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神様の有給休暇。  作者: 炎尾
蟲毒の青年
17/22

神様と忍び寄る蟲毒

「ボス。ゼロスと言う男の調査結果です。」


「聞こう。」


パピルサグは665番からもたらされた情報をボスという男に話始める。


「まずこのゼロスという男は最近フリージア王国に流れ着いた傭兵という噂です。本人がそう言っていたとの情報がありそこから傭兵時代の経歴について調べてみました。」


ゼロスは自分のことを傭兵として自分の出自を誤魔化している。出身では孤児、今までは傭兵をやって過ごしていたというように出自は一応なっている。


「それでどんなことをしてきたのだ?」


ボスの威圧感ある質問が来る。それに対しパピルサグは少し言葉を詰まらせる。


「それが・・・一切わかりませんでした。」


「わからない・・・だと?」


その報告にパピルサグをボスは睨みつける。すこし冷や汗を流しながら報告は続けられる。


「はい。流石にこれで報告するのはと思い他の部下も総動員して調べさせましたが、一切わかりませんでした。本当に傭兵をやっていたならあの強さです。名前くらいは残るでしょう。そう考えると傭兵という出自すら怪しいと考えられます。そして生まれといった他の部分からも調べてみても一切の情報がありませんでした。情報を意図的に消してきたという可能性が有力です。」


「その点は念のためさらに調べ続けさせろ。なにも情報がないということは絶対にないはずだ。そのような男が降って湧いたというのであれば別だがな。」


ボスの言葉が実は正解である。ゼロスは人形を用いてこの世界に降って湧いた人物のため過去の情報が一切出てこないのは当然なのである。


「それでここ最近の動向はどうなのだ?」


「はい。それは王国に住み着いてギルドで依頼をこなす日々をしているそうです。ただ受けている依頼は簡単な依頼ばかりで昇格もしていません。」


「・・・それ以外には恐らく鍛錬をしているのだろう?その男は我々に命を狙われてるのを自覚しているわけだ。だから簡単な依頼を行い自分を鍛えていると。面白い。」


ボスはそういって笑い始める。


「なかなかに自分の置かれた状況を冷静に見定めるやつだ。パピルサグが嫌うのも無理はないのかもな。」


「お戯れを。」


「よし。なら準備していた暗殺者を仕向けろ。邪魔する奴もろともすべてだ。さぁゼロスとやら。生き残ることができるかな?」


どうやらボスにとってゼロスという男は障害になりうる男であり、蟲毒の敵として楽しめる相手と見定めたらしい。


「それではこれまでアラクネと鍛錬をしていた666番を仕向けます。監視、報告用に665番をつけ、現在の強さを見定めます。」


「それでよい。そこで死んでしまえばそれだけの男というわけだ。手段は問わない。近くにいるものも一緒にまとめて始末しろ。そして生き残れば複数の幹部でことにあたれ。もしも幹部に死人が出ればそこで一度私に報告しこの案件は私が預かる。いいな?」


「ハッ!それにしてもボス自らですか。」


今までにない珍しいものをみたという表情で問うパピルサグ。


「おかしいか?そいつには私も少し血が騒ぐ。勘だがその男は生き残るような気がするのだ。」


「ありえません。今回向けるのは私を含めた選りすぐりの暗殺者たちです。ボスの出番はないと思われます。」


「それならそれでよい。ではあとは任せたぞ?」


「ハッ!仰せのままに。」


そういってボスは部屋を出ていく。

部屋を出ていったあとパピルサグは念話を使う。


(アラクネ。ボスからのお達しだ。ゼロスという男を殺しに行け。666番が暗殺。665番に監視、報告という形でだ。手段は問わないとのことだ。)


(了解。なら今から向かわせる。)


(そいつは俺が近くの人間を狙ったときに殺されかけたからな。その手段を使えば余裕だろ?)


(気が進まないな。なんだって関係ない奴まで狙う必要がある?)


(ボスの命令は絶対だ。それに従えなきゃ末路は知ってるだろ?)


