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DjangoS - 三人の悪い女たち−  作者: ゴーゴーゆうばり
教訓の五  殺しは覚えたらやめられない
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第五章2  『父』

 ノーバディは馬を走らせながら今までの自分では行動しないような事をしていて内心不気味であった。たしかにコルダにいった言葉は本心から出た言葉である。それがどういう訳か今では自分が曲がりなりにも少しの間組んでいた奴を助けようと息を切らしながら馬を走らせてアレルヤとその仲間を助けようとしてる自分がいる。


 これは言葉に出来るようなことじゃない。アレルヤに別段、友情などは感じてはいなかった。どういう風の吹き回しだノーバディ。お前はもうちょっと利口じゃなかったか? 考えてみれば今回の遺産の計画は狂いぱなしであった。ただコルダを財宝の在処まで連れて行くだけの事だったのに、いつの間にかアレルヤが加わってた。最初に仲間になった時はいつ殺そうか悩んでいたが、いまじゃアタシまであいつ等のテンションで旅を続けていた。


 まったく泣けるよ。そうして今アタシはあいつを助ける為に馬を走らせてる。バカみたいな話さ。


 先ほどから大雨が降り続けるいた。サウンズヒルに到着して馬から降りると街全体が異様な静かさを保っていた。ここに住んでいる人間は明らかにリディロの連中の残党だろうか? 何かに怯え人の気配を感じさせなかった。


 だが、とてもリディロからはそんな指示を与えるほど人望は感じなかったし彼らが攻めてきたのが最後の連中であるのを考えたが検討も付かなかった。


 大雨の滴る中、足音では見つりそうにもなかった。ノーバディは腰のホルスターからコルトに手をかけてゆっくりと歩いていった。少し歩くと小さな保安官事務所に明かりがついていた。そこから何か宴のようなものを行っているらしく中から大声が聞こえていた。他に人通りもないのでノーバディは事務所の方まで歩いていった。


 だがノーバディは見た。もしかしたら手遅れかもしれない。でも信じたくなかったし、アレルヤなら大丈夫かもしれないと高を括っていた。彼女はもしかしたら人違いかもしれないかもと思いもう一度覗いた。紛れもなかった。


 保安官事務所の前には棺桶が何十台も縦に並んでおり、そこにはアレルヤの盗賊連中の死体が入っていた。死体が並んでいる。女、子供関係なくだ。その中にはアレルヤの死体も入っており、その瞳はまだ生きることを望んでいるような悲しい眼であった。


 死体が並んでいた。ノーバディは気が気でなかった。この保安官事務所にいる奴は容赦なくこの棺桶にいる連中を殺したんだ。


 ノーバディは無言で事務所前まで歩いていった。事務所の扉を、まるでいつも酒飲みをする酒場のように何事もないような振る舞いで入るとノーバディの姿を見た賊連中の騒ぎが収まった。


 ああ、そうだよ今のアタシは死ぬほど胸くそ悪いんだ。これ以上騒ぐんじゃないよとノーバディは思った。


「おいおい、何のようだいこんな時間に女かよ!?」


 酔った男がノーバディに近づいてきた。座った目つきをしていたノーバディに事の状況を理解せずにいたようであった。


「ボスも気が利くぜ。こいつは朝まで楽しめそうだ」


 ノーバディは男が伸ばしてきた手を払いのけたあとに、そのままコルトを引き抜き男に発砲した。「ぐぇ!」といった情けない鳴き声とともに男は倒れて死んだ。


 何だ! といった掛け声共に事務所にいた男たちは一斉に振り向きノーバディに発砲した。ノーバディは近くにあった机と男の死体を盾にし銃撃をしのいだ。男たちは酔いが回っていたので、狙いも定かではなくあてずっぽうに撃っていた。ノーバディはおろか彼女が隠れていた机にも、ろくに当たらない始末であった。あてずっぽうに撃ち続けていた連中は玉が切れると薬莢を捨て新しい弾に詰め替えようとしたところに、すかさずノーバディは発砲した。決して早撃ちと呼べるほどの早さではなかったが、正確に狙っていった。


 男たちは次々に撃たれ倒れていった。ひどい硝煙の臭いを嗅ぎつけて奥からも賊連中の仲間たちがゾロゾロ出てきた。彼らもひどく酔っており階段でつまずく者や発砲したら彼らの仲間を誤射してしまったりと様々であった。


 ノーバディは、また机に隠れ弾を詰め替えた。連中は全部でせいぜい20~30人くらいである。しかも敵は統率はおろか酒にも酔っていて狙いも定かではない何とかいけそうだ。とノーバディは思った。


 物陰から物陰へ移動し隙を見せたら発砲をノーバディは繰り返した。今この事務所は死者の山で築かれていた。アレルヤは、死ぬ間際どう思ったのだろうとノーバディは何となく思った。たぶん死んだら何も感じられないし自分自身の意識は、そこで途切れて見えるものが真っ暗になるのだろう。


