異常になった真理香
真理香は本当に心配している様子で、香りのことを青ざめた顔で見ている。
『ねえ、新・・・事故にでもあったの?ううん。これきり傷だよね?
もしかして通り魔とか?』
俺は真理香の反応に唖然とした。
こいつどうしちまったんだ?
『お前・・・こいつ香りだろ。香りのことはわかるだろ?』
『う~ん・・・あっ、わかった。この子転校して来た子だよね?』
『ああ・・・』
嘘とは思えない反応に、俺はどう反応すればいいのかわからなかった。
『お前・・・今日試合するって・・・このメール覚えてねえか?』
『試合?』
真理香は不思議そうに俺のメールを見た。
『こんなメール送ったかな?それにあたし試合何て何もしてないよ?』
『真理香・・・。なら、俺がお前と別れて香りと付き合ってることは?』
『へ?』
その時真理香の表情が変わった。
今までの無邪気な前までの真理香ではなくなり、俺が恐怖した真理香の表情になった。
『何言ってるの?あたしと別れた?新が何言ってるのか・・・わからないよ』
真理香は泣きそうな顔になっていた。
もしかして記憶喪失とかか?
『別れたって何よ』
真理香の目から涙が流れた。
『おい、真理香・・・お前、本当に何も覚えてないのか』
その時。
『あれ?ここは・・・』
香りが目を覚ました。
『香り』
『かおり・・・あっ』
真理香はその時に全てを思い出したように、悪意に満ちた表情をした。
香りは真理香を見ると、青ざめた顔で震えた。
『し、ん・・・さん』
俺の方を見ながら、明らかに助けを求めていた。
俺はどっちのことを見てやればいい?
俺は思考が止まってしまったかのように、何も考えることが出来なかった。
『あなた、何でこんなとこにいるのよ。新の家まで上がりこむなんて・・・あんたなんかに新は渡さないんだから!』
真理香は座っている香りのことを踏みつけようとした。
俺はとっさに香りを横に倒し、俺も一緒に倒れて、香りを怪我させないようにした。
『新さん!』
香りは驚いたように叫ぶと、恐る恐る近づいてきた。
真理香は倒れたショックでか、意識を失ってしまったようだ。
『香り・・・ごめんな。俺、こいつのこと家まで運んでくる。それと、ちゃんと話しつけてくるから。気づいてやれなくてすまん・・・俺がこいつのこと曖昧にしたままで、香りと付き合うって言っちまったから。怒るに決まってるよな。真理香はただ俺とまだいたかっただけなんだ。許してやれとは言わないが、わかってやってくれないか?』
自分でも驚くぐらいに冷静だった。
俺はそのまま真理香を抱えて家を出た。
香りは何も言わなかった。
一体俺はどうすればいいんだよ。
今改めて考えると、俺は真理香が好きだったのかもしれないと思った。
そうじゃなかったら、俺は今真理香をこんなに心配しなかったのではないだろうか。
香りが好きなのか、真理香が好きなのか。
はっきりしないとな・・・