第四章3 『三人の悪い女たち』
灼熱の太陽が降り注ぐなか3人は各自の持ち場にうずくまりリディロの連中を待っていた。各自に準備は整えた。エッガー老人のくれた銃は型こそ古くはあったがよく手入れが行き届いておりそこらの下手な銃より使えるものばかりであった。
ノーバディとコルダは大量のライフル、小型のピストルに手榴弾を持って行き。キテレツな銃好きがいたのだろう見たこともないような銃はアレルヤが大量に持っていた。
彼女のボンクラ武器好きがこんな所で役に立つとは思わなかった。
馬の蹄の音は益々大きくなっていた。もう奴らはまもなくここにやって来るだろう。そしてついに連中の姿が肉眼でも見えてきた。最初は小さな影のような大きさだったがそれが、どんどん大きくなっていくようであった。無理な走行を続けてきたのだろう。馬の蹄の悲鳴が聞こえてくるようである。
馬は大事に扱えよな、荒くれの風上にもおけねえよとノーバディは思った。
ノーバディは、罪がない馬は撃ちたくなかったが今は致し方なかった。3人はライフルを構え迎撃の準備に入りつつあった。
しっかり狙いを定めて3人は一斉に発砲。たった3人だけの発砲である。あまり全体で鳴り響くような発砲音ではなかった。
だが突如として共同墓地から発砲を食らったリディロの一味は亜卑怯間な状況であった。皆が馬を止まらせても発砲が鳴り止むことはなく狙いに定められた者はどんどん撃たれていった。3人は正確無比に撃ち続けていた。まだリディロの連中に3人の居場所がバレていない分こちらに有利である。こちらの有利が続くまで撃ち続けるのを止めなかった。
「た、体制を立て直せ! 列を乱すな。突撃を、かまえッ!」
リディロが大声で指示を出している声が聞こえるが、そもそも付け焼き刃で雇ったならず者にそんな事を聞く信頼や能力を連中は持ち合わせてはいなかった。
3人の発砲は続き最初の数百人から少しづつではあるが数は減ってきているようであった。だがそれに合わせて連中も共同墓地には数人ほどしかいないというのがバレ始めていた。
今まで闇雲に前進しているだけであったが連中は3手に分かれて墓地を覆うように馬を走らせた。それに気づいたノーバディは残りの2人に指示を出した。
「いいか、連中はここを回る気だぞ! こっちも対応しろ!」
コルダとアレルヤはそれぞれ身を低くして持ち場から動き連中からの周りに動いていった。
アレルヤこのご時世では珍しい手回しの機関銃を取り出して荒くれたちを蜂の巣にしていった。
「こいつはすごい! こんな代物があるなんて革命軍様々だよ!」
コルダも手持ちの手榴弾で敵に爆発をさせた後横転した馬が壁となって後続の連中が来れないようにしていた。各自が結果的に協力し合ってる形でこの共同墓地は未だに守られているままであった。大半の連中を片づけた後、ノーバディは大声で2人に言う。
「今アタシは132人殺ったんだがよ。これ1番殺った奴が先に墓を開ける権利を決めるってのはどうだい?」
ノーバディの問いに対してアレルヤは答えた。
「その提案に乗ったぞ。なんせ私は今数えで141人だ。乗らないわけにはいかないね」
アレルヤの答えにノーバディは顔をしかめた。
「お前はその機関銃を使っていたからだろ!? そりゃあ反則だぞこのクソ尼!」
「屁理屈は無しだ名無し!どのみち多く殺らなきゃ私たちの命はないんだから!」
アレルヤは大声でノーバディに言ってそのまま、銃を構えて発砲し始めた。
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死屍散乱とはまさにこのことであった。それこそ本当に死体の山が出来上がるのではないかと思うくらいにそれは散らばっていた。
「さて結局何人だ! アタシは150人だがね。これはアタシの勝ちでいいんだよな?」
ノーバディは高らかに声を挙げた。いくら有利な形でリディロを攻め立てたとはいえこの数は人間業ではなかった。
「それなら私も150人なのだがね。あと1人はどこにいったのかね? まさか君が数を鯖をよんだ訳ではあるまい?こんなものいくらでも誤魔化しは聞くもんだからね」
アレルヤの皮肉にノーバディは反論する。
「それはてめえも言えたことだろ?だいたいホントに300人いたのか? サバ読み過ぎて数がおかしいんじゃないのか?」
2人がいがみあってるなかにコルダも走って戻ってくる。
「争ってる場合じゃないよ。リディロは何処に行ったのさ?」
