プロローグ
はじめまして!野多拓と申します。小説という荒野を多く開拓したいという想いをペンネームとさせていただきました。読んでくださる読者様に楽しんでもらうのはもちろん、この小説を読んで少しでも言葉の意味というものを一緒に考えていけるよう全力で書かせていただきたいと思います。
「あなたは嘘つきね。でも…」
この言葉を最後に母はこの世を去った。
「この夢を見るのも久しぶりだな…」
場所は決まって白い病室である。花瓶もなければ壁に絵が飾られているわけでもないただの病室。ここにいるのは母と涙と鼻水でくしゃくしゃになった顔の小学六年生の自分が一人。そしていつも、最後の母の言葉を待たずして目が覚める。
「この夢を見た日はろくなことがないんだよな」
そんなことをぼやきながら、音宮言輝は顔を洗うため洗面台に向かった。そこである変化に気がついた。微かに顔に涙の跡がついているのだ。
「まさか夢で泣くなんて…もう高校に入って一ヵ月経つんだからしっかりしないと!」
言輝は自分の頬を叩き、気合いを入れるためいつもより強めに顔を洗ったのだった。
高校に進学が決まってからの春休みの間に父が海外への単身赴任が決まり、一人暮らしを余儀なくされたのだが、昔から仕事で家を空けることが多かった父だったので、特に不自由することはなかった。
朝食を食べ、学校に行く準備を済ました言輝は今朝の夢が気になりながらも家を出たのだった。
「今日も憂鬱だ。毎日、家の前まで迎えに来てくれる可愛い幼馴染でもいれば毎朝テンションMAXで学校に行けるのに」
男子なら一度は想像したことがあるであろうイベントを言輝も想像しながら通学路を歩いていると、珍しく後ろの方から元気な女の子の声が聞こえてきた。
「音宮く~ん、おはよ~!」
「この声は…おはよう柊さ…」
言輝は振り返りながら挨拶を返そうとしたのだが、挨拶をした主である柊美琴はまだ十メートルほど後ろにいるのだ。
「おいおい、どれだけ大声で挨拶しているんだよ…」
言輝はその場に立ち止まり、挨拶の主を待つことにした。少しして到着した美琴は言輝の顔を見て不思議そうな顔をした。
「あれ?音宮くん笑っているけど、今朝はいいことでもあったのかな?」
言輝はあの距離で挨拶されたことに対し苦笑していたのだが、美琴は違った解釈をしたらしい。
「あぁ、朝食で目玉焼きを作ろうと卵を割ったら黄身が二つ入っていたんだ。」
「そうだったんだ!私も今朝はスッキリ起きられてテンション高いんだ~!」
美琴は嬉しそうにこちらを真っ直ぐ見ている。しかし、
言輝は嘘をついた。
朝食に目玉焼き作ったのは本当なのだが、黄身は二つ入っていなかった。咄嗟についた嘘だったが、言輝は美琴の目を真っ直ぐ見ている。それが嘘偽りのない真っ白な言葉のように。
今回は読んでいただきありがとうございます。初投稿のため至らぬ点が多かったと思いますが、少しでも楽しんでいただけでしょうか?私としては読んでいただけただけで天にも昇る気持ちですが、もっとうまくなり読者様に楽しんでいただけるよう精進していきたいと思います。感想や改善点など何でも構いませんのでコメントいただけると助かります。どんな内容でも参考とさせていただきます。