神様の決断
またブクマをもらいましたありがとうございます!
拙作なので正直投稿して5日程度で一日150PVも行くとは思ってませんでした(笑)
これからも頑張ります!
「ふーん。そんなことがあったのか。」
ゼロスに殴られた頬をさすりながらそう答えるシーザ。
ゼロスは先ほどまであった蟲毒の襲撃、その強さ、手段について事細かにシーザに話した。
「なんか随分と他人事な発言だね?心配じゃないの?」
フロンがあまり関心のなさそうなシーザに問う。
「なんで俺が蟲毒の心配なんかしなきゃならない。今までたくさんの人間を殺してきた奴なんだろ?そんな奴がどうなろうと俺にとっては他人事だろ。」
シーザの言うことは正論である。フロンを助けるような行動をしたとはいえ、今までに数多くの暗殺を行ってきているかもしれない相手に一度助けられたからといって感情移入をするような相手ではない。このことに関してはフロンがただ優しすぎるだけだと言われればそれまでになるような話である。
「まぁ僕もシーザの言うことが間違ってはいないと思う。正直今回だけいい顔をしても次からはまた暗殺をするかもしれない。」
「でも!」
そのゼロスの言葉にフロンは反論しようとするが「ただね」とゼロスの話は続く。
「ただね、あいつと戦った限りだけど、どこか自分においての越えてははならない一線があるんだと思う。あの青年はなりふり構わないという蟲毒の行動を僕に知らせた。自分が組織を裏切って殺されるとわかっているのに。」
「・・・・・・」
そのゼロスの言葉をただ黙ってシーザは聞いている。しかしその雰囲気はいいものではない。どこか怒っているようなそんな雰囲気だ。
「言葉に表しづらいけどあの青年は自分の命よりも自分の持っている誇りを優先したんだと思う。」
その言葉を聞いてシーザは問う。殺されかけた相手にお前は何を言っているのかわかっているのかという視線がシーザからは痛いほど伝わった。
「それでお前はどうする気なんだ?」
そしてゼロスは決めていた答えを言う。
「僕はあの青年の心が知りたい。そして助けられるなら助けようと思う。」
「またそいつに命を狙われるかもしれないってわかっててもか?」
「うん。」
ゼロスは強く頷く。その言葉にシーザも沈黙し、誰も声を発しない空気が流れ始める。ただ鳥のさえずりが聞こえるだけの微妙な時間だ。シーザがこの空気を崩した。
「そうかよ。俺は今回の件には関わらんぞ。」
「えっ!手伝ってくれないの?」
今回も手伝ってもらうつもりだったのかフロンは少し意外そうな顔をして聞き返す。
「そりゃそうだろ。前回俺が嬢ちゃんを助けたのは戦争を止めるため。今回の件は俺はそいつに面識があるわけでもねぇ。特に大きなことが起きるわけでもねぇ。それが信用できる人間ならまだしも、信用もねぇ。逆に関われば俺も蟲毒に狙われるというおまけつきだ。俺はただのお人よしじゃない。今回は自分でどうにかするんだなゼロス。」
妥当な判断だね。僕もシーザの立場なら手伝わない。理由はシーザがすべて言った通りだ。
「まぁそうだろうね。正直僕も今回シーザに頼れるなんて思っちゃいないさ。それにこれは僕の我儘なんだ。それに誰かを巻き込むわけにはいかないよ。だからフロンも関わらない方がいいんだけど・・・。」
「私は助けようと思うよ!でも・・・」
そこで意気消沈しながらフロンは指先を合わせ少しいじけながら続きを話す。
「今回も私は人質に取られてる。だから一緒に行っても足手まといにしかならないよ。だからおとなしくゼロスが帰ってくるのを待ってる。」
なんだろう。このシュンと小さくなったフロンが新鮮で可愛い。いっつも元気ハツラツといった感じの子だからね。
「決まりだね。そしたら僕はそろそろ行くとしよう。」
そういってゼロスは立ち上がりお尻についた土を払う。
「えっ?どこに?」
「そりゃさっきの青年のところにだよ?たぶんあの青年は裏切った以上すぐに追手が来ると思うんだよね。」
