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神様の有給休暇。  作者: 炎尾
蟲毒の青年
22/22

神様と解毒手段

あの後すぐに王国に戻ってきたがすでに夕方となっていた。


「クソ!もう王国の図書館は閉まっているか!」


時間帯は5時頃。大体の公共施設は閉まり始める時間となっていた。


「・・・今日は諦めよう。焦っても仕方がない。」


「そうだね。まだ時間はあることにはある。ここで悩むよりもフロンも交えて話をした方がいいかもしれない。」


フロンはエルフだ。森の民である以上もしかしたら何か手掛かりになる話を持っているかもしれない。落ち着け。時間はまだあるんだ。ただもしも共和国にしかないものであれば六日は使うことを念頭に入れて行動するべきだな。


「今日は帰ろう。フロンに聞いてなにもわからなければ明日はこの図書館で調べるよ。」


「・・・わかった。」


-------------------------------------------

家に帰宅するとフロンがぐったりと倒れていた。


「お・・・おかえり・・・」


「ただいま。一体何があったのか聞いた方がいい?」


「シーザが・・・シーザが・・・」


そのあとフロンの発言があまりにあやふやだったのでまとめると。


・シーザにしごかれた。


・弓と魔法が得意なのに近接戦を仕掛けてきた。


・木刀でボコボコにされた。


とのことらしい。

ということで今日は僕がご飯を準備することになった。


「シーザの特訓が酷いんだよ!」


ご飯を食べるとフロンも元気になったのか今日あったボコボコにされた話を始める。

ただ可愛いので頭を撫でながら、うんうん頷いておいた。

フロンはひとしきり愚痴を言い終えたようなので僕たちは真面目な話を始める。


「ねぇフロン。イフのことで話があるんだけどいいかい?」


「ん?イフのこと?なにかあったの?」


キョトンとした顔をするフロン。イフのことで心配に思う点がないようだ。


「・・・ああ。俺はおそらくこのままだともうすぐ死んでしまう。」


「えっ?どういうこと?」


フロンは意味が分からないという顔をする。ただ死という不穏な言葉に不安の色が見て取れる。


「蟲毒では裏切って逃げ出したものを逃がさないようにあらかじめ毒を打ち込んでおくんだ。それがイフの体を蝕んでいる。」


「それはあとどれくらい持つの?」


「今のところは三週間は大丈夫だと思う。だけど蟲毒の拠点を出てからということを考えると今日で8日目だ。あまり時間はないんじゃないかと踏んでいる。」


その発言を聞いたフロンはみるみる青ざめていく。本当にイフの事を心配してることが見て取れる。


「それじゃあ!」


「・・・俺の命は残り二週間とどれくらいあるかわからないという状況だ。」


「ゼロス!何か方法はないの?」


まぁこっちに来るよね。とりあえず僕の推論を話しておこうか。


「落ち着いてフロン。それで僕たちはフロンに相談しようとしてたんだ。イフの話からの推論なんだけどイフの毒は徐々に衰弱して、食事に混ぜると解毒の効果が薄くなって、あとは共和国方面にありそうな毒に覚えはない?」


