神様帝国に忍び込む。
さて一日ぶりくらいの僕一人行動だね。とりあえず僕は帝国の門の前にいる。
「すいません門番さん。入国したいんですけど。」
「ああ。なら入国証を見せてくれ。」
そういって入国証の提示を要求する門番。
僕はスポットから帝国の入国証を取り出す。僕は全部の国の入国証を持ってるからね。このくらいなんとでもなるさ。
「これで大丈夫ですよね?」
「ああ。大丈夫だ。通っていいぞ。」
「ありがとうございます。」
そういって僕は門番に挨拶し帝国の門をくぐった。
「さて城はあそこだな。」
でもその前にさっきの放送を聞いて市民はどんな反応をしてるんだ?聞き耳を立てながら歩くとしよう。
「それにしてもさっきの放送はホントだと思う?」
「エルフがそんな大それたことすると思わないんだけど。欲とは無縁だよなぁ。」
「ただ皇帝を最近見てないのも事実だよな。元老院と揉めてるとは言ってたけど病気でも揉めてるとかホントに病気なのか疑わしいよな。」
「でも皇帝に毒を盛るんだぜ。人間の技術でそんなこと出来るか?そう考えたらできそうなのはエルフくらいしか思いつかないんだが。」
「確かになぁ。」
どうやらさっきの放送でも市民全員がエルフがそんなことをするとは思ってないらしいな。ならまだ希望はありそうだ。
「よし。ならすぐにでも弱みを探さないと。でなきゃ処刑されることには変わりないからな。」
さっさと城に急ごう。
---------------------------------------
「まぁそうだよね。そりゃあ普通は兵士が守ってるよね。」
さてどうするかな。補助魔法で忍び込むにしても魔法なんてないよなぁ。
「おっそうだあれを試してみよう!」
そういやここに来る途中何度も襲ってきた蟲毒が使ってきた技能はどうだろう。あれで自分の姿をごまかせないかな。
そう考えて魔力を操り始める。こういったことに関しては神様だからね。魔力を操るくらいならできると思うよ。
魔力を操りゼロスの姿が消えていく。
「おっ出来た。ただ練度が足りないな。もうちょっと漂う魔力と同化しないと気づかれそうだ。」
たぶん魔物とかそういった本能で動いているものには気づかれそうだな。実際匂いとかが消えるわけではないからな。消すのは姿だけだ。
「音は補助魔法で消せる。それで行くか。時間がない。」
そうして堂々と城の門をくぐる。
「よし。潜入は成功したな。」
まずは一階だな。
部屋はあんまりないな。どっちかと言えば兵士が多い。ここはさっさと抜けた方がいいな。強そうな人がいる。げっやばい!老練な感じの兵がこっちを見てる。ここの周りに人はいないけどこっちに近づいている。
「そこに誰かいるな。ただ匂いが蟲毒の物ではないな。誰だ。」
「・・・・・・」
「答えなきゃここで人を呼ぶ。それは困るのだろう。答えろ。」
チクショウ。全部バレてるじゃねぇか。なんだこのおっさん!
「あんた何者だ?この方法に気づく時点で蟲毒は知ってるよな。それなりに上の立場の人間か?」
「一度に質問するのは一つにしろ。それに質問があいまいすぎる。答えようがないな。」
「じゃあ質問を変えるよ。あなたの立場は?」
「私は皇帝陛下直属部隊その中でも皇帝の選りすぐりの親衛隊と呼ばれるヴァイスリッターのデュランだ。」
うわぁぁ!いきなり大物だったぁ!
「こちらは名乗ったのだ。そちらも名乗るのが礼儀だろう?名を名乗れ。」
「僕はゼロスだ。」
たぶん皇帝側だと思うが立ち位置が分からない。まだ迂闊なことは言えないな。
「ゼロスか。それで何しに来た。ことと次第によれば不法な侵入者として捕らえるぞ。」
くそっどう誤魔化す。侵入者となればこれ以降は警備も固くなること間違いなしだよな。
「僕はどうしても許せないことがあってここにきた。」
これでどうだ。どんな反応をする。
「なるほど。それは奇遇だな。私もこの城では許せないことがいくつもある。」
あっこれたぶん大丈夫なやつだな。騎士としての誇りがありそうなタイプだ。
「そうか。僕が許せないのは理不尽な行為で命がいくつもなくなりそうな行いについてだ。心当たりはあるな。」
「エルフ・・・か。どうやらお前は私と同じ怒りの一つを抱えているようだな。それで何が知りたい。」
やったぜ。味方にできそうな人だ。情報を話してもらおう。
「元老院は何を考えてエルフを捕まえている?」
「元老院はエルフを捕らえて自分たちの支配力を示したいといったところだな。ただ処刑と自分たちの奴隷用で今は分けるので忙しいようだが。」
おいおい。仮説もしかして全部当たってない?相当無理やり予想したんだけどな。どうやら元老院は腐ってることには間違いなさそうだ。
「クソッ!やっぱりそんな理由かよ!」
「あまり大きな声を出すな。バレるぞ。」
「すまん。他にも聞いていいか?」
「ああいいぞ。だが、ただ一方的に情報を与えるのは不平等だ。俺の頼みも聞いてくれるならな話そう。」
ちっ抜け目ないな。ただこのデュランという男は理不尽な振る舞いに怒りを覚えているようだ。中身次第では情報を合わせて聞いてもいいかもしれない。
「・・・わかった。しかし頼み事次第だな。まずはその頼み事を話してくれないか?」
「ああ。頼み事とはほかでもない。我らの皇帝を助けてほしいんだ・・・。」
「はっ?どういうことだ?」
えっ?皇帝を守るために親衛隊がいるんじゃないのか?
