002
榛名 ハズナとリーメリシャ・ニルアードはこの学校の生徒であれば知らない人はいないほどの有名人だ。
いや、この学校だけでなく、この地域一帯では知らない人がいない。
何故なら、幼い頃から将来を期待され、幼い頃から人より頭2つ分程飛び抜けた才能を持っていたからだ。
そして何より、容姿も目立つ。
ハズナは、綺麗な少し長い赤い髪に大人びた顔立ちで、線は細いがヒョロいという訳ではなく四肢全てに美しい筋肉が張り巡らされている。年頃の女性がこの体型を維持できているのは日頃の鍛錬の賜物だろう。
肌の色も健康的で焼けすぎず、白過ぎずと言ったところだろうか。
そんな容姿に似合い、3人の時に見せる性格は好戦的で自己向上力が高い。負ける事を何よりも嫌い、勝つまで何度でも挑み続けるという、天才でありながら秀才という面も見せる。
しかし、武力面のみである。
そして、胸は残念なことにつるーんとしており周りに苦笑されることがしばしばある。
リーシャは美しい薄い青色の髪を腰あたりまで伸ばし、ふわふわと流している。顔だちは完全にロリで、一見見た目も何もかも全てがデタラメのように見えてしまう程のロリだ。
四肢も細く筋肉がついておらず部屋にこもりっぱなしのせいか、肌はアルビノと言われても納得してしまいそうなほど真っ白だ。
身長も何もかもハズナに負けていると思うかもしれないが胸だけは違う。本物か?と言いたくなるほどのロリ巨乳である。
そして、この2人が並ぶと目を引くのがその瞳。金色色のその瞳は、ハズナの真っ赤な髪にも、リーシャの薄い青色にも映え、見たものをぞくりとしたなんとも言えない感覚に陥れる。
この2人は、幼い頃からの幼馴染で、この才能ですべての運命が決まるこの時代ゆえに、2人は小さい頃からの信用できる人は少なかった。
2人は生まれながらにしてゴールド1つという天才だった。
だからであろう。欲望の渦は、すぐに2人を包み込んでいった。
この天才にすがろうと何人もの汚い大人達が、あのてこの手で2人に近づき、将来あるこの娘2人にどう恩を売るかを考えてきた。
この2人の親も下色のせいで、地方からは出てこず、2人だけが中都の施設に預けられた。
親も居ない、周りの大人は気持ちが悪い、施設に居れば無理やり才能発掘が待っている。そんな2人は2人っきりの世界に閉じこもった。
2人だけの世界。そこは心から落ち着ける場所であり2人はこのままでいようと決めた、唯一の自分たちの心の拠り所であった。
それに否を突きつけたのは良だ。
皆瀬 良
その男は2人が小等部の高学年になった時に地方から中都に越してきた子供だった。
良は銀色の髪を持ち2人と同じように生まれた時からシルバーの3つもちだった。
しかし、2人とは違い明るく、元気で、笑顔を見せる子供で、何事にも全力を尽くすような、人に好かれる子供だった。
そして良は、よく2人に話しかけた。
今思えば子供だったからか下の階級であっても敬語も使わず楽しそうに話しかけてきた。
2人は少しずつ良に心を開き、手を取り、笑い、遊び、仲良くなっていった。
そして、2人だけだった世界は、いつの間にか3人の世界となり、外と交流するのは良、悪巧みするのがリーシャ、それを実行するのがハズナ、という認識が周りの中で固まっていった。
良は他にもたくさんの友達がいたが、3人とも何故か分かっていた。
信じられのは、心から許していいのは2人にだけだと。
そこからは3人一緒に中等部に進み、高等学校に進んでいった。
中都一のマンモス校でもすぐに3人の噂は広まった。容姿と、成績と、階級が。それでも3人の関係は壊れることがなく第二学年を迎えていた。
「なぁ、今度のエルメイ実習のメンバーどーする?」
3人は常に3人で行動している。それは嫌でも目立つことだが3人はそれが嫌いではなかった。
何故なら、顔と胸元に光るバッチを見れば皆が道を開けた。学校で前に立ちふさがるものはおらず楽に過ごせたからだ。
良が2人に問いかけるが、2人は席に座ってお菓子を食べながら無視をする。
2人はちょうど良の真後ろに席を陣取っており、ここは3人の指定席である事は承知の事実である。
3人のおかげでそこだけ一定の距離を他のクラスのメンバーから取られており、それすらも心地いいと感じでしまっている3人がいる。