蟲毒としてはあまり世間に出るのは好ましくないだろうから素早い行動が予想できるんだよね。
「それでどこにいるのかお前はわかっているのか?」
「それはね。僕のもう一つ開発していた魔法でちょいちょいとね。」
そう僕はもう一つ魔力の使い道を模索して作り出していた。それは相手に自分の魔力を肉体に染み込ませ相手の居場所を探るというものだ。鍛錬して自分の魔力なら半径500メートルくらいならわかるようになったんだ。ただこれは相手に直接触れないと使えないからそれが難点なんだよね。
「そうか。なら俺は今日はギルドに戻って鍛錬するわ。お前忙しそうだし。」
「ああ。なら一つお願いしていい?」
ちょっと図々しいお願いなんだけどね。
「悪いが蟲毒関連ならお断りだぞ?」
「違うよ。僕はちょっと一人で行動する時間が増えるからその間はフロンを鍛えてほしいんだ。」
「えっ!?私!?」
そうだよ?何を言ってるのさ。
「フロンは今回も人質に取られてる。そうなりたくないなら、僕と一緒に居たいなら強くならないとダメだよ。いつ殺されるか分かったもんじゃない。幸いシーザは実戦においてはいい相手になるだろうからね。」
そう。一緒にいたいなら。僕はこれからも蟲毒に命を狙われる。はっきり今回のことでわかったけどたぶんこれからも周りの人の命は危険に晒される。僕の魔道具だって万能じゃない。だから自分の身は自分で守れないといつホントに死んでしまうかわからない。だから強くならなきゃいけない。
「俺の仕事の都合はガン無視かおい。」
当たり前じゃないか!僕がシーザの都合を考える人間だと思っているのかい?
「大丈夫シーザにならできる。」
「チッ。いいぞ。そのかわりフロンの方がお前より強くなっても泣くんじゃねぇぞ?」
おいおい。目がマジだよ。怖い怖い。まぁ!フロンが僕よりも強くなるとか想像つかないけどね。
「出来るもんならやってみな。」
「ねぇ?私の都合は?」
そのフロンのセリフは二人には届くことはなかった。
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さてあの青年を探さないと。
「考えろ。あの青年ならどこに逃げる・・・。」
僕は今、森を抜けて王国への道にいる。状況を考え、あの青年が考えそうな場所を予想する。
あの青年は関係ない人間は巻き込むことを許さなかった。フロンを助けたことからそれは確実だ。それと蟲毒が最近手段を選んでないという点も考慮に入れると・・・
「人の気配がない場所か・・・。フリージア王国の近くで人気のない場所となると。」
この森はモンスターが出るから人気のない場所のの一つだけどそれはないな。さっきまでと同じ場所にいるとは考えづらい。となると・・・。
「こことは反対にある王国の森か・・・。」
とりあえず行ってみよう。考える時間がもったいない。まだ死んでないことを祈るよ!
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「・・・俺は一体何をしているんだろうな・・・。」
そう過去666番と呼ばれていた青年は呟く。
ここは森の中。人があまり来ることはなくそこに居るのは魔物と動物、そしてその青年だけだ。
自分の頭がまとまらない。今までも暗殺はしてきた。それはそれが指令であり、今までの自分が殺してきたのは社会の屑ばかりであったからだ。
ボスは昔とどこか変わってしまった。暗殺する対象がまずは変わった。誰の依頼でも受けるようになり、出会ったころのようにどこかにあった誇らしさが自分からは無くなってしまった。
・・・そして関係のない人間を巻き込むなどと言ったことは絶対にしなかった。
だからこそわからない。今回の暗殺に意味があるのか。あそこにいた少女と暗殺対象はとても楽しそうだった。665番からの報告を聞く限りは善人でしかない。自分の誇りとは、今まで自分がしてきた暗殺は何だったのかわからない。あの少女が人質にされた時に俺は何を考えていた。もしかしたら暗殺してきた中にも今回のような人間がいたのかもしれない。
