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004


集合がかかったあとはちょっとした軍人からの話がありスタート配置に向かうことになった。

俺が気にしていたフードの軍人は、その話した軍人以外と一緒にもう既に警戒エリアの観察に回っているらしい。


そんな話をしている先生達の会話を聴きながら、良は未だにヘラヘラとしている2人の様子を眺める。

歩き方に問題は無い。リーシャは多分いつも通りに能力が発揮できる。上手く行けば予知能力も出てくるかもしれないから万が一も少ない。

うん、大丈夫だろ。と思い直すとスタート位置に着く。


スタートの場所には少量の食料と水、腰にかけれる救急道具があった。

木箱の中に入れられたそれは、全てのチーム全部に平等に一定量が与えられている。


足元を軽く押すと、雨上がりの様なジュちゃっとした音が耳に入る。

ドロドロとしたそれは、足が取られやすく、アーマーで無ければいけない理由の一つだ。

普通の靴だと水を含めば重くなるし、裏に着いた土でどんな風に遅れを取るか分からない。

故に、こういう探索の時は靴はご法度で、アーマーだけに遮られた素足で地を駆ける。


なぜ、こんな風に雨が降った訳でもないのにびしょ濡れかというと、この大日本主義国は領土が結構沈んでおり、立ち入り禁止エリアの3分の1は湖となっている。

危険エリアでもそこかしこに池がありどれも綺麗な水に見えるが、飲めるかどうかはプロでも見極めるのが大変らしく、学生にはこうやって水が支給される。


俺たちは救命具と500mlの水を1本ずつ腰につけスタート位置の端の方に並ぶ。

スタート位置からは好きにしてよくしばらくしてからスタートするも良し、すぐもよし、食べ飲みしてから行くもよしだ。

俺たちは直ぐにスタートするを選択し、2人の準備も整ったので、軽く走り始める。


俺たちは危険エリアギリギリのラインまで行くとリーシャを木の上に乗せ探知能力(ソナー)を広げてエルメイを探す。


「北東900m先に一体」


リーシャが木の上に座りながら北東の方に顔を向け俺たちの目では何も見えないところに目を向けながら言う。


探知能力(ソナー)とは千里眼のようなものでその探知できる範囲は千里眼のようにいいものではなく才能と訓練によるがリーシャはだいぶ広いので困ることは無い。


「900か、だいぶ近いな。

第何位だ?」


良や、ハズナ、リーシャにとって900mとは少し走ればつく距離ですぐそこに考えられる。

ここの学生ならばそうだろう


「ん〜、秘宝級(アーティファクト)の中盤ぐらいと思う。?」


リーシャは自信なさげに言うが秘宝級(アーティファクト)と断言出来るだけでも学生にしたら優秀すぎる。それなのに何位まで分かったら訓練を積まずともプロになれる。


「中盤ならいらないわ。六位を探しましょ」

「うん、もっと広げてみるね」


キュュュンンーーー

と微かな音が響く。能力を強めた証拠の音だ


「いた。」

「どこだ?」


良がリーシャが向いた方を向いて注意深く見るが全く見えないため何キロも先であろう。

俺たちは目がいいと言ったって、目で見えない部分はどう頑張ったって見えるわけが無い。そればかりは天性の能力に左右される。


「5kmと、600mぐらい。このまままっすぐ北に」

「5.6km、10分ぐらいかな?」


ハズナが時間を簡単に割り出す。

多分ハズナの事だから地形のことも入れてるだろう。


「よし、時間はいいな。リーシャ、第何位だと思う?」


リーシャはこちらを向いてニヤリと笑うとグッと親指を立てた。


「第六位だと思う!!!」

「よし!行こう!」


俺とハズナがすぐに走り出そうと構える。


識別信号(ポイント)接続(リンク)するよ!」


リーシャにはピンという音が聞こえると共に2人が走り出す。

すぐに2人は見えなくなるがリーシャは左目で2人を追い、右目でエルメイを見る。


