神様の戦闘
さて、僕はこいつにどうやって勝とう?正直強い奴との戦闘とかいつぶりだろう?前回の有給では戦うことのない世界だったし相当前になるね。
「考え事とは余裕だな。」
そういってアラクネは一瞬で間合いを詰め、ナイフで軽く振ってきた。それをゼロスは避ける。
「いやいや、強い相手との戦いなんて随分と久しぶりなんで勘が鈍ってないといいなと思ってただけだよ。」
そう答えている間にも何かが一瞬で投げられてきた。それを一瞬掴もうとしたがやめて避けることを選択する。
その様子を見てアラクネは軽く舌打ちをしながらさらに近寄り何度もナイフを振る。
「どうした防戦一方じゃ俺には勝てないぞ?」
「チッ。厄介な相手だね。攻撃するものすべてに毒を塗っている。まともに受けられそうにない。それに姿もぼんやりとしかわからないし。ナイフを振る動作をしながら空気にも毒を混ぜているだろ?」
こんなの長く吸ってたらじわじわ弱ってやられてしまう。まるでクモの巣に絡めとられじわじわと弱っていく昆虫のように。
「やっぱりお前は強いようだな。普通はそんなことに気づかずに打ち合って勝手に弱っていくんだ。」
「ホントアラクネの名に恥じない戦い方だ。相手をじわじわと弱らせて戦うなんてさ。まぁ僕も特化して魔法を使えるからね。この毒は僕には聞かないよ。」
僕はそう話しながら毒を無効化させるために自分の魔力を毒の回復に回す。しかしこのままではじり貧だな。時間を掛けすぎるのも不味い。兵士たちが集まってきてしまう。
「チッ。」
舌打ちを一つして一瞬で距離を離すアラクネ。それを見てこっちも近づこうとしてやめる。やめた理由は僕の頬がいつの間にか切れていたからだ。
「何をした?」
なんでだ?いつあたった?気づいたら切れていたぞ。
「教えるわけないだろう。ただその判断の速さは誉めてやろう。」
「だよねぇ。」
鋭利なもので切られていた。さらに毒が付着しているかもしれない。一応魔法で傷を治して浄化の魔法も使う。
「お前、恐ろしいほど魔法が使えるようだな。魔法だけでなく魔力をあたりに散らして俺の居場所まで探っていやがる。普通の人間とは思えん。」
そりゃ僕神様ですから。そんな簡単にやられてしまうものではないよ。スペックのことは本当に済まないと思っている。
「勿体ないな。お前俺たちの組織に来る気はないか?」
「ふーんラブコールかい?」
「ああそうだ。あんたほど魔法が使えれば幹部として活躍できるだろう。秘術についても見よう見まねでそこまでできれば文句なしだ。しっかり練度を高めれば俺を超えるだろう。さらに強くなれる。どうだ?」
べた褒めだねぇ。なら質問してやろう。
「ふむ。それはアリだね。僕もゆったり傭兵やってる身だしね。」
「話が分かるやつは俺は好きだぜ。」
「それじゃ一つ聞くけどいいかい?」
「なんだ?」
「百人のために暗殺をしろと言われて暗殺をする。ただその暗殺の対象のなかに僕の知り合いがいたら?」
僕はエゴの塊だから生きたいように生きる。それを通させてくれるなら別にいいと言えばいい。そうしたら変わった有給になって面白いかもしれないしね。
「もちろん暗殺してもらう。俺たちの暗殺は絶対だ。」
「なら答えは出たね。」
「残念だ。」
そういってアラクネはナイフではなく短い矢のようなものを連続で投合する。
それを避けると今度は腕、足、もう一度頬に傷が付いた。
「なるほど分かった。これは特殊な糸だね。避けると何かに当たると思ったんだ。糸に魔力を流し鋭利な刃物のようなものに変えているんだ。そしてさっきから投げられているのは糸に魔力を流しそれを針のようなものにしてるんだな。」
こいつの一芸というやつは恐らく魔力を使った糸を使うことなんだろう。なるほどなるほど。こりゃ確かにクモだ。二つ名に恥じないレベルのね。
「チッ。当たりだ。だがそれが分かったとてお前はどうしようもないだろう。」
あっやばい。確かに対抗策が今ないじゃん。
ちょっ待って!
そう考えている間にもどんどん投合される魔力の糸。そして避けるたびについていく傷。
「クソ。やりづらい。」
「ハハッさっきまでの威勢はどうした?」
傷を治しながら考える。このままじゃいずれやられる。
「ああ。さっきから避けて俺の魔力が切れるのを待っているのなら無駄だぞ?こんな糸に使う魔力なんてたかが知れている。それに俺の魔力量は一般人の何倍もある。」
「ああっもうホント厄介だなぁ!」
ちょっとムカついた!そっちがその気ならこっちも魔力を使ってやろうじゃないの!