考え続け答えが出ないままこの青年にはただこの結果しか残っていなかった。指令に背き蟲毒を裏切ったという無常な結果だけである。そしてその結果は自分の命が狙われるということを示していた。
「よう探したぞ?666番。」
「・・・665番か。なんの用だ。」
分かっている。聞くまでもない。どうせ殺しに来た追手だろう。
「おいおい。聞かなくてもわかるだろ?」
「・・・ああ。そうだな。」
無駄なやり取りだな。
「でもはっきり言っておくか。俺たちはおまえを殺しにきたんだよ。」
そうだろう。指令に背き、蟲毒の指令内容を暗殺対象に話し、果ては攻撃までした。そんな男を蟲毒は見逃しはしないだろう。
「・・・俺たち?665番だけではないのか?」
「ああ。今回は直々に幹部の方がお前を殺してくれる。よかったな。」
いやらしく笑う665番。その表情はいじめっ子そのものである。ただいじめといった生易しいものがこれから起こるわけではないが。
「・・・その幹部は?」
俺がこれから殺される相手だ。それくらい聞いても問題あるまい。
「俺だ。」
そういって秘術を使っていた幹部が青年の前に現れる。
「・・・アラクネか。」
自分の手下の始末は自分でつけるってことか。それならそれでいいだろう。
「俺はこんな結末は望んでいなかったんだがな。」
仏頂面をしている。だが俺にはその表情はどこか悲哀を覚えているような顔に見えた。
ただ今持っている疑問を答えてもらうにはアラクネはちょうどいい。
「・・・俺は自分の誇りが分からなくなった。最初のころにあった蟲毒のやり方はどこにいったんだ?」
どうしてなのか。ボスはどうしてこんな指令を出すのか。最初に出会ったころのあの人はどこに行ったのか。俺にはわからない。
「知らねぇな。俺が分かっているのは指令を無視し、お前は蟲毒を裏切った。その結果だけだ。」
アラクネは答えない。この暗殺に自分も納得がいかないと言っていた男がこの発言だ。指令は絶対だった。そういうことなんだろう。
「・・・・・・」
その答えに青年は何も答えない。ただ青年の表情は覚悟を決めたというものであった。
「もう言うことはないか?なら裏切り者にふさわしい死を与えてやろう。」
そういってアラクネは自分の糸に魔力を込め、かぎ爪のようにしそれを一瞬で振るう。
アラクネが魔力の糸を解除すると一気に青年から血があふれ出した。
「ゴフッ!」
血が大量に出ている。その部分が熱を持つ。痛みを通り越してそこからは熱さが感じられる。そして血と一緒に自分の何かが抜け落ちていく感覚を覚えた。
「ざまぁねぇな。お前みたいな指令をこなせない裏切り者の屑はさっさと死ねばいい。まぁ何もしなくても毒で死ぬんだがなぁ!」
そういってさらに665番は青年に蹴りを入れる。微動だにせずそれを青年は受け吹き飛ばされ、何度か転がり仰向けに倒れた。
「665番。もういい。お前は先に帰れ。俺が後始末をつける。」
「ハッ!」
そういって665番はその場を後にする。
「まだ息はあるな。」
なんの用だ。俺はもう動く気もないぞ?
しかしアラクネは青年に話しかける。
「遺言くらい聞いてやる。」
「・・・俺は後悔していない。あの幸せそうな二人を・・・無理やり引きはがす必要もないと・・・思った。俺は俺の誇りを・・・持って死ぬ。」
「そうか。」
そう遺言を聞くアラクネの表情は少し暗い。665番の手前、冷徹な顔をしているしかなかったのだ。
「俺も蟲毒は変わったと思っている。関係ない人間巻き込むやり方は以前は絶対にしなかった。だが今はこの始末だ。ボスが何か変わった。そこから歯車は狂ってきている。」
「・・・俺は・・・」
「もうしゃべるな。お前は自分の命を懸けて最後まで誇りを守って死んでいった。それは俺が覚えておいてやる。それじゃあな。」
そういってアラクネはその場を後にする。
「・・・これが・・・死・・・か。」
そういって青年は目を閉じる。
今までも殺してきた人間はこんな感じだったのか?
