神様国の情勢を知る。
「まず嬢ちゃんこの大陸はどうなってるか知ってるか?」
「えっと確か中央に色んな種族が住んでいる共和国というのがあるんですよね。そこから東西南北に国があって、北は魔族が住んでいるノースランド、南が獣人が住んでいるサウスランド、西が未開拓領域で奥地には龍人が住んでいるって噂されてる場所。そして東が今いる人間の国。いくつか国があるって感じですよね。」
「おうそれで間違いはない。付け加えるとすれば人間の国には今いるフリージア王国、グランドル帝国、ポートガル皇国って三つの国がある。」
そうだね。大体そんな感じで間違いないね。
たださらに付け加えるなら魔族は人間と同じくらいの能力に魔法面が優れている。
獣人は人間の三倍くらいの身体能力があるけど魔法があんまり使えないって特徴があるってことかな。
「それじゃ次だ嬢ちゃんはこの人間の国の特徴は知ってるか?」
「その森からあまり出たことがないのであんまり知らないんです。」
「そうか。それならこれから知って行けばいい。ゼロス。お前は知ってるよな?」
僕?現在進行形で知識が流れてきてるよ?
「国ごと特徴って言えるかはなんとも言えないけど王国は国を民の意見に耳を傾ける民主主義を取っているってこと。帝国は皇帝と元老院の二つが権力を握っているってこと。皇国は神の声が聞こえるっていう血筋の王女が治めてて神の信託に従っているってことだよね。」
この三国の違いはそんなところ。あと人種差別は共和国で結ばれた盟約で基本的にはないようにってなってることくらいか。
「ああ。それが国の特徴だ。嬢ちゃん。ここまではいいか?」
「はい。ここまでは大丈夫です。」
「それじゃ続けるな。おそらくさっきの嬢ちゃんの事情を聞いた限りだとさっきの兵士は帝国の貴族の私兵って感じだな。」
うんうん。やっぱりシーザも僕と同じ見解だね。
「そしてここからが大きな問題になってくるんだ。エルフってどんな種族か嬢ちゃんは知ってるか?」
「えっと弓が得意で狩りをするために身体能力が高くて、長生きで魔法も得意。あとは森に集落を作って住んでいるってことと、集落は人間の国だけじゃなくて魔族の国にも獣人の国にもあるってことですよね。」
「ああ。その通りだ。ただそれだけじゃないんだ。」
そう。それは特徴だ。一番の問題は伝承と他の種族がどのようにエルフを見ているかってことなんだ。
「それだけじゃない?」
「獣人と魔族の民たちにはこんな伝承があるんだ。エルフは神の眷属。そう信じられてる。何故なら他の種族の特徴をすべて持っているからな。そしてどの国の森に集落がある。これは神の命令でその地域を見守っていると信じられている。ここまで言えばなにが言いたいかわかるかな?」
「・・・もしかしてこの国に獣人や魔族がこの国にいるエルフのために動くってことですか?」
「ああ。その通りだ。それは人間と他の種族すべての戦争になるということを意味する。」
その通り。これが問題なんだ。どの種族も巻き込んだ戦争になれば人間対そのほかという構図になる。どう考えても勝機がない。
「ただ少なくともこの状況になることを想定できないほど帝国が馬鹿だとは俺は思わない。何かがあるとは考えている。」
シーザの読み通り帝国は今はすぐにエルフを奴隷にできてはいないと思う。なぜなら一枚岩ではないからだ。元老院と皇帝がなにやら険悪な状況らしい。
「幸い今はどの国にも今の状況がバレていない。だから俺は今すぐにあの兵士をとっちめて情報を吐かせる。」
「となると今僕らがやるべきことは他の種族にこのことが漏れる前にエルフたちを救い出して今までの状態に戻さなきゃいけないってことだね。」
「ああ。その通りだ。だからフロンの嬢ちゃん。」
そういってフロンの方を目を見るシーザ。
「君に言えることではないのかもしれないが、ここに逃げてきてくれてありがとう。絶対に君たちの種族はどうにかする。虫のいいことだと思うが人間を救うために力を貸してくれないか?」
そういってシーザは頭を下げる。
そんな頼み方したら答えはわかってるんじゃないかな?