「皇帝は今監禁されている。元老院の手によって。親衛隊の私たちは助けようとしたのだが、権力を持った元老院はどんどんこの城や皇帝の身の回りから私たちを遠ざけていった。私も今の仕事は一般兵の鍛錬の師事だ。笑えるだろう?」
「そこまでやりたい放題してやがんのか・・・。一つ聞きたい。さっきの放送の先代皇帝はエルフ達に殺されたってやつ。エルフじゃないんだよな。」
「そんなわけがあるか!先代皇帝も素晴らしいお人だったんだ。エルフ達にも支援をするようなお人だぞ!恨まれる要素がない!なのにあんな急な死があるものか。元老院あたりが毒を盛ったか蟲毒に頼んで暗殺したに決まっている!」
なるほど。皇帝もこちら側なんだな。
「わかった。皇帝も助けるために動くよ。ただその代りこっちのお願いも聞いてくれ。助け出した暁にはさっきの放送を訂正すると。」
「そんなもの言われなくたってする。だから頼む。皇帝を助けてやってくれ。なまじ私たちが皇帝が対抗できるように学を着けたために奴らにとっての目の上のタンコブになってしまったんだ。あの方はあの年で死んでいいようないい人じゃない!」
なんだこの人めっちゃいい人じゃん。
「わかった。絶対に救おう。こっちにとっても重要な手札になる。」
「手札?お前は何かこの状況をどうにかする手段があるのか?」
「ああ。エルフを一人こちらで保護した。それでここまで来たんだ。」
「お前。相当なお人よしなのか?エルフ一人保護してここまで来るとか頭がおかしいのか?いやまぁ戦争止めるとかそういったことならわからんでもない。」
失敬な!会う人みんな僕のことを馬鹿にして!
「失礼な話だな。ただ他の奴にもそう言われた。」
「だろうな。それでおまえはどんな情報が欲しい?皇帝を助けてくれるなら協力は惜しまないぞ。」
「なら聞きたいことがある。元老院の弱みになりそうなものはなにかあるか?」
それがなきゃ追い詰めることができないからな。
「私が聞いた限りではないな。悔しいがなかなか弱みを見せない。ただ。」
「ただ?」
「皇帝を監禁という手段を取った奴らだ。何か皇帝が握って捕らえられた可能性はあるかもしれない。」
なるほど。現場を押さえてそれで強引な手段に出たと。ありえるな。
「なるほど。考えられるな。それで皇帝の居場所に心あたりはあるか?」
「どこに連れていかれたかはわからん。しかし奴らの口ぶりだとこの城の中で厳重な警戒を取っているらしい。そのなかでも一部の人間以外には簡単に解けない魔法で鍵をしているとか。あと皇帝の警備をしているのは蟲毒の幹部の一人だということだ。」
半端ではないくらいに厳重だな。それに蟲毒の幹部か。今まで相手にしてたのはどうやら下っ端みたいだな。下っ端であの練度ならホントに気づかれないような暗殺術がありそうで手ごわいだろうな。
「お前がこの城に侵入できるくらいには強いのはわかる。でも蟲毒の幹部は退けられるか?」
「やってみないとわからん。ただ少なくともここに来るまでにいくつもの蟲毒を差し向けられた。手の内は幾分かはわかる。」
「なるほど。蟲毒に気づけるのか。なら勝機はあるかもしれんな。ただ今度は幹部。今までの相手とは違って幹部は何か一芸に秀でていると聞いたことがある。それでも勝てるか?」
一芸ってなんだ。そんな暗殺術があるのか?人間ってホントにやたら強いやつがいるな。
「どうにかする。しなきゃエルフや戦争によって多くの命が散る。」
「虫のいい話だろう。だが頼めるのはお前しかいない。頼む。」
「ああ。任せとけ。あとこの城の形状を教えてくれないか?階層ごとに何か特徴とかないのか?」
知っていた方が色々と楽だろう?むやみ歩いてデュランみたいに見つかりたくないからな。
「上に行くほど権力の高い奴がうろついている。ただあまり私みたいに強い奴は少ないだろう。しかしあっちには蟲毒がいるからな。それには気をつけろ。お前のその練度だとたぶんバレる。」
あっやっぱり?でもどうしようもないんだよな。どうにかする時間もないし。
「わかった。とりあえず聞きたいところはそんなところだ。そろそろ行く。必ず皇帝を助けるから待っててくれ。」
そういって僕は移動を始めた。また厄介な状態だな。なんでこんなことになってるんだか?人間の欲って留まることを知らないね。行き過ぎは神様怒っちゃうよ。
--------------------------------------------------
帝国の城二階
そういえばシーザに連絡しとかないとな。情報は手に入ったし。
(シーザ?聞こえる?)