「?」
もう気づいたか。自分の魔力の糸が大量にある中で僕がこの空間に満ちる魔力を自分の物に置き換えていることに。これで姿もしっかり見えるようになったな。
「この空間に満ちる魔力が先ほどとは変わっている。お前まさか?」
「ご察しの通り。この空間の魔力に僕の魔力を流してすべて自分で操れるようにした。これでお前の糸はもう使えない。そして秘術とやらも使えない。」
これからはいくら消えても何度でも魔力の質を変えて同化できないようにしてやる。
「まさかここまでやられるとはな。俺のプライドも割とボロボロになってきた。」
「自慢の技が敗れたんだ。もっと悔しがってくれてもいいんだぞ?そしておとなしく捕まるか殺されるかしてくれ。まだ僕はやることがあるんだ。」
ホント勘弁して下さい。兵に来られると僕も困るんです。
「それは出来ないな。蟲毒のプライドとして金をもらった以上依頼は果たさなくてはならない。そしてお前幹部をなめるなよ。これだけで終わるような幹部なんかいないぜ。それと教えといてやろう。」
そういってまた一瞬で距離を詰めるアラクネ。ただそのスピードは先ほどの比ではない。
「早っ!グッ!」
痛い。殴られた。そしてすぐに投げられた。すぐに起き上がったがこいつまさか!
「どんどん行くぞ!」
そういって手刀で目つぶしを狙ってくる。避けたところに足払いを掛けに来る。
その動きで少し避け損ね足払いが入る。そこで隠し持っていたナイフで刺しに来る。
それを転がって避け、ゼロスはすぐに起き上がった。
「秘術は姿を隠すため。糸は相手に気づかれず、証拠を残さないで殺すため。だが暗殺術はそれだけではない。殺すために相手の動きを研究し、最適な動きで相手を殺すということも必要になる。お前はまだ俺の暗殺術の底を見てはいない。」
ホントに人間強すぎるだろ!このままじゃやばい。まずは身体強化をして状況を五分にする!
「やはり身体強化は使えるか。さぁ続きをやろうか。」
そういってアラクネは突進してくる。拳を両手で出し顔と鳩尾を的確に狙う攻撃。人間は本能的に顔を防御するからな。残念。僕神様だし、それくらい見えている。
両手を掴む。しかしアラクネはさらに蹴りで金的を狙っていく。足を閉じ躱すゼロス。そこでアラクネもう一つの足で軽くジャンプしゼロスの胴体に蹴りを入れる。その蹴りには他の部分の魔力を一瞬で足に集めた蹴りで岩をも砕きかねない一撃であった。
まともにくらったゼロスは手を放してしまう。
これが一瞬のうちに行われた。
「カハッ」
内臓にダメージを受けたのか血を吐くゼロス。
「そこまで躱すとは恐れ入ったがまだ俺には足りない。」
「やばいな。ホントに強い。」
人間極めるとここまで動けて戦えるもんなのか。
「ホントに惜しい男だがそろそろ死んでもらおう。」
そういってアラクネは近づいてくる。
僕の魔法の手札で考えろ。
「ここまでやれる奴はなかなかいない誇っていいぞ。」
よしこれで行くか。ちょっと賭けの部分があるがこれしかないかな?
