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泡にならない人魚姫は  作者: 逃した魚
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私の青春

スイミングスクールのアルバイトを始めて早2年…

今日も大学の授業が終わったあと、ひとりバイトへ向かう。

お昼過ぎの真夏はとにかく暑い。蝉の声が響き渡る。


最近、新しい小学生の生徒がたくさん入って来たこともあり、基礎的なことを教えることが多くなった。実は私も小学2年生の時にスイミングスクールに通い始めた。


きっかけは、人魚姫になりたかったから。今思えば、くだらない動機だな、なんて思うけれど、当時は泳げるようになれば、人魚姫になれると思っていた。

まぁ人魚姫はおとぎ話の世界だけの話であり、現実はならないということを知ったのは水泳を習い始めてから間も無くだったが。

その時はとてもショックを受けたことを覚えている。

だが、自分は思った以上に水泳に向いていたらしい。

上達も早く、一年経つ頃には一通りの泳ぎ方を習得できた。


そして私は泳ぐのが大好きになった。青春の全てを水泳に捧げた。


中学生の時には水泳部に入り、県大会優勝、全国大会に出場した。そして、高校から推薦が来て、水泳の推薦で高校に入学した。

がむしゃらに泳いで、泳いで。それが私の青春だった。


私の両親は、20歳の時、夏休みに友達と出かけた海で出会ったらしい。だから私の名前を海の姫で海姫みきと名付けた。

小さい頃は海姫という名前が好きではなかった。

出席をとるときも、絶対最初は正しく呼んでもらえなくて、色々不便だった。

でも、人魚姫のお話をみてから、海姫という名前がちょっと人魚姫っぽいと思い始めて、それから自分の名前を好きになった。

私がこんなにも人魚姫に憧れを抱いたのは、名前に自分と重なる部分があったからなのではないかと思う。





私は、そんなことを考えながら蜃気楼の立つアスファルトを歩いているうちに、スイミングスクールの入り口に到着した。


スイミングスクールはすでに新しい生徒で溢れていた。子ども達はみんな少し不安気な顔をしていた。

それは当たり前のことだろう。初めてのことを挑戦するというのはとても勇気がいることだし、緊張もする。小学生2年生だった私も初めてここにきた時は、怖くて水に顔をつけられなかったから、今ここにいる子達の気持ちはよくわかる。


私は待合室にいる子ども達と保護者に軽く挨拶をして、職員用の更衣室に向かった。

汗で濡れた衣服を脱ぎ、バックから水着を取り出した。

身体がベタベタしてて水着が上手に着られない。

いつもならこんなに手間取らないのに。一回家に帰ってシャワーを浴びてくればよかったと思った。

何とか着替え終わると、私は急いでプールに行った。


私が担当するのは小学生1年生のグループだった。今日入ってきた初心者の子とまだ入って間もない子のグループで、浮身や顔つけが主な指導内容だった。

「先生、私怖いよ〜!!お水怖いー!」

「大丈夫!先生ついてるから!ほら!頑張ってみよう!」

私もこんな時があったっけな。この子達の成長が楽しみだ。

なんか保護者目線でしみじみと感じてしまった。

私も少しは指導者らしくなったってことだろうか。


レッスンが終わり、自由遊びの時間になると、私の恩師である池谷先生に呼ばれた。

「おい貝沢、ちょっといいか。」

先生は妙に嬉しそうな顔で手招きしている。

私は駆け足で先生の方へ向かった。


「貝沢、お前、前にライフセーバーやりたいって言ってただろ?ははっ、そんなお前に朗報だ。今年の8月湘南の海でライフセーバーしないかってうちのスクールに募集がきた。とりあえずうちから1人欲しいそうなんだが、どうだ?やらないか?」

「え!本当ですか!!やります!是非やらせてください!」

「そうくると思った!よし!じゃあ俺言っといてやるから。詳しい日程はまたわかり次第連絡する。」

「ありがとうございます!よろしくお願いします!」





前から自分の泳ぎは自分のためじゃなく、人のためになったらって、そう思ってた。

私がライフセーバーをしたいと思ったのは、私が小学五年生の出来事がきっかけだ。それは私の人生の中で1番ショックで記憶に残る事件だった…


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