(ああ。とりあえず二人はフリージア王国に向かわせる。)


(ああ。せいぜい返り討ちに合わんようにな。)


(俺が暗殺するわけでもないんだがな。)


(それもそうだったな。)


(ただ666番の強さは本物だぜ?少なくともお前には勝てる。出なきゃあいつを暗殺なんかできやしない。)


(おいおい。俺の立場が危ういじゃねぇか。だがお前がそこまで言うんだ。いい結果を期待しているぞ。)


(ああ。あの二人に任せときな。)


-------------------------------------------

「666番、665番。指令が来た。今からフリージア王国に行きゼロスという男を暗殺してこい。暗殺は666番、監視、報告に665番をつける。いいな?取れる手段はすべて取れ。人質を取り、そいつを殺すことになってもな。」


「「ハッ!」」


二人の青年がその言葉に返事をし部屋を出ていこうとする。しかし666番の顔が浮かないのを見てアラクネは呼び止める。


「666番。余計なことは考えるなよ。」


「・・・わかった。」


いつも通り微妙な間を置き答える666番。その返事をした後部屋を出ていった。


「そりゃ気が進まないだろうがそれでもそいつを飲み込まなきゃ今回は出来る暗殺じゃないんだぜ?そこんとこわかってるのかね?」


アラクネは誰もいなくなった部屋で一人つぶやくのだった。


-------------------------------------------

「いやー!今日もいい天気だねフロン!」


「そうだね!!絶好の雑草抜き日和だね!」


今日もいつも通り僕たちは雑草を抜いていた。


「それじゃ今日はあっちの庭をお願いね?」


「「はい!わかりました!」」


いやー昨日も雑草抜きやってたけど庭が広すぎて終わらなかったんだよね。ホント広い庭を持っている家って大変だよね!


「それにしても最近は随分と平和だね。」


「いやぁ平和に越したことはないんじゃないかな?」


雑草を抜きながら会話をする二人。

正直な話前回みたいな事件がしょっちゅうあっても困る。いつ戦争になるかわからない戦いなんて勘弁だ。


「でも蟲毒に報告のために逃げられたんでしょ?」


「そうだね。いつ襲われるかわからない以上鍛えておいて損はないし、鍛える時間があればそれに越したことはないよ。」


いやホントどうしてこうなってるんだろう?僕はゆっくり過ごすためにこの世界に来たんだよね?なのに毎日毎日鍛錬ばっかりしてさ。これはこれで新感覚の有給だけどね。常に殺されるリスクを持って過ごすというね。求めてたのとは違うんですよ!


「そしたら今日も鍛錬に行かないとね。今日は何するの?」


「今日は体術かな。まだアラクネと戦って勝てるかって言われると微妙だし。シーザが今日の仕事早めに終わるって言ってたし先にいつもの池の辺りで待ってようか。」


「わかった!シーザならいい相手になりそうだね!」


「ああ。今日こそはボコボコにしてやろう!」


そうだ!今日こそは新しい魔法を使ってボコボコにしてやろう。こんなバイオレンスな有給なら少しくらい暴力的にもなる。シーザにはその犠牲になってもらおう。


その後午前中に昨日の続きの雑草抜きも終わり、


「今日もありがとうね!これでこの庭も綺麗になったよ。」


「いえいえ。また何かあったら依頼してください!」


「そうなの?そしたら今度は指名で依頼を出させてもらうよ。二人に頼めば他の人よりすごく丁寧にやってくれるからね。」


ギルドには指名依頼というものがある。依頼者がギルド員を指定して行ってもらう依頼だ。指名をもらうということは依頼者との信頼がしっかりあるということなのでギルドでは名誉なことである。ただ雑草抜きで指名依頼をもらったのはこのギルド史上で初めての快挙である。


「わかりました!いつでも依頼を出してくれるのを待っています!それでは今日は失礼しますね!」


そういって二人は依頼者の家を後にする。


「よかったね!喜んでもらえて!」


「そうだね。感謝されるのはやっぱり嬉しいよね。」


そうだよ!こういうほのぼのした有給だよ!僕が求めてたのは!花でも愛でてる方が僕とフロンには合ってるよ絶対。

その後二人はお昼ご飯を食べていつもの池に向かった。


「シーザっていつ来るの?」


「仕事が終わるのが1時くらいって言ってたからすぐ来るでしょ。今12時くらいだし。それまでは天気もいいし昼寝でもしようかな?」


「うん!いいねそれ。それじゃ。」


そういってフロンは正座をして膝をポンと叩く。


「あのーフロンさん?それは?」


「膝枕だよ!ギルドの人が男の人はこれをやれば喜ぶって言ってた!」


おいいい!何教えてんのギルド員!いや嬉しんだけどね。僕神様だから変な気持ちとか起こさないよ?

ただ僕はホントにこの子が純粋すぎて怖いよ。もしもギルド員がこの子に変なこと教えたら絶対にシバく。それは許さない。僕はこの子を守る義務がある。ただ今回はこの膝枕に身を預けよう。決して下心はないぞ!


