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神様の有給休暇。  作者: 炎尾
蟲毒の青年
20/22

神様の少し変わる日常

イフと名付けた次の日。三人はギルドに居た。


「さてまずは依頼をこなそうと思う。イフのギルドカードはまだないけどどうする?作る?」


「・・・俺はまだいい。今回は二人にゼロスとフロンについていくだけだ。」


うんうん。名前でちゃんと呼んでくれてるね。いいことだ。でもそれだけじゃいけないよ。なんてったってここにはフロンがいる。フロンがただ見ているだけというのは絶対に許してくれない。


「えー?見てるだけ?手伝ってくれないの?」


「そうだそうだ!見てるだけで僕たちが許すと思ったか!」


ほらほら。フロンがせがんでくるよ?まぁ僕も楽したいからフロンに乗っかって文句を言うんだけどさ。

当然だろう?


「・・・わかった。わかったから服を引っ張るなフロン。手伝うから。」


ちょっと困惑してるみたいだね。でもイフよ。色んなことを知るためには必要なことなのだよ。人は学んでまた新しくできることが増えるのだ。僕人じゃないから偉そうに言う権利なんてないんだけどね。


「・・・それで俺たちはどんな依頼を受けるんだ?」


「そうだね~。雑草抜きの依頼は終わっちゃったし、落とし物探しとかペット探しかな?」


「・・・なぜゼロス達はそんな依頼を受けている?強いならもっと難しい依頼だって受けられるだろう?」


その発言に僕とフロンは顔を見合わせて言うかどうか微妙な雰囲気になる。しかしそれを察したのかイフは今の発言を取り下げた。


「・・・すまない。狙われているのに危険な依頼など出来るわけがない。」


「大丈夫だよ。謝らないで。私たちはやられないために鍛錬の時間が取れるようにこういう依頼を受けているだけなんだから!それに王国の人たちとも仲良くなれるしこれはこれでいいんだよ?」


うんうん。ナイスなフォローだよフロン。何気に王国の市民とのパイプ作りにもなるからね。落とし物を探すとかそういうとき必要なんだよ。


「・・・それならいい。」


そのセリフを聞いて再び依頼を選び出す三人。

どれがいいか選んでいるとイフがジッと一つの依頼を見ていることに気づいた。


「これにしようか。」


その依頼はケガをした妹のためにフロムという薬草を取ってきて欲しいという内容だった。報酬は最低ランクのギルド員だし子供の依頼だからもちろん雀の涙ほどだ。その薬草が生えているのはいつも鍛錬をしているいつもの森だ。すぐに見つけられる。でもなんでこの依頼なのかな?


「どんな依頼?」


「・・・妹のために薬草を取ってきて欲しいという内容だ。」


その言葉を聞いたフロンがニッコリと笑い僕の方に寄ってきて小さい声で話始める。


「どうしてこの依頼かはわからないけどやっぱりいい人だよね?」


「うん。僕もそう思う。」


「・・・どうした?」


その二人の様子に疑問を持ったのかイフが僕たちに話しかけてくる。


「なんでもないよ。それで二人ともこの依頼でいい?」


そう問いかけると二人は頷いてくれた。ただ僕はずっとイフが仏頂面なのは気になるんだけどね。そんな簡単に笑えるような人生を送ってないってことだってのはわかるけど。どうすればいいもんかね?


「それじゃみんなで森に行こう!」


元気なフロンの号令でギルドから出て森に向かう。

ああ。イフの分の通行証は王国に運んできたときに作ってあるから渡しとかなきゃね。


そして王国を出ていつも通り森には身体強化で森に向かったのはいいんだけど。


「ぜーっ、ぜーっ。」


「・・・・・・」


いや。フロンが競争だっていうから身体強化をして走っていたんだ。ただイフはそれはもう早かった。フロンにとんでもなく差をつけてしまうくらいに。おかしいな。エルフって人間よりも身体能力が優れてるんだよね?なのに息切れ一つしてないなんて。僕はフロンの隣で走りながら応援しながら走ってたけどこれはもう圧倒的だったね。

