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二度目の出会い

前回のプロローグでは書けなかった細かい部分を少しでも伝えることができればと思います。



 二人が通う高校は神奈川県にある私立 言葉ことのは 学園である。生徒数は一学年五百人と多い。校風として"文武両道"を掲げているため、生徒は必ず何かしらの部活動への参加が義務付けられている。学園は生徒主体で運営されており、部活の予算や、文化祭などの行事での費用、あらゆる学園に関わるお金の流れは生徒会が管理している。このような事から学園の生徒の間では"生徒会に逆らえばこの学園では生きていけない"などの悪い噂がよく出る。言輝は一ヶ月間で集めた情報を整理しながら通学路を美琴と並んで歩いていた。

「音宮くんはもう部活決めた?私たちの学校って大学みたいに部活やサークルが沢山あるから迷っちゃうよね~」

 この言葉で言輝は一旦情報整理をやめた。

「確かに迷うね。中学の時は部活はしていなかったし、これといってやりたいこともないからどうしようかな…」

 言輝はまた表情一つ変えず嘘をついた。

「でも、今週中に部活決めないと生徒会に目をつけられちゃうって友達が話していたからそろそろ決めないとね!」

 そんな話をしているといつの間にか校門の前まで来ていた。やはり、"女の子と登校というのは時間が短く感じるほど充実したものなのか"と言輝はこのイベントの終わりを惜しんでいた。

「女子と登校とは羨ましいじゃねーか!言輝!」

「誰かと思ったら、江坂か…」

 美琴はクラス委員長で容姿端麗、頭脳明晰、スポーツ万能、面倒見が良く、絵に描いたような完璧人間で学校が始まって一ヶ月で一年生の間ではほとんど知らない人がいないまでになっており、校門に着くまでに何十人もの一年生に男女問わず挨拶をされていた。逆に言輝はあまり自分から積極的に話しかけるタイプではないので、まだ席が近い人ぐらいしか仲の良い人がいないのだ。その中で特に仲の良いというか、一方的に距離を詰めてくるのが先ほど嫉妬の言葉をかけてきた江坂一平えさかいっぺいである。

「もう知り合って一ヶ月も経つんだからそろそろ一平って呼べよ!俺は言輝って呼んでるのにおかしいだろ!」

「それもそうだな。これからはそうするよ。」

 言輝はあまり乗り気ではないが、この一ヶ月何度も言われて来たのでさすがに下の名前で呼んでやろうと思った。

「絶対だからな!俺は日直だから先に行くわ。」

 一平は先に教室に行くため走って校門を抜けて行った。

 またしても、美琴と二人になった言輝は時間に余裕はあるが、校門の前でずっと立っておくのもおかしいので歩き出そうとした時、美琴が俯いて立ち止まっていることに気がついた。

