彼に吉報を告げる際はいつも離れてから報告していた。


「おお、英雄の凱旋だ。会いたかったよノーバディ!」


「そっくりそのまま返すぜ、おっさん。ほれ約束のモンだよ」


 ノーバディはそう言うと縄に縛られた少女を突き出した。ガニコと喋っている最中このガキに騒がれちゃガニコの気分が悪くなるということで、縄で口を縛っていた。


「ふむ、たしかに。手配されている顔写真と同じだな。いやはや、まさかこの子がねぇ」


 ガニコは、まじまじと少女を品定めするように眺めていた。


「まさかアンタもこの少女娼婦に興味あるのか? まったく、このガキのどこが良いんだか」


 ノーバディは、呆れながらにそう言うとガニコの葉巻を咥えて手短な所にある椅子に座った。


「そういやアンタが連れてきた4人組だったんだがね、悲しいことに、このガキを確保する際にガキに撃ち殺されちまったよ」


 少女はノーバディの嘘の発言に耳を疑ったが、彼女の嘘の報告にガニコは致しかたないように頷いた。


「そうか、それは残念だったな。まあ彼らは聞けば札付きの盗賊まがいの連中だったそうじゃないか、むしろ君が彼らを始末してくれてありがたいね。彼らの犠牲は無駄ではなかったのだろ?」


「ざっと900ってとこさ。アタシが9割アンタが1割そういう手筈だったろ?そんで、このガキの分がアタシに7割アンタが3割だよなぁ」


 ノーバディの問いにガニコは満足げに頷いた。ガニコは、机の引き出しの中に入っていた印紙と印鑑を取り出し指示を出した。


「これを保安官の所に持っていけ、この用紙には俺の名前が入ってる。誰にも文句は言えんさ」


「さすが、話は早いねえ。それならアタシはとっととこのガキも保安官のところに持って行って檻にぶち込んでやるさ。ほら、とっとと来るんだ」


 ノーバディは、無理に少女の腕をつかんで事務所から出て行くと、その足で保安官事務所まで歩いていった。少女は執拗に暴れていたが、ノーバディは、それを蹴飛ばした。


「おい、いい加減にしろ。こちとらガキのお守りじゃねえんだ、大人しく着いて来るんだ!」


 保安官事務所に到着すると、ノーバディは保安官に事の成り行きを手短に説明すると、保安官はすぐに事務所を出て行った。取り残された少女はノーバディに思いつく限りの罵倒を浴びせたが、口を縛られておりノーバディには届かなかった。保安官は、いつもの作業のように少女を手早く牢に詰め込んだ。



                △▼△▼△▼△



 ノーバディがガニコの事務所に戻ると今回の報酬金を詰めた麻袋が机上に置いてあった。ガニコは葉巻を吸いながら事務所の窓を眺めている。彼は最初に中身の確認をしてくれと言いながら続けた。


「今回も苦労をかけたな。金を渡す前に1つ聞きたいことがるんだがな。なあ、お前もう少しこの町に滞在しないか? 悪いように扱いはせんさ、お前のような用心棒は腕が立つし少しでも長く居て欲しいというのが、本音でね。どうだ?」


「お誘いは嬉しいけどねアタシはもう町から出ていくよ」


「やけに早いな。急ぎの用か?」


 ノーバディは報酬の詰まった麻袋を手に持って言った。


「いや、賑やかな所は、あまり好きじゃなくてね。一人でいるのが性に合っててるんだ。また旨い話があったら教えてくれ。また協力しようじゃないか」


 それは残念だと言わんばかりな表情をしたガニコであったが、「そうか」と一言言って、それ以上は何も言わなかった。だがノーバディが出て行こうとした際にガニコは最後に一声呼び止めた。


「じゃあ、これならどうだノーバディ。あの少女娼婦で俺ともう一山当てないか?」


 ガニコは真剣味のある声で言った。ノーバディは足を止めてガニコの話を聞き続けた。


「内容は、こうだ。名無し、お前は、あのガキを連れて、ここから1週間ほど南に掛けて行く場所にサウンズ・ヒルまで向かうんだ。そこに俺らのお目当てのものがある」


「おいおい、えらい唐突だな。一体あのガキを何に使うのか想像もつかんが、まあ今回の報酬金額の高さが普通じゃないと思ってたが何か関係ありそうだな」


「ああ正直かなりの山さ。俺もこの話を聞いたときにお前に話すか、どうか考えたんだが、決めたよ。こりゃあペキンパーの野郎だけにはもったいねぇ。俺たちだけで頂くのさ」


「それで、あのガキは何に使うのさ?」


 話を進めていこうとするノーバディに対しガニコは言った。


「驚くなノーバディ。この子はな、あのイングリッシュ・マーシャの子なんだよ」


 ガニコの言葉にノーバディは怪訝そうに口を開いた。


「イングリッシュ・マーシャってあのイングリッシュ・マーシャか?」


「ああ、そうさ。英雄マーシャ様さ」


 うまそうに葉巻の紫煙を吐きながらガニコは答える。


「冗談で言ってねえよなあ、笑えない冗談は嫌いなんだ」


 ノーバディは声を荒げた。


 イングリッシュ・マーシャだと!? ふざけるなッ! あれは伝説にしか過ぎない。貧乏人の田舎者たちが子供のために作った嘘っぱちのお話に過ぎないんだ!たく笑えねぇんだよとノーバディは内心ごちた。

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