神様策を練る。
移動を開始し、馬車の中
「とりあえず俺は国王に報告しとかねぇとな。状況が状況だから報告書なんか書いてる暇もないし念話になっちまうけどな。」
いやいや。国王に念話って。友達感覚かよ。まぁ報告書なんか書いてる暇なんかないけどさ。
「国王にそれでいいんですか?」
「それ言ったらお前たちの俺に対する態度もそれでいいのかって言われちまうんだけどな。」
それもそうか。ギルド長とか偉い立場の人にタメ口上等だもんね。
「とりあえずこれからどうする?策を練るって言っても出来ることは今だと少ないよね。」
「それもそうだ。事実こっちにあるカードはあっちが隠蔽してるであろうことの真実を握るエルフの弁明というカードがあるってことぐらいだからな。」
「これはちょっとまずいね。それだけじゃ手札が足りない。いくら無実を主張しても証拠がない。」
「そんな。私の証言だけじゃ足りないんですか・・・?」
ああ。少しフロンが悲しい表情をしている。でもしょうがないんだ。それだけじゃ恐らく言い逃れされる。
「うん。たぶん足りない。その証言だと今回の件を不審に思っている人間を味方に引き込めるくらいだと思う。」
「その通りだ。その証言を生かすため根回しをするにしても時間が足りない。たぶん皇帝側を味方につけることが出来るので精一杯だ。だからこれにもうひと押し欲しい。」
「もうひと押し?」
そうだね。皇帝側を味方につけるだけじゃ対抗するには足りないと思う。帝国は他国の戦争の可能性があるのにここまで行動している。つまりそれだけでどうにか出来るような準備で進めてる可能性は低いんじゃないかな。
「例えばさっきの仮説で行くなら前皇帝を暗殺した証拠とかそういったものだよ。」
「だけどそれは仮説で本当かどうかはわからないんじゃないの?」
「そう。わからない。だから元老院が何かをしているその証拠を見つけなきゃならない。」
「ただ、タイムリミットは元老院からの発表があるまでの間だろうな。」
それなんだよなぁ。もしもその発表で国民の感情を揺さぶられたら処刑の声が強まって元老院の予定通りにことが進んで助けられない可能性が大きく近づいちゃう。
「現在の状況はこんな感じだ。さてどうする?ゼロス?」
シーザ。なんでそこで僕を見るのかな?あれ?フロンも?
「なんで二人して僕にそんな期待の目で見るかな?」
「私はなんとなく。でも助けるって言ったときの自信から何かあるかなぁっていう勘なんだけど。」
「予想した仮説といいゼロス。おまえ頭が切れるだろ。だからってのもある。それともう一つ。俺はお前の手札を知らない。とはいえ帝国に一人でも行こうとしたあたり自分ならできることがある。そう思っているってことがもう一つの理由だ。」
ったく。シーザは抜け目ないなぁ。誰が僕の頭が切れるだ。シーザもよっぽどだよちくしょう。勘とは言えフロンもいい勘してるなぁ。
「正直策がないというわけでもないよ。とりあえず考えていることを話そうか。帝国に着いたら僕はたぶん単独行動を取ることになると思う。」
「ほう。何をするんだ?」
「僕が得意なのは回復と補助魔法だ。特に補助魔法は隠密に向いた魔法がいくつかあってね。一人で帝国の城に忍びこもうと思っているんだ。」
はい。ホントは全部得意です。ごめんなさい。でも神様スペックの縛り入れてます。
「それじゃゼロスが危険だよ。そんなことしても大丈夫なの?」
「ああ。大丈夫だ。そこで元老院側にとって致命的になる情報を探す。」
「なるほど。もうあらかた予想はつくがその間の俺たちの行動は?」
予想ついてんのかよ。ホントシーザが人間なのか疑うんだけど。どんだけ頭回るのよ。
「ああ。僕には帝国に伝手とかないからね。ギルド長として国に関わっているシーザであれば何か伝手くらいあるんじゃないか?その人たちをたどってフロンと一緒にエルフ側の味方に付く人間を増やして欲しい。」
「了解。その時にお前に連絡する手段は念話でいいか?」
「ああ。魔力の波長は大丈夫?」