「わかりました。私も人間すべてが悪い人とは思えません。ゼロスのような人もいます。だからこちらからもお願いします!私たちの集落の仲間たちを助けるために力を貸してください!」
だろうね。自分が大変なのに僕のことを心配するような優しい子だもの。こりゃ一肌脱がなきゃな。
「僕も手伝うよ。こう見えて得意なのは回復と補助魔法だ。あと肉体的な面で割と強い。役に立つよ。」
盗聴、盗撮、忍者の如き隠密はすべてお任せあれ。
「それなら心強い。正直お前の強さが俺はよくわからん。勘がそう言ってるんだが細かいことは戦わないとわからんからな。」
「とりあえずさっき捕らえた兵のところに行こう。眠ってるはずだけどすぐに起こす。」
「ああ。頼む。ただフロン。少し手荒なことをするかもしれない。見てられない残酷なことだ。あまり見せたくはない。だからここで待っててくれないか?」
「うん。わかった。待ってるよ。」
話はまとまり二人は監禁している兵のところへ移動した。
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「とりあえず状態異常解除の魔法を使ったからすぐ起きるはずだよ。」
「うう。」
ほら起きた。さて一番気になるんだけどこいつら情報持ってるのかね?少なくともこんな国の近くにまで追ってくるあたり末端もいいところじゃないかな?
「ここはどこだ・・・?」
「牢屋だよ?あんたたちは僕に眠らされて捕まったんだよ。」
「それで今は知ってることを洗いざらい吐いてもらう立場だ。」
ゼロスとシーザは起きた兵士に告げる。
「そうか俺は捕まったのか。」
あれ?なんか思ったより随分冷静だな。
「それで俺は何をされるんだ?拷問か?」
「知っていることを話せばそんな非効率なことはしない。」
シーザがそういうと僕はちょっと安心した。なぜならまだ僕は有給初日なのだ。流血沙汰とかまだ勘弁してほしい。
「知っていることか。俺たちは貴族の私兵だってことは装備で予想してるんだろう。しかしそれは違う。俺たちはただの傭兵だ。」
はっ?ちょっと待て。傭兵に装備なんて与えるのか?慎重なのはわかる。とはいえそんなことまでするか普通。
「それは信じられないな。兵の格好をしておいてそんなことはありえないだろう。」
「頼む信じてくれ。」
それでも冷静に言い放つその男。
「シーザ。僕が持ってる補助魔法を使うよ。」
そういって鈴のようなものを取り出し魔法をかける。
「今これに魔法をかけた。嘘をつけばこの鈴が鳴る。これをお前に着ける。」
「おいおい。俺はそんな魔法聞いたことないぞ。」
「昔他の国の本で学んだんだ。」
そこでチリーンと鈴が鳴る。
「「・・・・・・」」
しまったぁ!適当な嘘言ったら反応しちゃったよ。これ神様スペックにあった魔法だから作ったって方が正しいか!
やめて!シーザと目の前の男の視線がすごく痛いよ!
「ごめん。オリジナルなんだ。」
すると次は鈴が反応しなかった。あぶねぇ・・・
「どうりで聞いたことないわけだ。お前のことは後で問い詰めるとして今はそいつだ。早くつけてくれ。」
「はいはい。」
そういって鈴を着ける。
「俺は傭兵だ嘘は言ってない。」
その発言に鈴は反応しない。
「マジかよ。そしたら傭兵にも兵士の格好させなきゃいけないような事情ってことだよな。もしかしたらかなり上層部までグルなのか・・・?」
「シーザ考えるのは後だ。まずは聞くべきことを聞こう。」
「それもそうだな。そしたら次の質問だ。お前はなんて言われてこの依頼を受けた?依頼主は?」
「依頼主は知らねぇ。この依頼はこの格好をしてエルフを捕まえてこいってことしか言われてねぇ。金額は高かったからな。」
またも鈴はならない。
「これはほぼ確定だな。上層部までこのことに絡んでやがる。しかも金を積んでまでバレないように傭兵を雇って捕らえると来たもんだ。質が悪い。」
確かにシーザの言う通りだろう。よっぽど自分たちの悪事を知られたくないんだろう。
「他に何か知ってることはあるか?依頼人の格好とかは・・・たぶん意味ねぇな。傭兵に兵士の格好させるくらいだ。貴族直々なんてありえねぇ。」
「俺は他に知ってることはない。たぶん他の奴も同じだろうよ。」
んー確かにこの件において知ってることはなさそうだね。でもまだだ。
「ねぇ、最近帝国で何か変わったこととかなかった?例えば皇帝に何かあったとか、元老院になにかあったとか。そんな些細なことでいい。」
「そうだな。最近帝国では上層部がまたなにやら揉めてるみたいだな。皇帝と元老院が揉めるのはよくあることだが。数年前に前皇帝がなくなって随分と若い皇帝になったらしい。それからしばらくはあんまり揉めてなかったのに最近何かと揉めるとかなにが起きてんのかね?」