たしかにリディロの死体は見あたらなかった。そうこう一同が言っていると死体の中から1人出てきた男がいた。それは負傷して顔つきがぐちゃぐちゃになったリディロであった。
「このクソアマどもが!」
雇った荒くれが全員やられてリディロの顔は激昂していた。いつもの柔和な顔つきは当に消え失せていた。リディロは銃を構えてノーバディとアレルヤの所に近づいていった。2人は銃を構えてリディロに狙いを定めていた。
2人が撃とうとしたときに間から硝煙と発砲音が聞こえた。2人はまだ撃っていなかった。見るとコルダがリディロに容赦なく発砲していた。
「うっ!」とリディロが倒れると彼はそのまま動かなくなった。
「可愛がってくれた罰よ。そのまま地獄に堕ちなさい」
アレルヤが口笛を吹いた。
「やるじゃねえか嬢ちゃん。いいぞこれで全員なはずだ。合計301人。これでマーシャの財宝は私たちのものだよ!」
「それで、結果はどうなるんだよ?」
結局、決着がつかない状況にノーバディは不安そうであった。彼女の言葉にアレルヤは言った。
「勝負はお預けさ。なに、遺産を手に入れたなら、また後で勝負すればいいだけの話じゃねえか」
アレルヤの言葉にノーバディはしぶしぶ同意するしかなかった。
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エッガー老人の所に戻ると彼は既に作業を終えており椅子に座ってパイプを吹かしていた。
「ようやく終わったかい。年寄りには酷い耳鳴りになるわい」
エッガーはそう言いながらも修復していたベルスタアを持ってきた。
「ほれ、お目当ての物じゃ。こいつさえあれば、若造の遺産に必要なもんは全て揃ったよ」
「ありがとうな爺さん。これでようやく全ての事は終わったんだよな?じゃあとっととアーチストンの墓まで行こうじゃじゃないか!」
ノーバディとコルダがエッガー老人に礼を言って部屋から出ようとしたとき呼び止められた。
「もし遺産を手に入れたなら、中身がなんだったか教えてくれないか?この老いぼれに死ぬ間際への手みやげとしてあの世に持って行きたいんじゃ」
ああ、いいぜとノーバディは言って部屋から出ていった。コルダも老人を見つめていたが、すぐに入り口に振り返り部屋から出ていった。
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ノーバディとコルダがアーチストンの墓に着くと既にアレルヤが待っていた。
「おい待ちくたびれたぜ。これ1人じゃ開かないんだ。手伝ってくれ!」
そう言ったアレルヤにコルダは無言で2本のスコップを地面に投げた。アレルヤは、はっとコルダを見つめた。
「世の中には二種類の人間がいるわ。財宝を取ろうとする奴と財宝を取ろうとする奴を見守る者よ」
コルダの言葉にやにやとアレルヤを見ていたノーバディも今の言葉に耳を疑った。それはアタシにも掘れってことかい?とノーバディも思い顔をしかめた。
2人が墓を掘り進めてから数十分が経過した。アーチストンの墓の無名戦士の墓には粗末な棺が堀り出てきた。ノーバディとアレルヤはスコップで乱暴に開けると棺には何も入っていなかった。
「こりゃあどういうことだ? 棺に何も入ってない」
ノーバディの落胆の声とは裏腹にアレルヤは、から笑いをしていた。
「はは、私たちのやってきたことは全部無駄になった訳だ」
アレルヤはスコップを放り投げると匙を投げるように言った。
「そのマーシャの遺産とやらはアナタ達に譲りますよ。やってられないね。私はもう降りるよ」
そうアレルヤが言った瞬間にコルダは言った。
「いいえ。ここに財宝はないわ。もっと別の・・・・・・そうこのアーチストンの墓は、いわば目印なのよ」
コルダはそういって空になった棺の板を叩き始めたかと思うとそのまま棺から鈍い音を立てると棺の奥底をコルダは叩き壊していた。その中から小さな地図が現れたかと思うとコルダは地図を広げて言った。
「やっぱりね。ここまではあくまで遺産の中継地点にしか過ぎないのよ。ここを通って初めて本当の遺産にたどり着く権利がもらえるのよ」
コルダの説明にノーバディとアレルヤは首を傾げた。
「つまりどういうことだ!? アタシ等は、また最初から宝探しごっこに追われるのかい?」
「いいえ遺産の場所はここから近いわ。鍵も手に入れたしそう長い道のりではないわ」
コルダの言葉にノーバディとアレルヤは地図を見てみるとどうやら本当に近いようであった。ここからなら、ものの半日も掛からない。