ちなみにイフはなんでもないって顔して森の入り口で待ってた。


「イフ。早いんだね・・・。」


フロンは息切れが落ち着いてきたのかイフに賞賛の言葉を贈る。


「・・・それほどでもない。」


「そんなことないよう!全然見えなくなっちゃってたし!そういうこと言ったら私の立場ないじゃん!」


そういうフロンはぷんすか怒りながらイフに文句を言っていた。この二人を見てると僕には仲のいい兄妹に見えるんだよなぁ。なんだか微笑ましいね。


「さて。そろそろ依頼の薬草を探そうか。依頼の事もあるし早めに終わらせてあげた方がいいだろうし。」


「・・・それなんだが。この薬草でいいんだろう?」


そこには依頼にあったフロムの薬草が3本ほど手にあった。


「ええっ!もう終わったの!?」


「・・・ああ。蟲毒では薬草や毒草を見分ける教育がある。どこに群生してあるのか、取り方についても学んだ。このフロム草は木の木陰に群生していることが多い。」


手伝ってもらうって言ったけど全部一人で終わらせられるとなぁ。僕たち立つ瀬ないじゃん。さっきイフに言い寄っていたけどすごい恥ずかしくなってきた・・・。


「ううう。何のために私たちここに来たのかな?」


「それを言っちゃだめだフロン!僕たちが悲しくなる!」


「・・・依頼はこのフロム草を届けるまでだろう?俺は王国の住所には詳しくない。だからあとは頼む。」


うわぁぁぁん!あまりにも不甲斐ない僕たちに依頼の達成を譲ってきた!気使われてるよぉ!


「とりあえず戻ろう・・・。」


「そうだね・・・。」


「・・・なぜ落ち込んでいるんだ?」


「気にしないでくれるとありがたい。」


そして僕たちは王国に帰り依頼の品を届けギルドに報告に戻った。


「喜んでもらえてよかったね。」


「そうだね!イフもすっごいお礼言われてたね。」


「・・・そうだな。」


「エリーさん!依頼終わりましたよ!」


僕たちはエリーさんに依頼終了の印をもらってきた用紙を渡し、依頼が完全に終わったことを報告する。


「お疲れ様。今日はいつもより早かったわね?」


「ええ。今日は彼が活躍してくれましたから。」


「うーんと?その人は?」


そういえば紹介してなかった。エリーさんはイフと会うのが初めてだったのを忘れてたね。


「この人はイフって言うんだよ!私たちの仲間!」


「そういうことです。」


全部フロンに言われちゃったよ。


「へぇ。男前ね?それとシーザから伝言を預かってるわよ。二人ともしかしたらいる三人目も連れてギルド長の部屋に来いって。」


「ギルド長室ですね。わかりました。」


なんで伝言なんだろう?念話で伝えればいいのに。一応念話でこのイフのことは伝えたんだけどね。

そんなことを考えながらギルド長室に入る。ノックをして入る。

コンコンッ


「失礼しまーす!」


「ノックの意味がないだろそれ!普通入れって聞いてから入るだろ。」


「シーザ。僕にシーザに対する普通の常識はもっていない。」


シーザなら許してくれると思ってやってるんだよ?大丈夫、信者に後で殺意の視線が飛んでくるだけだから。


「ったく。それで念話で話してたやつはそいつか?」


「・・・俺がイフだ。」


「呼び出したのは他でもない。お前の事で呼んだ。」


「イフの事で?」


わからないといった顔でフロンが聞く。


「ああ。俺はまだそいつを信用していない。だから一回模擬戦をして見極めようと思ってな。」


「なるほど。だから伝言にしたのか。」


念話だと連れてに来ないようにするかもしれないし、シーザが要件言わないと僕も警戒するからね。主に悪い意味で。


「そんなことしなくてもイフは大丈夫だよ?今日も依頼を手伝ってくれたし。」


「相変わらずだなフロンの嬢ちゃんは。少しは人を疑うことも覚えた方がいいと思うぜ?どっちにしろ得体のしれない奴をギルドに出入りされると俺も立場がなくなるからな。」


「でも!」


そこでフロンを制しイフが前に出る。


「・・・模擬戦だな。どこでやる?」


「このギルドにある訓練所でだ。今から出来るよな?」


「・・・いいだろう。」


そういって受けるのはいいけどイフ大丈夫かな?助けた時にあれだけ出血してたんだ。血は足りてるのかな?


「いいのゼロス?まだ病み上がりだよ?」


「まぁ成り行きを見守るさ。シーザもむちゃくちゃなことはしないでしょ。」


-----------------------------------------

ギルドの訓練所


「ルールは互いの武器を使用して相手が気絶するか二度地面に倒れるかだ。魔法は身体強化のみだ。いいか?」


「魔法はなしでいいの?」


魔法もあった方が相手の実力を見るならいいと思うんだけど。


「打ち合った方が相手のことがわかるからな。だから魔法は身体強化だけだ。」


なるほど。実力は二の次か。


「頑張ってイフ!シーザなんてやっつけちゃえ。」


「・・・善処しよう。」


「フロンの嬢ちゃんは酷いな。」


「私は忘れないんだからね!訓練って言って笑顔で木刀使ってボコボコにしてきたことを!」


僕はフロンの訓練を頼んだ相手を間違ったかな?結構きついことやってるみたいだけど。まぁフロンがシーザを嫌ってるわけじゃないから別にいいか。


「それじゃあ僕が審判をやろうか。二人とも準備はいい?」


そういうとイフは杖を、シーザは木刀をそれぞれスポットから取り出す。


「それじゃあ。始め!」


模擬戦開始の合図とともに二人は身体強化をする。ジリジリと近づくが互いの武器の持つ領域に入るところで二人は一度止まり、相手を動きを見定める。


僕の見立てでは杖の方がリーチが長いし、多種多様な攻め方を出来る面ではイフが有利。だけど剣を使ったときのシーザは間合いが怖いね。それ以上踏み込むなって本能が訴えかけてくるんだ。練度ではシーザに分が上がると見ている。まぁ病み上がりという面を考えればイフは既に不利なんだけどね。