「おい.....」
良が後ろを振り向くとハズナがリーシャを膝の上に乗せ餌付けをしている場面が後ろを向くとすぐそばにあった。
「人の話を聞け!!!」
ダン!と2人が座っている机を叩くが、それに驚いたのは周りのクラスメイトだけであって、2人は相変わらず幸せそうにしている。
すると、今更ながら気づきました、と言うような顔をして、ワイワイと2人でお菓子を食べていたリーシャが、良の方を向いて真顔で人差し指を立ててお説教するようにいう。
「いいこと良。私たちはゴールド、そしてあなたはシルバー、さっきの授業であったようにそれは明確な力差がある!だから、私たちを止めることは出来ん!」
ドヤーという顔をしながらリーシャがモキュモキュとお菓子を口に詰め込んでいる。
せっせっとハズナがリーシャの口元に運ぶお菓子を片っ端から詰め込んでいる。
リスだ。マジモンのリスザルだ。
そんな事を思いながら良は頭を抱える。
「お菓子を含みながらとかカッコついてねぇーよ。大体、友情間階級を申し出てきたのはお前らだろ!」
友情間階級とは階級が違う友人同士で普通に話すための制度だ。
いちいちあの話し方ではめんどくさいという友達同士のために作られたもので、互いの承認があればいつでも使える。
3人はこれを幼い時から結んでおり、ゆうならばずっと無礼講の状態だ。
「てか、どーせこの3人でしか組まないんだから考える意味なくない?」
ハズナがニヤニヤと笑みを浮かべ、リーシャにお菓子を運びながら言う。
ハズナは3人の中でも特に2人とその他、という考えが強く。本気で2人以外はどーでもいいという考えで、よく良に迷惑をかけてもそっちのけデリーシャに構うのが好きなのだ。
時に、ハズナが何故リーシャとは違いゴールド2つかと言うと、中都で開催される中等部の格闘技大会で圧倒的強さで優勝したためであって特になりたくてなった訳では無い。
「でもさ、一応5人一組になってんだからそれまもんねーと、どの階級の軍人様が来るか分かんねーからやばくね?」
良が手元にあるエルメイ実習メンバー選択用紙と書かれた紙とエルメイ実習承諾書と書かれた紙をピラピラとふる。
その紙には5人分の名前を書く欄とその実習において起きたことはすべて自己責任となる。と言うことが長ったらしく書いてある。
それと5もう1枚の方にはなぜ5人じゃないといけないかということが、長ったらしく書いてある説明文がズラズラと書かれている。
「大丈夫だって。警戒エリアでも一番強いって言われた秘宝級の第三位を倒したんだから。
危険エリアでもせいぜいいるのは秘宝級の第六位ぐらいまで、古代遺物級の第三位ぐらいが出ない限り大丈夫だって」
秘宝級と古代遺物級とはエルメイの階級のことで1番下が制作級となっておりその中でも第一位から第六位まで分けられている。
ちなみにこの3つの中では制作級、秘宝級、古代遺物級の順番で強くなっていく。
まだまだ上にはいるがそいつらは立ち入り禁止エリアか、侵入禁止エリア、侵入厳禁エリアにしか存在しない。
ハズナは全然大丈夫!といった感じでグ!と親指を立てながら言う。
それにリーシャがハズナを援護するように言葉を続ける。
「しかもエルメイ実習メンバー選択用紙に書かれているなぜ5人じゃないといけないのかというのは、警戒エリアに一人 探知能力者を守る人がいないといけないからで、私は警戒エリアにいる制作級や秘宝級に遅れをとるような探知能力者じゃない。」
リーシャがドヤー!というようにその大きな胸をグイッと突き出してドヤ顔をする。
「しかもリーシャは予知能力(プレコグ二ション)を持ってるから安心よ!」
ハズナがリーシャをギューッと抱きしめながらグリグリ頭を押し付けている。
「はー、わかったわかった。じゃあ、リーダーは俺にして3人で申請しとく。もしもの時の反論役はリーシャな。」
「うん、まかされた。」
やったー!と2人でいいながらわーいと聞こえてきそうな風にハズナがリーシャを抱き上げる。
良はため息をつきながらこのエルメイ実習メンバー選択用紙を担任に提出するべく、タイミングよく4限目終了のチャイムがなったのと同時に教室の席を立ち上がり教室を後にする。