「大丈夫だ。お前に敬意を表して痛みもなく殺してやろう。」
「ご託はいいから早く来いよ。僕は簡単には死んでやらないぞ?」
「ふっ。今のお前になにが出来る。まぁいい。それじゃあな。」
そういってさらに身体強化のギアを上げたのか先ほどよりも早いスピードでゼロスの裏に回り頸椎に手を掛ける。
「おまえがな!」
そこで腕を伸ばしたポーズのアラクネの頭の後ろを掴み渾身の膝蹴りを顔面にお見舞いする。
どうやらあまりにも予想外な攻撃に驚きを隠せなかったようで見事に当たった。
そしてどうやらだいぶ相手を殺すために手の方に魔力を集中していてガードが甘かったため大きなダメージを与えることができた。
「!?」
さすがに驚いただろう。そこに僕の姿はない。ここは僕の魔力で満たした空間だ。蟲毒と同じような手だけど、完全には空間の魔力と同化せず、今いる場所を少し偽ったんだ。見たことない魔法だし引っかかってくれると思ったよ。
「ゴフッ!チクショウ。こんな魔法聞いたことがねぇ。」
「そりゃそうだよ。今思いついてやってみた魔法だからね。」
そういって今までとは本気で身体強化を使いアラクネに殴りかかる。
最初は躱し、防御もしていたが先ほどのダメージが残っているのか動きに精細を欠き始め徐々に攻撃が当たっていく。
「これだけやってまだ倒れないとか本当に強いね。感心するよ。」
体の至るところに打撲を負い、頬は腫れ、血を吐きながらもアラクネはまだ倒れない。
「まさかここまで追いつめられるとはな。」
「僕も死ぬわけにはいかないんだ。そろそろ倒れてくれないかな?」
するとアラクネ観念したようで話を始める。
「ハハッどうやらここまでのようだな。どうやら俺はお前に勝てないらしい。」
「やっと諦めてくれた?」
「ああ。勝つのはな。正直今回の依頼を放棄したとして蟲毒のプライドを捨ててもお前のことを組織に報告することの方が重要そうだ!」
そういってアラクネは煙幕を使い、今日使った中で一番の身体強化で地面を殴りつけるアラクネ。すると分厚い床が人一人分ほど空いてそこからアラクネは脱出していった。
「クソ!ここにきて煙幕かよ。ベタな手使いやがって。」
ただ煙幕が消えるころには既にアラクネはいない。逃げられたのである。
逃がしちゃった。魔力を満たしてるのはこの部屋だけだ。でも気配がない。もうこの部屋にいないのは確かだ。
「はぁ何とか撃退できた。でも蟲毒に報告されるんだよね?正直たまったもんじゃない。こんなの何人も相手にしてたら体がもたないよ。」
そりゃ手加減のスキル外したり魔法を解禁すればいいんだろうけどそれじゃ楽しくないよね。ただ収穫はあった。手加減のスキルで能力は上回っていても戦い方次第じゃ負ける可能性があること。こりゃ真剣に鍛錬した方がいいかな?
「てかのんびりしている場合じゃない!こんな穴開けられてんだよ?兵士が気づかないはずないじゃないか!」
少なくともあれだけドンパチやってたらどう考えても気づく人間くらいいるよね。そこから念話で人で兵を呼んだとしたら・・・。
早くこの部屋を出て四階に行かないと。
そうしてまた蟲毒と同じようにゼロスは周囲の魔力と同化させ姿を消す。
「やばいな。さっきより思うように体が動かない。」
さっきの攻撃で内臓まで傷つけられたからな。回復魔法だと外傷は治せても内部までは治せないんだよね。
てかこのスペック内臓もしかして弱い?酔ってたからもしかしたらあり得るな。どっか欠陥があることくらい。痒いところに手が届くとは思ったけどそうでもないんだな。本気で鍛錬しないと生き残れないぞこれ。
ゼロスがそんなことを考えながら階段の前に着く。すると窓から兵士が集まってくるのが見える。
「やばい。急がないと。」
それにしても場内の上の方に人がいないな。なんでだ?
「賭けの部分が強かったがどうやら勝てたようだな。」
上階に進む階段からデュランが降りてくる。
「ああ。なんとかね。それでなんで上から降りてきたんだ?」
「お前が戦っている間に皇帝を救おうとしたのだが魔法で阻まれたんだ。魔法専門のやつは元老院によって別のところに任務で飛ばされていてな。」
「そこで降りてきたら僕がいたと。」
「そうだな。頼む。部屋を開けて皇帝を助けてくれ。兵は俺がなんとかしよう。」
「わかったよ。ただ思ったよりも蟲毒の幹部が強くて今は体が思うように動かないからちょっと時間かかるかもしれない。」
ホントはもう休みたいんだよ僕は?
「それは大丈夫だ。だから時間かけてもいいから頼んだぞ?」
正直人使い荒いなこの人。
「わかったそれじゃあ僕は行くよ。」
「魔法が解けたら念話をくれ。すぐにそこに行くからな。」
「いやあんたが来たら兵も一緒に来ちゃうだろ!?」
「その時は皇帝を助けてくれた人間と皇帝と一緒に説明するからいいだろう?」
どんだけ皇帝に会いたいんだよこの人。まぁいいや。それだけ慕ってるってことだしね。少し興味もでてきた。
「ああわかったよ。それじゃあ今度こそまた後でな。」
-------------------------------------------------------
帝国の城四階。
「あの部屋だな。」
なにやらそこには厳重に魔法が掛けてある部屋がある。
「なんだこれ?施錠できる補助魔法でこんなもの見たことないぞ?」
ああ。なるほど。蟲毒か。おおかた周囲の魔力と同化させて施錠魔法を使ったを掛けたとかだな。開錠するには魔力を同化させて開錠魔法を使うとかそんなところかな?