 そういえば昔、死にかけて一度死者の国へ旅立ったんだとか言っていた奴がいたが、そこでソイツは人間は死ぬと、まるで暗いトンネルを入っていくような感覚になるんだ。そこに入ってしまうと、それこそ死者の国へ、こんにちわ、だそうだ。アレルヤと匿ってた連中もそのトンネルに入ったのだろか? そこは想像するしかない。空薬莢を捨てながらノーバディは思った。今は何も考えないほうが良い。今は目の前の連中をいかに効率よくリスクを少なくして殺していくかだけを考えろ。アタシたちは、賞金稼ぎで殺し屋だ。いつから物事を考えるようになったんだ。アタシの仕事は、とても簡単だ。目の前の連中を殺して、殺した金で生きてるんだ!


 事務所の人間を殺した数がノーバディの見立ててで、ほぼ全員をしとめたと思い物陰から出て残った奴がいないか確かめた。もう既に逃げた奴やら死体やらで埋め尽くされている。


 その時、2階の奥から1人の男が出てきた。初老のようで小皺がある。男の顔には何とも言えない悲壮な顔つきをしており、全体に哀愁を漂わせていた。しかし気品のある顔つきでもあった、あまり賊連中の顔にも見えなかった。そんな中その初老の男は言った。


「おまえ、外に吊してある連中の仲間か?」


 ノーバディは何も答えなかった。答える義務もないし、今は何も言う気にはならなかった。


「答える気はないってことか。1つだけ言ってやろう。あそこの連中は何度も列車や銀行の強盗、強奪を繰り返してた連中だ。お前どう怒りを表した所で連中の罪は消せん」


 男は、大声ではないが、力を込めた口調で言った。男の言い分はごもっともだし別に否定をする気はなかった。ただ、ノーバディにはアレルヤが殺されたという事実だけで十分であった。男は話を続けた。


「ここで死んでる連中は私の仲間ではないのだよ。連中にはどうとも思わんが、なるほど大した腕だ。銃も良い物を使ってる。名前は? 是非知りたいが」


 突如にノーバディは発砲。男の被っていた帽子を吹き飛ばした。


「言う義理はない。次はアンタの眉間を狙ってやる」


「気に入ったよ。それによく見たら若い娘じゃないか。なるほど今の若者には期待がもてるな」


 ノーバディは、続けてすかさず発砲。だが男の眉間を狙いを定めたのにも関わらず銃痕は、ノーバディの足下に出来ていた。彼女の右手は男の早撃ちで潰されていた。


「だが、まだ若いな。狙いを正確にすれば良いって話でもない。銃は早く抜くものだよ」


 とんでもない早さだった。右手の鈍痛を噛みしめてノーバディは思った。今まで、こんな早さで銃を抜ける奴なんぞ見たことがなかった。


「アンタ何者だよ」


 ノーバディは声を絞り上げて言った。ただ純粋に男の名前が気になった。


「本当なら君のほうから答えてほしいが、まあ良いだろう」


 男は少し楽しそうに答えながらこう答えた。


「マーシャ。イングリッシュ・マーシャだよ。名前くらいは聞いたことあるだろ?」


 今まで名前しか聞かなかった男イングリッシュ・マーシャ。男は、この珍妙な名前を出してきた。かつて死んだとされていた男は今ノーバディの前に立ち尽くしていた。イングリッシュ・マーシャと言った男の足はキチンとあった。亡霊でなんでもなかった。間違いなく生きた人間であった。


 マーシャはカチリと弦鉄を引き銃口をノーバディに向けていた。


「さよならだ。名前も知らないので名無しと呼ばさせていただくよ、お嬢さん」


 鈍い銃声が室内で響きわたった。辺りは静まりかえって銃声だけが響き渡っていた。


 マーシャの声は歯ぎしりをしていた。彼の銃口からは煙は出ていなかった。ノーバディは自分がまだ死んでいないのを確信した。理由は分からなかったが、どうやらまだ自分は死者の国へは行かないようであった。マーシャを見ると彼は胸から血を流していた。即死ではないが十分に致命傷になりうる傷であった。銃声は入り口から発しており、そこには1人の少女が立って構えたコルトから硝煙を発していた。


 コルダであった。ノーバディが当て身を食らわせたが、目覚めた後に、このサウンズ・ヒルまで追いかけてきたらしい。彼女の顔には、怒りにみちた顔になっていた。


「どうして」


 コルダの声は悲痛に満ちており声もかすれかすれであった。


(親父ってこいつ本当にイングリッシュ・マーシャなのか・・・・・・?)


 ノーバディも声に出そうとしたが、彼女も痛みのあまり声は出なかった。打ち抜かれた右手が動かない。そして感覚もまたなかった。


「まさか自分の娘に撃たれるなんてな」


 マーシャの声は悲しそうでもあり同時に嬉しそうでもあった。彼は乾いた笑いを浮かべ両膝が地面についた。

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