そのエルメイは蟷螂のような形をしているが後ろの尾は蜥蜴の尾のような形をしており羽は蟷螂の羽だが出しっぱなしで口からは虫にはありえないだ液がダラダラと出ている。


「ほんと気持ち悪い。私なら、無理。」


その姿をいち早く見たリーシャは眉を寄せてぎゅっと体をだく。










ハズナと良は1km先で足を止めると付近の匂いを体に付けていく。

これでは少しは気づかれにくくなる。

良はお尻部分に付けていた組立式の遠距離銃を組み立てる。


この銃は自分の能力に合わせた弾丸を吹く。

もし自分が力不足で能力が操れなくなった場合は自分も攻撃してしまう可能性もあるような、安全第一と言えない危険な銃だが、昔から愛用しているこれが1番しっくりくる。

何より、安全第一の銃が使えるのは学生までで、軍に所属しようと思っている良には、安全第一の銃なんて練習するだけ無駄なのだ。

ガチャッと音を立てて組み立てが完成する。

遠距離用に付けたスコープを覗き込むと相手を探す。


『良、もうちょっと左向いてみて』


いきなり頭の中にリーシャの声が響くが、良もハズナは驚きもせずにその声に従う。


「お、みっけ。」


相手を見つけた良は嫌そうに眉を寄せる。

それもそうであろう、あんな気持ち悪いものを見たら誰でも目を背向けたくなると言うものだ。


「ん?どうしたの?」


まだ今回戦うエルメイを見ていないハズナは眉を寄せた良を不思議そうに見て、頭の中でリーシャ問いかける。


『んー、言われるより見た方が早いからスコープ覗いて見て。』


歯切れの悪いリーシャの言葉にハズナはハテナを浮かべながら良に銃を借りる。


「え、う、わぁ〜。きも。」


うげ〜といいながらベロを出し相手を観察する。

良もその姿を見ながら苦笑して短銃を調整する。


「多分蟷螂を基調としてるから狙うなら腹部分だね。でも、蜥蜴の尾だから鱗がどこまで硬いか微妙だね。」


良の声は苦笑しているような雰囲気を出しながらも声は真剣で手元はサクサクと動いている。


「頭狙ってもなかなか脳はゆさぶれないし.....先に足をちょんぎった方g...目が合った!!!」


スコープからエルメイを観察していたハズナがバッといきなり後に下がり警戒態勢に入る。

良も調整済みの短銃をすぐにホルスターに2つほど直すと、ハズナが投げて寄越した遠距離銃を受け取り、急いで構えスコープを覗き込む。


蟷螂はガッツリとこちらを見ているが動く気配は無い。むしろしばらく見るとフィッと顔を逸らし余裕そうに背中を見せている。


警戒態勢を取っているハズナはチラチラと良を見て合図を待っているようだ。


「まてハズナ。あの蟷螂のエルメイはこっちを敵と認識してない。今飛び込んでも死に急ぐだけだ。」


良も警戒態勢は解かずに今にもエルメイに飛びかかりそうなハズナをなだめる。


『うん、それに蟷螂みたいな目があんな感じの昆虫はほとんどの方向からの攻撃が見える。唯一見えないのは背中からと思う。』

「なら今から行くのが先手か。ハズナ、いつも通りハズナが突っ込んでそれから....」


いきなり良の声が小さくなって眉に更に深いシワが刻まれる。


「ん?どうし「とべぇ!!!!」


ハズナも単純にただの条件反射で近くの木の天辺当たりまで飛び上がる。横を見ると良も驚いた顔をしている。


下には、さっきまで私たちがいた地面には先程スコープで見た1kmほど先にいたはずの蟷螂が鎌を地面に突き立てていた。


「なっ!?」

『予想以上に、早い。』

「GEGEGEGAGAGAーー!!!!!」


蟷螂が口元にある歯をガチガチと鳴らし鳴く。

その音はギリギリと首を絞められているような音でガジガジという音がすぐに頭の中に住み着く。


「ハズナ!!!一旦距離をとる!蟷螂の後方に向かって全力だ!!!」

「り、了解!!」


空中滞在時間は約3秒その間に頭はフル回転し、どうしたらいいかが浮かんでは消える。