(おお。ゼロスか。何だ?何かあったか?)
(僕城に入ったらすぐに皇帝の親衛隊のデュランって人にバレた。)
(お前何やってんだよ!捕まったら元も子もねぇんだぞ!?)
あわわ!念話であんまり叫ばないでよ。頭に響くんだから。
(大丈夫だよ。考えはこっちの味方だったから色々聞けた。デュランって人。)
(まぁデュランのおっさんなら大丈夫かもな。それでどんなことがわかったんだ?)
(まず僕の立てた仮説がすべて当たってたね。)
(そうか。少なくとも筋は通ってたからな。その通りに動いて正解だったわけだ。)
うんそうだね。まさかホントにあってるとは思わなかったけどね。
(あと皇帝が元老院に捕まってるから助けてほしいって言われた。)
(はっ?皇帝捕まってるのか?)
(みたいだよ。元老院の目の上のタンコブ状態だってさ。もしかしたら弱みを握ってしまって捕まっている可能性もあるみたいだね。)
(なるほど。それで?捕まっている皇帝は助けられそうなのか?)
(どうやら厳重みたいだね。魔法による鍵と蟲毒の幹部がいるみたい。)
なんかこれだけ聞いたら貧乏くじ引いた感じがすごいなこれ。
(おいおい。蟲毒の幹部って厄介なこと極まりないな。勝てるのか?)
(わからん。どうやら幹部は一芸に秀でているなんて話らしいし。)
(そうか。危なさそうなら一回集まって作戦練るか?)
そんな時間あるかわからないんだよね。処刑は明日だよね。ということはエルフ達がいま無事な保証がないんだよ。明日処刑されるエルフに何かしているかもしれない。
(いや。エルフ達が心配だ。先にそっちをどうにかしてあげないとまずいと思う。ところでそっちは何か手に入った情報があった?)
(いや。フロンのこともあって大きくは動けていない状態だ。ただエルフ達がどこに捕まっているかはわかった。少なくとも城にはいない。)
えっそうなの?まぁ確かに集落ってくらいだから城の牢屋じゃ足りないかもしれないよね。
(帝国にある収容所に収められてる可能性が高い。だから俺たちはこっちに行く。)
(それなら気を付けてね。こっちには蟲毒の幹部がいるからもしかしたらそっちにも何かやばい奴が警護につけられてるかもしれない。)
(妥当な考えだな。とりあえずこっちも動き始める。また後で連絡する。)
(ああ。また後でな。)
そういって念話を切る。
(ゼロス!そっちも危険って聞いた。大丈夫?)
おわぁ!びっくりした!フロンか。そういえば念話できるって言ってたもんね。
(ああ。大丈夫だよ。僕はこれでも強いから安心して欲しい。ただそっちも危険な可能性が高いから気を付けてね。)
(わかった。絶対にこっちは仲間を助け出すからそっちも皇帝さんを助けてあげてね!)