痺れを切らしたのか、シーザのプレッシャーのためかイフが動く。一気に木刀の間合いに入り込み渾身の突きを放つ。しかしそれを軽く体を半身にしてシーザは杖を持っているイフの手を狙う。それを察知したのかイフは無理やり突きを止め自分も半身になり、シーザに向かい合う形で杖を持ち直し木刀を受け止める。つばぜり合いの形になり一度イフは後ろに引いた。


「どうした?そんなものか?」


「・・・まさか。今のは小手調べだ。」


イフはそういったが冷や汗を掻いていた。


(あのまま攻撃を続けていたら間違いなく杖を落とされていた。そしてすさまじい圧迫感・・・いや気当たりだ。だがアラクネには及ばないな。)


「来ないならこちらから行くぞ!」


そういって今度はシーザがイフに攻撃を仕掛ける。一気にイフに近づき木刀を振り下ろす。ただ振り下ろすというだけの攻撃にイフは杖を横に持って受けの姿勢になる。

しかしその杖には衝撃が来ることはなかった。衝撃が来たのは自分の体であった。そこにはシーザが木刀で薙ぎ払った格好をしている。


「グッ。」


痛みをこらえるもののさらにシーザの追撃でもう一度振り下ろしをもらいイフは地面に倒れる。


あーあ。イフも引っかかったか。あれ初見で躱せるような代物じゃないんだよね。相手に自分のプレッシャーを与えて間合いと剣の長さを誤魔化すんだよね。それでただの振り下ろしの攻撃を受け止めようと思っても間合いと木刀の長さを見誤った分で今のシーザの木刀はそこまで届かない。相手が困惑する隙を作って最速の薙ぎ払いをぶつけたのが今の攻撃の正体。シーザは朧とか言ってたな。僕最初はやられたよ。


「イフ。一回目のダウンだ。いける?」


「・・・大丈夫だ。今の攻撃の正体もわかった。」


イフは起き上がりシーザの技の正体がわかったといった。それでどう対処するのかな?


「ほう。俺の朧を見破るとは大したもんだな。だが対処できないのであれば意味はない!」


そういってシーザはまたイフにプレッシャーをかける。イフはどこ吹く風でそれを受け止める。


「正体は気当たりだ。さっきから俺にあてられてる気当たりで目測を誤らせたんだろう?なら簡単だ。」


一気にシーザは肉薄してくる。

そういって目を閉じるイフ。


「それだけの気当たりなら見なくても場所くらいはわかるさ。」


シーザの一撃を杖で受け、イフはその衝撃を半身になり受け流し杖を持ち替え一気に突き出す。受け流しからの攻撃の素早さにシーザは対応できず額に杖を受けそこにイフからの追撃をもらい地面に伏せる。


「シーザダウン。これでどっちも一回ずつのダウンだ。あと一回で勝負は終了だよ?」


「いいぞー!イフ!そのままシーザなんてやっちゃえー!」


フロンの声援を尻目にシーザは立ち上がる。


「痛っぅ!なんつー速さの反撃だ。朧は見破られてさらに反撃もらうとは思わなかった。ここぞというときに本当の動きで動いて相手に油断や隙を作り出す。見誤った。」


僕も相手の気当りの回避に目をつむることはしたなぁ。ただそれだけじゃああの朧は破れないんだけど反撃の速さをシーザは見誤ったね。まぁそれだけイフもポテンシャルを隠して隙を作ったんだろうけど。


シーザも起き上がり再びにらみ合いが始まる。


「・・・勝負だ!」


イフが今度は仕掛ける。

先ほど見せた反撃と同じくらいの速さで距離を詰め僕にやってきたときと同じように杖の持ち替えによる多彩なコンビネーションで攻め立てる。

突き、そこから強引に薙ぎ払い、一度武器を引き袈裟斬り、さらに持ち替え振り下ろし。しかしシーザは躱し、時折木刀で受けながら致命的な一撃だけは避けていく。


(早いな。さっきまでも本気の動きはしてなかったのは間違いなさそうだ。ずっと小手調べだったってわけか?やってくれるな。)