その浮かんできた案をすべて抹消するように、良の声がするりと頭の中に上書きされ、足元にあった木を蹴って蟷螂が来た方に走り出す。


良は何発か近距離用の銃で発砲するが、予想以上に鎌が強くすべて鎌により遮られる。


「ヂィッ!!」


一発大きな舌打ちをすると、能力の大半を銃に込めて蟷螂に撃ちハズナの向かった方に全力で駆ける。

思った以上に大きく出た火力音は、周りのエルメイへの牽制にもなったのか、リーシャの瞳から近くのエルメイの情報が消えていく。


『止まって!!』


リーシャの声で無我夢中で走っていた2人は足を止める。

リーシャの声のおかげで理性を取り戻しバッと辺りを見回す。


そこは全く知らない場所で、池などが周りには多く、地面も先程よりはいくらか湿っているようだ。

街から離れれば離れるほど池や湖が多くなり、最終的には沈んでしまった昔の設備が見えてくる。海には昔のシェルター等が沈み、そこかしこに水中のエルメイの住処となっているため、撤去の議論が交わされている。


「リーシャ、ここはどこだ。」

『危険エリアギリギリよ。あと1km向こうに行ったら立ち入り禁止エリアに入ってしまうわ』


リーシャの焦った声が脳内に響く。

多分あの蟷螂のスピードが予想外でどう対策を練るか考えているのだろう。


「リーシャ、あいつは今どこ?」


ハズナは大きく乱れた息を整えながら、周りを警戒し、リーシャに問いかける。

それもそうだろう。先程のスピードで今突っ込んでこられたらいくら体術に優れたハズナでも、対処のしようがない。


『安心して。蟷螂はさっきの場所から北西に3kmほど進んだところにいる。

2人はさっきのところから7kmはよゆーで離れたからだいぶある。』

「そうか、なら少し休ませてくれ。」


そう言って良は近くの木の幹に体を預け、ドサリと音を立てて座り込む。

先程の良の能力により蟷螂も結構な被害を受けたはずだが、こちらの損傷も激しい。

良は能力の八割を使い切ってしまい、発砲した左手は込めた能力が強すぎて、自分までも巻き込んで手が血だらけになっている。


良はダラダラと流れ出る自分の血を見ながら顔をゆがめて苦笑する。


『ハズナ。今すぐ良の傷の応急処置をして、蟷螂が風下に立ったって、こっちの匂いに感ずいたみたい。』


なんて運のいいやつ。たまたま北西に行ったらそっちは風下で匂いで特定するなんて。

くそ。と吐き捨てるようにリーシャが言うと急いで2人に指示を出す。


『ハズナ急いで!蟷螂がこっちに来てる!』


ハズナは急いで応急処置で血を止めると2人でいつもの距離を取る。


「リーシャ、少しはあの蟷螂のエルメイのデータまとめれたか?」


良がスコープで蟷螂を探しながらリーシャに情報を求める。

左手は思っていた以上に動かないのか、右手だけでスコープを覗き、左手はだらんと降ろしている。


『うん。あいつはスピードは速いけどまっすぐしか移動できないはず、鎌の攻撃範囲もすごく広いわけじゃないから、横からの攻撃なら有効だと思う』

「わかった。なら私が横に回るから良は遠距離から「いや、左が思うように動かないから近ずいてからの近距離銃で行く。」」

「『え?』」


良が先程開けた前後の距離をゼロにしながら言う。

ハズナもリーシャも予想外の言葉で自分の耳を疑う。


「な、なら私が真正面から突っ込むから良が横から....」


ハズナが慌ててさっきの作戦を練り直すが良は首を横に振る。


「俺が行っても八割がた能力を使い果たした俺じゃあの鱗には火力が全く足らない。

それなら五体満足でまだまだ余力があるハズナが全力を撃った方が勝率は上がる。」


良は大丈夫。と言いながら自分の右手に銃を構える。

3人とも負けるとは決して思ってはいない。

ただこの相手は手こずるが自分たちの本気には適わない。そう思っていた。


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