そう念話には相手の魔力と波長を合わせて行う。それが出来なければ念話は出来ないため割と難しい魔法となっている。
「国代表のギルド長なめんな。人に波長合わせるくらいすぐできるわ。」
ホント優秀だなこの人。味方にいるとすげぇ頼もしい。僕たちとの出会ったのがシーザでホントよかった。
「わっ私も出来ます。だから何かあれば私からも念話で連絡します。」
「ほんとに?なんだ。二人とも優秀だね。これなら行動はスムーズに出来そうだ。」
「お前に優秀って言われるのはなんか癪だな。正直ゼロスがいなけりゃここまでスムーズに話進んでねぇからな。」
そうかな。シーザも大概だと思うけど。
「さっきはすぐに出発するのでギルド登録できなかったがお前たちは絶対うちのギルドに登録してもらうからな。フロンも話の理解力や念話がすぐできるあたり優秀だ。言わずもがなゼロス。お前は絶対に逃がさなない。」
そうギラついたまなざしで僕たち二人を見るシーザ。
これは強烈なラブコールなこった。
「条件付けてんだから逃げないよ。約束は守るさ。信用って大事だからね。それに今回の行動で恩を買っちゃったし。」
「私は二人に助けられてる以上なにも言えないです。だからギルドに入るのはいいですよ。手伝います。」
「いやぁ助かる。これは俺の仕事も少しは楽できるようになるな。」
うんうん。本音がダダ漏れだ。よし!簡単な依頼ばっかり受けて住人の信用を得て困らせてやろう。
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そのころグランドル帝国、兵士の帰還後元老院室では
「ふむ。エルフの集落での捕獲作戦はどうだったのだね?ベヨネ殿?」
「ええ。ルード殿。先ほど報告をもらったのですが滞りなくうまくいったようですな。」
「おお。それはよかった。なら私たちの予定通りことは運んでいるみたいですな。」
「それでは分け前は決めたとおりに。それでは失礼しますぞ。」
「おおっ。それではな。」
そういってベヨネと言われた元老院貴族は部屋を出ていく。それと入れ替わるように一人の人物が入ってくる。
「おい。さっきの報告だがどうやら間違いがあったようだ。どうやら一人のエルフだけ逃げ延びた可能性があるらしい。」
「なんだと!?私は一人も逃がすなと言ったはずだ!それはどういうことだ!」
そういってルードはその人物に文句を言う。
「俺に言われても知らん。ただ兵士の格好をさせた集団が一つだけ帰ってきていない。その一人を追いかけて何かあったのではないか?」
「うぬぬ。そうか。せっかくうるさい前皇帝を殺し、話の分からんであろう子供を皇帝に据えてまで準備をしてきたのだ。ここまできて失敗は許されんのだ。」
「そんなこと言われても俺は知らん。もらった金の分だけ仕事をする。それだけだ。」
ゼロスの読みは当たっていた。前皇帝を殺害しエルフを捕まえるために元老院は準備を進めていたのだった。しかし一人のエルフを逃がしたのは誤算だったようである。
「なら貴様ら蟲毒に依頼を出す。金は出そう。生き残ったというエルフを殺してこい!」
「白金一枚だ。それでもその依頼をだすのか?」
「チッ!足元を見おって。それでいい。更にもう一つ、この依頼を出したものをベヨネにして証拠の類もすべてベヨネに押し付けろ。」
ルードはさらに依頼を出す。
「さらに金貨50枚。」
「仕方あるまい。では頼んだぞ。」
すると蟲毒の男は部屋の色と同化するように消え始めそして完全に見えなくなりその場から消えた。
「誰かいないか?」
パンパンと手を鳴らしルードは人を呼ぶ。すると執事らしき男が入ってくる。
「ベヨネにこう伝えろ。明後日の発表は任せるとな。」
「はい。仰せのままに。」
そう伝えるためにその男は出ていく。
「ふぅ。あやつは私の頼みであれば断るまい。なにより権力は欲しかろう。」
元老院にも格があり、ルードは元老院の中でもトップクラスの権力がある人物である。今回の発表を任せることでルードの側近として力をさらに示すことになり立場が上がるのである。このことをベヨネが断るはずがないと読んでいた。
