Wine Red&Sky Blue
2685年。人類は一度滅びの時期を迎え、極少数の狂人、超人だけが生き残った。
退化の一途を辿ると思われた人間はその狂人、超人たちが叡智を、暴力を、武勇をふるったおかげで、人類は衰退するどころか更に発展し、進化を遂げてきた。
そして現在。元日本、元アメリカ合衆国、元中華人民共和国、元イギリス、元ロシア。この5カ国は自国の数人の狂人、超人たちのおかげて、大量の資源不足問題からそれぞれの方法で逃れ、最後まで猛威をふるってきた5カ国だ。
そして今現在。すべての国は昔とは形を、名を、方法を変え化け物を殺し、資源を奪い、手をつけれてない廃墟と化した街を人間達は復興を始めた。
「2450年。地球温暖化により水面下上昇。
ほとんどの島国が水没。
日本...一部地域水没。地方合わせ中枢都市は国家の迅速な判断により健在。
2483年。氷河期到来。
予想不可な氷河期の到来だったため地方合わせ中枢都市は世界でも壊滅。
世界人口50分の1にまで減少。
2509年。氷河期が終わり春が到来。
野に出た人間は強大な正体不明の怪物に襲われ死亡。
特定の人物のみ怪物に対抗できることを発見、研究。
2586年。人類は全員で日の目を見た。
世界人口は全盛期より100分の1にまで減少。
2602年。元日本はようやく日の目を見せ始めたと言うことですね。それからは昔から狂人、超人と呼ばれる人間達がこの怪物、《人類史の敵》通称エルメイと呼ばれる怪物は極数人により地上から追い出されました。
しかし、現在でもこちらへは入ってこれるので、我々はそれを阻止するために八色階級と言う制度をつけて《人類史の敵》に対抗できる人を育成しているのです。」
女の声と、女がパソコンを打つ音が響き、それに続いてガリガリと電子ノートに写すために電子ペンを走らせている音が数十個聞こえてくる。
女は話した言葉より断然少なく。綺麗にまとめて前にある巨大な電子黒板に表示していくが、この教室にそれを見るものはいない。女が、教師が話した言葉を覚えそれを書きまとめていく。
実際この学校のこのクラスではこれぐらい出来ないと授業に着いていけず、もちろんテストは全て赤点で帰ってくることだろう。
ここは元 日本、現 大日本国家主義国の元 中枢都市東京よりも少し広い現 中都と呼ばれる地方の中でも、3つある学校の中で一番マンモス校な、中都第一高等学校と呼ばれる高校である。
中都の中でも中心部にある高校で、上色と下色が両方集まって出来ている珍しい学校である。
そしてこの高校は国家への就職、国営の大学への進学率が中都でも最も高く、地方からも来たがる人が多い有名校でもある。
その為、上色であれば、他の高校でなら当たり前のように上位を独占出来るような者たちが、落ちこぼれと言われたりする。
女はまだ文字を書いている数人を尻目に口を開く。
「八色階級とは文字通り八色に分けられ、その中でもその八色の色の個数により階級わけされます。
個数は少なくて1個、多くて3つとなります。
八色とは下から順に茶色、黄土色、黒色、白色、シルバー、ゴールド、そしてワインレッドとスカイブルーの八色です。
シルバーはたまに透明色とも呼ばれ純度が高く光が反射するような白をシルバーとされます。
茶色、黄土色、黒色、白色は下色とされており、土色と呼ばれる下級民族だとされています。
下級民族は血筋で決まることも多く、多くの下色を排出している民族が地方の方には多く存在しています。
そして、シルバー、ゴールド、ワインレッド、スカイブルーは上色と言われ国家関連に就職しやすくなっています。
スカイブルーとワインレッドは同格の権限を所持しておりスカイブルーは知力を、ワインレッドは武力を抜きん出て持っているものに与えられます。
もちろん、スカイブルーもワインレッドも武力、知力共に持っていおり普通の兵士では足元にも及ばない程の実力も誇っています。
八色階級は生まれた時から適応され産まれると色々な検査を受け階級に分けられます。
成績や潜在能力、武術で階級は変動し茶色のバッチも3つ集め、4つ目からは1つ上の階級へと、すなわち黄土色に変動します。
下色と上色の間には大きな壁がありますが下色でも、上色でも階級が一個下の色でも3つ持っていたらその1個上の色の1つもちよりも権限が強くなるとされています。