「うん。嬉しいよ。でもそれじゃフロンは眠れないんじゃ?」


「私は眠くないから大丈夫。」


「そうなんだ。じゃあお願いするかな。」


そういって僕は膝枕に身を預けようとするのだが・・・


「・・・。なんだろう誰か別の人の気配がする。」


「えっ?」


そういって僕はあたりに魔力を散らす。アラクネの時にやった手段と同じで人の気配を発見した。


「そこにいるんだろ?」


木の近くに人の気配がありそこに質問をぶつける。


「・・・アラクネの話だとそこまで感覚は鋭くないと聞いていたのだが。」


「僕もアラクネに最初に会ったときには気づけなかったからね。同じ手段で忍び寄られたら次は殺されそうだったし微妙な気配があれば魔力を散らす癖をつけさせてもらったよ。」


ホント危ないんだよ練度の高い秘術使いは。そんな状況で一気に暗殺されて有給終了って流れは勘弁してほしい。それにしてもこの男若いな。青年って感じだ。


「・・・なるほど。とはいえお前の命はもらうぞ。」


何やら細長い杖をスポットから取り出しながら歩いてくる青年。


「フロン。少し離れてて。ちょっと鍛錬してなかったら気づけないほどの秘術使いだ。弱い訳がない。」


「うん。気を付けてね・・・」


こういう顔は反則だな。不安そうなフロンの頭を撫でて落ち着かせる。


「大丈夫。そんな簡単に殺されてやる気はないから。」


撫でるのをやめて青年に相対する。


「お前は幹部ではないのか?」


「・・・いや違う。ただお前を殺すために命がけで鍛錬してきただけだ。」


うわぁ。やばい奴じゃん。蟲毒超本気じゃん。


「そうか。とはいえ僕も簡単に殺されてはやらないから覚悟してくれ。」


そういいながら周囲の魔力を自分の魔力に置き換え秘術を封じる。


「・・・どうやらアラクネの言った通り魔力の扱いも長けているようだ。秘術を封じられている。」


「そりゃどうも。アラクネさんには大変お世話になりましたから今回は僕から仕掛けさせてもらうよ。」


ゼロスは身体強化を使い土を蹴り一気に青年に肉薄し、掌底を放つ。


「ッ!」


青年は瞬時に身体強化を施しその掌底を躱し、杖の先に魔力を込めて薙ぎ払う。

しかしゼロスはそれを後ろに飛び、青年の杖は空を切った。


「んん?」


ゼロスは躱したはずなのに胸元から少し血が出ていることに気づいた。


「・・・考え事をする時間はないぞ。」


「ちょっ!」


次は青年は突きを放ち、杖を持ち替え薙ぎ払い、さらに杖を持ち替えて上から振り下ろす。

ゼロスはどれも躱すがそのたびに服が破けたり、ところどころから出血をしている。

これは不味いと思いながら離れようとするも攻撃を青年は攻撃を止めない。杖を持ち替えるコンビネーションでゼロスは翻弄され続ける。


「ハッ!」


青年の気合を入れた声の一撃でゼロスは反撃を試みる。

杖を躱すのではなく身体強化を強めた部位で杖の中間あたりを弾き、拳を入れようとするが青年はこれを読んでいたのかそれを躱し蹴りを放つ。

ゼロスは蹴りで攻撃してきた青年の足をガードし瞬時に軸足が一本しかない青年に足払いを放ち相手を転ばせ拳を入れようとする。

しかし青年は転がって避け、杖を地面に突き刺し棒高跳びの要領で飛び上がるようにして距離を取る。


「いやいや。勘弁してほしいよ。すごい厄介じゃん。」


この青年は杖術使いだね。たしか前の下界ではこんな言葉があったっけ?突かば槍、払えば薙刀、持たば太刀杖はかくにも外れざりけりだっけ?

杖の持ち方一つでもれなく多彩な攻撃をしてくれる。それになんだ?触れてもいないのに血が出てる。

ああ。なるほど。


「なるほど。攻撃するときに杖に魔力を込めて当たる部位を鋭利にしてるんだね。どこでも当たれば必殺になりかねないってことか。」


「・・・・・・」


受け答えなしですか。無視されたって悲しくなんかないもんね。ホントだぞ!

ただこれは体術だけで行けるか少し不安だね。魔力を使った魔法で意表を突いた方がよさそうだ。


考えていると青年が今度は突撃してくる。

持ち方は振り下ろし。太刀か。

ゼロスは周囲を支配した魔力で相手の強化している部分を読み取る。太刀になっているときはどうやら持ち手の部分以外全体を刃物のように強化しているようだった。

そのままでは受けられないため躱すとすぐに持ち替えて突きに来る

そこで踏み込んで殴るために少し姿勢を低くしながらゼロスは前に出る。

青年は魔力で杖全体を強化し、太刀のようにして横に振る。ちょうどゼロスの首に当たる高さである。その杖はゼロスを一刀両断するところであったが。


「アラクネから聞いてない?僕の魔法?」


そう。ゼロスはミラージュを使い自分の高さを誤魔化していた。本当は前に出てしゃがみ相手の攻撃を誘っていた。青年の一撃は空を切る

青年はそれに慌てながらもその場から離れようとするもゼロスの身体強化を集中させた拳の方が早かった。


「ッ!」


まともにくらい吹き飛ぶ青年。アラクネからこの魔法のことを聞いていたがいきなり使われるとこれは簡単に気づけるものではなかった。近接戦で戦うのであればそれはなおさらである。