10分後・・・
「なんて面倒なものを作ってくれたんだ!」
そこにはまだ開錠されていない魔法の部屋があった。
「チクショウ。何重にも魔法掛けやがって・・・」
前世で何したらこうなるんだっていうごちゃごちゃに線が絡んでいるゲームのコントローラーをほどくくらいに面倒だ。
さらに5分くらい開錠に時間がかかってようやく開錠に成功したのであった。
(デュランーあいたぞー。あれ?)
ああ。忘れてた。蟲毒が特殊な妨害をしていて念話が使えないんだっけ?でも蟲毒は引いていったのににまだ解けてないのか。まぁそのうち解けるだろ。
「さてそれじゃあ。行くとしますか。」
部屋の扉を開ける。するとそこにはあったの美人な一人の女性がベッドで寝込んでいる光景だった。
いやいや。部屋間違ったかな?ああ。皇帝の妻とか?でもとりあえずこの人、容体があんまりよくなさそうだね。
「ねぇ?大丈夫?」
「帰りなさい!私はあなたたちには従わない!」
あれ?僕これ勘違いされてる?
「僕が見えない?」
どう考えてもみすぼらしい恰好してるんだよな。元老院には見えないはずなんだけど?
「?あなたは?元老院ではないのか?」
「ああ。ただその前にあんた目が見えないのか?」
「見えない。元老院に従わないという態度を取っていたら徐々に五感を奪う毒を盛ると言われてな。最初は味覚、次に視覚と奪われた。だが従えば戦争によって確実に死人が出るだろう。そんなこと容認できるわけがない!」
この人強いな。味覚が奪われたら食べたものが全く味がしなくて食事が楽しめない。さらに視覚を奪われれば周りが見えないという恐怖が待っている。それでも従わないってどんだけ強いんだ。ん?あれ?なんでこの人元老院にそんなことされてんだ?もしや・・・
「一つ聞きたいんだがもしかして皇帝?」
「ああそうだ。お主、誰かわからないで助けに来たのか?」
ああ・・・やっちまった。皇帝が女性とは聞いていなかった。予想外だ。
「皇帝が女性と知らなかったもので。」
そういうと皇帝は笑い始める。
「お主、なかなか面白いやつだな。ああ。不敬とか言わないから安心してくれ。ただ今はそのままで話してくれないか?普通に話してくれる者がいるとは新鮮な気分だ。」
ああ。笑われてるよ。まぁいいけどさ。
「とりあえず僕は皇帝を助けに来たんだ。ホントは忍び込んで元老院の弱みを握るために来たんだけどね。熱心な家臣に助けてくれと頼まれたからね。」
「ああ。デュランだろうな。この城に今いる親衛隊は彼しかいないからな。親衛隊には悪いことをした。私が元老院と揉めるたびに別の場所に飛ばされてしまっていたからな。」
この口ぶりだとデュランは皇帝に信頼されてるんだな。
「まぁその結果いま僕はここにいる。あとで存分に褒美でも与えてやってくれ。」
「ああそうするとしよう。ところでここにいるということは蟲毒の幹部を倒したのか?」
「うん。まぁ。だいぶ手痛くやられて挙句に逃げられちゃったけど。依頼よりも僕のことを組織に報告することの方が重要だとか言ってね。」
これ絶対狙われる奴だよね。意外な弱点も見つかったし少し時間が欲しいところなんだけどね。
「それはすまないことをしたな。」
「気にしないでくれ。それと聞きたいんだが毒って言うのは?」
「ああ。蟲毒が用意した毒らしくてな。途中で服用をやめたとしても症状が進行するらしい。私の命もそう長くはないだろうな。」
そういう皇帝は心なしか不安そうな顔をしたように見えた。
そりゃそうだ。誰だって死ぬのは怖い。なのにこの皇帝はずっと毅然として心配かけさせないように誤魔化してるんだろう。
「ここには僕以外誰もいない。言いたいことを言ってもいいんだよ?」
「やめてくれ。そんな優しい言葉を掛けられてもどうにもならないことはわかっている。ただ・・・。」
「ただ?」
「怖いな。どんどん自分の感覚がなくなっていくんだ。皇帝の立場になって色々教えられているうちにこれも運命だと思った。自分の気持ちを押さえつけわがままというのは忘れ、命を捨ててでも民のために動くのが私の運命だと。だがどうやら私はまだ生きたいらしい。おかしいだろ?これだけエルフの民たちを傷つけ沢山の民の命を危険にさらしてもこう思っているんだ。」
そういって皇帝は自嘲気味に話す。その目からは涙がこぼれていた。
ホントにこの人強いな。生きることすなわち民のために尽くすことと思っている。あーもう!なんで僕には助けたいって思える人がこんなにも出てくるんだ!こんなトップなんてそういないぞチクショウ。絶対に助けてやる!!