「柊さんどうしたの?具合でも悪い?」

 言輝は美琴に声をかけ、顔を覗き込もうとした時、美琴が急に顔を上げた。少し赤い顔をしている。

「顔も赤いし、保健室に行った方がいいんじゃないかな?」

 言輝は驚きながらも改めて声をかけ、美琴の返答を待つが返ってきたのは予想外の答えだった。

「わ、私も知り合って一ヶ月だし、委員長と副委員長の関係なんだから、下の名前で呼びあってもおかしくないと思うんだけど!?」

「え…?」

 言輝としては自分の質問に対する答えが返ってくると思っていたので、すぐに美琴の言葉に反応することができなかった。美琴はじっとこちらを見ているだけで何も言わない。

「そ、そうだね…そうするよ。じゃあ、美琴さんでいいかな?」

「同級生なんだし、さん無しで美琴って呼んで!私は言輝くんって呼ぶね!」

 美琴は凄く満足そうな顔をして歩き出した。一方、言輝は釈然としないまま美琴の後を追うのであった。

 教室に着くと一足早く日直で来ていた一平が黒板を消しているところだった。

「おー言輝!遅かったじゃねーか。何かあったのか?」

「別に大したことじゃないよ一平。」

 そんな会話をしていると朝のホームルームの始まりを告げるチャイムが鳴り言輝達は各々の席に着くのだった。

 暫くして、6組担任の佐久間さくま先生がいつも通りのボサボサの髪に眠そうな顔で教室へ入って来た。

「突然だが、転校生を紹介する。入って来てくれ」

 この時期に?という疑問が浮かんだのは言輝だけではないだろう。その証拠に美琴と目が合いその目には戸惑いの色が見えた。男子はどんな美少女が来るのかとワクワクが隠せない様子で席の近いもの同士で話している。一平も何か言っているが無視しておこう。逆に女子はどんなイケメンが来るのか同じ様子で話している。軽くお祭り騒ぎになったところで話題の中心人物は教室へと入って来た。

「初めまして。言葉色音ことのはしきねです。よろしくお願いします」

 正解は男子の方であった。満点はなまる文句なしの正解だった。教室のボルテージは最高潮に達し、これがおさまるまでは少し時間がかかった。

 一言で表すと"美少女"この言葉しかないだろう。腰まで届きそうな黒髪ロング。新雪のように曇りのない白い肌。出るところは出て、引っ込むところは引っ込んでいて、バランスが取れている。身長も平均的で容姿での欠点が見つからない。でも、どこか人間味がなく表情も読み取れない。

 美琴も美人であるがタイプが違う。髪は少し明るい茶色で肩ぐらいまでのショートカット。肌もそこまで白くはなく健康的だ。身長は百六十五センチメートルと女子の中では高めでモデルのような体型だ。本人はコンプレックスだと話していたが羨む女子も少なくはないだろう。言輝の中では美琴は"赤い花"色音は"真っ白な人形"という印象だった。

「これは派閥ができそうだな」

 そんな呑気な事を考えていた言輝だったが、ある点で少し引っかかった。

言葉ことのはという名前どこかで聞いたような…まさか!?」

 クラスのほとんど[主に男子だが]は色音の容姿が印象的で名前には注目していなかった。

「そういえば、言うのを忘れていたが言葉はこの学園の理事長の孫だ」

「やっぱりか…」と言輝は思っていたが、佐久間はこの一言でクラス全員を固まらせることに成功している。

「孫といってもこの学園に来るのは初めてだ。誰か校舎を案内してやってくれ」

 色音が理事長の孫だと知ったいま、迂闊に名乗りを上げようとする者は現れない。

「誰もいないんだったら、委員長と副委員長に任せる。放課後よろしくなー」

 佐久間は軽いノリで言輝と美琴を案内役に任命したが、正直面倒だ。

「先生、放課後は少し用事が…いえ、なんでもありません」

 言輝が適当な理由で辞退を申し出ようとした瞬間、色音と目が合った。普段ならこのまま嘘をついていただろう。しかし、今回は初めて嘘がバレると直感的に感じ、嘘をつかなかった。色音の目に何か特別なものを感じたのだ。

「自己紹介も終わったところで言葉は、窓側の一番後ろの席な」

 (窓側の一番後ろの席ということは俺の後ろじゃないか!)と言輝が焦りを隠せずにいると、横を色音が通りかかった。

「あなた嘘つきね…」

「えっ?」

 言輝は思考停止した。

 本当に小さな声で発せられた言葉、”これまでに一度しか言われたことのない言葉”だったから…


お読みいただきありがとうございます!今回、初めて言葉色音が登場しました。皆さんが思い描いていた色音だったでしょうか?これから詳しい性格など明かしていくつもりなので、皆さんが思っている色音に近づけるよう頑張りたいと思います。最後になりますが、コメント、評価、どんな感想でもモチベーション向上につながるので遠慮なくお願い致します。お読みいただきありがとうございました!!

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