「随分限定できたんだね。でもごめんね。その毒に関しては私は知らない。」


「・・・そうか。」


「でも里のみんなに聞けば知ってる人は居るかもしれない。念話が使えるからそれで相談してみようと思う。」


「わかった頼むよフロン。」


「任せて!それじゃあ念話してくるよ!」


そういって部屋を出ていくフロン。


「・・・まさかこれほど心配されるとはな。」


「意外?フロンはそういう子だよ。自分が認めてる人ならだれでも心配する優しい子なんだよ。」


「・・・そうみたいだな。」


「それと僕と聞いた話だけどエルフの族長も認めるもう一つの特徴がある。」


「・・・特徴?」


そのゼロスの言葉にイフは少し眉を顰める。


「ああ。彼女は神に愛されてるんだよ。」


ちょっと僕がフロンのことを愛してるみたいに聞こえるのは内緒。そういう事実はないよ本当に。


「・・・神に愛されてる?どういうことだ?」


「フロンが心配した人は絶対に生きて帰ってくるんだって。エルフの集落でもそうだったらしいし、帝国での事件でも僕は心配されて見事に生きて戻ってきた。」


ゲン担ぎみたいなもんだけどこの話を聞くとバカに出来ないような感じがするんだよね。


「だからイフも大丈夫。絶対に助かるはずだ。」


「・・・そういうものか。」


「そういうもんだ。物事を明るく見ることも必要だと思うよ?」


そんな話をしているとフロンが戻ってくる。その表情は少し微妙な表情をしている。


「ダメだった?」


「いや。その毒に二つほど心当たりがあるみたいなんだけど・・・。」


「けど?」


「どうやら解毒の製法がエルフの集落には伝わってないみたい。」


いやいや!大収穫じゃないか!少しでも毒の手がかりが欲しかったところだから情報があるなら十分だ!


「十分だよ!お手柄だよ!よくやったよフロン!」


つい頭を撫でてしまったけどフロンもまんざらでもなさそうだしいいか。


「それで二つの毒の心当たりって?」


「うん。セルバ草ってのとスタジュ草ってものから抽出される毒ならイフの症状に当てはまるみたいだよ。」


セルバ草とスタジュ草ねぇ。聞いたことないな。神様の知識でそこまで補強してないからね。これはホントにいざとなったときの手段だし。


「なるほど。その二つの解毒手段を探せばイフの毒も解毒できるかもしれないってこどだね?」


「恐らくはね。」


「・・・まさかここまですぐにたどり着くとはな。悩んでいた俺が馬鹿らしくなってくる。」


「僕たちに頼れる伝手がいくつもあるだけだよ。それとイフ?これからは悩むのならちゃんと相談してね?こうやって解決できることもあるんだから。」


「・・・ああ。そうする。」


よし!これで今日はもう出来ることはなさそうだ。


「明日は王国の図書館でその二つの草を調べよう。解毒の手段が見つかるかもしれないからね。」


「わかったよ!私も手伝う。」


「・・・すまないな。」


違う違う。こういう時に言う言葉はそうじゃない。ほらフロンもむくれてる。


「むー。こういうときは謝るんじゃなくてありがとうってそれだけでいいんだよ?」


「そうだね。謝るだけじゃなくて僕たちにはありがとうって言ってくれた方が嬉しい。」


そういうと少しイフは考えた素振りをしてこういった。


「・・・わかった。ありがとうゼロス、フロン。」


「「どういたしまして!」」


----------------------------------------------

次の日三人は王国の図書館にきていた。


「司書さんこんにちはー。」


「ん?ゼロス君か。依頼の時に掃除に来てくれた以来じゃないか。今日はどうしたんだい?」


この人は王国図書館の司書さん。名前は聞いてない。以前依頼でここの掃除を請け負ったんだけどその時に世間話をしていたら仲良くなった。とてもいい人なんだが、僕にとって知りたくなかった事実を言い始める人である。


「今日はちょっと毒について調べに来たんだよ。」


「へー?なんだい?毒殺したい人でもいるのかい?」


おいおい。唐突に不穏なことを言うんじゃない。別に僕は誰も暗殺しようなんて考えていないよ。むしろ人助けのためだよ。


「なんでそんな発想になるんですか!僕がそんな人に見えます!?」


「いやいや。そうは見えないけどね。最近ギルド員の人たちがお腹が痛くなるような毒はないかとか吐き気を催す毒はないかとかそういったものを聞いてくるもんでね?ゼロス君もそういった類なのかなと思ってさ?」


ん?お腹が痛くなる毒?以前ギルド員が差し出してきた毒々しいドリンクをチョークスリーパーを掛けて飲ませたことがあったけど、お腹を押さえてトイレに走って行ってたような・・・。


「もしやあいつら・・・!僕に毒を盛ろうとしていたのか・・・!」


「ありゃ?心当たりあるの?」


「ありがとうございます司書さん!これであいつらに気兼ねなく毒を盛ることができます!」


これは予想外にいいことを聞いた。今日の話は知れてよかったぞ!