「よく上層部が揉めてんのは聞いたことあるが最近収まってたんだな。なぁゼロスこれに使える情報があるのか?」
うーむ、前回の下界のサブカルチャー的に行けば随分と強引だけど筋は通るんだよな。
「もう一つ聞いていいか?元老院ってどんな人たちで構成されてるんだ?」
「そうだな、昔に功績をあげた者たちが今は元老院にいるらしいな。あとは権力をうまいこと使ってその立場を得たってやつら。後者の方が割合が多いらしい。あと聞いたことがあるのは最近自分の領地で私兵を強化してるってのは聞いたことがある。」
うーん。これは意外と外れてないかもしれないな。
「最後に前皇帝の死因は?」
「病死だな。でもそれまでは割と元気だった。」
「シーザ。この傭兵は一応帝国へのけん制用の手段として監禁しておこう。」
「ああ。それはいいがお前今何考えてやがる?」
「ひとつの仮説だよ。とりあえずこれはフロンも含めて話すよ。」
これは当たってるんなら帝国がすごい厄介だぞ・・・。
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「あっお帰りゼロス、シーザ。どうだったの?その・・・手荒なことしたの?」
「いやゼロスの魔法でそこはどうにかなった。ただ今回のことには帝国の上層部が関わっている可能性が高いことがわかった。」
少しシーザの言葉を聞いてほっとするフロン。自分を襲ってきた相手まで心配するあたり優しすぎるような気もするけどこの子の美点だろうな。
「それはどういうことなの?」
フロンは小首を傾けてシーザに聞く。
「もしかするとすごい厄介なことになってるってことだ。それで?ゼロスはさっき言ってた仮説ってやつを聞きたいんだが。」
「ああ。その厄介なことを幾分かどうにかできそうな仮説だなだけどすぐにでも動かなきゃいけないかもしれない。まぁとりあえず話すよ。」
「状況が好転するような話なら大歓迎だ。」
「順を追って説明するか。まず最初に皇帝だが今は若い皇帝だと言っていたな。こいつは賢明なやつだと思う。というより皇帝のそばにいる人間かな。」
皇帝はまだ若いらしいからね。なら誰か学ばせてるやつがいる可能性が高いよね。
「ほう。どうしてそう思うんだ?」
「元老院と皇帝が揉めてるって話。それと少し前まではそこまで揉めてなかったってこと。たぶんそれまでは傀儡政権だったんじゃないか?」
「傀儡政権?」
そこでフロンが聞きなれない言葉に首をひねる。
「後ろに支配者がいるってことだ。」
そこにシーザから補佐が入る。
「なるほど。つまり元老院が皇帝を操ってたってこと?」
「そうだ。皇帝が若いのをいいことに元老院が好き放題していたんじゃないか?なのに最近は揉めているとなると皇帝が元老院に口出ししてるってことだ。だからその周りにいるものが皇帝に入れ知恵している可能性が高いってこった。」
「なるほどな。筋は通っている。ん?となると・・・」
そこでシーザが何やら考え始める。
「シーザは何となく僕が言いたいことはわかったみたいだね。」
「ああ。正直お前の頭はどうなってるんだ?あの情報量からそこまで思いつくか普通?」
「えっなに?シーザはわかったの?」
うん。正直これだけじゃわからないよね。となるとシーザの頭もやっぱり大概おかしい部類だね。
「フロン。ちゃんと説明するから大丈夫だよ。次は元老院の話だ。元老院も聞いた限りだと一枚岩ではないような気がする。立場を権力で得たものが多いみたいだけど少なからず元からいた貴族もいたらしいからね。」
「ああ。その貴族は元老院の権力を買った側に力を貸してはいない可能性が高い。貴族は誇りであると思っている貴族はいるからな。その貴族は傀儡政権であることを見て不味いと思ったんだろ。自分たちの誇りに傷が付くと思うものもいるだろう。だから恐らく裏で皇帝に学を着けたのはそいつらであるんじゃないか?って感じかゼロス。」
「うん。そんな感じだね。これも貴族の性格を考えると筋が通らない訳じゃない。」
「うーん。ということは皇帝側にいる元老院もいる。それでその人達は現在の元老院に敵対しているってこと?」
フロンが今までの話を分かりやすくまとめてくれたね。そう。その通り。だけどそれだけとは言えないんだ。
「まぁ皇帝に学を着けたのは誇りのある元老院以外の可能性もある。だからこの部分は確証が少し薄い。どっちでもいいことなんだけどね。まぁ仮説だからこのまま話を続けるよ。」
「確かにな。誰が皇帝に学を着けてんのかはわからんがそいつはどちらかと言えば味方で元老院と敵対してるってことだからな。正直どっちでもいい。」
「そう。ただここからはさらに強引な仮説なんだけど。たぶんエルフを襲わせたのは元老院だと思う。わざわざ傭兵に兵の格好をさせたのは大義名分をすでに得ていたためだと思う。」