(ああ。任せろ。それじゃあな。)
そういってフロンとの念話を切る。
うーんこれはあっちもそうだけど片方が負けた瞬間どれかが切り捨てられる展開にになりそうだね。本当についてきてくれたのがシーザでよかったかもしれない。これならまだすべて助けられる可能性があるよ。
よし。とりあえずこの階を回ってみよう。
うーん特にめぼしいものはなかったな。外から見たら大きい城だったけど階段の大きさを見るとあと四階くらいまでしかなさそうだね。となると僕なら皇帝は最上階に監禁するかな。そこからだと普通は高さから逃げられないし。あとは三階だけどここまでで偉そうな人がいなかったあたりそこに元老院がいる可能性は高いね。そこは探りを入れていこうか。
--------------------------------------------------
帝国の城三階
ゼロスは一つのドアの前で止まっていた。
「ふはは。先ほどの放送で私はルード殿に認められた。これで私の元老院での発言権を高めたことだろう。笑いが止まらん。」
こいつは元老院の一人みたいだな。これは盗聴するしかないよね。ただ録音するようなものがない!こういう時前の下界の物が欲しい!うん。ここでのセリフは証拠にできないな。
「それにしてもルード殿もよくここまで大それたことを考えられる。まさかエルフを従えるために何年も準備していたとはな。そのために前皇帝を暗殺、現皇帝も監禁とは。まぁその恩恵を私はあずかれるのだから万々歳なんだがな。」
どうやらルードというやつが今回の件の首謀者らしいな。ならこいつはその近くにいる元老院と言ったとこか。
「それにもうエルフすべてにこの隷属の腕輪を着けている。私はどのエルフを自分の物にしてやろうか。処刑用の見せしめにエルフを使うとしたら元老院には何人かエルフが当たる計算だからな。それにしてもこんな指輪一つであのエルフを自由にできるとは世の中恐ろしいものがあるものだ。」
下卑た笑いが聞こえるなかゼロスは怒りを覚えていた。
確定。こいつは絶対に失脚させる。もしくは殺す。温厚な僕でもこの下種は裁かれるべきだと思う。
「む?もうこんな時間かそろそろ収容所の方に行かなくてはな。」
そういってベヨネは部屋を出ていく。その顔はばっちりゼロスに見られた。
「顔は覚えたぞ。とりあえずあっちはシーザに任せて、僕はこの部屋に何か証拠がないか確かめよう。」
そういって部屋を物色し始める。
机の引き出しとかに何かないか?紙やらペンばっかりでろくな情報がないな。ん?これは?
「実験記録?」
その内容はゴーレムをどうすれば強化できるかという実験の内容だった。
[今までは魔法で遠隔操作をするばかりだったがそれだけだと操作する人間は魔力がすぐになくなるし燃費が悪いものであった。しかし我々は遠隔ではなく先に形作ったゴーレムに人が核となり操作することでより長時間操作が可能であることがわかった。また核とする人間の魔力量、魔力操作の技術次第でその能力は大きく向上する。]
「帝国はこんなものまで作ってたのか。まさかゴーレムの技術が進んでいるなんてね。ホントは農作業とか力仕事に使うのが本来の役目なんだろうけどね。いい技術は戦争に使われるのが現実だよね。」
それにしてもこの技術はすごいかもな。人間の魔力量と魔力操作か・・・
それ不味くね?もしもエルフがこれ操作したらどうなるの?隷属の腕輪でエルフを無理やり使えば自分の身を守ることも可能だよね。
となるとこれも戦争になった際の準備か。
どこまでも保身の準備は出来てるってことね。
「これ以外には大したものはなさそうだ。」
よし四階に行こうか。
「そこで何をしている?」
「なっ?誰だ!」
「そのセリフはこちらのものなんだがな。」
そんなセリフが聞こえ慌てて見回すがそこには誰もいないように感じる。いや、いる。魔力と同化している蟲毒と同じ感覚がほんの少しだけする。
まさかここまで気づかないとは。
「蟲毒だな?しかもとんでもない練度だ。まったく気づかなかった。」
「ほう?俺たちのことを知っているのか?」
すると一人の男が部屋に姿を現す。黒い装束に顔は隠されていて体は鍛えられているのが分かるくらいに洗練されている。
「ああ。あれだけ送りこまれればこっちも嫌でもわかるさ。」
「なるほどな。どおりで連絡が帰ってこないと思った。死んだと予想して動いてたんだが間違いなかったみたいだな。」
「ということはあんたが蟲毒の幹部だということみたいだな。」
この階で遭遇するとはな。でもその前にこの実験記録はシーザに伝えておきたい。
「そこまで知っているのか。ああ。念話は使えないぞ。ここからの階は特殊な魔力妨害が働くように俺たちが細工している。念話といった外部への連絡手段は使えない。」
チッ読まれてるな。
「あんた相当できるな。正直真正面にからぶつかりたくないオーラが漂っている。頭も切れそうだ。」
「そういうお前もな。ここに来るまでに蟲毒と何度か戦うだけで練度が低いとはいえ蟲毒の秘術を身に着けているあたり弱い訳がないとみるのが妥当だろう。」
本当に何でもお見通しだな。
「それで目的は上の階にいる皇帝だろ?さぁ救出できるかな?俺を相手にして?」
「ああ。無理やりでも行かせてもらうよ。」
そういうと戦闘態勢に入る。
「その前に色々バレているみたいだから名乗っておこう。俺は蟲毒の幹部、与えられた名はアラクネ、組織での称号はスパイダーだ。冥土の土産にでもしてくれ。」
そういってアラクネは襲い掛かってきた。