(この速さでもついてくるか。さすがにギルド長というわけだな。先ほどの技のようなものをまた出されれば不味い。意表を突かれれば次はない。)


さてどっちが勝つかな?シーザがまだ隠している技はあるけどイフもまだ何か隠し持ってる感じはするんだよね。どんな手で相手に一撃入れるかで勝負は決まりそうだ。


攻めあぐねたのか一度イフは引き構え直す。シーザはイフが引いた瞬間攻撃をしようとしたがイフから放たれる気当たりに危険を感じまた構えなおす。


(おいおい。なんだ?今までと雰囲気が別物じゃねーか。次で決めてくるな。いいぜ。受けて立とうじゃなぇか。)


(これ以上何か仕掛けられる前に決める!)


イフが今日最高の速さでシーザの木刀の間合いに入る。気当たりを乗せた一撃を放つ。シーザこれを木刀で受ける。しかし


(軽い!これはフェイントか!)


イフの本当の狙いは足である。気当たりで強い一撃と錯覚させた攻撃を仕掛け、相手に防御の姿勢を取らせた。そこに本命の足への薙ぎ払いを放つ。


「ハァァ!」


気合のこもった一撃をシーザに当てる。しかしシーザは崩れない。


「なっ!」


驚いたところに最速の振り下ろしがイフに当たり気絶。勝負はシーザの勝ちである。


「勝負あり!勝者シーザ。」


「イフー!」


気絶したイフを介抱するしようと走り寄るフロン。

まぁ病み上がりにあれだけの一撃受けてるし僕も少し心配だね。


「あっぶねぇ。なんだ最後の速さ。」


「お疲れ。僕も最後はイフの勝ちかなと思ったけど。」


そう。あれだけの一撃をシーザは崩れることなく受けきった。僕にはそれがわからない。そこで崩れてイフが追撃で勝ちだと思ったんだけど。


「あれは冗談きつい。一回目の攻撃がフェイントだと思ったときにはもうあいつかがんで攻撃入れる体勢になっててな。木刀で防御しづらいところって言ったらあとは足元しかないと思って身体強化の魔力を集中させたんだ。でも見てみろよ。」


そういって足の服をめくったところには痛々しいほどのあざが出来上がっていた。そして攻撃が当たらなかった方の足に少し体重が寄っている。相当痛いみたいだね。


「一撃必殺の技を俺の機動力封じに使うあたり俺に何もさせない気満々だったな。あそこで俺を崩してなかったとしても動きに支障が出る。ならあの瞬間に仕留めるしかないと思って思いっきり打ち付けたわけだ。」


「ハハッ。容赦ないね。」


「俺もギルド長として簡単に負けるわけにはいかないからな。」


正直イフはシーザに善戦した方だと思う。シーザは気当たりとかそういったものを巧みに使う対人戦のスペシャリストだ。強化ゴーレムの時は力業しか使えなくて本来の力は出せなかったみたいだけど模擬戦とかやるととんでもなく強い。そういうことを考えるとイフは暗殺のために一撃に重きを置くからそこを耐えられると勝つには難しいものがあったと思う。


「でも強かったでしょ?」


「ああ。あれで幹部じゃねぇんだな。」


「だいぶ近いとは思うけど。僕が戦った感覚ではアラクネ未満、パピルサグと同等かそれ以上って感じ。」


パピルサグは体術とかそういったものがまだ完成されていない感じがした。そこを詰めればもっと強いとは思うけどこれは対人での場合だからなんとも言えないけどね。


「ふーん。まぁそいつが起きたらギルドカード作っとけ。俺が戦った限りお前たちの言う通りだったみたいだしな。」


「認めてもらえて何よりだよ。あと名前はイフだ。何度もフロンが言ってるじゃん?」


「あーあーわかったよ。ちゃんとイフのギルドカード作っとけよ?そいつもうちの戦力にしてやるからよ。」


結局認めたら自分の仕事を楽するために使う気だな。だが残念だ。イフも僕たちと同じように昇格はさせてやらないからな!シーザが楽になることなんてないのさ!


「それと、イフにもこれから模擬戦とか頼むわ。イフは杖をあらゆる用途で使ってくるからいい相手になりそうだ。」


あー目的そっちか。まぁ僕体術しか使わないし相手するにはイフはもってこいだよね。


「イフが起きたら伝えておくよ。ただまずはフロンをどうにかしないとね?」


そう。先ほどからフロンが恨みがましくシーザを見ていた。あっこっちきた。


「シーザ!イフはまだ病み上がりなんだよ!それなのにこんなに強く打ち付けて何考えてるのさ!」


そのあとシーザにフロンの説教が始まり助けてほしいというシーザの視線を僕は無視し続けるのだった。


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