男は内臓にダメージを負ったのか血を吐く。


「・・・やるな・・・。」


「君も相当やるよ。だけど僕も殺されてやるわけにはいかないんだ。」


そうして再びゼロスに攻撃を仕掛けようとしたときだった。


「動くな。動けばこの娘は殺す。」


別の青年がフロンの首筋にナイフを当てながら戦いに水を差す。


「ごめんね。ゼロス。」


フロンが申し訳なさそうな顔をしてこちらを見ている。


「またこの状況か・・・。」


しかしゼロスもこの状況くらい予想をしている。前回パピルサグにフロンが狙われた後、時間を掛けてお守りという名の魔道具を真剣に作り直した。おかげさまで致命傷一発くらいならやられはしない程度まで強化できていた。そのため今回は少しゆとりをもってことにあたろうとしたのだがここでゼロスにとって予想外のことが起きる。


「・・・なんの真似だ665番。」


「ああん?援護だよ。お前がやられそうになってるから仕方なくな。どうした。俺がこの女を人質にしているんだ。パピルサグ様も言ってただろ?人質を取ればそいつは動けなくなる。分かったらさっさとそいつを殺せ。」


「・・・断る。」


ん?なんだ?雰囲気がおかしくなってきたぞ?仲間割れ?


「俺の耳が悪くなったのか?もう一度聞くぞ?さっさとその男を殺せ!」


「・・・断る。」


そういってゼロスに対峙していた青年はすぐにフロンところに向かいナイフを弾き665番と呼ばれた青年に強化してない杖で頭を殴打した。


「ガッ!てめぇ!蟲毒の命令が聞けないってのか!?」


「・・・どうせこの男を殺した後にその女もお前は殺していたのだろう?」


げっ。マジかよ!僕ホントに死ねないじゃん。僕が死ねば近くの人も一緒に殺されるの?こいつらだいぶ無差別ことし始めたな。

そんなことを考えているゼロスをしり目に男は続ける。


「・・・どうする?これで人質を取ってもこの男はなりふり構わずお前たちに向かってくるようになるぞ?」


まぁこの男が言うことがホントならそうなるよね。殺される前に動かなきゃ意味ないわけだし。


「貴様・・・。これは蟲毒への反逆行為だ。こうなった以上お前の末路はすでに決まっている。残りの短い人生を後悔して生きるんだな!」


そういってフロンを人質に取っていた665番という青年はそこから逃げ出した。


「えっと?これはどういうこと?」


フロンが意味が分からず助けてくれた青年に問う。


「・・・俺は手段を選ばず誰でも殺すというやり方に従いたくなかっただけだ。質の落ちた蟲毒に身を置く気になれない。だからお前を助けたわけではない。」


あれ?ツンデレ?


「それでも結果的に私を助けてくれたんだよね?ありがとう!」


あらまぁフロンさんったら純粋なこと。その人さっきまで僕を殺す気満々だったんだけど。


「・・・ッ!巻き込んですまなかった。」


そのフロンに少し驚いた表情をしてその男はゼロスのところに歩いてくる。


「・・・水を差されてこれ以上やる気が無くなった。これからも命を狙われるだろが今日のことでわかっただろう?今の蟲毒はお前を殺すことにどんな手段でも使う。ホントに生き残りたければもっと対策をするんだな。」


そういって青年はその場を後にしようとする。


「待て!これから君はどうするんだ?」


慌ててゼロスはその青年を止める。


「・・・俺は蟲毒を裏切った身だ。もう命は長くないだろう。」


「ならせめて名前だけでも。」


「俺に名前はない。もう蟲毒を抜けた以上番号もすでにない。」


そういって青年はその場を後にした。


「ねぇゼロス?」


「ああ。これからどうしよっか?」


そこにがさがさと音がして二人は身構える。


「やー遅れたわー。ん?どったの二人とも?」


「お前かよ!もっと早くきやがれ!」


ゼロスは近づき一発シーザに殴り掛かる。


「ぐはぁ!」


遅れてきたシーザがのうのうとこの場に姿を現した音であった。

ゼロス君が強くなっているのも事実なんですが。戦いの描写が淡泊な気がするのはこの話はまだジャブだからさ・・・(自分の首を絞めていくスタイル)

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