すぐに絶命したものも沢山いた。そういったものよりも考える時間がある俺はマシな死に方をしているんだろう。
殺した人間の顔が浮かんでくる。
ああ・・・これが走馬灯か。
そうして青年はまどろみに体を預けていく。その森には静かに風が葉を揺らす音、動物の鳴き声が響いている。
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「いるんだろ?そこに。」
アラクネは青年の前を少し離れていたところで見ていた視線に話しかける。
「バレていたか。もう一人にはバレなかったんだがな。」
そこには秘術を使って隠れていたゼロスが現れる。どうやら彼の予想は当たっていたようで魔力をこの森で感じることに成功していた。しかし幹部に他の蟲毒もいたため姿を消し様子を伺っていた。
「大したもんだ。俺たちの秘術をここまで我流で使えるようになっているんだからな。」
そういって力なく笑うアラクネ。
「それで?僕を殺す?」
ゼロスはアラクネの表情を見つつも牽制の意味合いもたせ殺すかどうか聞いてみた。
「やめろ。今はそんな気分じゃない。俺はここで誰にも会わなかった。」
手を挙げて降参というポーズをしながらアラクネは話を続ける。
「あいつは俺の手下の中でも特別目を着けてたやつだったんだがな。どうやらあいつに誇りを持たせるように育てたのは間違いだったようだ。」
「暗殺に誇りとかあるのか?」
「ああ。昔は殺す奴も屑ばかりだった。違法な奴隷を取り扱う屑とかな。いつからか依頼されればどんな善人でも殺すような集団になった。俺は古くから蟲毒にいる人間は疑問を覚えるが最近の奴は割と一般の奴でも躊躇なく殺す。特にさっきまでいた665番とかな。俺はしぶしぶだぞ?」
なんか蟲毒も一枚岩じゃないって感じだなぁ。崩れはしないんだろうけど。
「ああ。それとあの666番ははまだギリギリ生きてる。俺からの手下に対する最後の手向けだ。あいつをかばいに来たんならもう遅いぞ。」
「それはどうだろうね?」
「やめろ。お前のそのにやけ面を見るとどうにかしそうで怖い。まぁ俺はそろそろ行く。次は殺してやるからな。」
そういうと秘術を使い姿を消すアラクネ。その秘術は今まで見てきた蟲毒たちとは一線を画す。気配が完全に感じられない。ゼロスはその完成度を見て愚痴をこぼす。
「全く。この完成度には敵わないな。よく前は生き残れたもんだ。」
さて青年のことが心配だ。早く行かなきゃ。
ゼロスは草木をかき分け自分の魔力を張り付けた青年の方に向かっていく。奥に着くと仰向けで血だらけになっている無残な青年の姿があった。どうやら気絶しているようだが血がとめどなく流れ続けているため長くはもたないことが一目でわかる。
「チッ。あいつ本当にギリギリのところで生きてるようにしてやがる。どこまで人体に詳しいんだか。」
ゼロスはアラクネに愚痴をこぼしながらも大規模な魔法を使うため集中を始める。
「癒せ!リザレクション!」
ゼロスは大きな声でありったけの魔力を込めて魔法を使う。すると血は止まり、すさまじい外傷が綺麗に治り始める。回復魔法は万能ではない。アラクネと戦ったときなどのように内臓を傷つけられればそれは治すことができない。治せるのはあくまで外傷だけである。
なお前にゼロスが使ったヒールは簡単な外傷を治すために用いるものであり、今回使ったリザレクションはどんなにすさまじい外傷でもたちどころに治してしまう代物である。
魔法とは本来詠唱をして唱えるものだがゼロスにとってそれは必要ない。魔力コントロールさえできれば威力は落ちないためである。蟲毒の秘術を見て真似が出来るほどのコントロールが出来れば魔法を発動させることはそこまで難しくはないのである。
「よし。これでなんとか命はつなぎとめたはずだ。」
そういうゼロスの額には玉のような汗が滲んでいる。
このリザレクションという魔法はどんな外傷でも治してしまうかわりに魔力を大量に消費してしまう代物であるらしい。
「さて。僕も少し休ませてもらうかな。」
怠い。疲れた。実はアラクネとの会話は緊張した。こんなところでまた殺し合いなんて勘弁してほしい。あいつ滅茶苦茶強いもん。
少し休憩をはさみゼロスは立ち上がる。
「さてそろそろ連れていきますか。」
そういって青年を背中に乗せゼロスは歩き始める。
「この青年は何を思ってあんあ行動したのか聞いてみたいね。ああ。それよりも。」
名前がないじゃん。アラクネは666番とか言ってたな。蟲毒では手下に名前はないのかな?そうだろうな。幹部しか名乗ってないもんな。
「何かいい名前はないかな。」
そうつぶやきながら青年の名前を考え王国に向かってゼロスは歩いていく。青年の息遣いを聞き取り生きていることを実感しながら・・・。