「念のため退路は作っておかねばな。」
ルードは一人つぶやくのだった。
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「とりあえず今はやることがなくなった。着くまでは寝ることにしようか。」
ゼロスはそういって休憩することを促す。
「ああ。少なくともフロンの嬢ちゃんは今まで逃げてきてろくに休んでないだろ。見張りは俺たちがやっとくからゆっくり休むといい。着くまでまだ時間はあるからな。」
「その・・・ありがとうございます。」
まぁさっきから舟をこぐ仕草をしていたしフロンは限界だと思うんだよね。
「うんうん。難しい話もたくさんしたからね。ゆっくり休むといいよ。」
「それじゃあ、お願いします。」
そういうとすぐにフロンは眠りに落ちた。
「さてと。ここからはもう少し込み入った話をしようか。」
「そうだな。まずは俺が忍び込む点俺が気になっているんだが城の中に証拠になるようなものがあるかって点だな。」
「まぁそうだよね。自分たちに不利になる情報は自分の領地に持って帰るのが普通じゃないかと思うんだよね。」
城の中にあれば誰かに見つかるとか裏切りの可能性もあるし、なにより皇帝といった人物に悪事の証拠なんて見つかるわけにはいかないからね。
「だからお前の忍び込んで行動はどっちかっていうと皇帝との接触の方が優先か?」
「そうだね。僕は皇帝との接触をして今回のことで力添えが出来ないかを狙うつもりだよ。」
「わかった。俺の方は伝手にあたっていくのはいいがフロンを隠しきれるかどうかが問題だ。」
少なくとも元老院としてはフロンを狙って行動をする可能性があると睨んでいる。なぜなら仮説が正しいのであれば慎重に行動するのが当然だと思うから。傭兵を雇った数を確認していない訳がないんじゃないか。襲ってきた傭兵が一つの集団として行動していたのなら集団が足りないことに気づかないわけがない。
「僕はもうフロンの存在がバレている可能性は高いと思うよ。だからそっちはそっちで衛兵とかに見つからないで帝国に入国しなきゃいけない。できる?」
「お前は俺を誰だと思ってる?なめるなよ。」
ニヤリと笑いながらシーザはそういう。
「ホント頼りになるよ。フロンは神様に愛されてるかもね。僕とシーザって人物に出会えたことがさ。」
「ああ。そうかもな。トップクラスに強い俺たちに出会えたこと。そして俺たちが善人であること。すさまじい偶然だこと。」
神様が言うセリフではないけどそう思っちゃうねホント。
「ところで。シーザ。」
「ああ。なんか妙な気配がするな。」
そういって外の気配を探る二人。
「これは周囲の魔力に溶け込んでいる感覚かな?」
「俺は違和感しか感じられねぇ。そこまではわからんぞ。」
「ほう俺の気配に気づくとはただ物ではないな。」
そういって唐突に目の前に人の姿が現れる。
「なんだぁ?いきなり目の前に人が現れる魔法なんか聞いたことねぇぞ?オリジナルか?」
「いや。違う。恐らく魔力を周囲に同化させて目に映らないようにしていたって感じかな?刺客さん?」
「お前危険だな。我らの秘術に気づかれるとは。一緒に始末させてもらおう。」
そういい再び目の前から消え始める男。
「ふぅ。俺も原理さえが分かれば対応策くらいいくつでも思いつくぜ。」
そういってシーザは魔法を発動させる。すると地面が隆起しドーム状に男を閉じ込める。
「それじゃあ眠ってくれ。エアプレッシャー。」
そういうとドームごと勢いよく何かに押されたかのように潰れる。
「うわぁカッコいい。」
僕はスペック縛り入れてるから補助と回復しか出来ないからね。
「関心してないでこいつを縛り上げるのを手伝え。」
「ハイハイ。」
そういってスポットから縄を取り出しシーザに手渡した。
「ん?マジかよ。こいつ死んでるぞ。」
えっ死んでるの?なんで?
「チッ。聞いたことはあったがまさかこいつら蟲毒か?」
「蟲毒?」
聞いたことがないな。何かの集団か?
