第三章2 『殺しのルール』
トンプソンがいるとされる目的の山にたどり着くと、小さな村が見えた。3人は早速村に入り村長の所まで案内させてもらった。案内された村長の声は怯えていたが、目的を話し村の人間には危害は加えないと念を押すと村長は少し落ち着き話を始めた。
村長の話を聞くに、ここから先に隠れるように住んでいる変わり者の家族が暮らしていると言った。ここの村の者に対しても、殆ど交流せず必要最低限の品だけを買いにくるので村の者は気味悪がってると言った。
ノーバディは、その家族がトンプソンと目星をつけるとお礼に村長に金銭を渡すとそのまま3人は馬を目的の家まで走らせた。
少し進むと、どうやら目的のトンプソン家までたどり着いたようであった。もし仮にトンプソンなら見つからないよう少し離れた所から馬を下りて家を見渡せる崖まの所まで登っていった。小1時間もするとトンプソン家全体を見渡せる所までたどり着き3人は準備を始めた。
ノーバディは荷物から狙撃用のライフルを取り出し、それをコルダに手渡しノーバディはコルダに狙撃の基本操作を教えていく。ノーバディの説明が終わるとコルダはライフルを家の方へ構えトンプソンが出てくるまで待った。
正直、たしかな情報でもないのに獲物と思われる家に張り付くのは中々、利口なことではないが、数分すると本当にトンプソンが出てきたのにはノーバディとアレルヤは驚いた。
だが問題が発生した。トンプソンは、どうやら盗人家業から足を洗って堅気の人間になっているようであった。自足自給のため農業を営んでいるようであるが、作業を行うために家畜と子供を連れていた。情報にはないが、たぶん彼の子供で間違いないだろう。
「まずいな。ありゃあどうするよ?」
アレルヤは双眼鏡で眺めながら言った。
「ガキは殺さない。標的だけで構わない」
ノーバディは、そう言ってコルダに助言する。
「アンタが撃ちたいときに撃てばいい。だがよく狙って撃て。2発めはないと思えよ」
「ええ、分かったわ」
そうコルダは答えたが、彼女は何時まで経っても撃たなかった。特に撃ちにくい位置取りでもなかったので狙いが定められないといった訳でもないらしい。最初こそ何も言わなかったノーバディであったが時間が経つにつれコルダが意図して撃たないことに気づき始めてから怒りを露わにし始めた。
「焦れったいなクソッ!」
ノーバディはコルダからライフルを奪い取り、そのまま崖下で農作業をしていたトンプソンに発砲し撃ち殺した。着弾した瞬間、糸が切れた人形のように倒れたトンプソンは、そのまま動くことなく事切れたようであった。彼と農作業していた子供は自分の父になにが起こったのか分からず死んだ父親に一生懸命話しかけているようであった。
「よっしゃ! いっちょ上がり」
ノーバディの声にアレルヤが反論する。
「お前が撃ち殺してどうすんだよ?」
コルダが、いつまでも撃たないので焦れったくなってノーバディが撃ち殺したが、これでは何も意味がなかった。
「とりあえず話をしようコルダ」
アレルヤはノーバディの持ってる銃を奪い取ると説明し始めた。
「単刀直入に言う。何故トンプソンを撃たなかった?」
アレルヤの問いにコルダは俯き黙ってしまった。
「別に怒っちゃいないよ。いいかい、私たちは人を殺して金を得ている商売だ。殺す相手が今は堅気の人間だろうが、子供がいようが関係ない。殺さなきゃ、私たちは長くは生きていけないからだ」
アレルヤが言うとコルダは口を開いた。彼女は少し涙声になっていた。
「せめて子どものいないところで撃ちたかった」
「逆に考えるんだ。トンプソンの野郎は、子どもに看取られながら死んだんだ。最
高の死に方だと思うね私は」
アレルヤの言葉にコルダは語気を強くし反論した。
「アナタたちは何も感じないのでしょうけれど、普通の人にとって、親を目の前で殺されることが、どんなに辛いことだか分かる? 分からないでしょうね。アンタ達みたいな野蛮人になんかに分かってたまるもんですか!」
コルダの言葉に今までそっぽ向いてたノーバディも真剣な表情で振り向いてきた。それでもアレルヤは続けた。
「ああ、正気じゃない商売さ。普通の奴には出来ない仕事だ。だが現実を見ろよ。ここでトンプソンを殺したのなら普通なら奴のガキも殺さなきゃならない。復讐ってのは恐ろしいんだ。だが私はトンプソンのガキは殺さなかった。それが私なりのケジメの付け方だ。あのガキの親父を殺した罪は意識している。もしガキが大きくなっても私を殺す気でいるなら歓迎するよ。相手になってやるさ。それがせめてものケリの付け方さ」
アレルヤが、自分の殺しの哲学を語っていたのを端から眺めていたノーバディは自分の意見を付け足した。
「アタシはガキも殺すがね。不穏分子はすべて処理したい身でね」
「おい、いくら何でも子どもの命まで奪うことはないだろ?少しやりすぎじゃないか?」
「ほざえてろクソシスター。アタシは効率よく金が欲しいだけなんだよ。不安材料なんか残してやれるかッ!」
「でもよ、そうしたらチェリーを喰い逃さないかい?いくら何でもそれは残念だと思うがね」
アレルヤは少年を犯すことについて説明したが、ノーバディは「犯してから殺してるよ」とあっけらかんと言った。正気か冗談とも分からない話である。
「神経疑うね」とアレルヤ。黙って話を聞いていたコルダは2人の話を聞いて引いていた。
「とにかくだ。もしテメエが誰かを殺すこと考えてるのなら覚悟を決めなくちゃならない。お前が人を殺せないのは覚悟が足りないからじゃないのかい?」
「少しビビっただけだわ。次こそは殺すわ。大丈夫、次こそうまく殺すから」
「なるほどコルダの意見は分かった。だが時間はないのは覚えておいてくれ。お前のお守りの為に何日も時間を掛けられないからな」
3人は、そうして早々と崖から降り馬を走らせて立ち去った。帰り道、子供の鳴き声山々をこだましてコルダの耳から離れなかった。