「良い笑顔ですっごい不穏なことを言ってるけど話してよかったのかな?」


「まぁそれはそれとして毒に関することが書いてある本の場所はどこにありますか?」


少し世間話が過ぎたな。今日のうちにセルバ草とスタジュ草の情報を手に入れなきゃいけない。


「ああ。それならこの階の右奥がそういったものについての書籍があるよ。毒と一緒に解毒のやり方とかも書いてあるのがあるけどそれでよかったかい?」


「はい。ありがとうございます!」


「何かわからないことがあったらまた聞いてね。」


そういって司書さんは仕事に戻っていった。


「よし。フロン。イフ。奥に行こうか。それぞれで調べよう。時間は有効活用しようね。」


「・・・わかった。」


「わかったよ!」


「うん。元気がよろしい。でもフロンはもう少し声を小さくね?」


ただここは図書館だから基本的には大声はダメだよ?


「うん。わかった。」


そうして思い思いに毒についての書籍を調べ始めた。


「目次からセルバ草とスタジュ草について調べればすぐ見つかると思うんだけど。」


セルバ草とスタジュ草・・・スタジュ草があった。


「なになに?スタジュ草は毒として使うにはあまり向いていません。なぜなら毒の抽出が難しいからです。そのため解毒手段がはっきり確立されていません。しかしこの毒は一度使うと長い期間を掛けて確実に死に至る恐ろしいものです。」


ゲッ!マジか!いや。落ち着け。症状についてはこれしか書いていない。恐らく書かれたのは相当前なはずだ。それでセルバ草はっと。


「セルバ草は毒の抽出が割と簡単です。しかし放っておくと必ず死に至るので注意しましょう。ただ解毒手段は確立されており、もしも以下のような症状があればこの下に書いてある解毒手段を用いてください。」


ん?これならすぐに治せるんじゃないか?えっと症状は・・・


・数週間の間にかけて体の怠さを感じる。


これだけ?まぁ確かに症状は同じなんだけど・・・

それで解毒手段は?


「うんと?セルバ草から毒を抽出した葉とフロム草を五対五の割合ですりつぶし、それを100ミリリットルのお湯に入れて煮詰め、残った粉を摂取する。」


これならすぐに出来そうだね?もしもこの毒なら試してみる価値は・・・


注、この解毒手段は摂取量を誤る、何かに混ぜ込むと効果はありません。


ダメじゃん!食事に混ぜていたんだとしたら絶対に効果が出ない!つまりセルバ草の可能性は低いと見た方がよさそうだね。


「フロン、イフ。ちょっと。」


小さな声で二人を呼ぶ。


「どうやらセルバ草は違うかもしれない。この本の通り摂取すれば治るかもしれないけど何かに混ぜると効果が出ないとある。セルバ草の毒を盛られているのだとしたら効果がなくてすでに死んでいるはずだ。だからスタジュ草の方を重点的に調べよう。」


「・・・確かに。食事に混ぜ込んでいたのなら効果がなくてすでに俺や他の人間も死んでいるだろう。」


「徐々に弱らせるって点は一緒だけどそれならまだ情報がないスタジュ草の方が可能性としてはありそうだよね?」


「そうだね。だから残りのスタジュ草の毒の解毒手段を探すんだ。」


二人は頷いて本を漁り始める。

これ以外にも毒の本は沢山ある。まさか一つもスタジュ草の事が書いてある本がないなんてことはないと思うんだけど。


しかしその後いくら探してもスタジュ草の解毒手段について書いてある本は見つからなかった。


「どうしてないんだ?抽出方法はあるのになんで解毒手段はどこの本でも見つかったと書いていない?」


外は夕方になり始め徐々に焦りを覚え始める。何故ならここにある本はあらかた調べ尽くしたのである。これだけ探して見つからないとなると王国ではこの毒についての情報はほぼないと見るのが建設的である。


「・・・ないか・・・。」


「なんで見つからないの?これだけの本があるのになんでスタジュ草の解毒手段がないの?」


「あのー?」


そこに先ほどの司書さんがやってくる。


「そろそろ閉館なんですけど調べ物は解決しましたか?」


忘れてた。閉館時間だ。今日はもう手掛かりが見つけられない。時間はないんだけどな。


「いや。手掛かりはあったんですけど、解毒手段が見つからないんです。」


「どんな毒なんですか?」


そういってスタジュ草を開いている本を除く司書さん。少しでも知っていることがあるなら教えてもらいたい。


「んー。この毒は知らないですねぇ。」


「そうですか・・・。」


そしたら今日はここまでにしとくべきだね。これ以上有益な情報がないのならそうした方がいいかもしれない。


「ただここにある本は最新のものを入れているとはいえすべてを網羅しているわけではないですからね。一番毒に詳しいと言われる人は共和国に居るという話ですから。なんでもその人はいくつも解毒手段を見つけているのに発表していないとか・・・。」


その司書さんの言葉に三人が顔を見上げる。

そんな人がいるのか!?