「ああ。蟲毒っていってな。噂程度しかない暗殺集団だ。妙な術を使って暗殺をする集団らしい。本当に存在したんだな。」
「なんで噂が流れてるんだ?暗殺集団でこんな失敗すればすぐに自殺するような奴らの話なんて流れないはずだろ?」
恐らくやられる瞬間に奥歯にでも詰めておいた毒薬を噛み砕くとかそんな感じかな。
「ああ。どうやら一度脱走者を出したらしい。それで噂で流れてたって感じだ。」
よくそんな噂まで耳に入ってること。すごいね。
「とりあえずこいつの目的だけど恐らくフロンだね。」
「ああ。障害になりそうなものを潰すためだろう。まさか噂程度の暗殺者とつながってるとは思わなかったがな。それにこの術はやばいな。」
「そうだね。これじゃ気配を読めない人間は簡単に暗殺される。フロン一人なら危なかった。」
おいおい。こんなのがいるなんてやばいだろ。フロンのこともバレてるしこりゃ相当慎重に行動してるのは間違いなさそうだ。
「チッ。これは早めに行かなきゃホントに不味くなってきやがったな。」
「そうとなれば早く行こう。」
むこうもなりふりはかまってないかもしれない。これからの妨害には気を付けないとな。それにしてももうすぐ日が変わるけど有給一日目がこれって濃いなぁ・・・。
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あれから何度か蟲毒からの刺客が向けられそのたびに撃退を続け三人は何とか帝国の目の前にまで来ていた。
「チッこう何度も襲撃されると厄介だな。おちおち安心して進めねぇ。」
「よっぽど生きて捕まっていないエルフがいるのが不味いらしいね。」
もしかしたらもう元老院の何人かは保身に走ってるかもしれないね。全部を糾弾は出来ないと見た方がいいかもしれない。
「あのー昨日はありがとうございました。」
そういってフロンは眠ってしまい見張りが出来なかったことを詫びていた。
「ああ。それには及ばない。逃げていてろくに休憩を取れていないのは見えていたからな。馬車だと寝苦しかっただろうけどゆっくり休めたか?」
「はい!」
「もうそろそろ帝国に着く。そこからは僕と別行動だよ。大丈夫?」
「大丈夫です。みんなあと少しだよ。」
そういってフロンは帝国の方を見てつぶやく。
「そんなフロンに僕からプレゼント。」
「これは?」
「僕が補助魔法の限りを尽くしたお守りだよ。持っておくと何かあったときに身を守れると思う。」
いやー大変だった。何度も何度も蟲毒が来るもんだからそのたびに中断しなきゃいけなくて間に合うかどうかギリギリだった。
「よしそれじゃそろそろ行こうか。エルフの仲間たちを助けにね。」
「はい!ゼロスも気を付けてくださいね。」
「俺とフロンは門から入らないで忍び込むからこっちだ。行くぞ。」
フロンにも期待されていることだしこりゃあ失敗できないな。それじゃあ行きますか。
「帝国市民の皆の者聞くがよい!」
出発しようとすると帝国側から大きな声が聞こえる。
「最近皇帝陛下が病気であるため元老院であるこのベヨネが皆の者の耳に入れなくてはならないことを話そう。」
嘘だろ!この放送!まさか!
「現在病気で倒れられている我が帝国の皇帝が実は毒を盛られていることが分かった。その毒を盛ったのは森に住むエルフどもである!そして調査を進めると先代の皇帝陛下も同じように毒を盛られていたことがわかった。これは陰謀である。エルフどもはこの国を手に入れるために皇帝に毒を盛ったのだ。昨日戻った兵士はそんなエルフを捕らえるために動いた兵士たちである。事後報告になってしまったことは申し訳ないがどこから情報が洩れるかわからなかったためにこのような形での報告になったことを謝罪する。すまなかった。だが分かってほしい。私たちはこの帝国を守るために、正義のために動いたのだということを。エルフは明日処刑をする。皆の者この帝国に仇をなした者どもに制裁を加えようぞ!」
「やられた!これじゃ帝国にフロンがいることがバレたら市民からも捕らえるために動き始める!」
これは不味いな。このまま帝国に入るとどうなるか分かったもんじゃない。一度フロンたちの方は策を練り直すか?
「おいゼロス。俺とフロンはこのまま帝国に忍び込む。お前の方は何としても元老院の弱みを握ってこい。」
「シーザ!そんなことしたらフロンが危険じゃないか!」
そんな危険な真似はさせたくない!
「馬鹿かお前!落ち着いて考えろ!処刑までの時間は明日までしかない!それはエルフ達の命以外にも戦争が起きて間違いなく大量の死人が出る!そんなことにさせちゃならねぇ!多少の危険を冒してでも進まなきゃどうにもできねぇんだよ!」
クソッ!僕も焦ってる!まさかここまで早く帝国が動くなんて。落ち着け。落ち着くんだ。
「ふぅ。ごめん僕も焦ってた。フロン危険だけどいけるね?」
「うん。時間も明日までしかない。ならできることをしなきゃ誰も助けられないよね。だから頑張る。」
「その意気だ。シーザ。頼んだよ。」
「任せろ。何かあれば連絡する。そっちも何かあれば連絡をくれ。」
「わかった。それじゃ行くよ。」
そういって三人は帝国へと歩みを進めた。




