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私の償い
あの日以来、私は海へ行っていない。
もちろん泳ぐことが嫌になったことは一回もない。
私は、泳ぐことが好きなのだ。
友達を失うきっかけとなったものを好きなのだなんて、薄情に思われるかもしれない。
でも、好きなんだ。
中学、高校と泳ぐことにひたすら専念していたのは、自分の記録を伸ばしたいというよりも、あの事故の禊に近いものがあったと思う。
まぁ禊といっても好きなことをやっていたので、罰とも言い難いが、償いの意味もあった。
それに伴って得たものはもちろん記録。
ひたすら練習に専念していたので、自然と記録も上がった。
得られなかったものは、水泳以外の思い出。
練習で遊ぶ暇はなく、友達との思い出なんてほとんどない。恋だってする暇もないから、恋人なんていたこともない。そういうものは全くといっていいほど得られなかった。
まぁそれも禊のうち。私は心のどこかで友達とか恋人とか、そういう大切な人のとの思い出を作ることを恐れていたのかもしれない。
また、失ってしまうかもしれない。
私がきっかけを作ってしまうかもしれない。
そう思うと、怖くて、怖くて。
仕方なかった。