「手を出すんだ。」
「なんだいきなり?」
「いいから。」
そういうと皇帝は自分の少し小さい手を話をしているゼロスの方に差し出す。
ゼロスはその手を握り目を閉じ集中し始める。
「これは解毒剤も既存にある魔法でも治療は出来ないね。毒に魔力が複雑に絡んでいる。」
「治せるのは蟲毒くらいだと思ってたがやはりな。それであとどれくらい持つ?」
そういって自分の残された時間を聞く皇帝。
「それはわからない。」
「そうか・・・」
そのセリフに皇帝は少し残念そうな顔をする。
「僕にはわからないよ。人の寿命なんて。長生きすれば80や100といった年まで生きられるからな。」
「私はそんなことを聞いているのでは・・・。」
「何言ってるんだ?僕はそれだけ長生きできるようにしてやるって言ってるんだ。蟲毒の毒になんて君を負けさせてなんかやらない。この毒を治療してやっと今回の蟲毒との戦いは勝ちだって言えるんだ。」
「私は・・・まだ生きられるのか?」
目を見開きそう皇帝はつぶやく。
「ああ。だから少し待っていてくれ。まず毒に絡みついた魔力をどうにかしなくてはならない。」
この魔力は恐らく秘術で使っていた同化を皇帝の魔力で少し変質させているな。毒に絡みついている魔力を僕の魔力を流し込んで強制的に僕の魔力に変える。そのあと僕の魔力を抜き取ればただの毒にできるかな。
よしできた!
「これであとは元の毒だけだな。これだけなら僕の魔法でどうにかできるだろう。」
浄化の魔法を使用し体の毒を消し去る。よし。これで大丈夫なはずだ。でも危なかった。これ僕がいなかったら治せなかったな。
「目を開けてみて。もう見えるはずだよ?」
そういわれて目を開ける皇帝。そこには自分を助けてくれた男が微笑んでいる姿であった。
「ああ、見える。お主は男前だったんだな。」
「最初にそんな言葉が出てくるなんてたくましいことで。」
普通もっと喜ばないかな?なんで最初にこんな感想が出てくるんだか?
「褒美を取らせなきゃいけないな。何がいい?」
「僕はそんなものいらないよ?助けたくて助けたんだから。」
ああーでもエルフの誤解を解いて欲しい。国民に嘘を流したままだからね。
「そうか。これは私個人からの礼だ。」
そういって皇帝は握っていた手を強く引く。そこで予想外のことにゼロスは手を引かれ体制を崩す。
そこに皇帝がゼロスに口づけをする。
「!?」
驚くゼロスをしり目にしてやったりといった顔の皇帝。
「気に入らなかったか?これでも私は自分の器量には少し自信を持っていたんだがな。それに初めてでもあるんだが。」
皇帝は少し自信なくそういう。
「はぁ。びっくりしたよ。なんでこんなことをしたんだ?」
「たぶん私は将来自分の相手を選ぶことは出来ないだろう。だから最初くらいは自分の気に入った相手にしたかった。ここには誰もいなかったからここしかないと思ったんだ。いかんな。誰もいないことをいいことに私は少しわがままになっている。」
「まぁいいよ。僕も少しくらい君はわがままを言った方がいいと思っていた。全部自分の心を誤魔化し続けるなんていつか無理が出るんだからさ。」
「そういってもらえると助かる。ところで今聞くことではないんだが・・・」
「何?」
「名は何という?ああ。ダメだな。人に名を聞く場合名乗りは自分からだったな。私はエーヴェル。グランドル帝国第24代皇帝のエーヴェルだ。」
そういえば皇帝の名前も聞いてなかったし、僕も名前を名乗っていなかったね。
「僕はゼロス。エルフを助けに来たはずが気づいたら熱心な家臣に頼まれ気づけば皇帝を助けてたどこにでもいるお人よしだよ。」
「お人よしはどこにでもいるがお主みたいな蟲毒の幹部を退けるやつはいないだろう。」
「それもそうかもね。」
そういって笑いあう二人。こうしてゼロスは無事皇帝を助け出すことに成功したのだった。
作者「もしかして こ う て い ?」