「ん?あの人たちは私兵だったんじゃなかったの?」
そういってフロンが聞く。
「ああ。ただの傭兵だった。予想外だったけどある意味つながるんだ。最後にあいつに聞いた質問なんだけど前皇帝は病死って話。もしもこれが嘘だったとしたら?」
「割と元気だったのにいきなり病死ってのはなぁ。あいつの言い方もなんか隠してるのか疑ってる感じだったよな。」
「そう。例えばこれが元老院が病死じゃなくて奴らが毒殺等で殺したのだとしたら?」
その発言をしたあとゼロスは一呼吸置き次の言葉を紡ぐ。
「その罪をエルフに擦り付けたとしたら?」
その発言を聞いた途端にフロンが立ち上がり今にも泣きそうな顔でこういう。
「そんなことしてない!私たちはそんなことをしない!エルフの誇りにかけても!」
「わかってるよフロン。そんなことはありえない。エルフが集落でつつましくもたくましく生きている彼らがそんなことをしないのはわかっている。だから泣かないで。」
「・・・ッ!」
少しフロンが落ち着くのを待ち続きを話始めるゼロス。
「強引な仮説だ。だけどそしたら貴族が私兵を強化しているってことにも納得がいく。傭兵を使った点にも。恐らく戦争になることもわかっててそれでも欲が抑えられずエルフを奴隷にしようとしたんだ。神の眷属を自分たちが奴隷にしているという愉悦感とか、その眷属を押さえつける自分たちこそが神の眷属だっていう誇りとか。自分たちが生き残るために私兵を強化しながらね。」
他にも見目麗しいからとかそんな下種なのもいるだろうけどフロンには黙っとこう。
「なるほどな。確かに強引だ。なのに質が悪いことに全部筋が通っていやがる。」
「ただこの仮説が正しいとすれば少なくともいきなり捕まえて奴隷にすることは出来ない。大義名分を使って行動して兵として動いた以上国民にこのことは伝わる。兵がエルフの村を襲撃したって。恐らく処刑として見せしめに殺す分と自分たちの奴隷にする分で分けている。だから処刑の日まではたぶん何もできない。それまでに助け出さないと大変なことになるだろう。ただ時間が少しだけとはいえあるんだ。諦めるにはまだ早そうだ。」
「正しいかわからんがこれが本当となると迅速に動かなきゃいけないな。」
「仮説とはいえエルフたちを救うためにすぐに動かなきゃいけないのには変わりないから僕はすぐにでも帝国に向かう気だったんだけどね。」
「ただ策がねぇのに行ってどうする。少し頭をひねるべきだ。俺は一応帝国や皇国にスパイを送り込んでいる。そいつらから情報を集めてくるからそれまでにどうにかする案を考えてくれ。少なくともそんな情報が入ってきてねぇ以上まだ動きだしてはいないはずだからな。」
そういってシーザは部屋から出ていく。
たぶん念話かそんなところだろう。僕もそんな魔法持ってるし。
「フロン大丈夫?」
仮説とは言え人間の欲が絡む不愉快なの話をしたからね。それで自分たちの立場が危ういとなればなおさら。
「大丈夫だよ。ゼロス。まだ仲間たちが無事かもしれないってわかった。それだけでも少しほっとした。」
「そうか。」
「みんな助けられるよね?」
少し不安な顔をしながらこちらを見てくる。
まぁ心細いよね。頼れる人が今までいなかったし。
「ああ。助けるさ。フロンは逃げてきたところが幸運だったね。国のギルド長の立場のシーザとそのギルド長に強いと言わせる僕に出会った。そして助けるためにその二人が動いている。神様にでも愛されてるんじゃないかな?」
まぁ僕神様なんだけど。信仰してる神とかはちょっとわからないけどね。
「うん。私も頑張るよ。集落のみんなを助け出す!」
「そしたら観光のために王国を回るって約束。よろしくね。」
「うん!」
よし。やっぱり暗い顔より笑顔を見る方がいいよね。
そんな話をしているとシーザが戻ってくる。その顔はあまり芳しい顔はしていない。
「とりあえず情報を集めてきた。どうやら最近エルフの村に出ていったであろう兵士は今日戻ってきたようだ。そのタイミングで元老院が重大な発表があると市中に触れ回っているらしい。その発表は明後日だ。重大な発表なのに皇帝が出てこないあたり仮説の元老院の暴走って線は確実そうだ。発表の中身次第で仮説はすべて正しくなってしまうかもしれんな。」
マジかよ。だいぶ強引な考えだったんだけどな。
「おそらく捕まえ残したエルフを探してたんだろう。嬢ちゃんは逃げてきてどれくらいたっているんだ?」
「3日くらい逃げてたと思う。」
「エルフの身体能力を見れば妥当だな。ただこれで策を練る時間が無くなったのは事実だな。今から馬車を出す。疲れているだろうが今日から移動しないと恐らく間に合わなくなる。あんまり休めないだろうけど休憩は馬車でしてくれ。そこでエルフ救出の策を練ろう。」
そしたら時間もないことだし移動を開始しますか。