もしかしたらその発表されてない種類の毒の中にこの毒もあるかもしれない!


「司書さん!その人はどんな人か知っていますか!?」


「なんでもいいんです。知っていれば教えてくれませんか?」


僕とフロンが一気に司書さんに詰め寄る。司書さんは慌てながらも答えてくれた。


「落ち着いてください!その人の話は新聞で見たことがある限りなんでなんとも言えません。ただ名前はシュトルというらしいです。毒の権威と言われている人ですけど研究以外にあまり興味を持たないとか。」


研究以外に興味を持たないか。すこし偏屈そうだ・・・。


「あとどういうことか彼はギルド長と仲が良いと噂で聞いたことがありますよ?どうもギルド長が酒に酔ったときにこの人の名前を出していたとかいないとか。」


シーザアァァ!こんなところにチャンスが転がっているとは!そしてこの司書さん超有能!知りたくない事実を教えてくれるとか思っててごめんね!


「ありがとうございます!司書さん!助かりました!」


「ありがとう司書さん!」


「いえいえ。お役に立てたなら何よりです。ただあなたたちはギルド長と会うことができるのですか?掃除を請け負う時点でそこまでギルドの地位は高くないと思うんですが・・・」


いえいえ、それは大丈夫です!マブダチなんで!


「ちょっと殴り合いする仲なんで大丈夫ですよ!」


「いやそれ大丈夫じゃないような・・・」


よし善は急げだ!いざシーザの元へ!


「失礼しました!ありがとうございました司書さん!」


そうして慌ただしくしながらも図書館を後にした。


-------------------------------------------

ギルド長室。


「シーザぁぁ!」


「おわぁ!なんだ急に!てかノックを覚えやがれ!」


そんなことシーザだから気にしない!そしてそんなことどうでもいい!


「そんなどうでもいいことはいいんだ!シュルトって人と友達って本当!?」


「どうでもいいって・・・。それでシュルトか。友達だぞ?」


「ありがとうシーザ!僕の友達でいてくれて!」


「俺はノックもしない非常識なやつと友達になった覚えはないんだがなぁ?」


ふぅ。興奮したけどとりあえず落ち着こう。全力でここまで来たからね。フロンは置き去りにしちゃったからイフについてもらってる。


「落ち着いた?それで何があったんだ?」


僕は今日あったことをシーザに話した。


「はーん。スタジュ草の解毒手段ねぇ。確かにあいつなら発表してないうちにあってもおかしくない。紹介状も書いてやる。あいつ念話は使えないからな。」


「ありがとうシーザ!これでイフも助かるかもしれない!」


「あーでも大丈夫かな?」


ん?大丈夫?どういうこと?


「いや。そいつ割と研究に没頭しすぎて人のいない場所に住んでるんだ。場所はソルドの森って言って西の未開拓領域に近くにある森に住んでてな。そこは人を寄せ付けないような魔物や密林の罠があるんだ。俺は仕事でいけないから案内をすることもできない。それでもいけるか?」


なるほどね。でも僕も最近は鍛錬を欠かしてない。それくらいならどうにかしてやるさ!


「それがどうした。そんなことで僕が怯むとでも?」


「ならいい。紹介状を書いてやる。一度共和国で休憩をしっかり挟んだ方がいいぞ。あそこはいきなり行くには危険が多いからな。」


「ああ。フロンとイフにはいくかどうかしっかり相談していくよ。」


「そうするといい。時間がないからって焦るなよ?」


「もちろんだ。」


そうして僕たちはイフを助けるための手段を見つけシュルトに会うためにソルドの森を目指すこととなる。


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