しかし、その色の階級は大きな力差を物語っているので自分が3つもちだからといって1つ上の1つもちを挑発すると消される可能性もあるので気をつけましょう。
しかし軍人は一般階級もあるので同階級の者同士でしか適応されません。
一般的な日常生活でもこの八色階級が適応できる時と出来ない時があるので気をつけないと治安部隊に取り押さえられます。
大まかなことはこれだけです。
なにか質問はありますか?」
女がそう問いかけると一人の男の子が手を上げる。
「はい、どうぞ」
そう言って女が男の子の方に顔を向ける。
立ち上がった少年はまだ幼さが大きく残り、緊張しているのか口元をギュッと結んでいる。
「1年3組階級、白色、1つです。」
告げられた色が下色と分かり、教師が少しばかり面倒くさそうな顔になる。
「発言を許可します。」
この学校でのルール。授業中や、質問、お願いなど自分より上の階級の者に何かをしてもらう時や答えてもらう時などは絶対に年組、階級を言うのが掟だ。
これは、社会に出て、あまり仲良くない人にめ適用されることで、それが学生の頃までは黙秘される。
しかし、この学校は社会にそのまま出られるように計算してあり、多くの校則が、社会的ルールに元ずいて作られていることが多い。
もし破ったら重い罰則が待っている。
そしてこの男の子の胸に光るバッチは白が1つ、それに対して女の教師の胸に光るバッチはシルバーの2つだ。
教師の称号を持つものは、必ずシルバー以上のバッチでなくては行けないという法律で定められたルール故に、当たり前のことだ。
「先生は先程下色から上色になるのは高い壁があるとおっしゃいましたがなれないことは無いのですね。」
「えぇ、なれないことはありません。しかしあなたがもし上色になりたいのであれば星を3つまで増やしその後に人類に貢献する成績を残しなさい。
武力なら天武全民大会での上位入賞など、知力なら論文発表で認められてもいいし、天知テストで上位に入れば認められます。
実際過去にそのような人は存在してます。」
「わかりました。ありがとうございます。」
そう言って男の子は頭を下げて席に座る。
「じゃあ、先生。sky blueかwine redのどちらかになるにはゴールドを3つ集めてなにかやればいいんですか?」
女の教師はその無粋な生徒を咎めようと口を開くが、お咎めの言葉が出る前にその口は自然と閉じられる。
先程の質問を飛ばした男の子の生徒の胸に光るバッチはシルバーの3つ。
教師の数では向こうが上に立つものだ。
教師と生徒、という立場故に敬語であるが、これが日常的にされる会話であれば、教師のほうが敬語を使わなければわならない。
「いいえ、sky blueとwine redは特殊でありそれは国家秘密となっているので私も詳しくは分かりません。
しかし、sky blueにしてもwine redにしても申請と推薦が必要だと言われています。」
「なるほど、わかりました。ありがとうございます。」
そう言って男の子は席に座る。
それと同時に学校全体にチャイムが鳴り響く。
「今日はここまでです。明日はこれから発展していくので予習を忘れないように。
そしてこの授業のノートが取れていなくても他人には見せてもらわないように。」
それだけを言って女教師は教室を後にする。
「いや〜、ゴールドになるのも俺まだなれないのに更に高い壁があるとか、sky blueとwine redはバケモンだね〜。
ねぇ、そう思わない?」
そう言ったのは先程教師に質問したシルバー3つの男、皆瀬 良
良が質問した相手は榛名 ハズナとリーメリシャ・ニルアードだ。
2人の胸元に光るバッチはゴールドが2つと1つ。この学校最強の名を欲しいままにする、武道の天才榛名 ハズナと知力の天才リーメリシャ・ニルアードだ。
「「別に。興味ない」」
ハズナは先程まで爆睡しており、リーシャは授業などそっちのけで、隠そうともせずに違う本を読んでいる。
武力の天才、知識の鬼と呼ばれる2人のこれらの行動は日常的で、これを咎めることの出来る教師は1名程度しかいない。
故にこの2人は自由に学校生活を満喫している。
「え〜。一緒に前線で戦うって約束どーしたのー!」
「「いやだ!」」
「ひどい!!!」
スクスクと笑う2人は顔立ちが整っておりいつもふたりっきりの笑顔は貴重である。
この3人でいる時しか見せない、3人の裏表のない純粋な笑み。
珍しいぐらいの2人の笑顔で教室は一時動く者がいなかった。